大量調理施設衛生管理マニュアルとは|対象施設と位置づけ

大量調理施設衛生管理マニュアルは、集団給食施設等で食中毒を予防するため、HACCPの考え方に基づいて、原材料の受入れから調理後の食品の管理までの重要な管理事項を示した文書です。厚生労働省が都道府県知事、保健所設置市長、特別区長に示した通知の別添で、平成9年3月24日付けの通知に始まり、公開されている最終改正は平成29年6月16日付けです。法律の条文ではありませんが、千葉市のページのように、自治体も集団給食施設等の食中毒予防のための重要管理事項を示したマニュアルとして案内しています。

対象になる施設|1回300食以上または1日750食以上

適用の範囲は、原文の趣旨の項に、同一メニューを1回300食以上、または1日750食以上を提供する調理施設と書かれています。食数がこれに満たない施設はマニュアルの直接の適用外ですが、後の節で見る食品衛生法施行規則の基準は、営業者や学校・病院などの給食施設に別に適用されます。

それ以外の施設の扱い|趣旨を踏まえた管理と手引書

改正通知は、大量調理施設だけでなく、中小規模の調理施設等でも、このマニュアルの趣旨を踏まえた衛生管理を徹底するよう求めています。千葉市のページは、これまでこのマニュアルを活用していない中小規模等の集団給食施設では、関係業界団体等が作成して厚生労働省が内容を確認した手引書を参考に、HACCPに沿った衛生管理を実施することもできると案内しています。

参考:厚生労働省|大量調理施設衛生管理マニュアル(平成29年6月16日最終改正、PDF)

読者の疑問

大量調理施設衛生管理マニュアルの対象は何食からですか?

比較ガイド

同一メニューを1回300食以上、または1日750食以上提供する調理施設に適用されると、原文に書かれています。通知は、これに満たない中小規模の調理施設等にも、趣旨を踏まえた衛生管理を求めています。

ねずみ・昆虫対策の規定|月1回以上の巡回点検・半年1回以上の駆除・記録1年

該当するのは、重要管理事項の「その他」にある「施設設備の管理」の項です。原文は、ねずみ、昆虫等の発生状況を1月に1回以上巡回点検するとともに、駆除を半年に1回以上(発生を確認した時にはその都度)実施し、その実施記録を1年間保管することとしています。同じ項は、施設とその周囲の維持管理で繁殖場所の排除に努めること、殺そ剤・殺虫剤は食品を汚染しないよう取扱いに十分注意することも求めています。

巡回点検は月1回以上|毎日は設備、毎月は発生状況

別紙「調理施設の点検表」は、毎日の点検に「施設へのねずみや昆虫の侵入を防止するための設備に不備はありませんか」を置き、1カ月ごとの点検に「巡回点検の結果、ねずみや昆虫の発生はありませんか」を置いています。

駆除は半年に1回以上、発生時はその都度|記録は1年間

駆除には、発生がなくても半年に1回以上行う定期の作業と、発生を確認したときの随時の作業があります。点検表の1カ月ごとの項目には「ねずみや昆虫の駆除は半年以内に実施され、その記録が1年以上保存されていますか」があり、月次の点検のたびに、前回の駆除からの期間と記録の保管を確かめる形です。

参考:厚生労働省|大量調理施設衛生管理マニュアル(平成29年6月16日最終改正、PDF)

食品衛生法施行規則・学校給食衛生管理基準との比較表

マニュアルとは別に、営業者には食品衛生法施行規則の別表第17が、学校給食の調理場には学校給食衛生管理基準が、別に定められています。3つの文書は似た数字を使いますが、頻度の書き方と位置づけが違うため、原文を当サイトの言葉で表に並べました。

食品衛生法施行規則の別表第17|年2回以上の駆除と記録1年

食品衛生法第51条にもとづく営業者の基準のうち、別表第17の「ねずみ及び昆虫対策」は、繁殖場所の排除と、網戸、トラップ、排水溝の蓋などによる侵入防止、1年に2回以上の駆除作業と実施記録の1年間保存を定めています。ただし、発生場所、生息場所、侵入経路、被害の状況を定期に統一的に調査し、その結果に基づく措置などで目的が達成できるなら、施設の状況に応じた方法と頻度でよいという但し書きがあります。営業に当たらない場合でも、学校、病院その他の施設で継続的に不特定または多数の者に食品を供与するときは、食品衛生法第68条第3項により法第51条が準用されます。

