ゴキブリ対策の順番|調べる→減らす→塞ぐ→薬剤→確かめる
厚生労働省の「建築物における維持管理マニュアル」は、ねずみや害虫の対策をIPM(総合的有害生物管理)の考え方で示しています。まず生息の実態を調査し、環境整備を含む発生源対策と侵入防止対策を行い、そのうえで状況に応じて薬剤、トラップ、侵入場所の閉鎖を組み合わせ、最後に効果を評価する順番です。特定建築物の管理向けの手引きですが、家庭のゴキブリ対策にも通じる流れです。
同じ手引きは、生息密度をゼロにすることを目標にすると、わずかな潜み場所の見落としや外部からの侵入に対応し続ける負担が大きく、過度な薬剤使用を招いてきた例も多いと述べています。そのうえで、目標とする水準を決めて管理する考え方を示しています。「薬剤を重ねれば出なくなる」と考えず、環境の見直しを土台にして、薬剤は補助として使います。
| 手順 | やること | 家庭での例 |
|---|---|---|
| 1 調べる | 出る場所・時間・大きさ・幼虫の有無を記録し、粘着トラップで集まる場所を確かめる | 1週間の記録表、トラップの設置場所と捕れた数のメモ |
| 2 減らす | 餌・水・隠れ場所を減らす | ふた付きの容器、食器と生ごみの処理、水気の拭き取り、段ボールの片付け |
| 3 塞ぐ | 侵入口と潜み場所の隙間を、役割を考えながらふさぐ | 配管周りの隙間をパテやテープでふさぐ。換気口はふさがず、防虫の方法を確認する |
| 4 薬剤 | 毒餌・残効スプレー・くん煙剤などを、対象と場所を確認して補助的に使う | 潜み場所の近くに毒餌、通り道や侵入経路に残効性のあるスプレー |
| 5 確かめる | 目撃数、トラップの数、毒餌の減り方を記録し、続けるか見直すかを決める | 2〜3週間後に記録を見比べ、変化がなければ方法を見直す、または相談する |
参考:厚生労働省|建築物における維持管理マニュアル 第6章 ねずみ等の防除(IPMの施工方法)(PDF)
ゴキブリ対策で最初に何をすればよいですか?
出る場所・時間・大きさを記録し、食べ残しや生ごみ、水気、段ボールなどの餌・水・隠れ場所を減らすことから始めます。薬剤はその後に、製品表示の対象と使用場所を確認して補助的に使います。
台所・洗面所・玄関・ベランダ別|ゴキブリ対策の作業表
場所ごとに、減らすものと確認するところを分けると、作業が進めやすくなります。横浜市は、ゴキブリのひそみ場所の例として、調理台付近、レンジや冷蔵庫の下や裏、配電盤、コンセント付近、壁紙の裏、食品保管場所、ごみ置き場を挙げています。下の表は、その例と各機関の資料を、家の場所別に並べたものです。
全部を一度にやる必要はありません。ゴキブリを見かけた場所に近い行から始め、1つ終えるごとに、目撃や粘着トラップの状況が変わるかを記録します。
| 場所 | 減らすもの・片付けること | ふさぐ・確認するところ |
|---|---|---|
| 台所 | 食べ残し・生ごみ(ふた付きの容器)、洗っていない食器、コンロ周りの油汚れ、開封した食品やペットフード(密閉容器) | 冷蔵庫・コンロ・流し台の下や裏、配管まわりの隙間、食器棚の隅、コンセント付近 |
| 洗面所・浴室 | 濡れたままのマットや洗面台の水気、排水口の髪の毛 | 排水口(おわん型のトラップの有無)、使っていない排水口の封水、配管の貫通部 |
| 玄関・窓 | ドア周りに置いた段ボールや不用品、夜間の不要な灯り | ドア下の隙間、郵便受け、網戸の破れ、置き配の荷物や靴を室内に入れる前の確認 |
| ベランダ・屋外 | 植木鉢の下や物置の不用品、ごみ置き場の汚れ | エアコン配管の貫通部、室外機の周り、排水口、洗濯機の排水まわり |
参考:横浜市|ゴキブリについて
