飲食店でゴキブリを見つけたとき、最初にすること

営業中に厨房や客席でゴキブリを見つけたら、まず周囲の食品、調理器具、食器に虫や薬剤が触れていないかを確認します。食品衛生法施行規則の別表第17は、殺虫剤を使うときは食品や添加物を汚染しないよう十分に注意すること、食品に触れるおそれのある器具は汚染のたびに消毒して乾燥させることを求めています。虫が出てきた方向も覚えておきます。

お客様の料理に混入した場合や、お客様から指摘を受けた場合は、対応が別になります。日本食品衛生協会の飲食店向け手引書は、異物の混入などの苦情で、健康被害につながるおそれが否定できないものは、保健所などへ速やかに報告するよう示しています。連絡する担当を先に決めておくと、現場で迷いません。

  • 周囲の食品と器具を分け、虫が触れたかもしれないものは使わずに置いておく(廃棄や再洗浄の判断は責任者が行う)
  • 見つけた日時、場所、数、成虫か幼虫か、卵の入った袋のような塊の有無を記録する
  • 捕まえた個体は袋などに入れて保管する(種類の確認や業者への相談に使える)
  • 営業中の調理場で自己判断の薬剤噴霧は避け、使う場合は製品の表示に従い、食品と器具にかからない範囲と時間を決める
  • 同じ場所で繰り返し見つかる、幼虫が混ざるといった場合は、記録を持って業者か保健所へ相談する

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|食品衛生法施行規則(別表第17ほか)

読者の疑問

飲食店でゴキブリが出たら、保健所に届け出る必要がありますか?

比較ガイド

ゴキブリを見つけたこと自体を届け出る旨の規定は、今回確認した施行規則の基準や手引書には見当たりません。ただし、料理への混入などで健康被害につながるおそれが否定できない苦情を受けたときは、手引書が保健所などへ速やかに報告するよう示しています。迷う場合は、管轄の保健所へ相談します。

厨房でゴキブリが潜みやすい場所と、見るポイント

横浜市は、ゴキブリが好む場所の条件として、暖かい、暗い、エサに近い、湿気がある、狭いすき間の5つを挙げています。具体例には、調理台付近、レンジや冷蔵庫の下・裏、配電盤、コンセント付近、壁紙の裏、食品保管場所、ゴミ置き場が示されています。厨房はこれらの条件が重なりやすいため、客席や事務室より先に調べます。

日本ペストコントロール協会は、チャバネゴキブリを冷蔵庫の裏や食器棚内などの暖かい場所で活発に繁殖する小型の種、クロゴキブリを春から秋に灯火を目ざして屋内へ侵入する大型の種として説明しています。小さな虫体が電気器具のトラブルの原因になることも挙げているため、機器まわりの点検は電気設備の担当者とも相談します。

施行規則は、原材料、製品、包装資材を容器に入れ、床や壁から離して保存することを求めています。床に置いた納品用の箱や、開封したまま棚に載せた袋も、潜み場所と餌の両方になりうるため、点検の対象に入れます。

厨房でゴキブリが潜みやすい場所と、見るポイント:確認項目
場所好まれる理由見るポイント
冷蔵庫・製氷機・冷凍庫の下と裏機器の熱で暖かく、食品のくずにも近い側面と脚の周りの汚れ、黒い粒状のふん、幼虫の有無を、閉店後に懐中電灯で見る
コンロ・フライヤー・食器洗浄機の周り熱源と水気、油汚れが重なる機器と壁のすき間、配管が壁や床を通る部分、床の継ぎ目の油汚れ
配電盤・コンセント・制御盤の近く暖かく狭い。小さな虫体が電気器具の故障につながることがある外から見える範囲の記録にとどめ、蓋を開ける調査は電気の担当者と日時を決めて行う
食品保管庫・ストッカー・納品箱の置き場餌に近く、暗く狭いすき間が多い床置きの箱、開封後の袋、箱の底や折り目、棚の裏の汚れ
排水溝・グリストラップ・床の排水口の周り湿気と食品くずがそろう。ワモンゴキブリは下水桝や排水口に潜む蓋のずれや破損、汚泥、水気が残る時間帯
ごみ置き場・勝手口餌があり、外から入る経路にもなるふた付きの容器か、扉の下のすき間、搬出後の床の汚れ

