アライグマの体の大きさと登る力|入れるすき間の目安
環境省の手引きによると、アライグマの頭胴長は42〜60cm、尾長は20〜41cm、体重は4〜10kgで、タヌキより一回り大きく、尾も長い動物です。前足も後ろ足も指が5本あって長く、森林から市街地まで幅広い環境にすみます。木登りが上手で、果樹を荒らしたり、家屋の屋根裏に入り込んだりすることがあります。
前足を手のように使って登る
手引きは、アライグマが前足を器用に使い、細い枝を垂直に登ったり、物をつかんだりできるため、農作物の被害対策でも、タヌキなど在来の中型の哺乳類向けの対策では不十分だと指摘しています。農林水産省の中型獣類編は、通常、爪は補助的に使うので大きなささくれた痕跡は残りにくく、滑りやすい場所や後ろ足を一気に引き上げたいときに爪に頼ると説明しています。
すき間の大きさは目安として読む
板橋区のリーフレットは、アライグマとハクビシンに共通する特徴として、10cm四方のすき間でも入り込めるとしています。手引きも、電気柵の段の間隔について、アライグマは10cm以上のすき間があれば侵入できると説明しています。一方、町田市の資料(2021年時点)は、アライグマは小さな穴をこじ開けて侵入することがあるため、家屋への被害が大きくなると述べています。寸法は目安で、これより小さければ安全という意味ではありません。
参考:環境省|アライグマ防除の手引き(地域から構築する効果的な防除、2025年改訂版)
アライグマは屋根裏にどこから入りますか?
自治体の案内では、軒下、屋根の換気口、床下の通風孔、屋根と屋根の重なり、戸袋の底、増築部の継ぎ目、壁の穴や亀裂が挙げられています。侵入口は1か所とは限らないため、部位ごとに点検します。
屋根へ上がる経路|雨どい・庭木・柱・物置の点検
屋根裏に入る前に、アライグマはまず屋根や軒の高さまで上がります。町田市の資料は、アライグマとハクビシンが雨どいを使って器用に登り降りできること、庭木が伸びて屋根やベランダにかかっていると、それを伝って侵入してくることを説明しています。環境省の手引きは、アライグマが木造建築物に爪を立てて登り、内部に入り込む例を、寺社の被害として紹介しています。
板橋区のページは、樹木だけでなく電線を伝って屋根裏に入ることもあるとして、屋根に登れるような庭木の枝を剪定するよう案内しています。次の表は、登る経路を地上から見るときの観点です。
| 登る経路 | 地上から見るポイント | 資料の記載 |
|---|---|---|
| 雨どい | 屋根まで続く雨どいが、壁や庭木の近くを通っていないか | 町田市:雨どいを使って登り降りし、侵入口に近づく |
| 庭木・電線 | 枝が屋根やベランダに届いていないか。電線が屋根に近づく位置 | 神戸市・板橋区:枝が屋根にかかる前に剪定。木や電線を伝って屋根裏へ入ることもある |
| 柱・外壁 | 木部に爪を立てたような傷や汚れがないか | 環境省:木造建築物に爪を立てて登り降りし、爪痕が残る |
| 物置・塀・車庫 | 屋根との距離が近く、乗り移れる位置にないか | 登る経路としての記載は確認した資料にない。札幌市は、すみかを与えない対策として物置や車庫をきちんと閉めるよう案内 |
侵入口になりやすい場所|屋根・軒・通風口の部位別点検表
自治体の案内を並べると、アライグマが屋根裏に入る場所は、劣化して穴が開いた部分だけではないことが分かります。町田市の資料は、現地調査で、建物の構造上もともとあるすき間(屋根の組み合わせの隙間など)から入っている例もあり、築40年以上の建物からの相談が多かったと報告しています(2021年時点)。神戸市は、侵入口は1か所とは限らないとして、定期的な点検と修理を呼びかけています。