学校給食衛生管理基準|月1回以上の点検、発生時はその都度の駆除

学校給食衛生管理基準(平成21年文部科学省告示第64号)は、学校給食法第9条第1項にもとづき、学校給食の衛生管理で維持されることが望ましい基準です。施設・設備の衛生管理の項は、ねずみ及びはえ、ごきぶり等衛生害虫の侵入防止措置を講じること、発生状況を1ヶ月に1回以上点検し、発生を確認したときはその都度駆除し、必要な場合は補修、整理整頓、清掃、清拭、消毒等を行って結果を記録すること、薬剤は食品を汚染しないよう取扱いに十分注意することを挙げています。半年に1回の定期駆除という数字は、この条文にはありません。

さらに、学校薬剤師等の協力を得て、施設・設備の衛生管理の項目は毎学年3回定期に検査を行い、その実施記録を保管することも定められています。校内の記録のつなぎ方は、学校で虫やネズミの痕跡を見つけたときにあります。

学校給食衛生管理基準は見直しの検討が続いている

文部科学省は、基準の策定から15年以上が経過したことなどを理由に、令和8年3月10日付けで有識者会議を設け、令和10年3月31日までを期間として基準の在り方を検討しています。同年8月27日の会議資料でも、この期間は変わっていません。2026年10月3日時点で、見直し後の基準は確認できなかったため、この記事は平成21年告示の条文によっています。改正が公表されたときは、設置者の教育委員会へ最新の条文を確認してください。

食品衛生法施行規則・学校給食衛生管理基準との比較表:確認項目
比べる点大量調理施設衛生管理マニュアル学校給食衛生管理基準食品衛生法施行規則 別表第17
位置づけ・対象厚生労働省の通知の別添。同一メニューを1回300食以上または1日750食以上提供する調理施設に適用文部科学省告示。学校給食の適切な衛生管理で維持されることが望ましい基準省令の基準。営業者に適用され、学校・病院などの給食施設にも法第68条第3項で準用
発生状況の点検1月に1回以上巡回点検ねずみ及び衛生害虫の発生状況を1ヶ月に1回以上点検点検頻度の数字はなく、定期に統一的な調査を行う方法を認める但し書きがある
定期の駆除半年に1回以上半年に1回以上という定めは条文にない1年に2回以上(調査に基づく方法で目的を達成できる場合は施設に応じた頻度)
発生を確認したときその都度駆除その都度駆除し、必要な場合は補修・整理整頓・清掃・清拭・消毒等を行う随時の駆除は明記されず、定期の調査結果に基づく措置による
記録実施記録を1年間保管結果を記録する。学校薬剤師等による検査の実施記録は保管(期間の数字は条文にない)駆除作業の実施記録を1年間保存
薬剤の注意食品を汚染しないよう取扱いに十分注意食品を汚染しないよう取扱いに十分注意食品又は添加物を汚染しないよう取扱いに十分注意
侵入防止出入口・窓は極力閉め、網戸、エアカーテン、自動ドア等を設置侵入防止措置を講じる網戸、トラップ、排水溝の蓋等の設置と、繁殖場所の排除

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|食品衛生法施行規則(別表第17ほか)

月1回の巡回点検で見る場所と記録項目の例

マニュアルは月1回以上の巡回点検を求めますが、見る場所や記録の書式までは決めていません。この節の最後の表は、マニュアルの点検表、食品衛生法施行規則の別表第17、日本ペストコントロール協会が公開する調査仕様書(建築物向けの例)の調査項目を参考に、当サイトが厨房向けに並べた月次点検表の項目例です。施設の構造に合わせて足し引きしてください。マニュアルの点検表には「改善を行った点」の欄もあります。

ねずみの点検|ラットサインと侵入口

調査仕様書の例では、ねずみは区画ごとに、糞、尿によるシミ、足跡、囓り跡、こすり跡、鳴き声、侵入場所(穴)、営巣場所の有無を目視で確認します。無毒餌の食べられ方や、黒い紙に付く足跡を見る調査も例示されています。

