賃貸で羽アリが出たとき最初に連絡する相手と、連絡までの順番

国土交通省が公開している賃貸住宅標準契約書の様式には、貸主とは別に「管理業者」の氏名と電話番号を書く欄と、緊急時の連絡先の欄があります。管理会社が置かれている物件では、そこに書かれた窓口が連絡の入口になります。管理業者がいない物件や、連絡がつかないときは、貸主へ直接伝えます。手元の契約書の頭書を最初に開いてください。

民法615条は、借りている物に修繕が必要なとき、借主は遅滞なく貸主に通知しなければならないと定めています(貸主がすでに知っているときは除きます)。通知は「貸主に伝わること」が目的なので、管理会社に連絡したあとも返事がなければ貸主へ伝え直します。国土交通省の相談対応事例集は、依頼内容を書面で通知する方法が有効な場合もあると紹介しています。害獣被害の場合の連絡文は賃貸の害獣被害を管理会社へ報告する連絡文にまとめており、事実、写真、希望の順に書く点は羽アリでも同じです。

賃貸で羽アリが出たとき最初に連絡する相手と、連絡までの順番:確認項目
順番すること理由・根拠
1 見つけたとき羽アリを数匹、袋やケースに入れて保管する。出た場所と時刻をメモし、写真を撮る。殺虫剤はまだ使わない協会は、スプレーすると虫が逃げるので出来ればそのままにし、使う場合も出た箇所のメモと虫の保管を勧めている
2 気づいたらすぐ管理会社(なければ貸主)へ電話で連絡し、同じ内容を文面でも送る民法615条の通知義務。文面は後から経過を示す記録になる
3 返事を待つあいだ出た場所と日時を追記する。床・壁・畳を壊したり、物を大きく動かしたりしない状態を変えると、調査で被害の位置や範囲を確かめにくくなる(当サイトの整理)
4 調査が決まったとき立会いの日時と入室の範囲を管理会社と決める標準契約書の様式は、貸主が管理上特に必要なときは事前の承諾を得て室内に立ち入れると定める(第16条)
5 返事が来ないとき連絡の日時を残して再連絡し、貸主へも伝える。進まなければ消費生活センターなどへ相談する賃貸住宅の相談は全国の消費生活センター等にも多く寄せられている(国土交通省の事例集)

参考:国土交通省|外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン 日本語版(賃貸住宅標準契約書[平成30年3月版]の見本を収録・PDF)

読者の疑問

賃貸で羽アリが出たら、管理会社と大家のどちらに連絡しますか?

比較ガイド

契約書の頭書に管理会社が書かれていれば、まず管理会社へ連絡します。管理会社がいない、または返事がないときは貸主へ伝えます。民法615条は、修繕が必要なときに貸主へ遅滞なく通知するよう定めています。

羽アリはシロアリかクロアリか|連絡の前に確認する見分け方

管理会社へ連絡するとき、「シロアリかもしれない」と「アリかもしれない」では、その後の動きが変わります。羽アリはどちらも黒っぽく見えるため、触角、翅、胴の3点で確認します。日本ペストコントロール協会の比較表では、シロアリの触角は数珠状、翅は4枚とも同じ形、胴のくびれはわずかです。黒アリは触角がL字型で、前の翅が大きく、胴のくびれが明確です。

発生時期も手がかりになります。同じ比較表は、シロアリの羽アリを4〜5月の昼ごろ、黒アリを夏の夕方ごろとしています。ただしシロアリは種類により群飛の時期が違うため、時期だけで決めないでください。見分けがつかないときは、種類を決めつけず、虫を保管して「シロアリかどうか確認したい」と伝えます。アリと分かった場合の対応は屋内のクロアリが繰り返し出るときで確認できます。

