ネズミの鳴き声はどう聞こえるのか

「チュー」や「キーキー」といった擬音はよく知られていますが、今回確認した省庁・自治体・公的団体の資料には、鳴き声の高さや長さを具体的に描写したものは見当たりませんでした。当サイトも、聞こえ方を独自に定義することはしません。確認できたのは、鳴くかどうかが種類や年齢で違う、という点です。東京都のねずみ防除指針は、現場でドブネズミとクマネズミを見分ける手がかりの一つとして、捕獲したばかりの元気なドブネズミはよく鳴くが、クマネズミはあまり鳴かず、ただし幼獣はよく鳴く、と紹介しています。

このため、天井裏で鳴き声がしないから安心、鳴き声が聞こえたからドブネズミ、とは言えません。天井裏や高い場所に多いクマネズミは、成獣が鳴きにくいとされるため、足音やかじる音だけが続くことも考えられます。鳴き声がしないことを理由に判断せず、音の種類より、毎日同じ場所・時間に続くかを見る方が現実的です。

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 1) 防除の基本(PDF)

読者の疑問

ネズミの鳴き声は、どんな音ですか?

比較ガイド

公的資料に具体的な擬音の記述は見当たりません。東京都の資料では、捕獲直後の元気なドブネズミや幼獣はよく鳴き、クマネズミの成獣はあまり鳴かないとされています。鳴き声の有無で種類や存在は決められません。

ネズミが鳴くのは、どんなときか

公的資料が鳴く場面として挙げているのは、幼獣と、捕獲された元気なドブネズミです。成獣が争いや警戒のときに鳴くという説明は、今回確認した資料には見当たりませんでした。場面を決めつけず、「いつ・どこで・どんな音か」の記録として扱います。

子ネズミがいるとき

東京都の窓口対応用チェック表には、クマネズミの成獣は鳴かないが、幼獣はよく鳴くと注記されています。繁殖について大阪府は、最適な条件での目安として、クマネズミの妊娠期間を約21日、年に5〜6回の分娩、1回の出産数を約6匹としています(掲載ページの更新日は2009年8月)。同じ場所で鳴き声が何日も続くときは、近くに巣と子ネズミがいる可能性も考えます。巣材の見分けは、細かく裂かれた紙や布はネズミの巣かの確認が参考になります。

成獣の声は、縄張りや警戒と決めつけない

大阪府は、ネズミが数匹から十数匹の群れで巣を中心になわばりを作り、他のネズミの侵入を排除すること、いつもと違う状態を強く警戒することを習性として挙げています。これらの習性が声とどう結びつくかは資料に書かれていないため、聞こえた声を争いや警戒と読み替えず、時間帯と場所の記録として扱います。

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 2) 窓口対応の実践例(PDF)

鳴き声・足音・かじる音は何が違うのか

日本ペストコントロール協会は、ネズミの害の一つに「音の被害」を挙げ、夜間に天井裏や壁の中をうるさく走り回ると説明しています。東京都は、ラットサインの種類を、音、かじり跡、フン、足跡、体のこすり跡と整理しています。音は痕跡の一つにすぎず、他の痕跡と対応づけて初めて意味が出ます。

どの音も、設備の動作音や建物の温度変化による音と紛らわしいことがあります。昼間の音の見分けは、昼の天井音は設備とも照合する記録方法に整理しています。

鳴き声・足音・かじる音は何が違うのか:確認項目
聞こえる音一緒に見る痕跡確認する場所
鳴き声のように聞こえる音音のした場所の近くのフン、紙や布を集めた巣材音の真下の部屋の天井、押入れや物置の上
走る、駆けるような音壁際や柱・配管に沿った黒光りのこすり跡、足跡壁際、梁、配管や電線に沿った通り道
かじる音、削る音食品の袋、木部、電線の被覆のかじり跡台所、収納の中、配線のそば
言葉にしにくい物音音の日時と場所の記録、換気扇や配管など設備の稼働時間設備の稼働音と重なる時間かを照らす

参考:公益社団法人日本ペストコントロール協会|有害生物情報 ネズミ駆除

コウモリ・イタチ・ハクビシンの音との比較表

横浜市は、市内で天井裏にすみつく主な動物として、アライグマ、ハクビシン、ネズミを確認していると案内しています。東京都の資料は、イエコウモリやノラネコも似た被害を起こすと述べています。公的資料に、動物ごとの鳴き声や足音の擬音を並べて比べたものは見当たらなかったため、表は「時間・音の手がかり・痕跡・通れるすき間の大きさ」を比べる形にしました。

イタチは、公的資料から音の特徴を引き出せなかったため、表では通れる穴の大きさの目安のみとしています。見分けられないときは、無理に決めず、記録を持って調査を相談する方が早道です。コウモリの音と痕跡は、屋根裏のコウモリの確認と準備で詳しく扱っています。

種類の確認が大切な理由の一つは、法律上の扱いが違うことです。環境省は、鳥獣保護管理法の「鳥獣」に鳥類と哺乳類の野生動物が含まれ、いえねずみ類3種は環境衛生の維持に重大な支障を及ぼす鳥獣として同法の対象外と説明しています。コウモリなど住宅に入り込むそれ以外の野生の哺乳類は、狩猟による場合を除き、捕獲に許可が必要です。

