シロアリ駆除は火災保険の対象?約款の「保険金を支払わない場合」を読む

火災保険の約款は、保険金を支払う事故を決めた条文と、支払わない場合を決めた条文に分かれています。シロアリの被害が補償されるかどうかは、この「支払わない場合」に何が書かれているかで読みます。損保ジャパンの『ご契約のしおり 個人用火災総合保険 普通保険約款および特約』(2026年10月版)は、補償条項の第3条(保険金を支払わない場合)の(3)に、保険の対象の欠陥、自然の消耗もしくは劣化、「ねずみ食い、虫食い等」、雨漏りなどを並べています。

日新火災の『すまいの保険 ご契約のしおり(普通保険約款および特約)』(2026年10月改定)にも、補償条項の第3条(3)に、保険の対象の欠陥、自然の消耗もしくは劣化、「ねずみ食い、虫食い等」が並んでいます。2社は同じ形の条文を置いていますが、これは確認した2つの商品の話です。他社の商品や共済、特約が付いた契約は、別に確認します(2026年10月3日確認)。

シロアリ駆除は火災保険の対象?約款の「保険金を支払わない場合」を読む:確認項目
約款・資料保険金を支払わない場合として挙げられている語句(要旨)シロアリ被害を考えるときの意味
損保ジャパン 個人用火災総合保険 普通保険約款(2026年10月版)補償条項第3条(3)保険の対象の欠陥/自然の消耗もしくは劣化(屋根材等のずれや釘のゆるみ、浮き上がり等を含む)/性質による変色、さび、かび、腐敗、腐食など/ねずみ食い、虫食い等/雨漏り・風雨の吹き込みなどシロアリの語は出てこない。虫による食害は「虫食い等」に近く、保険が出る前提では進めない
損保ジャパン 重要事項等説明書(2026年10月版)「保険金をお支払いできない主な場合」に、自然の消耗・劣化、ねずみ食い、虫食い等などが並ぶ契約前に読む資料でも、同じ語句で注意されている
日新火災 すまいの保険 普通保険約款(2026年10月改定)第2章補償条項第3条(3)保険の対象の欠陥/自然の消耗もしくは劣化/性質による変色、腐敗、腐食など/ねずみ食い、虫食い等2社で同じ形の条文。ほかの会社や共済、特約付きの契約は別に確認する
約款の注記(損保ジャパン・日新火災)火災などの保険金を支払う事故が生じた場合、免責の対象は、挙げられた事由に該当する損害にかぎる事故が先にあっても、虫食い等に当たる損害と、事故による損害は別に判断される。当てはめは保険会社が行う

参考:損保ジャパン|ご契約のしおり 個人用火災総合保険 普通保険約款および特約(2026年10月版、PDF)

読者の疑問

シロアリ駆除は火災保険で出ますか?

比較ガイド

確認した損保ジャパンと日新火災の約款は、「ねずみ食い、虫食い等」を保険金を支払わない場合に挙げており、シロアリの駆除を支払い項目とする記載は見当たりませんでした。保険で出る前提で進めず、契約先の保険会社か代理店に確認します。

火災保険の種類で補償される事故が違う|住宅総合保険と住宅火災保険

日本損害保険協会の火災保険のページは、火災保険を、住宅を取り巻くさまざまなリスクを総合的に補償する住宅総合保険と、ベーシックな補償の住宅火災保険に大きく分けて説明しています。補償する事故の範囲は商品や契約プランで異なり、同じ「火災保険」でも、水濡れや風災が対象に入らない契約があります。

下の表は、協会のページにある概要を写したものです。ページの更新日は2016年11月17日と表示されているため、現在の商品名や補償内容は保険会社ごとに違います。手元の保険証券で、どの事故が「補償あり」になっているかを確かめます。契約に含まれない事故が原因の損害は、保険の対象になりません。シロアリ被害そのものは、前の節の免責の語句と照らして確認します。

