シロアリ駆除が必要かどうかは、被害の有無で判断が分かれる

「シロアリ駆除は必要ない」という意見と「やった方がいい」という意見が分かれるのは、二つの別の判断を一つにして話しているためです。一つは、すでに被害や蟻道が見つかった家で行う駆除、もう一つは、被害のない家で将来に備える予防です。前者について、日本ペストコントロール協会は、調査により明確な被害が確認された場合は専門業者による防除処理が必要と整理しています。後者は家の条件で必要性が変わるため、次の節から条件ごとに見ていきます。

被害の有無は、見た目だけでは分かりません。日本しろあり対策協会は、建物の土台部分や床下の被害はなかなか発見しにくいため、定期的な調査で早く見つけることが大切と説明しています。判断に迷うときは、先に調査を受けて、被害の有無、前回の処理の時期、床下の状態の3点を確かめると、駆除か予防かを分けやすくなります。

シロアリ駆除が必要かどうかは、被害の有無で判断が分かれる:確認項目
家の状況判断の種類最初にすること
蟻道・食痕・羽アリ・柔らかい木材など、被害の手がかりがある駆除の判断(被害あり)調査を受け、被害の範囲を確認する。自分での処理は控える
点検で被害がなく、前回の防蟻処理から5年以上たっている予防の判断保証書で前回の処理の時期を確認し、再施工の要否と見積もりを比べる
点検で被害がなく、前回の処理から5年以内当面は点検を続ける判断保証書の期限と、次の点検の時期を決める
新築時や過去の防蟻処理の履歴が分からない履歴の確認から始める判断施工記録を探し、見つからなければ調査で現状を確かめる

参考:公益社団法人日本ペストコントロール協会|有害生物情報 シロアリ駆除

読者の疑問

シロアリ駆除は必要ないと聞きましたが、不要な家はありますか?

比較ガイド

被害がなく、予防の必要性が低い家はありえます。ただし、今回確認した資料からは、構造だけで不要と言える根拠は読み取れません。保証期間内で築10年未満の家は被害がほぼ0%という報告もあるため、点検で確かめ、保証書の期限を見て判断します。

新築時の防蟻措置の根拠|建築基準法施行令第49条と住宅性能表示

新築時の防蟻措置の法的な根拠は、建築基準法施行令第49条第2項です。構造耐力上主要な部分である柱、筋かい、土台のうち、地面から1m以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならないと定めています(2026年10月3日にe-Govの現行条文で確認)。「必要に応じて」とあるため、具体的な措置は、設計や地域の状況をふまえて決まります。

住宅性能表示制度の劣化対策等級も、新築の防蟻の考え方に関係します。国土交通省の検討資料は、参考として示す新築住宅の評価方法基準を、等級3は住宅が限界状態に至るまでの期間が3世代以上となるための対策、等級2は2世代以上、等級1は建築基準法に定める対策と整理しています。等級3では、外壁の軸組等と土台の防腐・防蟻措置、地盤の防蟻措置、床下の防湿・換気措置などが並びます。評価書がある家かどうかは、家ごとに確認が必要です。

ただし、新築時の措置が、その後ずっと有効という意味ではありません。薬剤の効力には期間があるため、築年数が進んだ家では、新築時の処理がまだ有効かを、施工記録と保証書で確かめる必要があります。中古住宅で履歴をたどる方法は、中古住宅のシロアリ履歴で整理しています。

参考:e-Gov法令検索|建築基準法施行令(第49条 外壁内部等の防腐措置等)

シロアリ予防は必要か|薬剤の効果期間と保証期間の関係

予防の必要性は、薬剤の効果期間から考えます。日本しろあり対策協会は、薬剤の有効期限は5年で、シロアリを確実に防ぐには再施工を勧めると説明しています。防蟻処理には保証書が付くことが多く、後で紹介する国土交通省補助事業の報告書も、保証の期限を薬剤の効力の期限として扱っています。保証書の期限が、再施工を考える時期の目安になります。

一方で、協会自身が、5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではない、とも説明しています。5年は再処理を考える目安であって、被害が始まる時期ではありません。保証が切れたあとの確認と再施工の考え方は、シロアリ予防はいつ再施工する?で見られます。工法の違いは、シロアリのベイト工法とバリア工法で比べられます。

