害獣駆除を自分でできるかを分ける法律の線|家ネズミ3種とそれ以外

環境省の鳥獣保護管理法の概要は、鳥獣を「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」と定義し、ネズミ・モグラ類も含まれるとしています。そのうえで、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣として、いえねずみ類3種は法の対象外です。施行規則第78条は、この3種をドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミと定めています。

それ以外の鳥獣は、鳥類の卵を含めて、狩猟による場合を除き、原則として捕獲、殺傷、採取が禁止されています。農林水産省のマニュアルは、被害が発生しているからといって野生の鳥獣を自由に捕獲することはできないと明記し、捕獲には狩猟と許可捕獲があると説明しています。コウモリ、イタチ、ハクビシン、ハト、スズメなどは、許可なしに自分で捕獲する対象ではありません。

アライグマは、外来生物法の特定外来生物でもあります。環境省は、飼養、栽培、保管、運搬が原則禁止されると案内しており、野外で捕まえたものを持ち帰る行為は運搬に当たります。この記事で扱うのは、そうした法律の線のうち、自分の家で許可なしにできる作業の範囲です。

参考:環境省|鳥獣保護管理法の概要

読者の疑問

害獣駆除は自分でできますか?

比較ガイド

ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミは法の適用外なので、捕獲器や殺そ剤の使用を含めて自分で対応できます。ほかの野生の鳥獣は許可なしに捕獲できず、できるのは餌・ごみ・すき間の管理や、中にいないことを確認したうえでの封鎖、清掃などです。

作業別に見る|許可なしでできる作業と、避ける作業の表

法律の線は、動物の種類だけでなく、作業の中身でも決まります。餌やごみの管理、すき間の点検、清掃は許可と関係なく取り組めます。一方で、動物を捕まえる、傷つける、閉じ込める、卵やヒナのいる巣を撤去する作業は、許可がない限りできません。次の表は、作業別に整理したものです。

作業別に見る|許可なしでできる作業と、避ける作業の表:確認項目
作業許可なしで自分でできるか失敗しやすい点・避けること
餌・ごみ・ペットフードの管理できる食品や生ごみ、ペットの餌を出しっぱなしにしない。餌付けになる行為は続けない
侵入口の点検と記録(地上・ベランダから)できる屋根や天井裏に上がらない。穴の位置、大きさ、痕跡を写真で記録する
忌避(光・臭い・音などで近づけにくくする)動物を傷つけない範囲ならできる自治体の案内には「可能性があります」という書き方のものがある。製品は表示どおりに使い、効果が続かなければ別の対策へ移る
動物がいない間の封鎖中にいないことを確認できればできる取り残すと閉じ込めて死なせるおそれがある。幼獣や卵・ヒナのいる時期は避ける
清掃(フン・巣材・汚れ)できるが、触れる前の確認が必要素手で触れず、清掃する範囲と手順を先に決める。断熱材の交換など範囲が広いときは業者に相談する
家ネズミ3種の捕獲器・殺そ剤の使用法の適用除外のためできるクマネズミは専門業者でも難しいとされる。死骸の回収、ペットや子どもの誤食に注意する
ネズミ以外の動物の捕獲(箱わななどの設置)できない(許可や狩猟免許が必要)許可の窓口は自治体や都道府県。貸出には条件がある
鳥の巣・卵・ヒナの撤去卵やヒナがいる間はできない巣立ち後に撤去する。巣を作られたくない場所は、あらかじめ侵入を防ぐ
屋根・天井裏・床下に入る作業できる範囲は限られる踏み抜き、感電、墜落の危険がある。専門業者に任せた方がよい場合がある

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

動物別にできること・できないこと|家ネズミ・コウモリ・イタチ・ハクビシン・アライグマ・ハト

動物ごとの違いを、作業の視点で表にまとめます。許可の要否を条文ごとに並べる表ではなく、自分の家で取り組める範囲と、取り組まない範囲を分けた表です。

家ネズミの捕獲器や殺そ剤の選び方は殺鼠剤と捕獲器の比べ方で、鳥の巣の扱いは巣に卵やヒナがあるときに確認することで扱っています。表の「自分で行わないこと」は、許可が必要な作業だけでなく、閉じ込めや転落の危険が大きい作業も含みます。