火災保険の種類で補償される事故が違う|住宅総合保険と住宅火災保険:確認項目
事故の種類住宅総合保険住宅火災保険
火災補償される補償される
落雷補償される補償される
ガス爆発などの破裂・爆発補償される補償される
風災・ひょう災・雪災補償される(一部自己負担額がある場合もある)補償される(一部自己負担額がある場合もある)
水災補償される(一部自己負担額がある場合もある)補償されない
自動車の飛込み等による飛来・落下・衝突補償される補償されない
給排水設備の事故等による水濡れ補償される補償されない
騒じょう等による暴行・破壊補償される補償されない
盗難補償される補償されない

参考:日本損害保険協会|火災保険

台風・水濡れなど事故が先にあるときの確認事項

シロアリの被害が見つかった家で、少し前に台風や水漏れの事故があった場合は、事故による損害と、シロアリの食害を分けて整理します。約款は、事故による損害と、虫食い等に当たる損害を別の条文で扱っているためです。損保ジャパンの約款は、保険金を支払うべき事故が生じた場合は、免責の語句に該当する損害にかぎって支払わない、という注記を置いています。

風や雨水の浸入が絡むとき

損保ジャパンの約款は、雨漏りや風雨の吹き込み、浸み込みによる損害を、支払わない場合に挙げています。ただし、建物の外側の部分(外壁、屋根、開口部等)が補償される事故で破損し、その破損部分から内部に吹き込み、浸み込み、漏入して生じた損害は、除くと書かれています。台風で屋根や外壁が壊れたあとに雨水が入った場合と、事故がなく経年で雨漏りしている場合は、約款の上で扱いが分かれます。

シロアリの被害が見つかった家で、雨漏りも起きているなら、雨漏りの原因が事故による破損か経年かを、写真と時系列で整理します。雨漏りと害獣などの調査を分けて頼む考え方は、雨漏りと被害調査を別々に頼むときの情報の渡し方と施工順にもあります。

給排水設備の事故による水濡れが絡むとき

損保ジャパンの重要事項等説明書は、補償する事故の一つとして、給排水設備に生じた事故による漏水などで、保険の対象が水濡れの損害を受けた場合を挙げています。水漏れで床下や壁の木材が濡れ、そこにシロアリが出た場合は、水濡れによる損害と、シロアリの食害を分けて、見積書と写真を用意します。どちらに当たるかは保険会社が判断するため、水濡れの跡と食害の跡が分かる写真を、場所ごとに残します。

被害に気づいたあとの順番

損保ジャパンの約款は、事故が発生したことを知った場合の義務として、損害の発生および拡大の防止に努めること、事故の日時・場所・概要を遅滞なく保険会社に通知すること、保険会社が求める書類や証拠を遅滞なく提出することなどを定めています。保険会社は、事故が生じた建物や敷地内を調査できる、という規定もあります。これを踏まえた順番は、次のとおりです。

  • 被害が広がらないよう応急の措置を取り、その内容を記録する
  • 駆除や補修の契約より先に、契約先の保険会社か代理店へ連絡する
  • 駆除や補修の前に、床下や壁の状態を写真で残し、保険会社から現地確認の希望があれば、工事の日程を調整できるか聞く
  • 保険会社が求める書類や証拠を、遅滞なく出す

参考:損保ジャパン|個人用火災総合保険 重要事項等説明書(2026年10月版、PDF)

シロアリ駆除費用・修繕費用・予防費用を分けて考える

見積書の金額は、シロアリを駆除する費用、被害を受けた部分の修繕費、再発や侵入を防ぐ予防の費用に分けて読みます。損保ジャパンの重要事項等説明書は、保険の対象が建物の場合は、原則として建物を事故直前の状態に復旧したときに損害保険金を支払うと説明しています。損害の復旧に当たる費用と、そうでない費用で、保険の見方が変わります。

