庭でマダニが付きやすい場所|草むら・やぶ・動物の通り道

国立健康危機管理研究機構は、マダニの生息場所を、シカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く、民家の裏山、裏庭、畑、あぜ道にも生息していると説明しています。東京都健康安全研究センターは、マダニは吸血するために、地上1m位の植物の葉陰で野生動物や人を待ち伏せして体に付着すると説明しています。庭では、腰から胸の高さに伸びた草や低木の葉が、待ち伏せの場所になりうると読み取れます。この読み取りは当記事の整理です。

庭のどこに多いかを確かめる点検表は、マダニはどこにいる?庭・家の中に持ち込まれる経路と野生動物の関係にあります。この記事は、見つけた後に、何をどの順番で減らすかを扱います。

参考:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト|マダニ対策、今できること

読者の疑問

庭のマダニは殺虫剤ですべて駆除できますか?

比較ガイド

東京都は、自然界にいるマダニをすべて駆除することはできないとしています。愛媛県などの発表要旨でも、散布後に密度が戻る例が示されました。服装と作業後の確認を基本にして、薬剤は補助と考えます。

庭の対策は優先順位つきで|人を守る・動物を寄せない・薬剤は補助

東京都健康安全研究センターのQ&Aは、所有する土地にマダニがいるようなときについて、自然界にいるマダニをすべて駆除することはできないため、咬まれないよう対策をとること、所有者以外も通る場所なら通行者にも注意喚起をすることを案内しています。愛媛県などの発表要旨も、マダニの生息密度は野生動物の侵入頻度に依存し、すべての場所で殺虫剤散布による駆除は困難で、最も重要なのはマダニから身を守る服装や方法を知って実践することだとまとめています。

これらを踏まえて、庭の対策を優先順位つきの表にしました。順番は当記事の整理で、上から順に取り組むと、費用や手間をかけずに被害を減らしやすくなります。

庭の対策は優先順位つきで|人を守る・動物を寄せない・薬剤は補助:確認項目
優先対策資料の根拠注意点
1庭作業・草刈りの服装と、作業後の確認国立健康危機管理研究機構、厚生労働省、東京都付くのは作業中。服装を先に決め、入浴で部位を確認する
2人が通る・作業する場所の草丈、落ち葉、やぶの管理効果の検証は見つからず、生息場所と待ち伏せの記載から当記事が整理効果の保証はない。刈る作業そのものの服装を守る
3野生動物・野良猫を寄せない(餌、隠れ場所、出入り口)国立健康危機管理研究機構、森林総合研究所の発表資料、愛媛県などの発表要旨捕獲が必要なときは、自治体や専門家に相談
4通行者への注意喚起(所有地を他の人も通る場合)東京都健康安全研究センター注意喚起の例文(PDF・Word)が公開されている
5殺虫剤の使用(屋外用で、マダニの適用がある製品)製品の公式表示、愛媛県などの発表要旨持続は限られる。使える場所とかけてはいけない物の確認が先
6ペットのダニ予防と、散歩後の確認厚生労働省のSFTS Q&A駆除剤は獣医師に相談

参考:東京都健康安全研究センター|マダニにご注意! マダニQ&A

草刈り・落ち葉・やぶの管理|資料にあること、ないこと

最初に、確認できたことと、確認できなかったことを分けます。草を刈れば、落ち葉を片付ければマダニが減る、という効果を直接示した公的資料は、今回開いた範囲では見つかりませんでした。資料にあるのは、マダニの生息場所(草むらややぶ、野生動物が出没する環境)、地上1m位の植物の葉陰での待ち伏せ、そして移動能力が小さいことです。森林総合研究所の研究者の発表資料(厚生労働省掲載)は、マダニはほとんど歩けず、自然環境下での移動は1.5mくらいで、吸血中の宿主の移動によって分散すると示しています。

これらから、当記事は庭を次のように整理します。人が通る道、物干しや作業の場所、子どもやペットが遊ぶ場所のまわりは、草丈を低めに保ち、やぶや落ち葉のたまりを人の動線から離しておきます。マダニは自力ではあまり動けないため、動物が運び込んだ個体が、動線に近い草の葉で待ち伏せする状況を減らす、という考え方です。効果は保証できないため、服装と作業後の確認の代わりにはしません。