動物別にできること・できないこと|家ネズミ・コウモリ・イタチ・ハクビシン・アライグマ・ハト:確認項目
動物自分で取り組めること自分で行わないこと参考になる公的資料の記述
家ネズミ(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ)餌・巣材・侵入口の管理、捕獲器や殺そ剤の使用(表示に従う)天井裏や高所での設置や修繕、電気配線まわりの補修東京都の読本:環境的防除が基本で、捕獲器や殺そ剤はその補足。環境省は3種を法の対象外としている
コウモリいない時間帯の観察、侵入口の特定、いない時間帯の封鎖捕まえる、傷つける、中に取り残したまま塞ぐ浜松市:捕獲には許可が必要。幼獣のいる6月から8月や冬眠前後を避ける
イタチ類餌や隠れ場所の管理、地上から見える侵入口の記録捕まえる、床下や屋根裏に入って追う農林水産省:シベリアイタチは3cm程のすき間から侵入し、点検や封鎖には建築知識と事故のリスクが伴う
ハクビシン果実や生ごみなど餌の管理、地上からの侵入口の記録許可を得ずに箱わなを設置する、天井裏での追い出し農林水産省:6cm×12cmのすき間で侵入でき、ほぼ年間を通して繁殖する
アライグマ餌の管理、ペットフードの屋外放置をやめる、被害の記録捕獲して運ぶ、飼う、放す(特定外来生物)環境省:飼養や運搬は原則禁止。捕獲の窓口は自治体
ハト・スズメなどの鳥餌やりをしない、ベランダの清掃、巣を作られる前の侵入防止卵やヒナのいる巣の撤去、捕獲大阪府:卵やヒナのいる巣は撤去できない。農林水産省:ドバトはベランダなど雨のかからない所に巣を作る

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

自治体の捕獲器貸出・捕獲許可の調べ方

環境省の捕獲許可制度の概要によると、捕獲許可の権限者は、国指定鳥獣保護区内や希少鳥獣などの場合は環境大臣、それ以外は都道府県知事で、多くの都道府県では一部の権限が市町村長に移されています。許可の基準は、捕獲の目的ごとに、種類、員数、期間、区域、方法などが定められています。このため、窓口も条件も自治体によって異なります。

まず窓口を探す

窓口になる課は自治体で違います。例えば大津市は農林水産課の鳥獣害対策係、浜松市は林業振興課、横浜市はみどり環境局の担当課が案内を出しています。お住まいの市区町村名に「アライグマ 捕獲」「有害鳥獣」などを加えて探し、見つからなければ都道府県の鳥獣担当に尋ねます。電話では、動物の種類(分からなければ見た様子)、被害の場所、自分の土地か借地か賃貸かを伝えると話が進みます。

貸出の条件の読み方(大津市の例)

大津市の案内(2023年12月更新の掲載)では、アライグマとハクビシンを対象に、被害を受けている人が申請し、捕獲許可の後に許可証と捕獲おりが届けられます。設置場所は申請者の所有地や事業地内で、借地の場合は土地所有者の承諾書が必要とされ、貸出期間は申請時から年度末の3月31日までです。捕獲した場合は市への連絡が求められています。借地で承諾書が必要とされる例があるため、賃貸住宅では、管理者への確認が先になります。

市が捕獲や駆除をしない場合

浜松市は、コウモリについて原則として市では捕獲や駆除を行っておらず、自分の所有地や管理地で対応が難しいときは専門業者への相談(有料)を案内しています。横浜市も、コウモリの捕獲や駆除は行っておらず、捕獲許可は神奈川県の自然環境保全課に問い合わせるよう案内しています。貸出や許可の扱いは、動物の種類でも自治体でも変わります。「借りられるはず」と決めずに、先に確認してください。

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

許可なしでできる対策|餌・ごみ・すき間の管理、忌避剤、追い出し後の封鎖、清掃

許可なしでできる対策の軸は、環境を変えて住みつきにくくすることです。東京都の読本は、ネズミ対策の基本に、食べ物を与えない、巣材を与えない、住まいへの出入りと建物内での移動を防ぐ「環境的防除」を挙げ、捕獲器や殺そ剤はその補足と考えるのがよいとしています。ネズミ以外の動物にも、餌と隠れ場所を減らす考え方は共通します。

餌・ごみ・巣材の管理

東京都の読本は、食品は容器にしまい、生ごみはふた付きの容器に入れ、ペットの餌は食べきれる量にして残りを放置しないといった例を挙げています。仏壇のお供え物や花、野鳥の餌台の餌は、夜間は片付けるとされています。衣類やタオルなどの布製品はプラスチックなど丈夫な収納ケースに入れ、不要な紙類や布類は処分して、巣材になるものを減らす例も示されています。台所やペットの餌場は、食品の置き場から順に見直します。

忌避剤・光や臭いの利用

自治体の案内には、CDやアルミ箔をぶら下げる、刺激臭のあるものを使うといった方法が、「可能性があります」という表現で紹介されることがあります。効果が確かめられていない方法を、効く前提で続けるのは避けたいところです。製品を使うときは表示に従い、効果と限界は害獣の忌避剤だけで解決するかの見方で整理しています。

