毒のある毛虫と毒のない毛虫|種類を見分ける前に知っておくこと

チョウやガの幼虫のうち、毛が目立つものが毛虫、毛の少ないものがイモムシと呼ばれます。日本皮膚科学会は、毛虫の毛に毒があって必ずかぶれるものと思われがちですが、すべての毛虫が毒を持つわけではなく、有毒毛を持つ一部の毛虫に触れた場合にだけ皮膚炎が起きると説明しています。有毒毛には、毒針毛を持つドクガ類・カレハガ類と、毒のとげ(毒棘)を持つイラガ類があります。

農林水産・食品産業技術振興協会の解説では、チョウ・ガの幼虫のうちいわゆる毛虫は2割ほどで、人を刺す種類はその中のごく一部とされています。どんなに恐ろしそうな見た目でも、大部分の毛虫は無毒という前提で、まず庭に多い刺す毛虫を覚えるのが近道です。刺されたときの対処は、毛虫に刺されたときの公的な対処の記事で整理しています。

参考:日本皮膚科学会|皮膚科Q&A 虫刺され Q11 ケムシに触れるとどうなりますか?

読者の疑問

毒のある毛虫は見た目で見分けられますか?

比較ガイド

見た目だけで毒の有無を決めるのは難しいです。色や模様は成長の段階で変わり、資料ごとの表現にも幅があります。木の種類と発生時期、群れ方を組み合わせて候補を絞り、分からないときは触らずに写真を撮って保健所などに相談してください。

毒のある毛虫の一覧|種類・発生する木・時期・見た目

自治体の衛生研究所が公開している昆虫の解説を中心に、庭木や街路樹で出会いやすい毒のある種類を並べました。時期は地域や気候で前後するため、出典に書かれた値として読んでください。2026年10月3日に開いて確認した資料に基づきます。

毒のある毛虫の一覧|種類・発生する木・時期・見た目:確認項目
種類主な木幼虫の時期の目安(出典の値)見た目と注意点
チャドクガツバキ、サザンカ、チャなどツバキ科年2回。4〜6月と8〜9月ごろ(茅ヶ崎市・世田谷区)若い幼虫は葉の上に群れて並ぶ。育った幼虫で約25mm。卵から成虫まで毒針毛がある
ドクガサクラ、ウメ、バラ、カキなど多くの樹木や草花年1回。越冬した幼虫が4月初めから成長し、6〜7月ごろ繭を作る(名古屋市)幼虫は約40mm。胴部の毒針毛で激しい皮膚炎。成虫にも毒針毛が付く
モンシロドクガサクラ・ウメなどのバラ科、クヌギ・クリなど年2〜3回。6月と8〜9月に多い(名古屋市)2齢幼虫以降に毒針毛を生じる。成虫は白い翅
マツカレハアカマツ、クロマツ、ヒマラヤスギなど年1回。幼虫で越冬し、翌年6月ごろ繭を作る(名古屋市)70〜80mmに達する大型。胸部背面の藍黒色の毛の束が毒針毛で、繭にも付く
イラガカキ、ウメ、モミジ、サクラ、ケヤキなど年1回。幼虫は夏から秋(名古屋市)。福井市は7〜10月ごろ約24mmで黄緑色のナマコ型。背面の褐色の斑紋と毒棘。繭は丸くて硬い
アオイラガ・クロシタアオイラガカキ、ナシ、クリ、ヤナギ、サクラ、ウメなど年2回(名古屋市)黄色や青黄色で背に青い縦条。毒棘に触れると激痛
ヒロヘリアオイラガサクラ、モミジ、カシ類、ナンキンハゼ、カキ年2回。夏と秋(大阪健康安全基盤研究所)外来種。後胸背面の突起に朱色の棘。樹上の繭にも毒針が付く
タケノホソクロバタケ、ササ年2回。夏と秋(大阪健康安全基盤研究所)薄オレンジ色に黒い毛の小型(2cm弱)。葉が白く目立つ。痛みとかゆみ
ウメスカシクロバウメ、サクラなどのバラ科秋にふ化して越冬し、5月ごろ葉裏に繭(名古屋市)黒紫色で約18mm。触れると皮膚炎

