害獣の監視カメラで分かること・分からないこと
農林水産省の中型獣類の被害防止マニュアルは、痕跡だけでは動物を判断できないときや、いまも住みついているかを確かめたいときに、足跡トラップとともにセンサーカメラを置く方法を挙げています。センサーカメラは動物が通ると自動で記録するため、生息している動物が確実に分かり、対策を効率よく進められると説明されています。夜の音の記録は夜間の天井の音を記録する方法と組み合わせると、映像の日時と照らし合わせやすくなります。
一方で、環境省のアライグマ防除の手引きは、カメラを使った生息確認について、慣れれば設置は比較的容易で、撮影されれば判定は確実とする反面、若干の技術が必要で、カメラの前を通らなければ検出できないと整理しています。つまり、写っていないことは、いないことの証明になりません。置いた場所を動物が通らなかっただけの場合もあるため、まず1週間ほど同じ場所で続け、写らなければ向きや場所を変えて確かめます。
| 知りたいこと | カメラで分かること | カメラだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 動物の種類 | 写った個体の姿から、尾や体の大きさなどを手がかりに候補をしぼれる | 暗さやぶれで姿が不鮮明だと決められない。小さい動物や遠い場所は判別しにくいことがある |
| 来る時間と頻度 | 日時の記録から、夜のどの時間帯に来るか、毎日来るかを見られる | カメラを置いていない時間や場所での行動 |
| 頭数・親子 | 同時に写った個体の数、親子らしい組み合わせ | 建物の内部に何頭いるか |
| 侵入口 | 写った場所から、通り道や出入りに使う場所の見当をつけられる | 天井裏や壁の中の通路、カメラの死角にあるすき間 |
| 被害の原因 | 被害のある場所に来た動物を確認できる | 別の動物の被害が重なっていないか、過去の被害の原因 |
参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)
害獣の監視カメラで、動物の種類は特定できますか?
動物が鮮明に写れば、尾の形や体の大きさから候補をしぼれます。農林水産省のマニュアルも、センサーカメラで生息している動物が確実に分かるとしています。写らなかった日は、いないとは決められません。
センサーカメラと家庭用見守りカメラの違い|赤外線・動体検知・電源・防水
愛知県の農業総合試験場の解説では、トレイルカメラ(センサーカメラ)は、野生の鳥獣を赤外線センサーで感知して自動で撮影するカメラで、夜はLEDフラッシュが作動し、電源は汎用の電池、データはSDカードなどに記録されると紹介されています。静止画と動画を選べ、動画の長さ、次に作動するまでの間隔、センサーの感度も設定できるとされています。野外で使う観察用のカメラとして紹介されています。
家庭用の見守りカメラやネットワークカメラは、コンセントなどの電源とWi-Fiにつなぎ、スマートフォンで映像を見たり通知を受けたりする使い方が中心です。動体検知や暗い場所での撮影に対応した機種もありますが、屋外に置けるか、雨に耐えるか、電源が届くかは製品ごとに違います。どちらを使う場合も、動物が来る場所に合うかを製品の表示と説明書で確かめてください。特定の製品はおすすめしません。
| 比べる点 | センサーカメラ(トレイルカメラ) | 家庭用の見守り・ネットワークカメラ |
|---|---|---|
| 撮影のきっかけ | 赤外線センサーが動きを感知して自動で撮影。感度を選べる機種がある | 動体検知や常時録画。機種によって通知機能がある |
| 夜間 | LEDフラッシュで撮影できると、愛知県の解説は紹介している | 暗い場所の撮影や赤外線に対応する機種がある。対応は製品の表示で確認 |
| 電源 | 汎用の電池が中心。動画は電池の消耗が激しい | コンセントなどの電源が必要な機種が多い |
| 防水・天候 | 2016年掲載の解説では防水機能が十分でなく、豪雨が予想されるときは回収とされた。機種は製品表示で確認 | 屋外対応かは製品ごと。屋内用を屋外に置かない |
| 設定・管理 | スイッチの入れ忘れ、電池切れ、SDカードの空きに注意 | パスワード、ファームウェアの更新、使わない機能の停止が必要(総務省) |
参考:愛知県|ネット農業あいち「知ってとくとく鳥獣被害対策:現地調査の基礎 パート2 トレイルカメラで動かぬ証拠をゲット」(2016年掲載、PDF)
カメラの置き場所の選び方|出入り口・通り道・フンの場所と高さ・向き