コウモリ・イタチ・ハクビシンの音との比較表:確認項目
比べる点ネズミコウモリハクビシン・イタチ
活動する時間夜間が中心。日没後の数時間と夜明け前が活発(大阪府)日没後に活動(東京都ペストコントロール協会)ハクビシンは夜行性(真岡市)。横浜市は「毎晩のように歩き回る音」を被害の例に挙げる
音の手がかり天井裏や壁の中を走り回る(日本ペストコントロール協会)。幼獣は鳴く(東京都)羽音、キー・キーという鳴き声(前橋市)ハクビシンやアライグマは足音や鳴き声(横浜市)
フンの手がかり0.5〜1.5センチ。エサ場の近くに多い5〜10ミリでもろい。出入り口の下に落ちるハクビシンは屋根裏や床下に糞尿を排泄(真岡市)
他の痕跡かじり跡、黒光りのこすり跡、足跡出入り口周辺にフンが堆積する天井のしみ、尿らしきものが垂れる(横浜市)
通れるすき間の目安クマネズミで1.25センチ(東京都)6ミリから1センチ程度(東京都ペストコントロール協会、浜松市)イタチは直径3センチ(大阪市西淀川区)

参考:横浜市|天井裏から動物の足音がする。

音がする時間帯と場所から分かること

大阪府は、ネズミは昼間は動かず、ほとんど夜間に活動し、最も活発なのは日没後の数時間と夜明け前だと説明しています。また、壁際や物陰を通路にして動き、広い空間をめったに横切らないとも述べています。東京都も、活動する時間帯は家人が留守の時や夜中が多く、姿を確認しにくいとしています。時間帯と通り道の説明が、天井裏の音を読むときの出発点になります。

場所について、東京都と大阪府の資料は、クマネズミがビルの高い所、壁の中、天井裏に多く、ドブネズミは植込みや公園の地面、下水、床下など低い所に、ハツカネズミは押入れや納戸、畑に多いと整理しています。音の場所と種類の見立てが結びつく場合がありますが、あくまで目安です。

音がする時間帯と場所から分かること:確認項目
音がする時間・場所考えられること次に確認すること
日没後の数時間、天井裏を端から端へ夜間に活動する動物全般。ネズミもその一つフンの大きさと場所、壁際の黒光りするこすり跡
夜明け前の天井裏や壁の中夜間の活動の山の一つ(大阪府)同じ時刻に数日続くかを記録する
昼間に音がするネズミ以外の動物や、設備・建物の音の可能性もある換気扇や給湯器など設備の稼働時間との照合
台所の収納の中や床下の近く餌場になりやすい場所(東京都)。低い所を動く種類も食品袋のかじり跡、配管まわりのすき間
押入れ・物置から巣を作りやすい場所(東京都)。ハツカネズミの居場所の例(大阪府)荷物の下の巣材、フンの大小の混在

参考:大阪府|ねずみの駆除について

鳴き声が聞こえたら確認するフンとラットサイン

東京都のねずみ防除指針の窓口対応用チェック表は、フンの大きさを、ドブネズミで1〜1.5センチ、クマネズミで1センチ前後、ハツカネズミで0.5センチとしています。新しさは「新しい(生息の可能性)」と「古い(迷入の可能性)」に分け、大小のフンが同じ場所で見つかれば、繁殖している可能性があると注記しています。音が聞こえたら、音の場所の近くで、大きさ・新しさ・大小の混在の3点を確認します。

フンは触らず、定規や硬貨を添えて撮影します。足跡や体のこすり跡は、体から出る脂分と汚れが通り道に付いてできる、特有の黒光りした跡だと、東京都は説明しています。見つけた場所を間取り図に書き込むと、通り道が線として見えてきます。フンの大きさや落ちている場所の比較は、ネズミのフンの見分け方の比較表にまとめています。

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 2) 窓口対応の実践例(PDF)

録音とメモを用意して調査を相談する手順

東京都のねずみ読本は、防除を、種類を見分ける、侵入経路と生息要因を明らかにする、対策の措置を講じる、の順に進めると示しています。ラットサインからは、侵入経路、家の中の通路、餌場や営巣場所が分かるとしています。録音とメモは、この調査を助ける材料になります。ただし、録音だけでネズミと決まるわけではなく、天井に上る、壁を開ける、といった作業は行いません。

夜間の記録の取り方は、夜間の天井の音を記録する一晩のメモの作り方に詳しくあります。相談の伝え方は、天井裏のネズミを疑ったときの調査の伝え方に続きます。次の項目を、見積もりの前に整えてください。

  • 音が聞こえた日付・時刻・場所を、間取り図に書き込む。音の種類は、聞こえたままの自分の言葉でよい
  • 録音は、天井の真下の部屋で夜間に短く複数回とり、前後の時刻をメモする
  • 音の場所の近くで見つけたフン、かじり跡、こすり跡を、日付入りの写真で記録する
  • 食品、ペットフード、生ごみの置き場所と、最近の工事や設備の交換をメモする
  • 使った製品(捕獲器・忌避剤・機器)と置いた場所・日付を一覧にする
  • 依頼先へ、種類の確認、侵入口の調査、清掃を項目ごとに分けた見積もりを頼む

参考:東京都保健医療局|都民のためのねずみ防除読本(令和7年12月)