ネズミ対策に猫は効果がある?公的資料が基本にしている対策
東京都の「都民のためのねずみ防除読本」は、ネズミ防除の考え方を環境的防除、化学的防除、物理的防除の3つに分けています。環境的防除は、餌を与えない、巣材を与えない、住まいへの出入りと建物内での移動を防ぐという3本柱で、人や環境への影響が最も少なく効果が持続する方法とされています。猫を飼うことは、この整理には含まれていません。
猫を飼うことでネズミ被害が減るのかを検証した公的資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。効果がないと断定できる資料もないため、この記事では猫の効果を評価せず、猫がいても被害が出る理由と、猫を巡るリスクを公的資料で確認します。
検索では、猫のにおいを使ったネズミよけ製品も見かけます。アース製薬の忌避ゲルは、成分に香料としてネコのニオイなどを配合した製品ですが、使用上の注意に「ペットや家畜のいる場所では使用しないでください」と表示しています。猫の気配を利用する製品でも、猫のいる家に向くとは限りません。
参考:東京都福祉保健局|都民のためのねずみ防除読本(平成24年4月発行、PDF)
猫を飼っているのに、なぜネズミが出るのですか?
ネズミは営巣場所と餌場を分けて使え、天井裏や壁の中など猫が届きにくい場所に巣を作るためです。東京都の資料は、食べ物をしまっている家でも巣として使われると説明しています。猫の有無にかかわらず、餌・巣材・侵入口の見直しが基本です。
猫がいてもネズミ被害が出る場所|天井裏・壁の中・餌場
猫がいる家でネズミ被害が出るのは、ネズミが家の中の別々の場所を使い分けるからです。東京都の資料は、ネズミは営巣場所と採餌場所を分けて生活できると説明し、食べ物をしまっている家でも、専ら営巣場所として使われている可能性を挙げています。猫の目が届く台所だけを見ていても、被害の全体は分かりません。
もう一つの理由は、すき間の小ささです。東京都の資料は、クマネズミは1.25cmのすき間があれば通り抜け、歯がかりがあればかじって通路にしてしまうと説明しています。猫が通れない小さなすき間でもネズミは出入りできるため、猫を理由に侵入口の点検を後回しにしないでください。通り道の痕跡は壁際の黒い汚れ(ラットサイン)の記録で確認できます。
下の表の右の列は、公的資料の記載から考えられることの整理で、猫の行動を調べた資料に基づくものではありません。
| 場所 | 公的資料に書かれているネズミの使い方 | 猫のいる家で起きやすいこと(整理) |
|---|---|---|
| 天井裏・壁の中 | 内壁と外壁の間は断熱材があり、雨風や外敵から守られて暖かく、営巣に絶好の場所とされる。クマネズミは天井裏や壁の中、ビルの高い所に多い(東京都)。 | 室内を歩く猫の届かない場所のため、猫がいても音や痕跡が続くことがある。 |
| 台所・食品棚 | 食品、生ごみ、ゴキブリもネズミの餌になる。袋やダンボールに入れた食品はかじられる(東京都)。 | 人と猫が休んでいる夜間に、餌場として使われる可能性がある。 |
| 猫の餌場 | ペットの餌は食べきれる量にして残さない。夜間はきちんと収納する(東京都、日本ペストコントロール協会)。 | キャットフードの食べ残しや開封した袋が、そのまま餌になる。 |
| ごみ置き場・庭 | ごみ置き場は、ネズミのほかネコやカラスの餌場にならない対策が必要(中野区)。 | 猫の出入りする場所で、ネズミも餌を探している。 |
| 使っていない部屋・空き家 | 人がいなくて静かで、巣材になる衣類や紙が残る空き家は、繁殖に絶好の場所になる(東京都)。 | 猫が入らない部屋の押入れや収納が、巣材の置き場になる。 |
猫がネズミを捕ることのリスク|感染症・ノミ・イエダニ