表の「見るポイント」は点検の観点で、塞ぐ作業を勧めるものではありません。見つけた場所は、塞ぐ前に位置と状態を写真で記録します。
| 部位 | 見るポイント | 資料に見られる記載 |
|---|---|---|
| 軒下・軒天 | 板の浮き、すき間、黒ずみ、外れ | 横浜市・板橋区:軒下を侵入口として例示 |
| 屋根と屋根が重なる部分 | 屋根の取り合い、重なりの下にできた空間 | 横浜市:屋根と屋根が重なっている空間を点検対象に挙げる |
| 屋根の換気口・床下の通風孔 | 網の破れ、外れ、変形。基礎コンクリートの通風孔 | 神戸市:床下や土台の換気口、屋根の換気口。横浜市:基礎の通風孔 |
| 雨戸の戸袋の底 | 底板の傷み、戸袋と壁のすき間 | 横浜市・神戸市:戸袋の底を点検対象に挙げる |
| 増築した接続部 | 古い部分と新しい部分の継ぎ目にできた空間 | 横浜市:増築の接続部分にできた空間 |
| 壁面の穴・亀裂・縁の下 | 壁の亀裂や穴、縁の下の開口 | 神戸市:壁面の穴。札幌市:縁の下・換気口・壁の亀裂を金網などで塞ぐ |
| 外壁と内壁の間 | 外から見える開口と、出入りの跡 | 環境省:外壁と内壁の間に入り、断熱材を巣材にした例 |
爪痕・足跡・汚れなど、侵入口の手がかり
手引きは、アライグマが木造建築物に侵入するとき、爪を立てて柱を登り降りするため、爪痕が残ると説明しています。ただし、ハクビシンやイタチ類、ネコも似た爪痕を残すことがあると注記しています。農林水産省の資料は、爪は補助的に使うことが多く、大きなささくれは残りにくいとも述べています。爪痕の有無だけで、アライグマかどうかは決められません。
足跡は、手引きによると前足・後ろ足とも5本の指がはっきり分かれ、子どもの手形のように見えます。撮り方と見分けの限界は アライグマの足跡の撮り方 にあります。
東京都環境局は、アライグマやハクビシンが入り込んでいる可能性があるサインとして、次のような変化を挙げています。屋根の上は地上から見えにくいため、室内の変化と合わせて記録すると、調査を頼むときに役立ちます。
- 屋根裏で大きな音がする
- 天井にシミができた
- 雨どいやベランダの一角にまとまって、何かのフンがある
- 夜、庭や屋根の上に見慣れない動物がいた
地上と室内からできる確認方法|屋根や天井裏には上らない
点検は、地上と室内から見える範囲にとどめます。屋根に上る、天井裏に入るといった作業は、転落や天井板の踏み抜き、フンの粉じんを吸い込むおそれがあり、動物が中にいる場合は鉢合わせの危険もあります。軒先や屋根のすき間を地上から見るコツは 軒や屋根のすき間を地上から確認する方法 で紹介しています。
地上から
晴れた日の明るい時間に、建物の周りを一周し、前の表に沿って雨どい、軒下、換気口、戸袋、増築部を順に見ます。双眼鏡やスマートフォンのズーム写真を使うと、屋根に近づかずに状態を記録できます。気になる場所は、位置が分かる引きの写真と、アップの写真の両方を残します。
- 雨どい・庭木・電線と屋根の距離
- 軒下・換気口・戸袋・屋根の重なりの状態
- 足跡・爪痕・汚れ・フンの位置(触らず写真で記録)
室内から
天井のシミ、においの変化、足音の時間帯と回数をメモします。農林水産省の資料によると、アライグマの活動は夜間が中心ですが昼間にも動くため、昼の音も時刻を残しておきます。メモは、自治体の窓口や業者の調査で、そのまま使えます。
中にいる状態で塞がない理由と、封鎖の時期
「兵庫の野生鳥獣害対策シリーズ」(2011年のリーフレット)は、春から初夏は出産や育児のために、アライグマが屋根裏などへ侵入することが多くなると説明しています。侵入されたら、爪痕などで侵入ルートを特定し、アライグマが餌を探しに外へ出たことを確認してから出入り口を塞ぐ、とあります。あわせて周辺での捕獲にも触れていますが、捕獲には許可などの手続きが先に必要です。