参考:横浜市|ゴキブリについて

食品衛生法施行規則が求める「ねずみ及び昆虫対策」と記録

食品衛生法施行規則の第66条の2は、営業者に、別表第17の一般的な衛生管理の基準に従って衛生管理計画を作り、従業員に周知し、実施状況を記録して保存することを求めています。ねずみ及び昆虫対策は、その別表第17の第5号に定められています。

同号のロは、年に2回以上ねずみ及び昆虫の駆除作業を実施し、その記録を1年間保存することを定めています。ただし書きでは、発生場所、生息場所、侵入経路、被害の状況を定期に統一的に調査し、その結果に基づいて必要な措置を講じるなど、目的が達成できる方法であれば、施設の状況に応じた方法と頻度でよいとされています。

条文は、虫を見つけたら違反、と書く形ではありません。侵入の防止、繁殖場所の排除、定期の駆除作業または調査、記録の保存を、仕組みとして求める形になっています。

「年2回以上」と「定期の調査」の読み方

年2回以上の駆除作業が基本の形で、発生場所や侵入経路を継続して調べ、その結果に応じた措置を取っているなら、頻度を施設に合わせられる、という二段構えです。調査をしていない店が回数だけを減らせる、という意味ではありません。どちらの形をとるかは、業者と保健所に自店の状況を伝えて決めます。

記録として残すもの

実施記録は1年間保存します。作業の日付だけでなく、あとから取り組みを説明できる内容を残しておくと役に立ちます。

  • 実施日と実施者(自店か業者か)
  • 対象の区画と、使った方法や製品名
  • 発見状況や捕獲数など、調査の結果
  • 見つかった侵入経路と、補修した箇所
  • 次回の予定と、業者からの提案
食品衛生法施行規則が求める「ねずみ及び昆虫対策」と記録:確認項目
基準の項目基準の内容(要約)飲食店での置き換え例
侵入の防止施設と周囲を維持管理し、繁殖場所を排除する。網戸、トラップ、排水溝の蓋などで侵入を防ぐ勝手口の下のすき間、吸排気口の網、排水溝の蓋、窓や出入口の開けっぱなしを見直す
駆除作業と記録年2回以上の駆除作業を行い、記録を1年間保存する。定期の調査と必要な措置で目的を達成できる場合は、頻度を施設に合わせられる業者の作業報告書と自店の点検表を1年分保管する
薬剤の使用殺そ剤や殺虫剤を使う場合は、食品や添加物を汚染しないよう十分に注意する使用日、場所、製品名、食品と器具の養生を記録する
保存の方法原材料、製品、包装資材は容器に入れ、床や壁から離して保存する。開封したものは蓋付きの容器に入れる納品箱から出して保管し、床に直置きしない。開封後はふた付き容器にする

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|食品衛生法施行規則(別表第17ほか)

HACCPの手引書で飲食店が作る衛生管理計画に、ゴキブリ対策を書く

厚生労働省は、飲食店営業や喫茶店営業を行う者を、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理で対応できる「小規模な営業者等」に含めています。業界団体が作成して厚生労働省が内容を確認した手引書を参考に、ひな形で衛生管理計画を作り、従業員に周知し、記録様式で実施状況を記録・保存し、定期的に振り返る流れです。HACCPに沿った衛生管理は、2021年6月1日に完全施行されています。

日本食品衛生協会の小規模な一般飲食店向け手引書(2024年1月改訂)は、基本の項目に加えて、施設によっては重要になる内容を書き足してチェックする形を示し、その例の一つにそ族(ネズミ)・昆虫対策を挙げています。記載例は、いつ・どのように・問題があったときの3点で、6月と11月に駆除作業を実施し、作業中に見つけた場合は可能な限り駆除して、繁殖場所や侵入経路を確認し必要な対策をとる、という内容です。

この記載例は書き方のひな形で、自店の頻度を指定するものではありません。営業時間、厨房の広さ、納品の頻度、ビルの共用設備に合わせて書き換え、従業員全員が同じ手順で動けるようにします。