参考:大阪健康安全基盤研究所|毒毛虫に注意しましょう

毒のない毛虫|アメリカシロヒトリ・オビカレハ・マイマイガの特徴

毒のない毛虫は、葉を食べる被害(食害)が主な問題になります。ただし、無毒だから触ってよいという意味ではありません。種類が分からない間は、素手で触らずに様子を見るのが前提です。公的資料で無毒または毒針毛を持たないと書かれている代表的な3種類を整理します。

アメリカシロヒトリ|白い巣網で葉が透ける

名古屋市衛生研究所は、アメリカシロヒトリの幼虫は終齢で約30mm、頭は黒色、背面は灰黒色、両側の下部は淡黄色で、若い幼虫はクモの巣状のテントを作って集団で生活すると説明し、人体への直接被害はないとしています。福井市も、無毒で刺すことはないと案内し、サクラ、プラタナス、モミジバフウなどで被害を受けた葉は葉脈だけが残って透けて見えるとしています。

ただし、餌を食べ尽くした幼虫が移動するときに家屋へ入り、不快害虫になることがあります(名古屋市)。盛岡市は、1匹の産卵数が700〜1000個と極めて多いと案内しています。

オビカレハ|枝の股にテント状の巣を作る

名古屋市衛生研究所は、オビカレハは毒針毛を持たず皮膚炎は起こさない一方で、ウメ、サクラ、モモ、バラ、ヤナギ類など多くの樹木を傷める果樹・庭園の害虫としています。若い幼虫は枝の股にテント状の巣を作って集団でいるため、天幕毛虫(テンマクケムシ)とも呼ばれます。

マイマイガ|毒針毛は持たないが、初期の幼虫の毛で軽いかぶれ

名古屋市衛生研究所は、マイマイガの幼虫は多数の毛があり、触れるとチクチクすることがあるものの毒針毛は持たず、ふ化したばかりの1齢幼虫にだけ毒針毛があって、まれに皮膚炎を起こすと説明しています。滝川市は、初期の幼虫の毛には毒があって触れるとかぶれることがあり、約10年間隔で多発すると案内しています。毒の有無は資料で表現に幅があるため、素手では触らない方が安全です。

参考:名古屋市衛生研究所|アメリカシロヒトリ

木の種類から毛虫の候補を絞る|ツバキ・サクラ・カキ・マツ・竹

木の種類は、毛虫の名前を絞り込む最短の手がかりです。表は、出典に書かれた代表的な組み合わせを木ごとに並べ直した独自の整理で、ここにない木にも発生します。表で候補を絞ったうえで、最終的な判断は葉の裏や幹の写真を持って窓口に相談してください。

木の種類から毛虫の候補を絞る|ツバキ・サクラ・カキ・マツ・竹:確認項目
木毒のある候補毒のない候補メモ
ツバキ・サザンカ・チャチャドクガ(出典で確認できた候補なし)横浜市衛生研究所は、ツバキ・サザンカで集団で葉を食べている毛虫はチャドクガの幼虫と思うよう案内している
サクラドクガ、モンシロドクガ、イラガ類、ヒロヘリアオイラガアメリカシロヒトリ、オビカレハ、マイマイガ種類が多い。白い巣網はアメリカシロヒトリ、枝の股のテント状の巣はオビカレハの特徴として資料に書かれている
カキイラガ、アオイラガ、ドクガアメリカシロヒトリ夏から秋に出るイラガ類は、触れた瞬間に痛みが出る
ウメイラガ、ドクガ、モンシロドクガ、ウメスカシクロバオビカレハ松竹梅の縁起木にも毒毛虫がよく発生すると大阪健康安全基盤研究所が注意している
マツ類・ヒマラヤスギマツカレハ(出典で確認できた候補なし)大型で、胸部背面に藍黒色の毛の束がある
タケ・ササタケノホソクロバ(出典で確認できた候補なし)葉が白くなったら幼虫を疑う。都市の植え込みでも見られる
モミジ・カエデイラガ類、ヒロヘリアオイラガ(出典で確認できた候補なし)外来のヒロヘリアオイラガは街路樹や庭園で大発生が続く地域がある
ヤナギ・プラタナスアオイラガ、テングイラガ(ヤナギ。名古屋市)アメリカシロヒトリ(両方)、オビカレハ・マイマイガ(ヤナギ)プラタナスにつく毒のある種類は、確認した出典には挙がっていなかった。巣網と葉の透け方を確認する