餌と水を減らす|生ごみ・食器・ペットフード・結露
千葉市は、食べ残しや生ごみをふた付きの容器に入れ、食材を密封できる容器で保管することを、ゴキブリが住みにくい家にするための基本として案内しています。横浜市も、菓子などの食べ物と生ごみは餌になるため、ふた付き容器に入れ、使った食器や調理器具は放置せず、洗って収納するよう説明しています。
餌を減らすことは、薬剤の使い方にも関わります。厚生労働省の手引きは、食品類など餌になるものを整理した後で、毒餌を少量ずつ各所に配置する手順を示しています。薬剤を先に置くのではなく、環境の見直しを先に行います。
餌を減らす:夜の流し・生ごみ・ペットフード・油汚れ
日本ペストコントロール協会は、ほんのわずかな食品クズも栄養源になるため、毎日の清掃を徹底し、台所周辺では食材、調味料、生ごみを長時間室内に放置しないよう案内しています。
- 寝る前に、流しの食器と生ごみを片付ける
- 生ごみは、ふた付きの容器に入れ、袋の口を閉じる
- 開封した乾物、菓子、ペットフードは、密閉できる容器に入れる
- コンロ周りと、冷蔵庫の下に落ちた食べかすを定期的に掃除する
水を減らす:水気・結露・排水口
ゴキブリは湿気のある場所を好みます(横浜市)。アース製薬は、台所だけでなく洗面所やトイレも掃除して清潔に保つことが大切だと説明しています。使っていない排水口は封水が切れたままになりやすいため、長く使わない排水口のにおいと虫も確認してください。
- 使い終わった流し台・洗面台の水気を拭く
- 排水口の髪の毛やぬめりを、定期的に取り除く
- 結露しやすい窓際や収納の湿気をためない
隠れ場所を減らす|段ボール・家電の裏・収納
厚生労働省の手引きは、環境整備の確認項目に、整理・整頓の状況として、ダンボール、古雑誌、古新聞など生息場所になるものが除去されているかを挙げています。千葉市は、家具と壁や床との間に隙間を作らないようにすること、通路、潜み場所、侵入経路になりそうな隙間や穴をふさぐことを案内しています。
アース製薬は、暗くて暖かい電気製品の内部にいることもあると説明しています。家電の内部を自分で開けて調べるのは避け、周囲の隙間やほこりを掃除し、使わない機器は主電源を切るなど、安全にできる範囲にとどめます。卵鞘らしい物を見つけたときはゴキブリの卵鞘らしい物を見つけたときで見分け方を確認してください。
- 段ボール・古新聞・紙袋を溜めない。通販の段ボールは開封後すぐに処分する
- 家具と壁・床の間にできた隙間は、ふさげる範囲でふさぐ
- 冷蔵庫・電子レンジ・ガス台の周りの隙間とほこりを、掃除機で取り除く
- 使っていない家電や不用品を、置きっぱなしにしない
侵入口を塞ぐ|排水・換気・すき間で自分でできる範囲
KINCHOは、ゴキブリの主な侵入経路として、玄関ドアの下、郵便受け、キッチンのシンク下の配管、網戸の破れ、床下、換気扇、台所や洗濯機の配管、エアコンの配管などを挙げています。大きなクロゴキブリでも約5mmの隙間があれば入れ、幼虫は1mm程度の隙間からも入るとしています。
ふさげる場所は、専用のパテやテープでふさぎます。ただし、メーカーは、どんな家でもすべての隙間をふさぐのは難しく、新築でも完全に隙間のない家はないと説明しています。日本ペストコントロール協会も、台所の流し台やレンジ周辺の隙間をアルミテープや防水パテでふさぐこと、浴室や流し台の排水口におわん型のトラップがない場合は設置すること、夜間の不要な灯りを消して窓の開放を控えることを案内しています。
自分でふさげる場所
配管の貫通部やシンク下の隙間、ドア下の隙間など、固定された部分の隙間が対象です。パテやテープは用途の表示を確認し、水まわりでは防水のものを選びます。作業の線引きは害虫の侵入予防はどこまで自分でできる?で確認できます。
