イタチが屋根裏に入る理由|子育て・休息の場・餌との距離
大阪府は、イタチが石垣のすき間や床下、天井裏に住みつくことがあり、グラスウールの断熱材をほぐして巣を作り、子育てをする例もあると案内しています。堺市も、以前は石垣や床下が多かったものの、最近は天井裏にすみつくことが増え、断熱材をほぐして巣を作って子育てをする例が増えているとしています。屋根裏が選ばれる理由のうち、資料で確認できるのは、巣と子育ての場として使われることです。
農林水産省の中型獣類編のコラムは、西日本の住宅に入るシベリアイタチ(旧称チョウセンイタチ)を、人の生活圏を好み、休息の場として建物を使う動物と説明しています。糞尿の悪臭や足音による安眠妨害が主な被害だとされています。もう一つの理由は餌との距離です。大阪府は主食をネズミ、鳥類、昆虫などの動物とし、大東市は、生ごみや農作物を餌として求めて民家の屋根裏に巣を作る場合があると書いています。
大東市は、確認した時点で巣がなくても、居心地の良い場所を見つけると何度も訪れ、やがて巣を作ると説明しています(2021年4月更新の掲載)。「寒いから屋根裏に入る」という説明は、イタチについて書かれた公的資料を、今回の確認範囲では見つけられませんでした。農林水産省の資料にあるのはハクビシンの例で、夏は涼しい床下、気温が下がると暖かい天井裏を日中の休息に使うという内容です。イタチに同じことが当てはまるとは書かれていないため、この記事では寒さを理由として扱いません。
| 理由の候補 | 資料で確認できたこと | 時期との関係 |
|---|---|---|
| 子育ての場 | 大阪府と堺市が、断熱材をほぐして巣を作り、天井裏で子育てをする例を案内 | 春から夏。次の節で月を整理 |
| 休息の場(ねぐら) | 農林水産省のコラムが、シベリアイタチは休息の場として建物を使うと説明 | 通年の習性として書かれ、月の限定はなし |
| 餌に近い | 大阪府は主食をネズミ・鳥類・昆虫と案内。大東市は生ごみや農作物を餌にすると説明 | 通年。餌になるものが残る場所に集まりやすい |
| 寒さ | イタチについて、寒さを理由に屋根裏へ入ると書いた公的資料は確認できず | 確認できなかったため、この記事では扱わない |
イタチが屋根裏にいるのは一年中ですか?
資料は、通年いるとも冬だけとも書いていません。農林水産省は休息の場として建物を使うと説明し、繁殖に関する記述は春から夏に集中しています。時期だけで決めず、音とフンの記録で現場の状況を確かめます。
イタチの繁殖期と子育ての時期|資料ごとの月の違い
繁殖の時期は、資料ごとに書き方が違います。資料の月を表にまとめ、その前に読み方を説明します。いずれも自然の中での習性を説明した資料が中心で、住宅の屋根裏でも同じ月になるとは限りません。国立環境研究所の掲載は2010年と2012年の更新で、古い資料であることも踏まえて読んでください。
共通して言えること|春から夏が子育ての中心
交尾の月は3〜5月(国土交通省)と4〜5月(国立環境研究所)で少し違いますが、どの資料も、春に交尾し、初夏に出産し、夏に子が母親と別れるという流れで一致しています。国土交通省は、交尾からほぼ1か月後に出産するとしているため、3月に交尾が始まれば4月に出産が始まる計算です。
数字を並べると、子が屋根裏の巣にいる、または母親と一緒に動く期間は、早い出産の4月ごろから、子が母親と別れる8月ごろまでと読めます。これは資料の数字をつないだ当サイトの整理で、個体や地域によって前後します。堺市が繁殖期を4月頃から8月頃としているのも、この範囲と重なります。
資料から分からないこと|九州の2回目と、地域・標高の差
国立環境研究所と国土交通省は、ニホンイタチは九州で年2回繁殖する例があるとしています。2回目の月は資料に書かれていないため、九州では夏から秋にも子がいる可能性があると考え、秋になったから大丈夫とは決められません。また、資料は北日本や標高の高い地域で月がずれるかどうかを書いていません。お住まいの地域の時期は、市町村の窓口や現地調査で確かめてください。
どちらの種類が多いかも地域で異なります。農林水産省のコラムは、シベリアイタチの生息域は西日本が主で、東海地域でも確認され、東日本への拡大が懸念されると書いています。大阪府は、町で見かけるイタチはシベリアイタチが多いとしています。東日本では、ニホンイタチの資料を参考にすることになります。種類の見分け方は ニホンイタチとチョウセンイタチの違い にまとめています。
| 資料 | 交尾・繁殖期 | 出産・育児 | 子の成長・独立 |
|---|---|---|---|
| 国立環境研究所(ニホンイタチ) | 交尾期は4〜5月。九州では年2回 | 産仔数は1〜8頭で平均3〜5頭 | 記載なし |
