食品工場の防虫対策で求められること|食品衛生法施行規則と手引書

食品衛生法第51条は、営業者が守る公衆衛生上必要な措置の基準として、施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他の一般的な衛生管理を、厚生労働省令で定めるとしています。施行規則第66条の2は、その基準を別表第17に、HACCPに沿った衛生管理の基準を別表第18に置いています。厚生労働省は、HACCPに沿った衛生管理が2021年6月1日に完全施行されたと案内しています。

別表第17の『ねずみ及び昆虫対策』は、四つの内容でできています。条文を表にすると、手順書や記録に落とす項目が見えます。都道府県は条例で必要な規定を定められるため(法第51条第3項)、所在地の保健所が上乗せの指導をしていないかも確認します。

小規模な営業者の場合

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が認められる小規模な営業者は、業界団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した手引書を参考に、衛生管理計画、記録、見直しを行います。食品の取扱いに従事する人が50人未満の事業場も、この小規模な営業者に含まれます。自分の業種の手引書がなければ、原材料や工程が似た業種の手引書を参考にし、保健所の食品衛生監視員に助言を求めます。

手引書の頻度は、条文より細かいことがある

日本惣菜協会の小規模な惣菜製造工場向けの手引書は、ねずみ・昆虫の発生状況を月1回以上点検し、半年に1回以上駆除し、専門業者の報告書を1年間保管するとしています。条文の『年2回以上』より細かい例なので、自社の業種の手引書がどう書いているかを確認します。

食品工場の防虫対策で求められること|食品衛生法施行規則と手引書:確認項目
条文の項目内容(要約)工場の手順・記録の例
別表第17 五イ施設と周囲の維持管理、繁殖場所の排除。窓、ドア、吸排気口の網戸、トラップ、排水溝の蓋などによる侵入防止開口部、網戸、排水溝の蓋の点検表。補修の記録
別表第17 五ロ年2回以上の駆除作業と実施記録の1年間保存。発生場所・生息場所・侵入経路・被害を定期に統一的に調査し、結果に基づく措置で目的を達成できるなら、施設に応じた方法・頻度でもよい駆除または調査の報告書。保存期間の管理
別表第17 五ハ殺そ剤や殺虫剤は、食品や添加物を汚染しないよう取り扱いに十分注意する使用薬剤の一覧、使用場所と日時、使用後の洗浄の確認
別表第17 五ニ原材料、製品、包装資材は容器に入れ、床や壁から離して保存。開封したものは蓋付きの容器などで汚染を防ぐ保管ルール、棚の点検、開封後の保管方法
別表第17 二ホ・ヘ窓と出入口は原則として開放したままにしない。排水溝は固形物の流入を防ぎ、破損は速やかに補修する扉の開放ルール、排水溝の清掃・補修の記録

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|食品衛生法施行規則(別表第17・第18、2026年10月3日確認)

読者の疑問

食品工場のねずみ・昆虫の駆除は、年に何回必要ですか?

比較ガイド

別表第17は、年2回以上の駆除作業と実施記録の1年間保存を求めています。ただし、定期に統一的に調査し、その結果に基づく措置で目的を達成できる方法なら、施設に応じた方法・頻度でもよいとされています。業種の手引書に、より細かい頻度の例があります。

侵入・発生・持ち込みの3つの経路と対策の対応表

虫やねずみの問題は、経路を分けると対策が決めやすくなります。侵入は、外から飛んで来る、歩いて入る経路で、出入口、窓、吸排気口、排水溝、配管の貫通部が入口になります。発生は、施設の中で増える経路で、排水溝、グリストラップ、廃棄物、食品の残りかす、冷蔵設備の下などが関わります。持ち込みは、原材料、包装資材、パレット、段ボール、台車などに付いて来る経路です。

侵入を防ぐ

日本冷凍食品協会の手引書は、扉の開閉時間の短縮や開放の防止、エアカーテンやシートシャッターの管理(すき間の防止)などを、侵入対策に挙げています。日本惣菜協会の手引書は、開口部の網戸、エアカーテン、自動ドア、排水溝のふたやトラップなどで外とつながる箇所をふさぐこと、やむを得ず長時間開放する場所は別の対策を検討することを示しています。

発生を防ぐ

日本惣菜協会の手引書は、食品の残りかすを食品取扱い場所に残さないよう終業時に廃棄物を出すこと、使いかけの原材料に封をすることを、増殖を防ぐポイントにしています。排水溝や集水ますのごみの放置、グリストラップの清掃不足が昆虫を呼んだ事例もあり、冷蔵設備の下はねずみ・昆虫のすみかになりやすいとされています。