追い出し後の封鎖と清掃

封鎖は、動物が中にいないことを確認してから行い、塞ぐ材料は金属や板などの丈夫なものを選びます。農林水産省の資料は、樹脂ネットや薄い合板は壊される可能性があるため使わないとしています。清掃は、動物が出ていった後に、フンや巣材を処理し、汚れを取り除く作業です。封鎖、清掃、駆除の順番は追い出し・封鎖・清掃を工程表で確認する記事で扱っています。清掃の範囲は、清掃を頼む場合も自分で行う場合も、先に決めておきます。

参考:東京都保健医療局|都民のためのねずみ防除読本(令和7年12月発行、PDF)

自分でやると失敗しやすい点|閉じ込め・幼獣・追い出し前の封鎖

失敗の多くは、動物が中にいる状態で出入口を塞いでしまうことから起こります。浜松市は、コウモリが家に取り残されると閉じ込めて死なせ、死体がにおいや害虫の発生源になると注意しています。農林水産省の資料も、侵入場所が確認できても、中に居ないことを確認するのを忘れてはいけないとしています。

もう1つは、幼獣と卵です。アライグマは4月ごろ、建物の壁のすき間などで出産することがあり、ハクビシンはほぼ年間を通して繁殖します。コウモリは、6月から8月ごろにまだ飛べない幼獣がいる時期があります。親だけが外に出た状態で出入口を塞げば、中の幼獣が残されます。鳥の巣は、卵やヒナがいる間は撤去できません。「この月なら大丈夫」と決めず、音や出入りの記録から判断してください。コウモリは、とくに慎重に時期を見ます。

追い出す前に封鎖しない

封鎖は、動物がいないことを確かめてから行います。出入りの観察と、封鎖後の記録について、次の3点を守ってください。

  • 封鎖する前に、動物が外に出ている時間帯を観察で確かめる
  • 出入りが記録できない間は塞がず、相談する
  • 塞いだ後も、音やフンの変化を数日記録して、中に残っていないか確かめる

参考:浜松市|家にコウモリが住み着いて困っている

屋根裏・天井裏・床下の動物対策で、けがをしやすい場面

屋根裏や天井裏の動物対策を自分で行うとき、とくに危険なのは、人が上がることを想定していない場所での作業です。東京都の読本は、天井裏や高所などの危険な場所では専門業者への依頼がよい場合もあるとしています。厚生労働省の職場のあんぜんサイトの災害事例にも、屋根、天井裏、床下の事故が複数載っています。

これらは仕事として作業していた人の災害で、家庭の作業とは条件が異なります。それでも、足元の強度が分からない、暗い、狭い、配線がある、逃げにくいという条件が重なる場所だという点は共通しています。脚立やはしごで点検口へ上がる、天井板の上に乗る、床下に潜るといった作業は避け、地上や室内からの記録にとどめるのが安全です。

  • 屋根の上:スレート屋根の上で雨漏りの修繕中に踏み抜き、約5mの高さから墜落した事例が公開されています。
  • 天井裏:暗がりで延長コードのコンセントに照明のプラグを差し込もうとし、破損して露出した充電部に触れて感電した事例が公開されています。
  • 床下:高さ約47cmの床下で電動ドリルが換気扇の配線に当たり、感電したと推定される事例が公開されています。

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト 労働災害事例(木造住宅の床下での感電、No.100814)

業者に頼む目安と、自分の作業記録を調査時に渡す方法

許可が必要な捕獲が必要になったとき、侵入口が高所や天井裏、床下にあるとき、封鎖しても痕跡が続くとき、幼獣や卵の可能性があるときは、自分での対応を続けるより、自治体の窓口や業者への相談を考える時期です。相談の前に、自分で行った作業の記録を整理しておくと、調査で同じ作業を繰り返さずに済みます。

調査を頼む前に伝えること、用意するものは害獣の現地調査を頼む前の確認一覧にまとめています。侵入口の部位別の点検は害獣の侵入経路を部位別に点検するチェック表で確認できます。

業者に頼む目安と、自分の作業記録を調査時に渡す方法:確認項目
記録する項目書き方の例調査で役立つ理由
痕跡の位置と日時「2階北側の天井から足音、毎晩23時ごろ」など、場所、時間、頻度動物が出入りする時間帯や、調べる範囲を決める手がかりになる
使った製品・道具製品名、置いた場所、置いた日、回収したもの効果の判断や、誤食、重ね使いの防止に必要
封鎖した場所と材料塞ぐ前後の写真、使った材料、日付塞いだ後に別の場所から入られていないかを確認する基準になる
見つけた侵入口の写真遠景と近景、地面からの高さが分かる写真大きさの目安と、補修が必要な範囲を見積もりに反映しやすい
自治体や管理者とのやり取り連絡日、担当課、案内された内容(許可や貸出の可否)重複する申請を避け、許可が必要な作業との切り分けに役立つ