| 国立環境研究所(チョウセンイタチ) | 4〜5月に交尾。雌は年1回 | 6〜8月に育児。産仔数5〜6頭で、育児は雌のみ | 春に生まれた子は秋には分散 |
| 国土交通省 太田川河川事務所(ニホンイタチ) | 一般に年1回、3〜5月に交尾。九州では年2回の例 | 約1か月後に1〜10頭を出産。授乳期間は40日前後 | 5月ごろ生まれた子は生後70〜80日で成獣と同じ体重になり、8月ごろ母親と別れ、10月下旬ごろから単独で生活 |
| 国土交通省 弥栄ダム(イタチ類) | 3〜5月に交尾 | 出産期は4〜6月。雌は自分の行動圏内の巣で子育て | 記載なし |
| 堺市 | 繁殖期は4月頃から8月頃 | 年1回、5〜6頭を出産。天井裏で子育てする例が増えている | 記載なし |
月別の目安|その時期に追い出し・封鎖を進めてよいか
ここからは、資料の月に「追い出しや封鎖を進めてよいか」の考え方を重ねた、当サイトの整理です。月だけで決めず、右端の「現場で確認すること」を満たしてから進めます。追い出しは、捕獲をせず、においや音、光で追い払うだけなら市への手続きは不要だと高槻市が案内しています。一方、封鎖については、農林水産省が、中にいないことを確認することを忘れてはいけないと述べています。
封鎖の前提になる不在の確認は、足音が止んだだけでは足りません。眠っているのか、別の場所にいるのか、子が残っているのかを区別できないためです。確認の進め方と封鎖の順番は イタチを屋根裏から追い出す方法 で整理しています。
| 月 | 資料から言えること | 追い出し・封鎖の考え方 | 現場で確認すること |
|---|---|---|---|
| 1〜2月 | 繁殖に関する記述はない(九州の年2回の例を除く)。夜に動き、夜明けに休む習性は通年 | 子がいる可能性は低いと読めるが、断定はできない。封鎖は不在の確認が前提 | 足音の時刻、フンの新しさ、出入りの位置 |
| 3月 | 国土交通省は3月から交尾期とする。出産は早ければ4月 | 子はまだ少ないと考えられるが、巣作りに入る時期。出産前に侵入口を確認しておく | 侵入口、断熱材のほぐれ、フンの量の変化 |
| 4〜5月 | 交尾期(国立環境研究所・国土交通省)。出産期は4〜6月(弥栄ダムの資料) | 子がいる可能性が出る。自分で封鎖や強い追い出しを進めず、窓口か業者に状況を伝える | 夜ごとに同じ場所で続く足音や鳴き声、断熱材の巣の痕跡 |
| 6〜8月 | 育児の時期(国立環境研究所)。5月生まれの子は8月ごろ母親と別れる(国土交通省) | 最も慎重に動く時期。子が残る可能性を前提にする | 同じ場所の音が続くか、母親が出入りしているか、子の声がするか |
| 9〜10月 | 春生まれの子は秋に分散(国立環境研究所)。10月下旬から単独生活(国土交通省) | 子の独立が進むが、九州では2回目の繁殖の例もある。出入りの記録がそろえば封鎖を検討 | 数晩の出入りの記録、不在の確認方法 |
| 11〜12月 | 繁殖に関する記述はない | 子がいる可能性は低いと読める。封鎖や補修を計画しやすい。ただし不在の確認は同じく必要 | 足音が止んだあとの様子、別の侵入口の有無 |
イタチの活動時間と、音がする時間帯|夜行性だが昼も動く
国土交通省の資料は、イタチは昼間も活動することがあるが主に夜行性で、日が落ちると穴から出て活動し、夜が明けると近くの穴に入って休むと説明しています。大東市も、夜行性のため夜中に足音が鳴る騒音被害があると書き、大阪府と堺市には、天井裏を走り回ってうるさい、眠れないという苦情が載っています。屋根裏の音が夜に集中するのは、この習性と合っています。
夜の足音と引っかく音の目安
甲賀市は、相談を受けるときの確認表で、家屋内の音のイメージを動物ごとに示しています。イタチは「カリカリ」(爪で引っかくような音)と「トントン」(走る音)、アライグマは「ゴソゴソ」「ガサガサ」「ノシノシ」という歩く音です。ページには、イメージ音のため異なる場合もあるとあり、音を録音すると判断しやすくなる場合があると書かれています。
音の特徴だけで動物を決めることはできません。時刻、場所、移動の仕方をそろえて記録すると、調査を頼むときに伝わりやすくなります。記録の取り方は 夜間の天井の音を記録する方法 にまとめています。
昼間の音は、イタチではないと決める根拠にならない
昼間も活動することがあるため、昼に音がしたからイタチではないとは言えません。反対に、昼の音がイタチとも限らず、設備の動きなども考えられます。昼間だけ聞こえる音は、時刻と場所を残して、調査のときに伝えてください。
| 時間帯 | 資料の記述 | 記録するとよいこと |
|---|---|---|
