飲食店でネズミが出たとき最初にすること
東京都食品衛生協会の資料は、ネズミやハエ、ゴキブリなどの衛生害虫は有害な細菌を保菌していることがあり、施設内を動き回って食品や作業台、器具を直接汚染してしまうと説明しています。そのため、ネズミの痕跡や姿を見たら、駆除の手配より先に、食品と器具の扱いを仕分けて汚染の広がりを止めます。
食品衛生法施行規則の基準も、原材料・製品・包装資材は容器に入れて床や壁から離して保存すること、開封したものはふた付きの容器に入れることなどを定めています。かじられた袋や、フンが近くにあった食品の扱いは、施設の衛生管理計画に決めた手順と、管轄の保健所の助言に沿って判断し、自己判断で使い続けないようにします。表の右側の2列は、手引書の「問題があったとき」の考え方に合わせた当サイトの整理で、法令の文言ではありません。
| 見つけた場面 | 最初に確認すること | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 厨房・食品庫で姿や足音 | 食品・包装資材・器具に接触した可能性のある範囲を仕分ける。調理を止める範囲は責任者が決める | 日時、場所、見かけた数、周囲の食品 |
| フンやかじり跡を発見 | フンを素手で触らず、周囲の食品と器具を確認する。清掃・消毒は衛生管理計画の手順に従う | 写真、位置、清掃した日時と担当者 |
| 客席やトイレなど客の目に触れる場所 | 責任者へ連絡し、保健所や防除業者へ相談する前に状況を整理する | 時刻、客からの申出の有無、対応内容 |
| 納品時・ごみ出し時 | 搬入した箱や段ボールに痕跡がないか確認し、搬入口を開けたままにしない | 納品業者名、搬入日、箱の状態 |
参考:一般社団法人東京都食品衛生協会|食品衛生あれこれポイント №11 ねずみ族、昆虫対策(PDF)
飲食店でネズミを見かけたら、すぐ営業停止になりますか?
食品衛生法は、基準を守る措置の規定に違反した場合に、許可の取消しや営業の禁止・停止ができる仕組みを定めています。ネズミを見かけたことの扱いは条文だけでは決まらず、状況と自治体の判断で変わります。食品と器具の仕分け、侵入口の調査、記録を行い、保健所に相談してください。
法令で求められるねずみ対策と記録|食品衛生法施行規則の別表第17
食品衛生法は、営業者が厚生労働省令の基準に従って公衆衛生上必要な措置を定め、守ることを求め(第51条第2項)、その基準に「施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理」を含めています(同条第1項第1号)。具体的な内容は、食品衛生法施行規則の別表第17(一般的な衛生管理に関する基準)にあります。e-Govに掲載された条文を、2026年10月3日に確認しました。
営業許可の施設基準(別表第19)にも、必要に応じてネズミ・昆虫の侵入を防ぐ設備と、侵入時に駆除するための設備を持つことが含まれ、具体の基準は都道府県が条例で定めます(食品衛生法第54条)。お店の所在地の保健所で、条例の施設基準と運用を確認してください。
営業への影響|行政指導・処分の仕組み
食品衛生法は、都道府県知事などが営業の場所や施設に臨検して検査できること(第28条)と、営業者が基準を守る措置の規定(第51条第2項)に違反した場合に、許可の取消しや営業の禁止、期間を定めた停止ができること(第60条)を定めています。営業の禁止や停止は、条文が列挙する規定への違反を前提にした仕組みで、実際にどの対応になるかは状況と自治体の判断で決まるため、この記事では結果を断定しません。対策と記録を整えておくことが、保健所への説明の土台になります。
| 項目 | 基準の内容(要約) | 店でそろえるもの |
|---|---|---|
| 侵入防止と繁殖場所の排除 | 施設と周囲を維持管理できる状態に保ち、繁殖場所をなくす。網戸、トラップ、排水溝のふたなどで侵入を防ぐ | 網戸・排水溝のふた・すき間の点検表 |
| 駆除作業と記録 | 年2回以上駆除作業を行い、実施記録を1年間保存する。定期調査の結果に基づき措置を講じるなど、目的を達する方法なら、施設の状況に応じた方法と頻度でよい | 作業日、実施者、調査結果と措置の記録 |
| 殺そ剤・殺虫剤の使用 | 食品や添加物を汚染しないよう、取扱いに十分注意する | 使用場所・使用日と、食品の保管状況の確認 |
| 保管方法 | 原材料・製品・包装資材は容器に入れ、床や壁から離す。開封したものはふた付き容器に入れる | 保管棚の配置、容器の種類 |
| 窓・出入口 | 原則として開けたままにしない。開ける場合は、ほこり・ネズミ・昆虫が入らない措置を講じる | 搬入口・勝手口の運用ルール |
HACCPの手引書でのねずみ対策の位置づけ