シロアリ予防は必要か|薬剤の効果期間と保証期間の関係:確認項目
項目協会の説明判断への使い方
薬剤の有効期間有効期限は5年。確実に防ぐには再施工を勧める前回の処理の年を保証書で確認し、5年前後で点検と見積もりを検討する
5年を過ぎたとき5年を過ぎたからといって、すぐに被害が出るわけではない慌てて契約せず、点検で被害がないことを確かめてから比べる
保証の期限後述の報告書は、保証の期限を薬剤の効力の期限として扱い、期限が切れた翌年から被害が出始めると整理している保証書の期限と範囲を読み、期限が切れる前に点検を受ける

参考:公益社団法人日本しろあり対策協会|シロアリQ&A 5年間の保証がついていますが、5年経ったら必ず再施工しなければならないのでしょうか

築年数と被害の公的調査データ|保証期間内と保証切れで何が違うか

築年数と被害を示す資料として、国土交通省の補助事業で、日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合が2013年3月にまとめた「シロアリ被害実態調査報告書」があります。2012年12月から2013年3月に、東北から九州の5,322棟を調べた調査です。調べた建物は、保証が切れて再施工せず一定期間たった物件(A区分)、保証期間内の物件(B区分)、過去6年以内に駆除の履歴がある物件(C区分)に分けて集められています。そのため、数字は日本の住宅全体の平均ではなく、区分ごとに読む必要があります。

蟻害の発生率は、報告書の表で、保証期間内のB区分が約2.7%、保証が切れて再施工していないA区分が約12.9%です。報告書は、保証期間内の建物は築10年未満ならほぼ0%で、築10年以上になると4〜6%の被害が出ると整理しています。保証が切れた建物は、保証の期限が切れた翌年から被害が出始め、経過年数が長くなるにつれて急に増えるとされています。在来工法では、保証満了から5年たつとほぼ6%前後、10年たつと10%を超える数字が示されています。

この数字には注意点もあります。報告書は、短期間の調査で、すべての項目を十分に分析できたわけではないと断っています。調査は防除事業者の組合が行い、中古住宅の売買に使う保険の対象を広げるために必要なデータを集める目的でした。数字は「自分の家の確率」ではなく、再処理の時期を考える材料として使うのが適切です。

築年数と被害の公的調査データ|保証期間内と保証切れで何が違うか:確認項目
区分(報告書の呼び方)どんな建物か蟻害の発生率(報告書の表)読み方
B区分防蟻処理の保証期間内の建物約2.7%被害は少ないが、ゼロではない。報告書は、処理時の見落としや想定を超える加害などを理由に挙げている
A区分保証が切れて、再施工せずに一定期間たった建物約12.9%保証切れの経過年数が増えるほど増える。報告書は、再発防止に5年ごとの再処理が求められると述べている
C区分過去6年以内に駆除の履歴がある建物約87%被害を疑って依頼した物件が中心で、一般の家の確率としては読めない

参考:日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合|シロアリ被害実態調査報告書(国土交通省補助事業・2013年3月、PDF)

ベタ基礎・基礎断熱・コンクリート造なら予防は不要?構造別の見方

新しい家や基礎の形によって、予防の必要性が小さく見えることはあります。ただし、今回確認した資料からは、構造だけで予防が不要と言える根拠は読み取れません。構造ごとの説明を、資料に沿って分けて見ます。

基礎の形:布基礎の土壌とベタ基礎で被害の出方が違う

報告書は、保証が切れて再施工していない建物で、基礎の形ごとの被害を比べています。布基礎で床下が土壌のままの建物は、築10年以降に被害が増え、経年とともに被害率が高くなります。布基礎に土間コンクリートや防湿シートを敷いた建物、ベタ基礎の建物は、築15〜20年以降にならないと同じ被害率にならない、と説明されています。土や床面を物理的にふさぐことで、侵入が抑えられるという見方です。

基礎断熱:被害が多い傾向があるが、サンプルは十分でない

基礎断熱は、報告書が、断熱のない基礎のほぼ2倍の被害発生率だったと述べています。一方で、比較に耐えるだけの十分なサンプル数が集まっていないとも書いています。築25年以上の保証切れの建物では、基礎断熱の住宅で被害が頻発する傾向があるとも整理しています。基礎断熱の家は、床下の点検を後回しにしない方が安全という読み方ができます。

鉄筋コンクリート造・ブロック造:内部の木材や家具が食べられる

日本しろあり対策協会は、鉄筋コンクリートやブロック造の建物の被害が増えており、コンクリート造でも、シロアリがひとたび侵入すると内部の木材や家具などを食べると説明しています。コンクリートの割れ目を広げたり、給排水管との隙間を通って建物に入ったりするとも述べています。コンクリート造だから被害を受けないとは言えない、というのが協会の説明です。

参考:公益社団法人日本しろあり対策協会|シロアリQ&A どんなものを加害しますか?