羽アリはシロアリかクロアリか|連絡の前に確認する見分け方:確認項目
比べる点シロアリの羽アリアリ(クロアリ)の羽アリ
触角数珠状(じゅず状)L字型
翅4枚とも同じ形・同じ大きさ(比較表では灰色)前の翅が後ろの翅より大きい(比較表では透明)
胴くびれがわずかで、ずん胴くびれが明確
体長の目安比較表では約6mm比較表では約10mm
発生の時期・時間帯4〜5月の昼ごろ(比較表)夏の夕方ごろ(比較表)

参考:公益社団法人日本ペストコントロール協会|有害生物情報 シロアリ駆除

賃貸の羽アリ・シロアリ駆除は誰が払う?民法606条と契約書で決まる費用負担

日本しろあり対策協会のQ&Aから見ます。アパートの1階で洗面所と廊下のすき間から羽アリが出て、管理会社と大家に連絡したという相談に、協会は「一般的には大家さんの負担で行うことが多い」と答え、シロアリ以外の虫の場合は状況によると付け加えています。賃貸で大家にシロアリ対策を義務づける法律があるかという質問には、シロアリ駆除を義務づける法律はないとしたうえで建築基準法8条を挙げ、被害の程度によるので一度大家さんに相談するよう答えています。

条文を確認します。民法606条1項は、貸主は賃貸物の使用と収益に必要な修繕をする義務を負い、ただし借主の責めに帰すべき事由で修繕が必要になったときは別だと定めています。つまり費用は、建物側の原因か、入居者の使い方に原因があるかと、契約書の内容で決まります。民法608条1項は、貸主が負担すべき必要費を借主が支出したときに、貸主へ償還を請求できるとしますが、何が貸主負担の必要費かは、契約と事情で判断されます。

賃貸の羽アリ・シロアリ駆除は誰が払う?民法606条と契約書で決まる費用負担:確認項目
状況負担の考え方の入口確認する根拠
床下・壁・外回りなど建物側の傷みや湿気が原因でシロアリが出た貸主が修繕義務を負うのが原則民法606条1項本文。協会は大家負担が多いと説明している
入居者が水漏れや結露を知りながら通知も手入れもせず、被害が広がった入居者の責めによる部分は、入居者の負担が争点になる民法606条1項ただし書。標準契約書の様式9条1項。ガイドラインの善管注意義務違反の例
出たのがクロアリなど、シロアリ以外の虫だった状況によって変わる協会のQ&A。契約書の条項と使用細則を確認する
契約書に、小修繕を借主負担とする特約がある特約の範囲を確認する。主要構造部分に関わる大修繕は、特約が無効と解されている国土交通省の相談対応事例集
費用の請求を受けたが、根拠や内訳が分からない根拠の条項と原因の調査結果を、書面で求めるガイドラインは、個別の事案ごとに判断するものとしている

参考:e-Gov法令検索|民法(賃貸借の規定:第606条・第607条の2・第608条・第611条・第615条)

入居者の使い方が原因とされやすい例|水漏れ・結露の放置と荷物の置き方

民法606条のただし書は「賃借人の責めに帰すべき事由」としか書いていないため、具体例はガイドラインなどで補います。国土交通省の原状回復ガイドラインが借主負担の例に挙げるのは、結露が出ているのに貸主へ通知せず拭き取りなどの手入れもしないまま壁を腐食させた場合や、クーラーの水漏れを放置して壁を腐食させた場合です。このガイドラインはシロアリ被害そのものを扱っていませんが、異変に気づいたのに通知せず放置した点が分かれ目になる、という考え方は参考になります。

水漏れ・結露を知りながら放置した場合

川崎市の案内は、台所・洗面所・トイレ・浴室の床下や玄関まわりなど、湿度が高く風通しも悪く水をよく使う場所が、シロアリの被害を受けやすいと説明しています。水漏れや結露、カビに気づいた時点で貸主へ通知し、拭き取りや換気などの日常の手入れは続けます。通知した日時と相手を残しておけば、異変を放置していなかったことを示す記録になります。