厚生労働省は、小規模な飲食店などが、業界団体が作成し厚生労働省が内容を確認した手引書に沿って、衛生管理計画の作成、従業員への周知、実施の記録、記録の保存、振り返りを行えば、法第51条第2項の措置を定め守っているものと見なすと案内しています。小規模な一般飲食店向けには、日本食品衛生協会の手引書(令和6年1月改訂)があります。
この手引書は、基本の管理項目に加えて、施設によって重要になる項目の例として「そ族・昆虫対策」を挙げ、ネズミや衛生害虫が調理環境に入ったり発生したりすると二次汚染や異物混入につながるため、しっかり対策を取るよう説明しています。管理の例は、実施時期が6月と11月、方法が駆除作業の実施、問題があったときは作業中に見つけたら可能な限り駆除するとともに繁殖場所や侵入経路を確認して必要な対策をとる、という書き方です。
「6月と11月」はあくまで例で、実施時期や頻度は、お店の状況に合わせて計画に書く必要があります。振り返りでは、重要な問題や同じ問題が繰り返し発生したときに、原因を考えて計画や手順書を見直すとされています。虫の側の点検記録は、飲食店のゴキブリ対策でも整理しています。
| 計画の欄 | 手引書の例 | 自店で決めること |
|---|---|---|
| いつ | 6月と11月 | 実施月、毎日の目視や週1回の点検など確認の頻度、業者作業の予定 |
| どのように | 駆除作業を実施 | 自店で点検する範囲(厨房・食品庫・ごみ置き場・搬入口)と、業者に任せる範囲 |
| 問題があったとき | 見つけたら可能な限り駆除し、繁殖場所や侵入経路を確認して必要な対策をとる | 連絡先(責任者・防除業者・保健所)、食品と器具の仕分け手順、再発時の見直し |
| 記録 | 手引書の記録様式で実施状況を記録し、一連の記録は1年間程度保管する | 記録の保管場所と担当者、駆除作業の記録を1年間保存できているか |
参考:厚生労働省|HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け、令和6年1月改訂、日本食品衛生協会作成、PDF)
飲食店の厨房・ごみ置き場・納品口|ネズミの侵入口と餌の管理
東京都の冊子は、クマネズミはビルの天井裏や壁の中、冷蔵庫など電気機器の裏に巣を作り、電線やガス管、排水管などのパイプ類を伝ってごみ置き場や食品保管場所へ移動すると説明しています。ドブネズミは植込みの土に穴を掘って巣を作り、低い場所で活動して調理場の床や下水溝を歩き回るとされています。種類で通り道が違うため、点検は床付近と高い位置の両方に及びます。
餌を断つ運用
東京都の冊子は、食品はふた付き容器へ、生ごみはふた付き容器へと説明し、屋外が乱雑だと外のネズミを寄せつけ、壁沿いの物は隠れ場所になるとしています。豊島区池袋保健所は、飲食店の多い商店街では、ドブネズミが飲食店から出る生ごみやポイ捨ての食べ物を餌にしていると案内し、街ぐるみで生ごみを放置しないことを呼びかけています。ごみ置き場の点検はごみ置き場のネズミ対策にまとめています。
- 食材・開封済みの原材料はふた付き容器に入れ、床や壁から離す
- 生ごみはふた付き容器に入れ、ごみ置き場へ出す時間は回収時間と地域のルールに合わせる
- 床に置いた段ボールを減らし、壁沿いの物置き場をなくす
- 従業員の飲食物や持ち帰り用の食品も保管場所を決める
侵入口をふさぐ運用
基準は、網戸、排水溝のふたなどを設けて侵入を防ぐこと、窓や出入口を開けたままにしないことを求めています。冊子は、配管の貫通部のすき間は不燃性のパテやモルタルで埋め、電気配線が壁を貫通する部分は危険なので電気屋に依頼するよう案内しています。納品時の受け入れ手順は、飲食店の害虫予防は納品時からで扱っています。
- 網戸、排水溝のふた、吸排気口の網が壊れていないか見る
- 窓・出入口は開放したままにしない(開ける場合は侵入防止の措置を講じる)
- 配管や電線の貫通部のすき間は、不燃性のパテやモルタルでふさぐ
- 排水溝や排水管まわりの破損を見つけたら、管理者に連絡する
| 場所 | ネズミが入りやすい理由 | 点検の例 |
|---|---|---|
| 厨房・食品庫 | 餌になる食材や厨芥があり、冷蔵庫など電気機器の裏には暖かく人目につきにくい場所がある | 機器の裏や配管貫通部のすき間、食品容器のふた、床に置いた段ボール |
| ごみ置き場 | 生ごみが餌になる。電線やパイプを伝って厨房とつながることがある | ふたが閉まっているか、回収までの置き場所、周囲の破損やすき間 |
| 納品口・搬入口 | 出入口を開けたままにすると、ネズミなどが入りやすい。基準は侵入防止の措置を求める | 開放しない運用、箱を開ける場所、床や壁際の痕跡 |
| 排水溝・屋外 | ドブネズミは排水管や下水溝を通って来ることがあり、植込みなど土のある場所が拠点になる | 排水溝のふた、壁沿いの置き物、植込みの巣穴 |
テナントビルのネズミ対策|管理会社・ほかの店舗との分担