家の条件別の判断表|駆除・予防・点検のどれを選ぶか

ここまでの材料を、家の条件ごとの判断表にまとめます。表の「考え方の目安」は、協会と報告書の説明から読み取れる範囲の当サイトの整理で、必要かどうかを断定するものではありません。迷うときは、被害の有無を点検で確かめることから始めます。

家の条件別の判断表|駆除・予防・点検のどれを選ぶか:確認項目
家の状況資料の説明考え方の目安
新築から10年未満で、防蟻処理の保証期間内報告書では、保証期間内の建物は築10年未満ならほぼ0%追加の予防は急がず、保証書の期限と点検の時期を確認する
築10年以上で、保証期間内報告書では、保証期間内でも築10年以上で4〜6%の被害保証期間内でも、定期点検を続ける
保証が切れて、再施工していない報告書では、保証切れの翌年から被害が出始め、年数とともに急に増える点検を受けて被害がないことを確かめ、再施工の見積もりを比べる
新築時や過去の処理の履歴が分からない協会は、新築以来防除施工をしていない場合に、蟻害・腐朽検査の利用を挙げている調査で現状を確かめ、履歴の確認から始める
蟻道・食痕・羽アリ・水漏れなどの手がかりがある日本ペストコントロール協会は、明確な被害が確認された場合に専門業者の防除を挙げている予防ではなく、駆除の判断として調査を相談する
布基礎で床下が土壌のまま/基礎断熱がある報告書は、布基礎の土壌は築10年以降に被害が増え、基礎断熱は被害が多い傾向と整理している床下の点検を後回しにしない
ベタ基礎・鉄筋コンクリート造ベタ基礎は被害が出にくい傾向だが、協会は鉄筋コンクリート造でも被害が増えていると説明している構造だけで不要と決めず、点検で確かめる

参考:日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合|シロアリ被害実態調査報告書(国土交通省補助事業・2013年3月、PDF)

予防をしない場合に続けたい定期点検と、発見の手がかり

予防をしないと決めた場合は、点検を続けることが前提になります。報告書は、専門家による定期の床下点検の充実と、再処理を含むメンテナンスを適切な時期に実施することが、被害の再発を防ぐ最も重要な条件になると述べています。日本しろあり対策協会も、早期発見のために定期的な調査を勧めています。

自分で確認できる手がかりは、協会が挙げる4点と羽アリです。基礎や束石、土台に蟻道がないか、木材の割れ目や継ぎ目に蟻土が詰められていないか、柔らかい部分だけが食べられた食痕がないか、叩いて空洞音がしないか、住まいやその近辺で羽アリの群飛がないかを見ます。建物の変形(柱が下がる、軒の線が波打つ、建具の立てつけが悪くなる)も被害が進んだ建物の特徴です。羽アリを見つけたときの扱いは、羽アリが出たら何を残す?にあります。

専門家の点検は、協会の蟻害・腐朽検査制度でも受けられます。協会認定の検査士が、既存住宅のシロアリ、腐朽、カビの兆候を調べて報告書にまとめます。写真の読み方は、シロアリ調査の写真をどう読む?で確認できます。

  • 点検の時期を、新築や前回の処理から数えて決める
  • 水漏れ、リフォーム、保証書の期限の前後に床下を見てもらう
  • 羽アリが出た季節に、出た場所と日付を記録する

参考:日本しろあり対策協会|誰でも簡単に確かめられるシロアリ発見法を教えて下さい

判断に迷うときの無料調査の使い方

駆除か予防か、そもそも必要かの判断に迷う場合は、調査を先に受けて、被害の有無、前回の処理の時期、床下の状態を確かめます。調査と見積もりが無料と案内されていても、どこまでが無料か、床下に入る調査か、見積もり後に費用が発生する条件は何かを、予約前に確認しておくと安心です。聞く質問は、「現地調査・見積もり無料」はどこまで?にまとめています。

調査のあとに予防や駆除を勧められたときは、その場で決めず、報告書の写真と見積書を並べて検討します。見積書の内訳の読み方は、シロアリ駆除が高すぎると感じたらで整理しています。自分でどこまで作業するかの線引きは、シロアリ駆除を自分でする前にを参照してください。