刈る作業は、刺されやすい作業でもある

草刈りややぶの手入れの最中は、草むらにいちばん近づく時間です。国立健康危機管理研究機構や厚生労働省は、農作業や草刈りでは長袖・長ズボン、首のタオル、手袋、ズボンの裾を長靴の中に入れることを案内しています。刈る日は、次の点を守ってください。

  • 肌を出さず、明るい色の服で作業する
  • 刈った草は、人の通る場所に積まず、庭の隅にまとめる(当記事の整理)
  • 作業に使った上着は、家の中に持ち込まず、洗濯前に確認する
  • 作業後は入浴し、わき・足の付け根・手首・膝の裏・胸の下・頭部を見る

落ち葉・草の山・物置まわり

落ち葉や刈った草の山、物置や倉庫の周りは、動物が潜り込みやすい場所になりえます。庭の物置の害獣予防の点検と一緒に、動物が出入りできる隙間がないかを見ておくと、マダニの運び込みを減らす対策にもつながります。

参考:厚生労働省掲載|動物由来感染症技術研修会 ワンヘルスの視点からみた感染症ベクター(マダニ、ツツガムシ等)の生態学(森林総合研究所の発表資料・PDF)

野生動物や野良猫を寄せない工夫|餌・隠れ場所・出入り口

愛媛県などの発表要旨は、マダニの生息密度は野生動物の侵入頻度に依存するとまとめています。同じ発表では、自動撮影カメラに、多数のイノシシのほか、感染したネコやタヌキが写っていました。森林総合研究所の発表資料も、マダニの生息推定にイノシシ、シカ、アライグマ、タヌキなどの分布が関わると示し、アライグマにはマダニが大量に付いていた例を紹介しています。庭にマダニを持ち込む主な役は動物だと考えると、対策は、餌と隠れ場所を減らす方向になります。

餌になる物の管理は、動物ごとの記事が詳しいです。外に置いたペットフードや食べ残しは外置きの餌とアライグマ、庭の果実や菜園の被害は庭にアライグマらしき動物、イノシシが来る庭は庭にイノシシが来たらをご覧ください。野良猫が庭に来る場合は、野良猫の対策を庭で進めるで、法律の範囲を確認できます。

庭で動物を見かけたときは、近づかず、餌と出入り口の管理を進め、捕獲が必要なら自治体や専門家に相談してください。捕獲や許可の扱いはアライグマ駆除の法律と許可にまとめています。

野生動物や野良猫を寄せない工夫|餌・隠れ場所・出入り口:確認項目
見る点例寄せない工夫(当記事の整理)
餌になる物外に置いたペットフード、食べ残し、落ちた果実、生ごみふた付きの容器に入れる、置き餌をしない、落果を拾う
隠れ場所物置や縁の下の隙間、資材置き場、草のやぶ、積んだ物出入りできる隙間を点検する、物を地面から離して置く
通り道フェンスの下、塀沿い、側溝、庭の掘り返し足跡やフンの位置と日付を記録し、相談の資料にする

参考:愛媛県|植生マダニの駆除とその効力評価 ~SFTS対策の一手法として~(発表要旨・PDF)

殺虫剤の適用表示を確認する手順|マダニに使える製品か

庭用の殺虫剤は、製品によって対象が違います。確認する順番は、(1)適用害虫・対象害虫に「マダニ」があるか、(2)使える場所(屋外専用か)、(3)かけてはいけない物と、人やペットの扱い、(4)効果の持続の書き方、(5)使える人(家庭のみか)の5つです。希釈や量、噴射時間は製品ごとに決まっているため、この記事では示しません。

2026年10月3日に確認した公式ページを例にします。アース製薬の「ヤブ蚊マダニジェット プロプレミアム 450mL」は、防除用医薬部外品で、対象害虫に蚊成虫、蚊幼虫(ボウフラ)、マダニが載っています。屋外で使うこと、効果は蚊成虫とマダニに約2週間(使用環境により異なる)と示され、食用植物には使用しないこと、皮膚、飲食物、食器、子供のおもちゃ、観賞魚・小鳥などのペット類にかからないようにすること、家庭のみの使用に限ることも書かれています。