衛生管理計画に書く3点

手引書の書き方にならうと、ゴキブリ対策は次の3点で整理できます。自店の言葉に直して計画に入れます。

  • いつ:業者の駆除作業を行う月、店内の点検の頻度(例:毎週の閉店後)
  • どのように:点検する場所、記録の方法、見つけたときの連絡先と対応
  • 問題があったとき:繁殖場所と侵入経路の確認、補修、業者への追加依頼、再発時の記録

参考:厚生労働省|HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け、令和6年1月改訂、日本食品衛生協会作成、PDF)

営業中にできる対策と、閉店後・休業日に行う作業

別表第17は、施設とその周辺を定期的に清掃して稼働中も清潔な状態を維持すること、窓と出入口は原則として開放したままにせず、開放する場合はねずみや昆虫の侵入を防ぐ措置を講じることを求めています。排水溝は固形物の流入を防いで清掃し、破損したら速やかに補修することも定めています。

営業中は、餌と侵入の機会を減らす作業と、見つけたときの記録が中心です。薬剤を使う作業、機器を動かして裏側を見る作業、床や壁の補修は、食品や客に影響しにくい営業時間外に分けるのが現実的です。どの作業をいつ誰が行うかは、業者との契約でも決めておきます。

納品の受け入れ時の確認は、飲食店の害虫予防は納品時からで詳しく扱っています。食品の置き方と先入れ先出しの点検は、食品売場や保管庫の害虫対策も参考になります。

営業中にできる対策と、閉店後・休業日に行う作業:確認項目
時間帯できること避けること・注意
営業中(仕込み〜提供)床や排水口周りの食べこぼしの清掃、ごみ容器のふたを閉める、勝手口を開けっぱなしにしない、粘着シートの見回り、見つけたときの記録食品や器具のそばでの薬剤噴霧、客席から見える場所での大がかりな対応
閉店直後機器まわりと床の清掃、排水溝の洗浄、ごみの搬出、食品を容器に入れて床と壁から離す水気や食べ物を残したまま退店しない
休業日・定休日機器を動かしての裏側の点検、業者による調査と施工、すき間の補修薬剤処理後の換気と清掃の手順は、製品の表示と業者の説明に従う
納品の受け入れ時外箱から出して保管し、傷や虫の有無を確認する納品箱を厨房の奥へ持ち込む、箱を床に置いたまま保管する

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|食品衛生法施行規則(別表第17ほか)

駆除業者と定期契約を結ぶ前に決める項目

定期契約を回数と料金だけで比べると、調査や報告書が薄い契約を見落とします。施行規則が求めるのは、駆除作業に加えて、発生場所や侵入経路を調べ、記録を残すことです。契約の前に「何を調べ、何を報告書に書くか」を確認します。確認点は害虫の定期防除契約の確認点、一式表記の見積書は見積書が「駆除一式」だけのときの頼み方が参考になります。

建築物衛生法には、建築物のねずみや昆虫の防除を行う事業者が、営業所ごとに都道府県知事の登録を受けられる制度があり、登録業者は「登録建築物ねずみ昆虫等防除業」と表示できます。任意の制度で、登録の有無だけで作業の質が決まるわけではないため、調査や報告の内容と合わせて確認します。

日本ペストコントロール協会は、2026年10月時点の掲載で、全国47都道府県の協会に害虫相談所があり、電話などによる相談受付は無料と案内しています。現場調査や防除施工が必要な場合は原則有料で、相談内容に応じた事業者の紹介もできるとされています。業者を探す入口の一つになります。