ゴキブリ・ハエ類の点検|虫体・糞・卵鞘とトラップ

ゴキブリは虫体、ローチスポット(糞、吐き戻し)、卵鞘の有無を、ハエやコバエ類は成虫の存在と発生源を確認する例が示されています。粘着トラップの捕獲数は、設置場所と日数をそろえないと前回と比べられません。読み方は害虫の捕獲数をどう読む?にあります。

環境と設備の点検|清掃・整理・保管

同じ仕様書は、環境の調査として、厨房機器、流し台、床、排水溝への厨芥類の付着、グリストラップの定期的な清掃、棚へのダンボールや包装材の放置を挙げています。施設・設備の調査としては、建物周囲から侵入できるすき間、パイプシャフト周囲のすき間、排水系統からの侵入、厨房機器の下部の清掃のしやすさ、窓の網戸の有無が挙げられています。

月1回の巡回点検で見る場所と記録項目の例:確認項目
点検する場所月次で見ること記録に残すこと
出入口・窓・排気口扉と網戸の閉まり、破れ、すき間点検日、場所、状態、補修を依頼した日
調理場の床・排水溝・グリストラップ厨芥類の付着、清掃の状況点検日、写真、清掃した日
食品保管庫・棚床や壁から離した保管、容器の蓋、ダンボールの放置棚の位置、改善した点
配管の貫通部・パイプシャフト壁や床の貫通部のすき間、かじり跡場所の番号、すき間の写真
ごみ置き場・屋外の周囲生ごみの管理、草木や置き物の隠れ場所点検日、状態、清掃の担当
トラップ・捕獲器の位置捕獲数、設置日数、種類配置図の番号、設置日と回収日、捕獲数

参考:公益社団法人日本ペストコントロール協会|ねずみ等の調査及び防除業務特記仕様書(掲載ページ。本文はPDF)

殺虫剤・殺そ剤を使うときの食品汚染の防止

原文は、殺そ剤または殺虫剤を使用する場合は食品を汚染しないよう取扱いに十分注意することとしていて、量や濃度などの数字は示していません。具体的な使い方は、薬剤の製品表示(用法・用量・使用場所)と防除業者の作業計画に従います。施設側は、薬剤を独自に混ぜたり薄めたりせず、使った薬剤の名称・場所・日付を記録します。

作業の前に決めておくこと

日本ペストコントロール協会の調査仕様書の例には、薬剤を使うとき、受注者が薬剤の種類や実施場所など安全対策に必要な情報を示し、発注者が影響の及ぶ範囲へ通知すること、養生や事後の清掃が必要な場合はどちらが行うかを協議して定めることが書かれています。ねずみの毒餌は、食料品に混入するおそれのある箇所などでは毒餌箱に入れて配置し、使う薬剤は医薬品医療機器等法の承認を受けた医薬品または医薬部外品とされています。

  • 使う薬剤の名称と使用場所を、作業の前に業者から書面で受け取る
  • 食品、調理器具、食器を覆う、または移す手順と、作業後の清掃の担当を決める
  • 作業中と作業後に、調理場へ立ち入れない範囲と時間を決め、従事者に伝える
  • 毒餌や捕獲器の置き場所は、食品に混入するおそれのない場所か、業者と確認する

薬剤を使う前に、調査で必要性を確かめる

愛知県が旅館、公衆浴場、理容所などの生活衛生関係の施設向けに出しているリーフレットは、給食施設を対象にしたものではありませんが、ねずみや衛生害虫の防除は、事前の生息調査で生息が確認された場合に実施するよう呼びかけています。施設内の消毒は清掃が基本で、一律に広い範囲へ消毒薬を噴霧・散布・薫蒸することは、作業者への危険性もあるため漫然と実施しないよう求めています。定期の駆除でも、毎回の調査結果を見て、薬剤を使う範囲を絞れるかを業者と相談します。

参考:愛知県|人の健康と環境にやさしい ねずみ・昆虫等対策について(生活衛生関係営業向けリーフレット、PDF)