最初に、どこへ向けるかを決めます。愛知県の解説は、設置の前に現地を歩いて痕跡を調べ、設置場所の見当をつけておくことと、侵入が疑われる場所を狙って撮ることを勧めています。住まいなら、外壁の配管や換気口のまわり、軒下や雨どいの近く、庭の通り道、フンや足跡が見つかった場所が候補です。見当がつかないときは、屋根・軒・外壁・換気口・床下の部位別チェック表で、外から見える位置を確認します。
向きと高さの決め方
狙うのは、動物が実際に通りそうな線です。地面を歩く動物と、塀や配管を伝う動物では、通る高さが違います。通り道を横切る向きに置くと、体の側面と尾が写りやすくなります。木や柱に固定するときは、風で揺れて誤作動しないようにします。常に動く草や、交通量の多い道に向けると不要な画像が大量に撮れるため、草を刈る、公道に向けないといった配慮が必要だと、愛知県の解説は述べています。
設置後の試し撮りと見直し
設置したら、カメラの前を自分で歩いて想定どおり写るかを確かめ、場所や角度を調整します。愛知県の解説は、スイッチの入れ忘れによる失敗が多いこと、動画は電池とデータの消耗が激しいため電池の取り替えとデータ回収を頻繁にすること、1週間ほど撮って姿が写らなければ角度や場所を変えることを挙げています。日時の設定が合っているかも、最初に確認してください。
- 撮りたい場所(配管・換気口・軒下・通り道・フンの周辺)に印をつけた
- 草や枝など、風で揺れて誤作動するものを避けた
- 前を歩いて試し、日時の設定と電池・SDカードの空きを確かめた
- 1週間ほど写らなければ、向きや場所を変える
参考:愛知県|ネット農業あいち「知ってとくとく鳥獣被害対策:現地調査の基礎 パート2 トレイルカメラで動かぬ証拠をゲット」(2016年掲載、PDF)
隣家・道路・通行人を写さない向きと、撮影を知らせる配慮
動物を撮るつもりでも、広く撮れるカメラは隣家の窓や庭、道路を歩く人まで写してしまいます。愛知県の防犯カメラのガイドラインは、住宅などの私的な空間や不必要な画像が撮影されないように撮影範囲を設定し、撮影方向や設置場所、台数を決めるよう求めています。この指針は犯罪の防止を目的に不特定多数を撮影する防犯カメラが対象で、動物を撮る個人のカメラにそのまま当てはまるものではありません。ただ、撮影範囲を必要最小限にするという考え方は参考にできます。
隣家との関係では、事前に一言伝えておくと、近所の方の不安を減らせます。愛知県の解説も、誤解を招かないよう近隣住民に事前に了解を取ることが望ましいとしています。撮れた映像に家族以外の人が写っていた場合は、動物の確認に必要な部分だけを残し、SNSなどには載せないでください。
| 確認すること | 起こりやすい写り込み | 対策の例 |
|---|---|---|
| 隣家の窓・庭 | 広く撮ると、境界の向こう側まで入る | 向きを下げ、自分の敷地の壁際や地面に絞る。写さない範囲を設定できる機種は説明書で確認 |
| 道路・歩道 | 通行人や車の動きに反応して、大量に撮れる | 公道に向けない。草や道路側の動きを避ける |
| 自宅の出入り口・庭 | 家族や来客が写る | 動物の通り道に絞り、不要な映像は消す |
| 保存と共有 | 映像が他の人の目に触れる | 保存先を限り、相談先へ渡す分だけを選ぶ。クラウド保存は共有の設定を確かめる |
高所や天井裏に設置しない|脚立の使い方と動物に近づかない距離
カメラを高い位置に付けたくなる場面でも、ふだん使わない高さの作業は転落の危険が上がります。製品評価技術基盤機構(NITE)は、はしごや脚立の事故の被害者の約4割が60歳代以上で、事故原因の半数近くが不適切な取り扱いや不注意によるとしています。注意点として、はしごの上で作業しない、脚立の天板に乗らない・座らない・またがらない、開き止め具をロックして安定した地面に置く、を挙げています。カメラは、地面や手の届く高さの柱・フェンスなど、安全に取り付けられる位置までにとどめます。
天井裏や屋根の上には、自分で上がってカメラを置かないでください。踏み抜き、熱中症、感電の危険があります。入るかどうかの考え方は天井裏の歩き方と安全の線引きで別に整理しています。天井裏の様子を撮りたいときは、点検口からのぞいて撮影する方法を先に検討し、それでも必要なら調査を頼む業者に任せます。
動物に近づかない・餌で呼ばない
撮影のために動物へ近づいたり、餌を置いて呼び寄せたりするのは避けます。北九州市はアライグマについて、むやみに近づくと噛みついたり引っかいたりするおそれがあり、感染症の危険もあるため、見かけても絶対に近づかないよう呼びかけています。また、餌付けをすると生活被害や農作物被害が拡大するおそれがあるとして、餌になるものを屋外に置かないよう案内しています。