中に残っている状態で塞ぐと、動物が閉じ込められます。子がいる場合は、親だけが外に出ていて、子が取り残されるおそれもあります。農林水産省の資料によると、出産のピークは4月中旬で、出産は建物の壁のすき間などで行われ、子が野外で活動を始めるのは6月上旬です。手引きによると、出産は主に3〜5月ですが、2月頃には家屋に侵入して繁殖場所を確保することが多く、地域によっては夏から秋の出産も確認されています。暦だけで「この時期なら塞いでよい」とは言えません。
追い出しの考え方は、自治体で分かれます。横浜市は、煙の出るタイプの殺虫剤で追い出す方法を紹介し、足音が聞こえなくなったあとに侵入口を点検して、修繕を専門業者に依頼するよう案内しています。東京都は、追い出せる可能性はあるが、逃げた個体が別の家で被害を起こすことがあり、数を減らす根本的な解決にならないとしています。この記事では薬剤の使い方は扱いません。使う場合は製品の表示に従い、中の様子が分からないときは、先に自治体へ相談してください。全体の順番は 害獣の追い出し・封鎖・清掃はどの順番? に、親子がいるかもしれないときの確認は アライグマの親子を見かけたら にあります。
| 屋根裏の状況 | 塞いでよいか | 考え方 |
|---|---|---|
| 足音・鳴き声・においの変化が続いている | 塞がない | 中にいる可能性が高い。記録を添えて、自治体の窓口や業者へ相談する |
| 子の声がする。春から初夏の時期である | 塞がない | 幼獣が取り残されるおそれがある。触らず、距離を保って連絡する |
| 気配が止まったが、外へ出たことを確認できていない | 確認できるまで待つ | 調査や捕獲の結果を踏まえ、出入りの有無を業者や自治体に確認してもらう |
| 外へ出たと確認でき、侵入口の位置も分かった | 補修を前提に塞ぐ | 弱い部材を直し、ほかのすき間も含めて塞ぐ。材料と固定方法は見積もりで確認する |
塞ぐ前に直す|弱い部材の補修を前提にする
アライグマは小さな穴をこじ開けることがあるため、すき間に板や網を当てるだけでは、前足でめくられたり外されたりするおそれがあります。町田市の資料が、劣化して穴が開いた部分からの侵入を例に挙げているように、傷んだ板、ずれた金網、外れた通風口の網など、弱い部材そのものが入口になっていることがあります。塞ぐ前に、その部分を直す必要があるかを確認します。
札幌市は金網などで塞ぐこと、神戸市は頑丈なもので塞ぐことを案内しています。金網の目の大きさ、固定方法、換気を妨げないかは、建物ごとに違います。材料の選び方は 害獣の侵入口を塞ぐ材料の選び方 で確認できます。
- 弱い部材(傷み、浮き、外れ)の補修を、塞ぐ作業に含めてあるか
- 見つけた入口だけでなく、ほかのすき間も点検したか(侵入口は1か所とは限らない)
- 通風や換気を止めないか、施工前に確認したか
調査を相談するときに伝えること
東京都は、被害を受けたときは、まず各区市町の環境部署や清掃部署に問い合わせるよう案内しています。板橋区の捕獲事業は、被害のある建物の所有者または管理者からの依頼、事前調査への立ち会い、毎日の箱わなの見回りなどを条件にしています。部位ごとの写真と、足音の時間帯のメモがあると、現地調査の範囲を決めやすくなります。
相談から封鎖・清掃までの分担は 屋根裏のアライグマ駆除の流れ にまとめています。
- 部位ごとの写真(位置が分かる引きと、状態が分かるアップ)
- 足跡・爪痕・フンの位置と日付(触らずに記録)
- 足音・鳴き声の時間帯と、天井のシミやにおいの変化
- 建物の築年、増築の有無、所有者か管理者か