駆除業者に頼む仕様|頻度・範囲・報告書と契約の確認

マニュアルが求める駆除と記録の保管は、施設側の責任です。業者に委託する場合も、何を、どの頻度で、どの範囲に行い、何を報告してもらうかを契約の前に仕様として決めておくと、保健所の確認や契約の更新のときに説明しやすくなります。日本ペストコントロール協会の特記仕様書(国の建築保全業務共通仕様書にもとづく、建築物向けの例)は、調査、水準の判定、提案、防除、効果判定、再作業の順に業務を組み立てており、この項目を給食施設に応用できます。

契約書や見積書の読み方は、害虫の定期防除契約の比べ方と、見積書が「駆除一式」だけのときの内訳の頼み方に整理しています。厨房の契約と点検記録は、飲食店のゴキブリ対策も参考になります。

委託給食・テナント厨房の場合の責任の分け方

委託給食事業者向けの手引書は、施設・設備が老朽・破損している場合は、施設側に報告して補修を検討してもらうと書いています。網戸や扉、配管の貫通部など、建物に関わる補修は、施設の設置者と受託者のどちらが行うかを、駆除の仕様とは別に決めておきます。

駆除業者に頼む仕様|頻度・範囲・報告書と契約の確認:確認項目
仕様に書く項目決める内容契約前の確認の質問
対象と範囲ねずみ、ゴキブリ、ハエ・コバエ類などの対象と、調理場、検収室、保管庫、ごみ置き場、屋外の周囲の区分対象外の場所と生物はどこか。追加するときの扱いは
調査の頻度と方法月1回以上の巡回点検のうち、施設側と業者が行う部分を分け、業者の調査は目視、トラップなどの方法を決める調査は誰が、どのくらいの間隔で、どの方法で行うか
駆除の頻度半年に1回以上の定期作業と、発生時の随時作業に分け、調査結果に応じて薬剤を使う範囲を決める薬剤を使う範囲の決め方と、使わない場合の費用の扱いは
薬剤と作業の連絡使用する薬剤、場所、日時を事前に書面で連絡し、養生と事後の清掃の担当を決める食品を扱う区域で作業するときの手順と立入制限は
報告書調査結果、実施日、実施場所、薬剤、効果判定、改善の提案を毎回書面で受け取る1年間保管する記録として、どの書式で渡されるか
発生時の対応発見したときの連絡先、到着までの時間、再作業の条件を決める緊急の来訪の費用と、効果が出ないときの再作業の条件は
再委託業務を他社に任せる場合は、事前に相手の氏名等を通知する再委託の有無と、ある場合の通知の方法は

参考:公益社団法人日本ペストコントロール協会|ねずみ等の調査及び防除業務特記仕様書(掲載ページ。本文はPDF)

保健所の監視指導で確認される記録

給食施設への監視指導は、食品衛生法にもとづく権限で行われます。法第28条は、都道府県知事等が必要があると認めるときに、営業者その他の関係者から報告を求め、職員が営業の場所などに立ち入って、営業の施設や帳簿書類その他の物件を検査できると定めています。この規定も、前の節で見た法第68条第3項により、学校や病院などの給食施設に準用されます。マニュアルの改正通知も、都道府県知事、保健所設置市長、特別区長に、関係施設への監視指導と周知を依頼しています。

保健所がどの記録をどの程度確認するかを一覧にした公的資料は、今回確認できませんでした。そのため、条文とマニュアルの点検表から、書面で示せるようにしておきたい記録を整理します。大津市保健所の食品衛生情報(令和7年10月6日号)は、営業施設に対し、1年に2回以上の駆除と実施記録の1年間保存を呼びかけています。

  • 月次の巡回点検表(点検日、点検した人、発生の有無、改善を行った点)
  • 定期の駆除の実施記録と業者の報告書(実施日、場所、対象、薬剤、結果)。1年間の保管・保存が求められている
  • 発生を確認したときの対応記録(発見日、場所、対応、再発の確認)
  • 侵入防止設備の点検と補修の記録(網戸、扉、排水溝の蓋)
  • 防除業者との契約書、仕様書、作業計画書

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|食品衛生法