参考:製品評価技術基盤機構(NITE)|はしご・脚立の事故防止の注意喚起(2022年9月16日ニュースリリース、PDF)
撮れた映像の見方|体の大きさ・尾・歩き方で候補をしぼる
映像では、まず体の大きさ、尾の形、動き方の3点を見ます。東京都環境局の見分け方の資料は、アライグマを胴長60cmほどで尾に黒い縞が5〜7本、ハクビシンを胴長50〜60cmほどで尾が長い、タヌキを胴長45〜55cmほどで尾が太くふさふさ、アナグマを胴長50〜60cmほどで尾が短いと整理しています。夜間の赤外線の映像は白黒に見えることがあり、毛色や縞が分かりにくいため、尾の太さや長さ、顔や体の輪郭を中心に見るのが現実的です。歩き方は、地面を歩くのか、塀や配管を伝うのかを、種類を決めつけずに記録しておきます。
候補がしぼれないときは、動画で歩く様子や出入りする場所を残し、決めつけずに窓口や業者へ渡します。紛らわしい組み合わせは、イタチとハクビシンの違いやアライグマとタヌキの違いで比べられます。
| 動物 | 映像で見る点(東京都環境局の資料) | 見分けで気をつけること |
|---|---|---|
| アライグマ | 胴長60cm位。尾に黒い縞が5〜7本 | 縞が写らない角度では尾の太さと長さを見る。タヌキと取り違えやすい |
| ハクビシン | 胴長50〜60cm位。尾が長い | 鼻筋が白い点はアナグマと間違えられることがある(農林水産省のマニュアル) |
| タヌキ | 胴長45〜55cm位。尾が太くふさふさ | 尾の太さと、アライグマの縞の有無で比べる |
| アナグマ | 胴長50〜60cm位。尾が短い | 体が扁平で足が短く、顔に黒い縦の模様がある(農林水産省のマニュアル) |
家庭用の見守りカメラで撮るときの設定と防犯面
Wi-Fiにつなぐ見守りカメラやネットワークカメラは、設定が不十分だと映像が第三者に見られるおそれがあります。総務省は、カメラの管理者に向けて、パスワード認証を設定しているか、十分に長いパスワードにしているか、ファームウェアが最新か、機器の製品サポートが続いているか、使わない機能や設定が有効になっていないかを確認するよう注意喚起しています。サポートが終了している機器は、買い替えも検討するよう案内されています。
動物の観察に使うときも基本は同じです。庭や家の外側に向けたカメラは家族の出入りまで記録するため、映像の保存先と、誰が見られる設定かを最初に決めておきます。
- 初期のパスワードのまま屋外に置かず、十分に長いものへ変える
- ファームウェアを最新にし、製品のサポートが続いているかを確かめる
- 使わない遠隔公開などの機能や設定を止める
- 映像の保存先と、見られる人の範囲を決める
撮れた映像を自治体の相談や業者の調査へ渡す方法
映像は、日時と場所を添えて渡すと役立ちます。彦根市は、人家に現れたアライグマとハクビシンについて、聞き取りや痕跡、撮影された画像などで獣種を確認してから屋外にわなを設置する流れを案内し、獣種が不明なときは市が屋外に赤外線カメラを設置して特定するとしています。画像があれば獣種の確認とその後の対応に役立つとも書かれています。これは彦根市の例で、他の市区町村が同じ対応をするとは限りません。詳しくは彦根市で正体不明の動物を相談する流れを参照してください。
窓口は動物によって分かれることもあります。横浜市は、天井裏に住みつく主な動物としてアライグマ、ハクビシン、ネズミを挙げ、アライグマとハクビシンは野生動物による生活被害の案内(担当は環境活動事業課)、ネズミは各区の福祉保健センター生活衛生課へ相談するよう案内しています。カメラの貸出や動物の判別の相談をしている自治体があるかは、「市区町村名 野生動物 相談」で検索し、環境や生活衛生の担当課のページで確かめます。記載がなければ、電話で、撮影した映像で動物を確認してもらえるかを尋ねてください。
| 渡す相手 | 伝えること | 準備するもの |
|---|---|---|
| 自治体の窓口(環境・生活衛生など) | 被害の内容、動物らしい姿、いつから、どこで | 撮影日時が分かる映像、場所を示す簡単な図 |
| 調査を頼む業者 | 映像に写った場所・時間帯・頭数、屋内の音や被害の位置 | 映像、撮った位置のメモ、使ったカメラの種類 |
| 管理会社・大家(賃貸・集合住宅) | 共用部分に写った動物、カメラを置いた場所と期間 | 映像、設置場所と期間のメモ。共用部分に置く前に承諾を得る |