  • 水漏れ・結露・カビに気づいた日と場所を、写真つきで残す
  • 通知した日時と相手、伝えた内容を記録する
  • 拭き取りや換気など、日常の手入れは続ける

荷物・段ボールを壁や床に接して置いている場合

川崎市の案内は、建物の周辺に木片・廃材・段ボールなど、エサになるものを置かないよう勧めています。ベランダや玄関前に積んだ段ボールや木材も同じ考え方で見直します。押入れや壁際の荷物は、床や壁から少し離して置くと点検もしやすくなります。ただし荷物の置き方が原因と判断されるかは、調査結果と契約書によるため、置き場所の写真を撮って聞かれたときに答えられるようにしておきます。

入居者の責任が否定される方向の事情

国土交通省の事例集は、台所下の水漏れが配水管の老朽化によるもので、通常の生活の範囲内の使い方であれば、借主に過失は認められず、貸主に修繕義務があるとしています。結露についても、通常の住み方であれば借主に修繕の義務はないとしています。築年数、床下・外壁・配管など建物側の事情や、入居時から異変があったことが分かる写真は、調査の際に添えると役立ちます。

参考:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)第1章(PDF)

賃貸借契約書で確認する条項|修繕・特約・立入り・使用細則

費用の話をする前に、契約書の次の箇所を手元に出します。国土交通省が公開する賃貸住宅標準契約書の様式を例にすると、頭書、修繕の条項、別表の小修繕、立入りの条項が関係します。実際の契約書は物件ごとに異なります。様式と違う文言があれば、手元の契約書の文言を確認の対象にします。ガイドラインも、使用を強制するものではなく、個別の事案ごとに判断されるものと位置づけています。

賃貸借契約書で確認する条項|修繕・特約・立入り・使用細則:確認項目
確認する箇所見ること羽アリ・シロアリで関係する点
頭書(貸主・管理業者・緊急時の連絡先)管理業者の名称と電話番号、緊急時の連絡先最初に連絡する窓口を決められる
修繕の条項(標準契約書の様式では第9条)誰が修繕するか、入居者の責めによる修繕は誰が負担するか、発見したときの通知と協議の定め費用負担の入口。様式は、通知しても貸主が正当な理由なく修繕しないとき、入居者が自ら修繕できると定める
小修繕を借主負担とする特約・別表借主負担とされる修繕の範囲様式の別表に挙がるのは電球、ヒューズ、蛇口のパッキン、ゴム栓など費用が軽微な修繕。駆除が含まれるかを確認する
立入りの条項(標準契約書の様式では第16条)貸主が立ち入れる場合と、事前の承諾の定め調査の立会い日程と入室範囲を決める根拠になる
使用細則・入居のしおり換気、結露の拭き取り、水回りの使い方などの注意入居者の手入れの範囲を確かめる。ガイドラインは、手入れや清掃の注意事項を入居時に周知するとよいとしている

参考:国土交通省|外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン 日本語版(賃貸住宅標準契約書[平成30年3月版]の見本を収録・PDF)

勝手に薬剤をまく・業者を呼ぶ前に確認すること|証拠を残す記録の取り方

自分で動く前に確認するのは、記録が消えないことと、費用の話が後でこじれないことの2点です。羽アリを見つけると、すぐに薬剤で片づけたくなりますが、種類と被害の場所を調べる手がかりも一緒に消えてしまいます。

市販の殺虫剤をまく前に

協会は、羽アリが出て業者を呼んだ人が、待つあいだにスプレーしてよいかという質問に、虫が逃げてしまうので出来ればそのままがよいと答えています。使う場合は、出てきた箇所をメモし、出てきた虫を袋などに入れて保管して、業者が来たときに見せるよう勧めています。薬剤は製品の表示に従って使い、使った製品名・場所・日付を記録します。

  • 殺虫剤の前に、羽アリ数匹の保管と、全体・近接の写真を済ませる
  • 使った製品名、使った場所、日付を書き残す
  • 床下・壁・畳のすき間へ薬剤を入れたり、壊して中を確かめたりしない