- シンク下や洗面台下の配管まわりの隙間
- 壁や床と、キッチン設備のつなぎ目の隙間
- 破れた網戸の補修、ドア下の隙間の対策
- 排水口におわん型のトラップがない場合の設置
ふさがない方がよい場所
KINCHOは、通気口や換気口までふさぐことはおすすめできないと説明しています。部屋の空気の入れ替えができなくなり、湿気がこもって別の虫やカビが増えやすくなるためです。役割が分からない部材は外したりふさいだりせず、管理者や施工担当に確認します。
- 換気口・通気口は、空気の通り道なのでふさがない
- エアコン配管の貫通部は、隙間の位置を確認し、役割が分からない部材は外さない
薬剤の役割分担|毒餌・残効スプレー・くん煙剤
薬剤は、環境の見直しの後に補助として使います。毒餌、残効性のあるスプレー、くん煙剤・くん蒸剤、粘着トラップは役割が違うため、目的に合う物を、製品の表示どおりに使います。このページでは、希釈や混合の方法、使用量は示しません。説明書の対象害虫、使用場所、使用上の注意を読んでから使ってください。
東京都ペストコントロール協会は、殺虫剤は医薬品・医薬部外品を用法用量に従って使うこと、同じ薬剤を使い続けると抵抗性がつくため、定期的に使う薬剤を変えることを案内しています。千葉市は、くん煙などで部屋にいた個体は駆除できても、処理が終わると他所から侵入してくるため、侵入を防ぐ対策も必要だと説明しています。毒餌の置き場所の考え方はゴキブリの毒餌はどこに置く?にまとめています。
| 種類 | 主な役割 | 向く場面 | 使う前に製品表示で確認すること |
|---|---|---|---|
| 毒餌(ベイト剤) | 食べた個体が巣に戻り、仲間にも効果が広がる連鎖の仕組みがメーカーから説明されている | 潜み場所の近く、通り道。食器棚や冷蔵庫の周り | 対象害虫、置く個数と間隔、設置期間と交換時期、子ども・ペットの誤飲対策 |
| 残効スプレー(残留噴霧) | 通り道や侵入経路に薬剤を残し、触れた個体を駆除する | 玄関ドア下、窓際、壁際、配管の周り | 使える場所(食品・食器にかからないか)、火気、換気、効果の持続期間 |
| くん煙剤・くん蒸剤 | 部屋の隅々に薬剤を行き渡らせ、潜む個体をまとめて駆除する | 多数の目撃や繁殖が疑われるとき。全部屋で同時に行う | 部屋の広さ、食品・食器・家電・ペット・植物の養生、火災報知器の覆い、使用後の換気、再処理の間隔 |
| 粘着トラップ | 捕獲より、集まる場所と数の確認に向く | 調査や効果の確認 | 設置場所、回収の時期、子どもやペットが触れない配置 |
- くん煙剤・くん蒸剤は、食品を冷蔵庫や戸棚へ入れ、ペットや植物を外に出し、火災報知器にカバーをかけるなど、事前の準備が必要とアース製薬は案内している
- 卵鞘は薬剤をはじくため、卵が孵る2〜3週間後に再度使うことをアース製薬は案内している(製品ごとの間隔は説明書で確認する)
- 日常的に乳幼児がいる区域では、薬剤による処理を避けるよう厚生労働省の手引きは示している(特定建築物向け)
ハッカ油・ハーブ・玉ねぎ・蚊取り線香|匂いの対策で確認できたこと
「ハッカ油」「ハーブ」「玉ねぎ」「蚊取り線香」など、匂いを使った対策は検索されることが多い一方、千葉市、横浜市、日本ペストコントロール協会、東京都ペストコントロール協会などのゴキブリの解説では、ハッカ油やハーブ、蚊取り線香を対策として挙げているものを確認できませんでした(2026年10月3日に確認)。ここでは、メーカーや公的団体の資料で確認できた範囲だけを表にします。