フマキラーの「ヤブ蚊バリア 480ml」も、適用害虫に蚊、マダニ、ハエが載っています。ただし、蚊に対して最大24時間のバリア効果をうたう一方で、「マダニ・ハエに対して持続効果はありません」と注記されています。公式Q&Aは、子どもやペットの犬が遊ぶ前に散布したいときは、直接触れそうな場所への噴霧を避け、周囲を取り囲むように用法用量どおりに処理するよう案内しています。同じ「マダニに効く」でも、持続の書き方が違う例です。製品を推奨するものではなく、表示の読み方の例です。

畑や菜園で使うとき|農薬と家庭用殺虫剤の違い

「マダニ 駆除 農薬」と調べる人もいます。農林水産省は、農薬取締法でいう農薬を、農作物(樹木と農林産物を含む)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみ、草などの病害虫の防除に用いる薬剤と説明しています。農薬登録情報提供システムは、農薬名、作物名、病害虫などから農薬登録の情報を検索するシステムです。

畑のまわりで農薬を使いたいときは、登録された作物と病害虫、使用方法に当てはまるかを、このシステムや製品のラベルで確かめ、載っていない使い方はしません。今回は、マダニを対象にした農薬登録があるかまでは確認できませんでした。食用の作物に庭用の殺虫剤を使えるかは、製品表示の「食用植物には使用しない」などの記載を確認してください。

殺虫剤の適用表示を確認する手順|マダニに使える製品か:確認項目
確認することアース製薬 ヤブ蚊マダニジェット プロプレミアム 450mLフマキラー ヤブ蚊バリア 480ml
区分防除用医薬部外品防除用医薬部外品
対象・適用害虫蚊成虫、蚊幼虫(ボウフラ)、マダニ蚊、マダニ、ハエ
マダニへの持続約2週間(蚊成虫・マダニに対して。使用環境により異なる)マダニ・ハエに対して持続効果はない
使える場所・人屋外で使用。家庭のみの使用に限るお庭での家事、レジャー、ガーデニングなどの前に、茂み・地面へ使う製品
かけてはいけない物人体に噴射しない。皮膚、飲食物、食器、子供のおもちゃ、観賞魚・小鳥などのペット類、飼料、観賞植物にかからないようにする。食用植物には使用しない公式Q&Aは、子どもやペットが直接触れそうな場所への噴霧を避けるよう案内

参考:アース製薬|ヤブ蚊マダニジェット プロプレミアム 450mL 製品情報・使用上の注意

薬剤を散布しても、密度は戻る?効果の持続と限界

愛媛県などの発表要旨は、感染したネコの周辺環境で捕集した植生マダニから、同じ遺伝子型のSFTSウイルスの遺伝子が見つかった地域で、殺虫剤を散布して効力を評価した結果を報告しています。2種類の殺虫剤を併用したエリアAでは、散布前日の捕集数は87頭(30分・1人あたり)でしたが、翌日は3頭になり、139日後は32頭でした。1種類のみのエリアBでは、135頭から翌日9頭になり、139日後は100頭に戻っています。

著者らは、いずれの殺虫剤も高い駆除効果があり、併用したエリアでは散布後約4か月間は密度が比較的低く抑えられたとしながら、マダニの密度は野生動物の侵入頻度に依存するため、すべての場所で殺虫剤散布による駆除は困難だとしています。散布は、患者発生の緊急時や、患者発生地域での野外イベントの前などには有効な手段とされますが、最も重要なのは服装と方法を知って実践することだとまとめています。1つの地域の報告で、研修会として行われた散布に使われた薬剤の結果であり、家庭で買える製品の効果を示すものではありません。

薬剤を散布しても、密度は戻る?効果の持続と限界:確認項目
調べた日エリアA(2種類の殺虫剤を併用)エリアB(1種類のみ)
散布の前日87頭135頭
散布の翌日3頭9頭
8日後9頭21頭
28日後1頭28頭
139日後32頭100頭

参考:愛媛県|植生マダニの駆除とその効力評価 ~SFTS対策の一手法として~(発表要旨・PDF)

庭作業の服装と作業後の確認|公的資料のチェック

庭作業は、野外活動の中でも身近なため、油断が出やすい場面です。宮崎県の2017年のリーフレットは、患者への聞き取りで、農作業や山林作業のほか、庭仕事や散歩でも感染が疑われた事例があったと紹介しています。服装は、国立健康危機管理研究機構、厚生労働省、大阪府、東京都の資料が、ほぼ同じ内容を案内しています。