確認した約款と説明書には、シロアリの駆除や予防を支払い項目として定めた記載は見当たりませんでした(日新火災の約款に出てくる「駆除」は、ハチの巣のサービスの記載です)。税の側では、国税庁の質疑応答事例が、駆除費用と被害部分の修繕費を雑損控除の対象、予防の費用を対象外としています。次の表で、費用ごとの見方をそろえます。

シロアリ駆除費用・修繕費用・予防費用を分けて考える:確認項目
費用の種類火災保険の約款・説明書の読み方雑損控除(国税庁の質疑応答事例)見積書で頼むこと
シロアリの駆除費用駆除を支払い項目とした記載は、確認した約款・説明書に見当たらない対象になる「駆除」の行を単独で出してもらう
被害部分の修繕費(土台・柱・床組など)補償される事故による損害の復旧なら、相談の対象。虫食い等に当たる損害は免責の語句に近い対象になる場所と数量ごとに行を分け、被害の写真と対応させる
予防の費用(防蟻処理)損害の復旧ではなく、保険の対象とする記載は見当たらない対象外(事前の防止費用、駆除とともに行う予防の費用)駆除と予防を別の行にし、金額を分ける
床下換気扇・調湿材などの付帯工事損害の復旧ではない工事は、事故との関係を保険会社へ確認する質疑応答事例に記載がなく、税務署に確認する防除本体と別の行にして、必要性の根拠を聞く

参考:国税庁|質疑応答事例「シロアリの駆除費用」

保険会社・代理店へ聞く質問と、用意する資料

保険会社や代理店へ連絡するときは、被害の状況を伝えるだけでなく、聞きたいことを先にまとめておくと、回答が具体的になります。質問は、シロアリという語が約款に出てこないことを前提に、保険会社の判断を確かめる形にします。

保険会社・代理店へ聞く質問と、用意する資料:確認項目
用意するものなぜ必要か約款・説明書での根拠
保険証券と約款(補償される事故、免責金額)補償される事故の種類と自己負担額を確認するため損害保険金は、契約プランの補償により保険の対象に生じた損害に対して支払われる(重要事項等説明書)
被害の写真と日付(床下、木材、蟻道、羽アリなど)被害の範囲と、事故との前後関係を説明するため保険会社が求める書類や証拠を遅滞なく提出する義務(損保ジャパンの約款)
事故の日時と場所の記録(台風、水漏れなど)事故による損害と、虫食い等に当たる損害を分けるため事故の日時・場所・概要を遅滞なく通知する義務(損保ジャパンの約款)
見積書(駆除・修繕・予防を行ごとに分けたもの)損害の復旧費用と、そうでない費用を分けるため建物は原則として事故直前の状態に復旧したときに保険金を支払う(重要事項等説明書)
応急の措置の記録損害の拡大防止に努めた事実を示すため損害の発生および拡大の防止に努める義務(損保ジャパンの約款)
  • シロアリ(白アリ)による食害は、約款の「ねずみ食い、虫食い等」に当たりますか。当たる場合、特約で補償される余地はありますか
  • 台風や漏水などの事故の日付と、シロアリ被害に気づいた日の前後関係を伝えた場合、どの損害が事故による損害として審査の対象になりますか
  • 風災などの補償に、自己負担額(免責金額)はありますか。申請の前に決めておくことはありますか
  • 損害の写真や見積書は、どの形式で、何を出せばよいですか。駆除・修繕・予防を分けた見積書でもよいですか
  • 調査や修繕の契約を先に結ぶと、保険金の支払いに影響しますか
  • 保険会社が現地を調べる場合、床下や壁の中を、いつまで現状のまま残す必要がありますか

参考:損保ジャパン|ご契約のしおり 個人用火災総合保険 普通保険約款および特約(2026年10月版、PDF)