参考:農林水産・食品産業技術振興協会|庭の刺す毛虫・刺さない毛虫

発生時期のカレンダー|毛虫は何月に出て、何月まで見られるか

毛虫の時期は、春から秋まで長く続きます。出典の値を種類別に並べると、同じ種類でも資料により数週間のずれがあり、地域差や年の気候による違いがあることが分かります。「何月まで」という質問に1つの答えを決められないため、出典に書かれた範囲を示します。

世田谷区の月別の表では、チャドクガは1〜3月が卵、4月が卵と幼虫、5月が幼虫、6月が幼虫と蛹、7月が成虫と卵、8月が幼虫、9月が幼虫と蛹、10月が成虫と卵、11〜12月が卵とされています。つまり、毛虫が見えない冬も、葉の裏に卵が残っています。

発生時期のカレンダー|毛虫は何月に出て、何月まで見られるか:確認項目
種類幼虫が見られる時期の目安年の発生回数・越冬の姿
チャドクガ4〜6月と8〜9月(茅ヶ崎市・世田谷区)。横浜市衛生研究所は5〜6月と9〜10月年2回。気候で3回のことも。葉の裏の卵で越冬
ドクガ春から6〜7月ごろ(名古屋市)。北海道檜山振興局は、6〜7月に大きな幼虫が移動し、お盆過ぎにふ化した幼虫が9〜10月ごろに葉を食べて育つと説明年1回。幼虫で越冬。成虫は6〜8月ごろ
マツカレハ春から夏。翌年6月ごろ繭を作る年1回。幼虫で越冬
イラガ夏から秋。福井市は7〜10月ごろ年1回(名古屋市)
ヒロヘリアオイラガ・タケノホソクロバ夏と秋年2回(大阪健康安全基盤研究所)
アメリカシロヒトリ山形市は6月上旬〜7月中旬と8月上旬〜9月中旬。盛岡市は6月上旬〜7月と8月下旬〜10月初め年2回。福井市は6月〜7月上旬、8月中旬、9月下旬〜10月上旬の年3回と案内
マイマイガ5〜8月(滝川市)。成虫は7〜8月卵で越冬(滝川市・名古屋市)。約10年間隔で多発(滝川市)

参考:世田谷区|チャドクガについて

色・模様・形から毛虫の種類を調べる|見た目の逆引き

「赤と黒」「真っ黒」「カラフル」など、見た目から種類を調べたい人のために、公的資料の外見の記述を逆引きの形に並べました。色は成長の段階や個体で変わり、資料ごとの表現にも幅があります。色だけで毒の有無を決めず、木の種類と発生時期を組み合わせて確認してください。

色・模様・形から毛虫の種類を調べる|見た目の逆引き:確認項目
見た目の手がかり候補(出典の記述)確認すること
葉に規則正しく並んで食べる、肌色〜淡黄色の小さな群れチャドクガの若い幼虫(福井市・横浜市衛生研究所)ツバキ科の木か。触れずに葉の裏を確認する
黒地に橙色のしま模様と長い毛(育った幼虫)チャドクガ(福井市の記述)。横浜市衛生研究所は、成長すると背中に黒いこぶができると説明成長段階で見え方が変わる。群れで葉を食べているか
白い網状の巣で、葉が透けているアメリカシロヒトリ毒針毛なし。ただし素手で触らない
枝の股にテント状の巣オビカレハ毒針毛を持たないとされる
黄緑色でナマコのような形、背に褐色の斑紋とトゲイラガ触れた瞬間の痛みで気づくことが多い
黄色や青黄色で、背中に青い縦すじアオイラガ類毒棘があり激痛
派手な体で、後ろの突起に朱色の棘ヒロヘリアオイラガ外来種。繭にも毒針が付く
薄オレンジ色に黒い毛の小型(2cm弱)、竹やササタケノホソクロバ葉が白くなる。痛みとかゆみ
全体が黒く、黄白色の紋と赤い隆起があるナマコ型シロシタホタルガ体液に触れると皮膚炎を起こすことがある
黒紫色で約18mm、ウメやサクラウメスカシクロバ触れると皮膚炎を起こす
大型(約70mm)で胸の背に藍黒色の毛の束、マツマツカレハ毒針毛は触れると激しい痛み