大阪府は、レインウェアのようななめらかな生地にはマダニが付きにくく、白っぽい服装のほうが付いたマダニを発見しやすいと案内しています。東京都は、化学繊維素材の服が付きにくいとしています。帰宅後は、東京都が、着ていた衣類をすぐ洗濯し、家の中で長時間放置しないよう案内し、宮崎県のリーフレットは、衣服を家の外で叩いて、マダニを家の中に持ち込まないよう案内しています。

作業後に見る体の場所

厚生労働省や東京都は、入浴のときに次の場所を確認するよう案内しています。自分では見えにくい場所は、家族に見てもらってください。

  • 首、耳、わきの下
  • 足の付け根、手首、膝の裏
  • 胸の下
  • 頭部(髪の毛の中)
庭作業の服装と作業後の確認|公的資料のチェック:確認項目
場面服装・持ち物作業後
草刈り・草むしり長袖・長ズボン・長靴・手袋、首にタオルかハイネック、ズボンの裾は長靴の中、明るい色の服上着は家に持ち込まない。服をガムテープなどで確認。入浴で体を確認
低木の剪定・落ち葉掃き肌を出さない服、帽子、手袋、足を完全に覆う靴(サンダルは避ける)同上。頭部と髪の中を確認
子どもの庭遊び・家庭菜園長ズボンと靴下、足を覆う靴。忌避剤を使う場合は製品の表示と年齢制限を確認遊んだ後に着替えと入浴。わき、足の付け根、手首、膝の裏、頭部を保護者が確認

参考:宮崎県感染症対策室|マダニに咬まれないようにしましょう(リーフレット・2017年9月作成)

ペットの散歩や庭遊びの後の確認

ペットが庭や散歩でマダニを付けて帰ると、家の中でマダニに咬まれる危険性があります。厚生労働省のQ&Aは、散歩後にペットの体表を確認し、目の細かい櫛をかけるのも効果的としています。付いているマダニは適切に駆除し、ペット用のダニ駆除剤はかかりつけの獣医師に相談するよう案内しています。マダニが食い込んでいるときは無理に取らず、獣医師に除去してもらいます。

庭で遊んだ子どもにも、同じように確認します。咬まれて気づいたときの対応は、マダニに噛まれたらに整理しました。

参考:厚生労働省|重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A

業者や自治体に相談できること

東京都ペストコントロール協会は、マダニ類を、山野や河川敷の草むらに多い屋外性のダニ類とし、駆除難易度を「非常に難しい」と整理しています。山野や生息地域の草むらに入らないこと、入るときは肌の露出を少なくして、忌避剤を衣服にこまめに処理することが予防として大切だとしています。庭が広い、斜面や雑木林に面している、野生動物の出入りが多いといったときは、散布で解決する前提で業者に頼むのではなく、何を依頼するか(動物の調査、草や物置の管理、注意喚起)を相談の中で決めます。

愛媛県などの発表要旨には、県内に植生マダニの駆除相談に対応できる専門家がいないため、研修会として駆除を行ったと書かれています。屋外のマダニ駆除を請け負うかどうかは、業者や地域で異なると考えられます。問い合わせの際に、対応の可否と内容を確かめてください。

業者や自治体に相談できること:確認項目
困りごと相談先備考
咬まれた、体調が悪い皮膚科・外科・内科、保健所除去は皮膚科や外科、症状が出たら内科(東京都健康安全研究センター)
ペットにマダニが付いたかかりつけの動物病院厚生労働省のSFTS Q&Aは、獣医師への相談を案内
庭に動物が出入りする自治体の鳥獣・環境の担当、害獣の調査を行う事業者捕獲が必要かどうかも含めて相談する(当記事の整理)
所有地を他の人も通る通行者向けの注意喚起東京都健康安全研究センターが、注意喚起の例(PDF・Word)を公開
庭の草や物置の管理、散布を頼みたい害虫駆除や庭の管理を扱う事業者(対応の可否を事前に確認)マダニ類の駆除難易度は「非常に難しい」とされる(東京都ペストコントロール協会)

参考:東京都ペストコントロール協会|屋外のダニ(マダニ類ほか)