ネズミ駆除に火災保険は使える?まず損害を5つに分ける

ネズミの被害は、駆除や封鎖の費用、かじられた配線や建材の傷み、そこから起きた火災や水漏れというように、性質の違う損害が重なって見えます。火災保険は、保険証券に書かれた建物や家財が、約款に定められた事故で損害を受けたときに支払われる仕組みなので、損害の種類ごとに、約款のどの事故区分に当たるかを分けて確認します。損保ジャパンの個人用火災総合保険の約款(2026年10月版、2026年10月3日確認)では、事故の区分として、火災・落雷・破裂または爆発、水濡れ、不測かつ突発的な事故などが挙げられています。

確認は、まず保険証券で、契約した補償の欄に「○」が付いているかを見ることから始めます。同じ会社の商品でも、契約の内容によって補償される事故が違うためです。次の表は、損害の種類ごとに、約款の確認箇所と保険会社への聞き方を整理したもので、使える・使えないを決めるものではありません。動物を問わない約款の読み方は、害獣駆除に火災保険は使えるかを約款で確認する記事にあります。この記事は、ネズミの配線かじりと水漏れに絞って、確認の順番を示します。

ネズミ駆除に火災保険は使える?まず損害を5つに分ける:確認項目
損害の種類約款で確認する箇所保険会社への聞き方先にそろえる記録
ネズミの駆除・追い出し・侵入口の封鎖の費用損害の額に含まれる費用の区分(復旧費用、原因調査費用など)に当たる項目があるか駆除や封鎖の費用は、約款のどの費用に当たるのか、対象外なのか見積書の駆除・封鎖の行、調査報告の写真
かじられた配線・建材・断熱材そのものの傷み免責の「ねずみ食い、虫食い等」と、不測かつ突発的な事故の条件かじり跡そのものの修理は、免責に当たるのかかじり跡の写真、気づいた日、被害の範囲
かじりが原因で起きた火災事故の区分の「火災」と、免責に付いた注記かじられた配線が原因と考えられる火災は、火災の補償に当たるのか火災の日時、焼けた範囲の写真、消防の記録
かじられた給排水の管・ホースからの水漏れで濡れた天井・床・家財事故の区分の「水濡れ」と、給排水設備自体の損害の扱い水漏れによる損害と、管・ホース自体の損害を分けて確認したい漏水に気づいた日、濡れた箇所の写真、止水の記録
漏電やショートで壊れた家電・設備不測かつ突発的な事故の条件と、電気的事故に関する規定壊れた機器の損害は、どの事故区分に当たるのか機器名、購入時期、故障の状況、点検の結果

参考:損保ジャパン|ご契約のしおり 個人用火災総合保険 普通保険約款および特約(2026年10月版、PDF)

読者の疑問

ネズミに配線をかじられて火災になったら、火災保険は使えますか?

比較ガイド

使えると決まっているわけではなく、約款で確認します。損保ジャパンやJA共済の約款には、ねずみ食い、虫食い等を支払わない場合に挙げる一方、火災などが生じた場合の扱いを定めた注記があります。かじり跡と火災の損害を分け、事実を保険会社に伝えて確認してください。

配線のかじりが原因で火災が起きた場合に確認する補償

火災や煙が出ているときは、避難と消火、119番への通報が最優先で、保険の確認はその後です。ここでは、火災が収まったあとや、火災の心配がある状態で、保険の確認をする場合の考え方を示します。

ネズミによる配線被害の公的な説明

仙台市は、クマネズミの害として、電気配線がかじられると停電やコンピューター配線の異常の原因になること、むきだしになった銅線にネズミの尿がかかると、漏電により火災になる場合もあることを説明しています(2026年8月17日更新のページ)。横浜市旭区のページも、ネズミは停電や火災までも引き起こす動物だと説明しています。火災の原因が、かじられた配線にあるのか、別の原因なのかは、現場の調査で判断されるため、決めつけずに確認します。

約款の「火災」と、免責の「ねずみ食い、虫食い等」の関係

損保ジャパンの約款では、事故の区分の先頭に、火災、落雷、破裂または爆発が置かれています。一方で、保険金を支払わない場合に、ねずみ食い、虫食い等が挙げられています。ただし、この免責には注記があり、火災などの事故が生じた場合は、挙げられた損害に当たるものにかぎる、と書かれています。約款の文言は、かじり跡そのものの損害と、そこから起きた火災の損害を分けて読む形になっています。JA共済の約款にも、免責に当たる損害と同時または連続して生じた火災等の損害は含まないという趣旨の注記があります。

ここで大切なのは、「ネズミが原因だから対象外」と一括りに決めないことです。実際にどう扱われるかは、契約の内容と事実関係を見て、保険会社が判断します。かじられた配線が原因と考えられる火災だという事実と、かじり跡や焼けた範囲の写真を伝え、約款のどの規定で判断されるのかを確認してください。