参考:名古屋市衛生研究所|イラガ類

成虫・卵・抜け殻・繭にも注意が必要な種類|毛虫がいない時期も気をつける

「毛虫の姿が見えなければ安心」とは言えない種類があります。毒針毛が、幼虫以外のどの段階に残るかを、種類別に整理します。

チャドクガ・ドクガ|卵から成虫まで毒針毛が付く

世田谷区は、チャドクガは卵から成虫までの全期間に毒針毛があり、脱皮殻や繭、死骸にも残ると説明しています。名古屋市衛生研究所は、ドクガについて、蛹になるときに繭の内側へ毒針毛を塗りつけるため、羽化した成虫にも付着し、室内に迷い込んだガで皮膚炎が起きると説明しています。成虫の鱗粉そのものには毒性はないとされます。

マツカレハ・イラガ類|繭にも毒がある

名古屋市衛生研究所は、マツカレハの繭にも毒針毛が付着していて、触れると皮膚炎を起こすとしています。ヒロヘリアオイラガは、樹上で冬を越す丸い繭にも毒針が付いているため、冬の枝の手入れでも触れないよう注意が必要です。

冬の卵の探し方|葉の裏の黄色い毛玉

チャドクガは、葉の裏に産み付けられた黄色い毛玉状の卵のかたまりで冬を越します(茅ヶ崎市)。奈良市は、ツバキやサザンカを植えている家では、冬のうちに卵を探して除去したり、幼虫がまだ小さいうちに葉を切り取ったりするのが効果的としています。卵にも毒針毛が付くため、素手で触らず、除去の手順は毛虫の駆除方法の記事で確認してください。

参考:名古屋市衛生研究所|ドクガ類

毛虫の種類が分からないときの窓口と、写真の残し方

種類が分からないときは、写真と発生場所をそろえて相談します。窓口ごとに受付の方法や費用が違うため、まず電話で確認してください。写真を受け付けるかどうか、実物の持ち込みの可否は、今回確認した公式ページには書かれていないものが多く、窓口に確認する必要があります。毛虫は死んだあとも毒針毛が残るため、実物を持ち込む前に窓口へ相談してください。

季節ごとの発生の目安を一覧で見たいときは、害虫の発生時期カレンダーも参考になります。毛虫が多数発生して市区町村の窓口を探すときは、毛虫が大量発生したときの連絡先の記事にまとめています。

毛虫の種類が分からないときの窓口と、写真の残し方:確認項目
窓口相談できること(公式ページの記載)注意
保健所の衛生害虫の窓口(例:姫路市保健所衛生課)虫の同定、生態や駆除方法の説明。月曜〜金曜の午前9時〜午後5時、無料担当者が不在のことがあり事前予約を案内。窓口の有無は自治体で違う
大阪市の各区保健福祉センター生活環境業務担当ネズミや衛生害虫等の確認と防除方法の相談駆除は土地の所有者・管理者が行う。市は薬剤の配布や駆除をしないと案内
都道府県のペストコントロール協会の害虫相談所電話などによる相談は無料。適切な事業者の紹介もある現場調査や防除施工は原則有料(日本ペストコントロール協会の案内)
日本ペストコントロール協会の同定サービス現在は行っていない。関連団体を紹介している内容や料金は各団体へ直接問い合わせる
  • 木の全体と、葉の形・幹の様子が分かる写真
  • 幼虫の群れや巣網、卵のかたまり(離れた位置から。触れない)
  • 葉の食べ跡や、足元に落ちた糞
  • 見つけた月日と場所(自宅の庭、公園、街路樹、隣の敷地など)

参考:姫路市|虫の相談窓口