ハッカ油を使う製品は市販されています。アース製薬の製品ページでは、ハッカ油を有効成分とする防除用医薬部外品で、効能は「ゴキブリの忌避」、効果の持続は約1か月(使用環境により異なる)と表示され、「ゴキブリの駆除を目的としたものではありません」と書かれています。また、閉鎖空間以外では有効成分が十分な濃度に達しないため効果は発揮されないとあり、引き出しや食器棚などを閉め切って使う製品です。
一方、日本アロマ環境協会が2017年に公表した実験では、チャバネゴキブリの成虫を使い、精油を置いた箱と置かない箱のどちらで一昼夜後に見つかるかを調べました。レモングラス精油の箱での発見率は22.3%と低く、ペパーミント精油の箱では69.2%と、精油ありの箱の方が高くなりました。実験室での1つの結果で、家庭での効果を示すものではなく、市販のハッカ油と同じ成分・濃度とは限りませんが、ペパーミントで忌避が確認されなかった例として知っておくと、過度な期待を避けられます。
| 対策 | 確認できた資料 | 資料から言えること | 使うときの考え方 |
|---|---|---|---|
| ハッカ油 | アース製薬の製品ページ、日本アロマ環境協会の実験(ペパーミント精油) | 市販品は「忌避」の表示で、閉鎖空間での使用が前提。実験では、ペパーミント精油の箱でゴキブリが多く見つかった | 製品表示の場所で補助的に使う。自作の濃度や量は示さない。駆除や侵入防止の主役にしない |
| ハーブ | アース製薬の解説記事 | ハッカやラベンダーなどの香りをゴキブリが嫌うと説明されている。家庭での使い方や効果の程度を示す資料は確認できなかった | 餌・水・隠れ場所を減らす対策の代わりにしない |
| 玉ねぎ | アース製薬の解説記事、千葉市の案内 | ゴキブリが食べる野菜として玉ねぎが挙げられている。千葉市の案内でも、ゴキブリに食べさせる毒餌の材料として使われている。遠ざける根拠は確認できなかった | 台所に常温で出しっぱなしにしない。置いて除ける目的では使わない |
| 蚊取り線香 | KINCHOの製品ページ | 金鳥の渦巻の効能は「蚊成虫の駆除、忌避、侵入阻止」で、ハエ用の製品はハエ成虫と蚊成虫。ゴキブリは含まれていない | 表示にない使い方は避け、ゴキブリ用の製品を選ぶ |
- ハッカ油入りの製品は、置く場所と個数、交換の時期を説明書で確認する
- 匂いの対策を始めても、餌・水・隠れ場所・侵入口の見直しは省かない
- 子どもやペットが触れない場所に置き、使用中に気分が悪くなったら使用をやめて換気する
対策の効果を確かめる方法と業者相談の目安
対策の効果は、感覚ではなく記録で確かめます。厚生労働省の手引きは、事前の調査と比べて効果を判定し、水準を満たさなければ原因を調べて再処理するとしています。家庭では、目撃した回数、粘着トラップの捕獲数、毒餌の減り方を同じ形式で書き、2〜3週間ごとに見比べます。粘着トラップは駆除としては補助的で、場所や数の確認に向くと日本ペストコントロール協会が説明しています。
毒餌は、手引きでは配置した後に、残量を数日ごとに点検するとされています(建物向け)。家庭では、設置日と交換時期を製品の表示で確認し、減り方が止まったか、場所を変えると食べるかを見ます。
次のような状態は、業者への相談を考える目安です。記録の取り方と判断の手がかりはゴキブリが毎日出る原因と判断の手がかりに、依頼先の確認の仕方はゴキブリ駆除を業者に頼む目安にまとめています。
- 小さな幼虫が続けて出て、見つかる場所が広がっている
- 餌・水・隠れ場所を見直し、薬剤を製品表示どおりに使っても、2〜3週間で目撃が減らない
- 飲食店や食品を扱う場所で見つかった、または集合住宅で隣室・共用部にも出ている
- 家電の内部や壁の中など、自分では調べられない場所が疑われる