駆除業者と定期契約を結ぶ前に決める項目:確認項目
決める項目決めておくこと確認の手がかり
作業の頻度と時期年に何回、どの月に行うか。定期調査を中心にする場合は調査の間隔施行規則の年2回以上、手引書の記載例(6月と11月)
調査の内容発生場所、生息場所、侵入経路、被害状況をどう調べるか。粘着シートなどの数と配置図施行規則の「定期に、統一的に調査」
防除の方法と薬剤使う方法、薬剤の名称、使用場所、食品と器具の養生、営業時間外に行うか施行規則の「食品を汚染しないよう十分に注意」、製品の表示
報告書実施日、作業者、対象区画、結果、補修の提案を書面でもらい、1年間は保管する施行規則の「実施記録を1年間保存」、手引書の「1年間程度の保管」
緊急対応追加で虫が出たときの連絡先、来訪までの目安、追加料金の有無契約書や見積書の条文
作業時間と立入範囲営業時間外の鍵の受け渡し、入る区画、客席と仕込み場の養生調査前に立入範囲を書面で確認する
費用の内訳定期料金に含む作業、追加施工、再発時の再訪の扱い見積書の項目名と数量、契約書の条件

参考:日本ペストコントロール協会|都道府県協会(害虫相談所)

テナントビルでの管理会社・ほかの店舗との分担

建築物衛生法は、店舗や事務所などに使われる相当程度の規模の建築物のうち政令で定めるものを特定建築物とし、維持管理について権原を持つ人に、建築物環境衛生管理基準に従った維持管理を求めています。基準にはねずみ、昆虫等の防除も含まれ、施行規則は、発生場所、生息場所、侵入経路、被害の状況を6か月以内ごとに1回、定期に統一的に調査し、その結果に基づく措置を講じることを定めています。

自分のテナントがこの特定建築物にあたるか、ビル側の調査や防除がいつどこまで行われるかは、管理会社や管轄の保健所に確認します。共用部の防除と、厨房の中の防除は、賃貸借契約や管理規約で担当が分かれていることがあります。「どの区画を誰が担当するか」を書き出して確認すると、抜けや重なりを防げます。

ビル側と店舗側で確認すること

確認の目的は、責任の押し付け合いを避けることです。連絡先と日程をそろえておくと、虫が出たときの初動が早くなります。

  • ビル側の調査や防除の実施時期と、対象になる区画(共用部、ごみ置き場、排水設備、テナント内部)
  • 調査結果や報告書を、テナントも見られるか
  • 店舗の専有部分(厨房、倉庫)の防除を、自店で契約する範囲
  • 工事や薬剤処理の日程を、事前にテナントへ連絡してもらえるか

ほかの店舗でも出ているとき

同じフロアや隣の店でも虫が見つかっている場合、共用の排水設備や配管、ごみ置き場を通じてほかの区画とつながっている可能性があります。自店だけ対策を強めても、共用部が変わらなければ見つかり続けることがあります。記録を添えて管理会社に伝え、ビルとしての調査や、複数の店舗での同時の防除ができるかを相談します。

配管まわりの調査の頼み方は、マンションの配管シャフト周辺の害虫調査の考え方が参考になります。立入範囲の調整は、店舗の害獣調査で営業時間と立入範囲を調整する方法もあわせて確認してください。

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則

保健所へ相談するときと、監視指導で確認される記録

食品衛生法は、都道府県知事等が必要があると認めるときに、営業者に報告を求め、職員が営業の場所や施設、帳簿書類などを検査できると定めています(第28条)。衛生管理に関する規定や施設の基準に違反した場合には、施設の整備改善の命令や営業の禁止・停止などができる規定もあります(第60条、第61条)。どの場合にどの措置となるかは保健所の確認による個別の判断で、この記事では結果を断定しません。

日本食品衛生協会の手引書は、一連の記録を1年間程度保管し、保健所の食品衛生監視員から提示を求められたら速やかに対応するよう示しています。ゴキブリ対策では、業者の作業報告書、自店の点検表、見つけた日時と場所の記録、補修の記録が、取り組みを説明する材料になります。

相談のきっかけは、虫が客席や料理で見つかった、苦情を受けた、同じ場所で繰り返し出る、業者に任せても減らない、などです。厚生労働省は、手引書の選び方や取り組み方に迷う場合に、必要に応じて管轄保健所の食品衛生監視員の助言を得るよう案内しています。連絡の前に、次の情報をまとめておくと話が進みます。

  • 見つけた日時と場所、数、成虫か幼虫か
  • 食品や客への影響(混入、苦情)の有無
  • これまでの防除作業の日付、実施者、報告書
  • 営業形態(営業時間、ビル管理会社の有無、共用設備)

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|食品衛生法