参考:仙台市|ネズミ・クマネズミ

給水管・排水ホースがかじられて水漏れしたとき

ネズミが配管をかじる被害は、大阪市旭区や横浜市旭区のページにも書かれています。給水管や排水ホースが傷んで水漏れが起きた場合は、約款の「水濡れ」の事故区分に当たるかを確認します。損保ジャパンの約款では、水濡れは、給排水設備に生じた事故に伴う漏水、放水または溢水による水濡れによって保険の対象が損害を受けた場合とされ、給排水設備自体に生じた損害は除くと書かれています。同じ約款の免責には、ねずみ食い、虫食い等が挙げられています。

管をかじられた損害が「給排水設備に生じた事故」に当たるのか、免責の語句と注記がどう働くのかは、約款の読み方と事実で決まるため、保険会社に確認します。水漏れに気づいたら、止水栓を閉めるなど被害の拡大を防ぎ、濡れた場所を写真に残してください。約款には、損害の発生および拡大の防止に努めることが、事故発生時の義務として書かれています。天井のシミが水漏れか動物の被害か分からないときは、天井のシミを動物被害と漏水に分けて伝える観察方法が参考になります。

給水管・排水ホースがかじられて水漏れしたとき:確認項目
水漏れで分ける対象見積書・写真での分け方保険会社へ聞くこと
かじられた管・ホース自体管やホースの交換、接続部の修理の行管自体の修理は、給排水設備自体の損害として扱われるか
濡れた壁・天井・床張り替えや補修の範囲と面積の行漏水による建物の損害は、水濡れの補償の対象になるか
濡れた家具・家電などの家財品名、購入時期、被害の写真の一覧家財の保険に入っているか、水濡れの補償があるか
漏水の原因や範囲の調査原因調査や範囲の確認にかかった費用の行調査費用は約款の費用の区分に当たるか。事前の承認が必要か

参考:損保ジャパン|ご契約のしおり 個人用火災総合保険 普通保険約款および特約(2026年10月版、PDF)

かじり跡・フン汚れそのものと、免責「ねずみ食い、虫食い等」

損保ジャパンの約款、JA共済の約款とも、支払わない場合に「ねずみ食い、虫食い等」の語句があります。かじられた木部、配線の被覆、断熱材そのものの傷みは、この免責に当たる可能性があります。フンや尿の汚れは、機能の喪失または低下を伴わない外観上の損傷や汚損を支払わないとする別の規定(損保ジャパンの約款では第3条⑸)に当たるかが問題になります。いずれも、傷みの程度と機能への影響を、写真と調査報告で示せるかが、確認のポイントです。

約款の語句は商品ごとに違うため、お手元の約款と照らして確認してください。次の表は、今回開いた2つの約款の書かれ方を並べたものです。

かじり跡・フン汚れそのものと、免責「ねずみ食い、虫食い等」:確認項目
確認した約款書かれ方(2026年10月3日確認)読むときの注意
損保ジャパン|個人用火災総合保険の約款(2026年10月版)保険金を支払わない場合に「ねずみ食い、虫食い等」。火災などの事故が生じた場合は、挙げられた損害に当たるものにかぎると注記不測かつ突発的な事故の保険金では、偶然な外来の事故に直接起因しない、電気の作用に伴う電気的事故などを支払わない場合として挙げる規定もある
JA共済|火災共済の約款(令和7年4月1日以降始期日のご契約用)共済金を支払わない損害に「ねずみ食い、虫食い等」。同時または連続して生じた火災等の損害は含まないと注記損害の発生および拡大の防止に努めることを求める規定がある
外観上の損傷・汚損(損保ジャパンの約款)機能の喪失または低下を伴わない外観上の損傷または汚損は、支払わない場合に挙げられているフンや尿の汚れが、機能を損なっているのか、見た目だけなのかを、写真で示す

参考:JA共済|火災共済 ご契約のしおり・約款(令和7年4月1日以降始期日のご契約用、PDF)

ネズミ駆除費用が補償対象かを確認する聞き方

損保ジャパンの約款は、損害保険金の額を、保険の対象を事故直前の状態に復旧するための費用(復旧費用)を基本に定めています。あわせて、残存物の取片づけ費用、原因調査費用、損害範囲確定費用、試運転費用、仮修理費用などが、保険会社の承認を得て支出した必要かつ有益な費用として、損害の額に含まれると書かれています。今回開いた約款の費用の区分の表に、ネズミの駆除費用や侵入口の封鎖費用に当たる項目は見当たりませんでした。ただし、他の会社の約款や特約は異なることがあるため、お手元の約款で確認します。

聞き方のコツは、見積書の行を、損害の復旧に当たるものと、そうでないものに分けて示すことです。駆除費用を一括して「出ますか」と聞くより、行ごとに尋ねるほうが、回答が具体的になります。次の質問を、保険会社や代理店への問い合わせに使えます。