「保険で無料になる」という勧誘・申請代行への注意

日本損害保険協会は、住宅修理などに関して「保険が使える」と言って勧誘する業者とのトラブルが増加しているとして、契約前に、契約している損害保険会社か代理店へ相談するよう注意喚起しています。保険会社や代理店へ連絡する前に、問題のある住宅修理業者や、報酬を支払われた保険金から受け取るとする保険金請求代行業者と契約すると、保険金が支払われずに修理代金を自己負担したり、解約時に高額な手数料を求められたりすることがある、と説明しています。

国民生活センターは、「保険金を使って自己負担なく住宅修理ができる」と勧誘されてもすぐに契約しないこと、加入先の保険会社や代理店に相談すること、うその理由で保険金を請求することは絶対にやめることを助言しています(2020年10月1日公表)。消費者庁も2024年6月27日に、「火災保険を使って実質的に無料で修理ができる」などと勧誘して、火災保険金を利用した修理工事の契約を結ばせる事業者について注意喚起しました。経年劣化と知りながら自然災害による損害だとうその理由で保険金を請求すると、保険会社から保険金の返還請求や契約の解除をされたり、詐欺罪に問われたりすることがある、という説明も含まれています。

シロアリの被害や床下の点検についても、同じ形の勧誘に注意します。無料点検を名目にした訪問は、シロアリ駆除の詐欺と点検商法の確認と断り方で整理しています。

  • その場で契約せず、まず契約先の保険会社か代理店に連絡する
  • 申請サポートの報酬(保険金の何%など)と、解約時の違約金や手数料が、書面に書かれているかを確かめる
  • 経年劣化や虫食いを、事故による損害と偽って申請しない
  • 困ったときは、消費者ホットライン188か、日本損害保険協会の災害便乗商法の相談ダイヤルに連絡する

参考:日本損害保険協会|住宅の修理などに関するトラブルにご注意

保険以外の備え|防除施工の保証・新築の瑕疵保険・中古売買・雑損控除

火災保険の約款が虫食い等を支払わない場合に挙げていても、シロアリ被害への備えが他にないわけではありません。備えごとに、見る書類と条件が違います。次の表は、協会や公的資料で確認できた範囲の整理です。

保険以外の備え|防除施工の保証・新築の瑕疵保険・中古売買・雑損控除:確認項目
備え確認する書類公的資料に書かれていること注意すること
防除施工の保証保証書、見積書、施工報告書協会のQ&Aは、保証は各業者の判断で行っており、協会に統一したルールはなく、一般的には部分施工の場合は保証がつかない場合が多い、と答えている保証の年数、対象のシロアリの種類、対象範囲(床上を含むか)、再発時の責任の範囲を契約前に確認する
新築住宅の瑕疵(かし)保険保険証券、引渡し時の説明書類、請負・売買契約書住宅瑕疵担保責任保険協会は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の欠陥について、10年間の瑕疵担保責任と、保険または供託による資力確保の仕組みを説明しているシロアリ被害がこの対象に当たるかは、確認した資料に書かれていない。契約書と保険証券を見て、保険法人や事業者に確認する
中古住宅の売買での契約不適合の責任売買契約書、物件状況報告書、施工記録民法は、引き渡された目的物が品質に関して契約の内容に適合しないとき、買主は修補などの履行の追完を請求でき、不適合を知った時から1年以内に通知しないと請求などができなくなると定めている(売主が引渡し時に知り、または重大な過失で知らなかった場合を除く)責任を負わない旨の特約があっても、知りながら告げなかった事実の責任は免れない。購入前に施工記録と調査範囲を確認する
確定申告の雑損控除領収書、見積書、被害の写真国税庁の質疑応答事例は、駆除費用と被害部分の修繕費を対象、予防の費用を対象外としている保険金などで補てんされた金額は、控除額の計算で差し引かれる。個別の可否は税務署に確認する

参考:公益社団法人日本しろあり対策協会|シロアリQ&A 風呂場だけの施工では保証書が出せないと言われました