建築物衛生法は、興行場、百貨店、店舗、事務所などで一定規模以上の特定建築物の維持管理について、権原を持つ者が建築物環境衛生管理基準に従うことを求め、その基準に清掃とねずみ・昆虫等の防除を含めています。施行令は、店舗や事務所などの用途に供される部分の延べ面積が3,000平方メートル以上の建築物を、特定建築物としています。
施行規則は、ねずみ等の発生場所、生息場所、侵入経路と被害の状況について、6月以内ごとに1回、定期に統一的に調査し、結果に基づき必要な措置を講じることを求めています。殺そ剤や殺虫剤を使う場合は、薬機法の承認を受けた医薬品または医薬部外品を用いるとも定められています。特定建築物以外でも、多数の者が使用する建築物の権原者は、基準に従うよう努めるものとされています(法第4条第3項)。
お店の入るビルが特定建築物に当たるかどうかは、オーナーや管理会社に確認できます。当たる場合でも、店舗の専有部分の防除や費用を誰が負担するかは、賃貸借契約や管理規約で決まることが多いため、契約書の条文と、ビル全体の防除計画の実施日・報告書の有無を確認します。東京都の冊子は、集合住宅でネズミが発生したときは入居者全体での対応が必要で、被害状況や侵入経路、ごみ置き場などを建物全体で調べると説明しており、複数の店舗が入るビルでも参考になります。営業を続けながら調査を受ける調整は、店舗の害獣調査にまとめています。
| 確認すること | 確認先 | 聞く内容の例 |
|---|---|---|
| ビル全体の防除計画 | オーナー・管理会社 | 定期調査の実施日、報告書の共有、共用部(ごみ置き場・荷さばき場)の担当 |
| 専有部分の対策と費用 | 賃貸借契約書・管理規約・管理会社 | 専有部の防除を誰が行うか、費用の負担、工事で入室できる条件 |
| ほかの店舗の痕跡 | 管理会社・隣接する店舗 | ごみ置き場や排水の共有、同じ時期に出た痕跡の有無 |
| 法令上の位置づけ | 管理会社・保健所 | 特定建築物に当たるか、ビルとしての調査の記録の有無 |
ネズミの防除業者に頼む範囲と契約で確認すること
東京都の冊子は、ネズミ駆除には事前の生息状況調査、それに基づく捕獲作業と防そ修繕、その後の効果判定が必要で、複数回の作業になると説明しています。東京都食品衛生協会の資料は、駆除を業者へ委託する方法があるとしています。業者に委託する場合は、業者の報告書を実施記録の一部として保存できるよう、契約時に報告の形式を決めておくと整理しやすくなります。
国民生活センターは、害虫駆除サービスについて、サイトや広告に「料金〇〇円から」とあっても最低料金で依頼できるとは限らないとして、複数社から見積もりを取り、不安をあおって比較の機会を奪う事業者とは契約しないよう注意喚起しています(2026年7月23日公表)。比べるときの質問は、ネズミ駆除業者の選び方も使えます。この記事では独自の相場は示しません。
| 確認項目 | 聞くこと | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 調査 | 事前の生息状況調査をするか。調査方法は何か | 東京都食品衛生協会は、調査方法として目視、トラップ、無毒餌を挙げている |
| 作業内容 | 捕獲・薬剤・環境面の指導のうち何をするか。防そ修繕を含むか | 東京都の冊子は、環境面の対策や指導もできる業者を選ぶ点としている |
| 食品への配慮 | 薬剤の置き場所、営業時間との調整、食品を汚染しない取扱い | 施行規則は、殺そ剤・殺虫剤で食品を汚染しないよう求めている |
| 効果の確認と記録 | 効果判定の方法、報告書の内容と提出時期、記録の様式 | 冊子は事後の効果判定を確認点に挙げ、法令は実施記録の1年間保存を求めている |
| 費用と契約 | 見積書の内訳、追加作業の条件、契約期間、解約の条件 | 冊子は見積書を作ってもらい、納得できるまで説明を聞くよう勧めている |
ネズミの相談で保健所へ連絡するとき
ネズミの相談先は、自治体によって部署が分かれていることがあります。東京都多摩小平保健所のページは、保健所はねずみ被害防止の相談に応じて助言するが防除や駆除作業は実施せず、自分で対応できない場合は業者団体を紹介し、地域対策は市役所に相談するよう案内しています。大津市保健所は、衛生課の食品指導係を問い合わせ先に掲げ、営業施設のネズミ・昆虫対策の義務を周知しています。まず、営業許可を受けた保健所の食品衛生の担当に基準と記録を相談し、ネズミ防除の相談窓口が別の部署かどうかも電話で確認します。
厚生労働省は、手引書の中に自分の業種が見つからないときなどに、必要に応じて管轄保健所の食品衛生監視員から助言を得て取り組むよう案内しています。ネズミについても、衛生管理計画と記録を持参すると相談しやすくなります。
- 痕跡を見つけた日時、場所、写真
- 衛生管理計画の「そ族・昆虫対策」の欄と、直近の駆除作業の記録
- 食品や器具の仕分け、廃棄、清掃をした内容
- 防除業者と契約している場合は、報告書と連絡先