  • ネズミの駆除と侵入口の封鎖の費用は、この契約の補償の対象ですか、対象外ですか
  • かじられた配線と断熱材の復旧費用は、免責の「ねずみ食い、虫食い等」に当たりますか
  • かじりが原因で火災や水漏れが起きた場合、その損害は別の事故区分として扱われますか
  • 調査の費用を、保険会社の承認を得て支出する場合の手順を教えてください
  • 修理を始める前に、保険会社が建物を確認する必要はありますか

参考:損保ジャパン|ご契約のしおり 個人用火災総合保険 普通保険約款および特約(2026年10月版、PDF)

連絡前に残す記録と、電気設備の点検依頼

保険の連絡と、電気設備の安全確認は、別々に進めます。先に、修理や片付けの前の状態を記録し、並行して、配線に異常がないかを資格のある人に確認してもらいます。

保険会社へ連絡する前に残す記録

損保ジャパンの約款は、事故が発生したときに、損害の発生および拡大の防止に努めること、事故の日時、場所、概要を遅滞なく通知することを求めています。保険会社が、事故のあった建物や敷地を調査できるとも書かれています。修理や片付けの前に、状態を写真で残し、保険会社へ連絡しておくと、確認が進めやすくなります。記録の保管の仕方は、害獣駆除の書類と写真、何を残すかが参考になります。

  • かじり跡、焼け跡、濡れた箇所の、全体と近くの写真
  • 気づいた日時と、においやブレーカーの動き、音などの状況
  • ネズミの痕跡(フン、足跡、巣材)の位置と、見つけた日
  • 業者の調査報告、見積書、請求書
  • 保険会社や代理店へ連絡した日時と、担当者の名前

電気設備の点検は、資格のある人に頼む

配線がかじられた可能性があるときは、保険の連絡とは別に、電気設備の点検を依頼します。電気工事士法は、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業を、第一種または第二種電気工事士でなければ行ってはならないと定めています(経済産業省令で定める軽微な作業を除く)。かじられた配線の補修やテープでの応急処置を、自分で行わず、電気工事の資格を持つ人に確認してもらってください。点検の依頼先の考え方は、配線にネズミのかじり跡らしい傷があるときの点検の頼み方にあります。

焦げ臭いにおい、ブレーカーが何度も落ちる、コンセントやプラグが熱いといった異常があるときは、その機器や回路の使用を控え、電気工事の資格を持つ人に相談してください。

参考:e-Gov法令検索|電気工事士法(第3条 電気工事士等)

再発防止(封鎖)を先送りしない理由

保険の確認に時間がかかっても、侵入口の封鎖を先送りしないほうがよい理由は、約款にも表れています。JA共済の約款は、火災等による損害について、損害の発生および拡大の防止に努めなかった場合は、防止できたと認められる額を損害の額から差し引くと定めています(正当な理由がある場合を除く)。損保ジャパンの約款も、損害の発生および拡大の防止に努めることを事故発生時の義務に挙げ、正当な理由なく怠った場合は、防止できたと認められる損害の額を差し引くとしています。侵入口を残したまま様子を見ているうちに、配線や配管の被害が広がると、後から確認される点になります。

仙台市は、ネズミ対策として、侵入経路を金網、金属タワシ、不燃性パテ、家庭用セメントなどでふさぐことや、配電盤内部にすきまがあれば専門業者に依頼してふさぎ、電気コードがかじられていないか確認してもらうことを案内しています。封鎖の考え方は、防鼠金網ですき間を直す前に相談することにあります。台所の配管周りの痕跡は、台所でネズミの痕跡を見つけたときの確認順で確認できます。保険の確認と並行して、侵入口の調査と封鎖の見積もりを進めます。

参考:JA共済|火災共済 ご契約のしおり・約款(令和7年4月1日以降始期日のご契約用、PDF)

「保険で直せる」と勧誘されたら|契約前の相談先

日本損害保険協会は、住宅修理などに関して「保険が使える」と勧誘する業者とのトラブルが増加していると注意し、住宅の修理を業者と契約する前に、契約している損害保険会社または代理店へ相談するよう案内しています。保険会社や代理店へ連絡する前に、問題のある住宅修理業者や、報酬を支払われた保険金から受け取ると勧誘する保険金請求代行業者と契約すると、保険金が支払われずに修理代金を自己負担することになったり、解約時に高額な手数料を求められたりすることがあると説明しています。ネズミの被害で天井や配線を直す場面でも、同じ構図の勧誘があり得ます。

保険会社の説明に納得できないときは、日本損害保険協会のそんぽADRセンターが、損害保険会社とのトラブルが解決しない場合の苦情の受付や、紛争解決の支援を行っています。受付は月曜から金曜の午前9時15分から午後5時まで(祝日・休日と12月30日〜1月4日を除く)と案内されています。共済の場合は、JA共済の約款が、まず加入先のJAが相談・苦情に対応し、納得できない場合は日本共済協会共済相談所に申し立てができると案内しています。業者との契約トラブルは、消費者ホットライン188で消費生活センターへ相談できます。

参考:日本損害保険協会|住宅の修理などに関するトラブルにご注意