| 日没後から夜 | 巣穴から出て活動する(国土交通省) | 音が始まる時刻、走る音か引っかく音か |
| 深夜 | 夜中の足音による騒音被害(大東市) | 同じ場所で続くか、移動するか |
| 夜明け前後 | 夜が明けると近くの穴に入って休む(国土交通省) | 音が止む時刻と、最後に聞こえた場所 |
| 昼間 | 昼間も活動することがあるが、主に夜行性(国土交通省) | 昼の音は、設備や他の動物とも照らし合わせる |
冬に物音が増えたとき|公的資料で言えることと言えないこと
冬に屋根裏の物音が増えたとき、イタチが原因だと決める材料は、公的資料からは見つかりません。確認できたのは、繁殖に関する記述が春から夏に集中していること、イタチが休息の場として建物を使うこと(農林水産省)、居心地の良い場所を見つけると何度も訪れること(大東市)、主食がネズミなどであること(大阪府)です。逆に、冬に屋根裏の利用が増えるという記述は、イタチについては確認できませんでした。
冬の物音は、ネズミなど他の動物でも起こります。時期だけで動物を決めず、時刻・音の種類・場所・フンの位置を記録して、調査の場で絞り込みます。冬の屋根裏の動物ごとの過ごし方は 冬の害獣対策 にまとめています。
- 音の時刻:日没後に集中するか、昼にも聞こえるか
- 音の種類:引っかく音か、走る音か、重い足音か(甲賀市のイメージ音は目安)
- 場所:毎回同じ場所か、天井の上を移動するか
- フンやにおい:一か所に集まっているか、天井のシミを伴うか
- 出入りの場所:外壁や軒の近くで、汚れやすき間の変化がないか
毎年同じ時期に戻るときの再発防止|塞ぎ残しと増改築のあとを見直す
追い出しても戻る原因として、京都市は、一時的に立ち去っても戻る場合があるため、侵入口と思われる隙間を金網や板で防ぐことが効果的だと案内しています。農林水産省のコラムも、住宅の屋根裏に入る獣への防除は、捕獲や薬剤では不十分で、侵入できる全ての穴や隙間を封鎖する方法しかないとしています。毎年同じ時期に戻るなら、封鎖が足りていない場所を疑います。
同じコラムは、新たな侵入口ができる場面として、住宅の増改築や給湯器などの設備の設置を挙げ、施工業者に隙間ができないよう頼むだけでも、防止の効果は大きいとしています。具体的な侵入ポイントは、屋根の重なり、入母屋屋根の両隅、床下換気口、給湯器などの配管の引き込み部です。確認の手がかりは イタチが屋根裏に入る侵入口 にまとめています。
春の繁殖期の前に外周を点検する、という進め方も考えられます。これは当サイトの提案で、資料が月を指定しているわけではありません。3月ごろまでに、軒、瓦屋根の周り、床下換気口、配管の周りを地上から見て、破損や汚れがないかを確認しておくと、子育ての時期に入る前に侵入口を把握できます。
| 戻る原因の候補 | 資料の記述 | 見直すこと |
|---|---|---|
| 塞ぎ残しの別の侵入口 | 3cm程度の穴や隙間からも入るため、該当箇所すべてを封鎖する必要がある(農林水産省) | 侵入口が1か所に見えても、数晩の記録で別の経路がないかを確認する |
| 増改築・設備工事のあとの隙間 | 工事のときに侵入口が新たにできる場合が多い(農林水産省) | 工事後の屋根・軒・配管の貫通部を点検し、依頼時に隙間を作らないよう伝える |
| 追い出しだけで終わった | 一時的に立ち去っても戻る場合がある(京都市) | 追い出した後に不在を確認し、封鎖と再点検まで進める |
時期にかかわらず、追い出し・封鎖・清掃で守ること
イタチを含む野生の鳥獣は、鳥獣保護管理法で捕獲や殺傷が原則禁止されています。環境省は、被害がある場合などに環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲できるとし、多くの都道府県では許可の権限の一部が市町村長に移されていると説明しています。同法は鳥獣を、鳥類または哺乳類に属する野生動物と定めており、成獣と子を区別していません。子が残る時期に出入口を塞げば、子が出られなくなって死ぬおそれがあるため、閉じ込める結果になる封鎖は避けてください。
作業ごとの時期の守り方を、次のとおり整理しました。捕獲の許可や罰則の内容は イタチの駆除は違法? で確認できます。
- 追い出し:捕獲をせず、においや音、光で追い払うだけなら市への手続きは不要(高槻市)。4〜8月は子が残る可能性があるため、自分で進めず窓口か業者に相談する
- 封鎖:中にいないことを確認してから、金属や板など丈夫な材料で行う(農林水産省)
- 清掃:フン・尿・断熱材は、触る前に衛生面を確認する。量が多いときは業者に任せる
- 捕獲:許可が必要。許可を確認する前に、捕獲器を購入したり置いたりしない