猫がネズミを捕まえるのは頼もしく見えても、猫と家族の健康面では別の心配が生まれます。東京都の資料は、猫がネズミを捕ってきた場合の感染について、質問に答えています。
猫が感染する可能性
東京都のよくある質問は、猫は原虫のトキソプラズマや猫条虫に感染したネズミを食べれば感染すると説明しています。厚生労働省のハンドブックは、猫はトキソプラズマの終宿主で、感染した猫の糞便から排出されるオーシストが人への感染源になり得るため、糞便は毎日処理すること、猫に生肉を与えないことを案内しています。
人が感染する可能性
人については、病原体を持つネズミに直接触れれば感染するおそれがあり、猫が捕まえたネズミを引きずり回して食品に触れ、その食品を口にして感染する可能性も考えられると東京都は説明しています。ネズミを素手で触らない、猫に触れたあとやふんを処理したあとは手を洗う、が基本です。妊娠中の方については、ハンドブックがトキソプラズマ症で胎児への感染の可能性を挙げているため、気になる場合は医療機関に相談してください。
ノミ・ダニを持ち込む可能性
大阪府は、ネズミにはイエダニなどのダニ類やノミ類が付いており、それらが二次的に人を刺し、吸血する被害を与えると説明しています。東京都は、死んだネズミや巣からイエダニが離れて人を吸血するため、死骸や巣は速やかに撤去するよう案内しています。猫が捕ってきたネズミを見つけたら早めに片付け、刺された跡が続くときはネズミとダニの関係も確認してください。
殺鼠剤・粘着シートを使う家での猫の安全|製品別の注意
猫のいる家でネズミ用の薬剤や器具を使うときは、猫が触れる、食べる、においや音を嫌がるという3つの面から確認します。下の表は、自治体の案内と製品の表示から、猫まわりの注意を種類別にまとめたものです。具体的な使い方や量は、必ず製品の説明書に従ってください。
屋外については、東京都が、毒餌をばらまくと犬や猫が食べるおそれがあるため、できるだけ毒餌箱を使って他の動物が摂取できないようにするよう案内しています。猫が屋外に出る家では、庭に薬剤を置く対策は避け、屋内の侵入口対策を優先します。薬剤の置き方の考え方はペットがいる家のネズミ対策で確認できます。
猫が薬剤や粘着剤を口にした、触れた疑いがあるときは、自己判断で対処せず、製品名と成分が分かる箱や袋を手元に動物病院へ連絡してください。人が誤って口にした場合や手についた場合は、製品の表示に従い、医療機関に相談します。
| 種類 | 自治体の案内・製品表示に書かれていること | 猫のいる家で確認すること |
|---|---|---|
| 殺鼠剤(毒餌) | 他の動物にとっても毒で、屋外での使用は他の動物に影響するおそれがある(市川市)。ペットや他の動物にも有害なので誤食しないよう配置する(新宿区)。愛玩動物の手の届かない所に配置する(大阪府)。 | 猫が届く高さや、開けられる容器でないか。説明書の使用場所が屋内か。 |
| 殺鼠剤を食べた後のネズミ | どこで死ぬかは断定できない(イカリ消毒)。製品によっては、食べて死んだネズミを他の動物が食べても二次被害が起こりにくいと表示している例がある(イカリ消毒の製品ページ)。 | 死骸を猫が見つける前に回収できるか。製品の二次被害に関する表示を確認する。 |
| 粘着シート・粘着トラップ | 子供やペットが触れないように設置する(アース製薬)。野鳥等が誤ってかかるため屋内で使う(新宿区)。 | 猫が通る床や家具の上に置いていないか。粘着剤が付いたときの対処が製品に書かれているか。 |
| 忌避剤・超音波機器 | ペットや家畜のいる場所では使用しない旨の表示がある製品がある(アース製薬)。においや音でペットが不快に感じることがある(市川市)。 | 製品の使用上の注意に、ペットのいる場所での使用可否があるか。 |
参考:市川市|ネズミについて
猫のいる家で優先するネズミ対策|餌の管理・巣材・侵入口