自分で業者を呼ぶ前に

民法607条の2は、借主が自分で修繕できる場合を、貸主へ修繕が必要なことを通知した(または貸主が知った)のに、相当の期間内に貸主が必要な修繕をしないとき、または急迫の事情があるときと定めています。国土交通省の事例集は、「相当の期間」や「急迫の事情」の中身が具体化されておらず、貸主と借主で認識に差が出ること、不要な修繕や過度の修繕をすると費用負担の問題や損害賠償請求の可能性があることを指摘し、破損個所や状況、必要性・緊急性を通知して相談するよう勧めています。羽アリが出ただけで急迫の事情に当たるかは判断が分かれるため、業者の手配は貸主の同意を得てから進めるのが安全です。

国民生活センターは、害虫・害獣駆除でネットの表示とかけ離れた高額料金を提示される相談が増えていると注意を呼びかけ、複数の見積もりを比べる時間を与えない事業者とは契約しないよう助言しています。訪問してきた業者に点検を勧められた場合の考え方は、シロアリ駆除の詐欺と点検商法にまとめています。

参考:国土交通省|民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(PDF・入居中の修繕)

管理会社へ送る報告文と写真の撮り方|そのまま使える例文

報告文は、いつ・どこで・何を見たか、何をしたか、何を頼みたいかの4点で足ります。原因や費用の責任には触れず、事実だけを書くのがこつです。次の例の〇〇を自分の状況に置き換えて使えます。

例文:「〇〇号室の△△です。〇月〇日の午後、洗面所の窓際で、翅のある黒っぽい虫が数匹見つかりました。写真を添付します。虫は容器に入れて保管しています。出た場所は洗面所の窓枠と床の境目の近くで、気づいたのは午後3時ごろです。殺虫剤は使っていません。シロアリの可能性があるため、確認の手配と、立ち会える日時のご相談をお願いします。連絡先は〇〇です。」

羽アリが続けて出るときは、日付つきで追記して再送します。調査当日の立会いの考え方は賃貸の訪問調査に立ち会うときに、羽アリが出たあとに何を残すかは羽アリが出たら何を残す?にあります。

  • 虫は定規やコインと並べて撮り、触角・翅・胴のくびれが分かる接写も撮る
  • 出た場所は、部屋の全体、窓や配管などとの位置関係、近接の3段階で撮る
  • 床・壁・畳・敷居の変形、土のような付着物、細かい粒があれば、触らずそのまま撮る
  • 撮影の日時が分かるようにし、同じ場所を数日後にも撮って変化を残す

参考:日本しろあり対策協会|羽アリが発生したので業者を呼びました。その間気持ち悪いので殺虫剤をスプレーしてもよいでしょうか(シロアリQ&A)

対応が進まないとき|消費生活センター・協会の相談先

管理会社や貸主から返事が来ない、費用を一方的に請求された、というときは、連絡の記録を持って第三者に相談します。国民生活センターは、消費者ホットライン188が、最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等を案内する全国共通の3桁の番号だと説明しています。国土交通省の事例集は、全国の消費生活センター等に賃貸住宅に関する相談が年間3〜4万件程度寄せられていると紹介しています。

シロアリそのものの相談は、日本しろあり対策協会が地区の連携団体で消費者相談を受け付けています。協会自身は調査を行わず、希望すれば会員業者を紹介するとしています。駆除業者との契約トラブルは、国民生活センターが、不安をあおって契約を急がせる勧誘などに注意を呼びかけています。請求書が届いても、その場で支払わず、内訳と根拠を書面で求めてから相談します。188への相談の準備は駆除の請求トラブルを188へ相談するにはで整理しています。

  • 契約書の写しと、修繕や特約の条項に印を付けたもの
  • 連絡した日時・相手・内容の記録(電話はメモ、メールは保存)
  • 虫と被害の写真、保管している虫
  • 業者の見積書や請求書(ある場合)

参考:国民生活センター|害虫・害獣駆除のトラブルにご注意