猫がいる家でも、優先順位は東京都が示す3本柱と同じです。違いは、猫の餌と猫が使う場所を点検に含めることです。ペットの餌は食べきれるだけ与えて残さず、夜間はしまう、と東京都と日本ペストコントロール協会は案内しています。キャットフードは、開封後の袋のままにせず、蓋つきの容器で保管します。
猫を屋内で飼う方針も欠かせない
環境省の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」は、疾病の感染防止や不慮の事故防止などの観点から、猫の所有者は屋内飼養に努めることとしています。環境省のガイドラインも、猫は室内で飼うのが基本としています。ネズミを捕らせるために外へ出す飼い方は、これらの考え方と合いません。
詳しい手順は関連記事で確認する
詳しい食品の保管はネズミ対策の食品保管、侵入口の補修は防鼠金網ですき間を直す前にで確認できます。
| 優先して見直すこと | 猫のいる家での具体例(公的資料に基づく) |
|---|---|
| 餌 | キャットフードや水皿を、夜間に出しっぱなしにしない。生ごみは蓋つき容器に入れる。ゴキブリもネズミの餌になるため防除する。 |
| 巣材 | 布・紙・ビニールをまとめて収納する。ダンボールは中が見えず、知らない間にネズミの巣になっていることがある(相模原市)。猫用ベッドの周りの布や紙も点検する。 |
| 侵入口 | 約1cmから1.25cmのすき間を目安に、配管の貫通部、通気口、戸袋、換気扇を点検する。窓の開けっぱなしや網戸の破れも点検ポイント(中野区)。猫用の出入り口を付けている場合は、その周りも点検する。 |
ネズミ対策のために猫を迎える前に考えたいこと
ここまでの内容から、猫を迎える理由がネズミ対策だけの場合は、期待どおりにならないおそれがあります。厚生労働省のハンドブックは、ペットを飼う前に、飼うことで得られる利益と起こり得るリスクを天秤にかけて十分に事前検討することが必要で、安易な結論は思いもよらない結果をもたらすことがあると述べています。
ハンドブックはペットのリスクとして感染症、アレルギー、咬傷事故などを挙げ、猫の主な感染症として猫ひっかき病やトキソプラズマ症などを示しています。環境省のガイドラインは、飼い主の責任として、犬や猫の安全の確保、健康管理、人と動物の共通感染症、不妊去勢手術の必要性などを挙げています。猫と暮らすかどうかの判断は、ネズミ対策とは切り離して考えるのが現実的です。
すでに猫を飼っている家では、猫がいることを前提に、餌と侵入口の対策を進めることが先です。猫がネズミを捕まえてきたり、死骸を見つけたりしたときは、素手で触らずに片付け、手を洗ってください。猫の様子が気になるときは動物病院に相談します。
相談するときに伝えること|猫の有無と使った対策
ネズミの相談は、お住まいの区市町村や保健所のねずみ昆虫等の防除を所管する部署で受け付けています。東京都の読本は、特別区は区役所・保健所、市町村は市役所・町村役場が窓口と案内しています。自治体が駆除そのものを行わない例も多く、中野区は区の事業としての駆除や費用助成は行っていないと案内しています。民間の業者に頼む場合は費用が自己負担になるため、見積書の内容をよく確認します。
相談のときは、猫がいることを隠さずに伝えます。猫の有無が、調査の進め方や薬剤の選び方に直結するためです。猫のいる家での作業の分け方は、ペットがいる家の害虫駆除でも整理しています。次の情報を一覧にしておくと、話が早く進みます。
- 猫の頭数、屋内のみか外に出るか、猫が入れない部屋はどこか
- キャットフードと水の置き場所、猫のトイレの場所
- 猫がネズミを捕ってきた日時と、見つけた場所
- これまで使った薬剤・粘着シートの製品名、置いた場所、使った期間
- 音・フン・かじり跡の場所と時間帯