持ち込みを防ぐ

持ち込みの直接の対策は、条文が定める、原材料、製品、包装資材を容器に入れ、床や壁から離して保存することです。受け入れ時に外箱の破れや汚れを確認する流れは、飲食店の納品時の確認や倉庫のパレットの裏まで見る点検の考え方を、工場の荷受け場に当てはめられます。

侵入・発生・持ち込みの3つの経路と対策の対応表:確認項目
経路主な入口・発生場所対策の例記録に残すもの
侵入(外から飛来・歩行)出入口、搬入口、窓、吸排気口、排水溝、配管の貫通部扉の開放防止、エアカーテンやシートシャッター、網戸、排水溝のふたやトラップ、ドックシェルター点検表、補修日、扉の開放時間の確認
発生(施設内で増える)排水溝、グリストラップ、集水ます、廃棄物置き場、食品残渣、冷蔵設備や作業台の下終業時の廃棄物の排出、清掃頻度の設定、使いかけ原料の封清掃記録、トラップの捕獲数の推移
持ち込み(原材料・資材・台車など)原材料、包装資材、パレット、段ボール、台車受け入れ時の外装確認、容器に入れて床や壁から離す保管、異常品の隔離受入記録、異常品の隔離記録

参考:厚生労働省掲載|小規模な惣菜製造工場におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(日本惣菜協会・PDF)

シャッター・搬入口・排水・照明の点検|どこを、何で見るか

点検は、外から入る場所の順に、敷地、出入口、搬入口と出荷口、窓、排水溝、照明で見ます。日本冷凍食品協会の手引書は、敷地は整理整頓し、虫の発生やねずみの隠れ場所ができないよう整地して、恒常的な水たまりを作らないことを求めています。製造現場の出入口、原材料の入荷口、保管施設は侵入を防げる構造にし、出荷口にはドックシェルターなどを設置する例が示されています。

窓の網戸は、条文に網目の数値がありません。業界団体の手引書では、日本冷凍食品協会が、開閉式の窓に32メッシュより細かい防虫網戸を付け、取り付け部をコーキング処理する例を、日本惣菜協会が、微小なアザミウマ(1.0ミリメートル以下)を通さない格子幅0.5ミリメートル以下の網戸が効果的とする例を示しています。数値は業種の手引書の例なので、自社の手引書と保健所の指導を確認してください。

排水溝・グリストラップの見方

排水溝は、外へ開く部分にトラップやかご、封水ピットなどを置いて、ねずみや昆虫の侵入と、ごみの流出、廃水の逆流を防ぐ例が、冷凍食品協会の手引書にあります。ごみが残る角や、グリストラップの汚れが、発生の入口になります。

照明と捕虫器の見方

照明は、虫を呼び込む側と、捕虫器の側の両方で見ます。日本ペストコントロール協会は、夜間の不要な灯火を消すことを予防対策に挙げ、光で誘引する捕虫機はランプの光が屋外へもれると飛翔昆虫をかえって呼び込むため、設置場所に注意するとしています。出入口付近の屋外照明と捕虫器の向きは、夜に外から見て確認します。

シャッター・搬入口・排水・照明の点検|どこを、何で見るか:確認項目
場所見る点確認の出どころ
敷地・外周雑草、不要な資材、恒常的な水たまり、隠れ場所日本冷凍食品協会の手引書、別表第17 五イ
製造現場の出入口・搬入口・出荷口扉の開放時間、エアカーテンやシートシャッターのすき間、ドックシェルターの破損日本冷凍食品協会の手引書、別表第17 二ホ
窓・吸排気口網戸の破れ、網目、取り付け部のすき間別表第17 五イ、両協会の手引書
排水溝・グリストラップ・集水ますふたの破損、ごみの滞留、清掃の頻度別表第17 二ヘ、日本惣菜協会の手引書
照明・捕虫器不要な点灯、ランプの光が屋外へもれていないか日本ペストコントロール協会(蚊・ハエ駆除)

参考:厚生労働省掲載|冷凍食品製造事業者向けHACCPに基づく衛生管理のための手引書(日本冷凍食品協会・PDF)

モニタリングと記録|基準値の決め方・是正措置

別表第18のHACCPに沿った衛生管理は、管理基準、モニタリング方法、改善措置、検証、記録を順に設定する構成で、防虫の記録も同じ流れで作ると説明しやすくなります。日本冷凍食品協会の手引書は、防除計画を作って手順を定めること、トラップの設置場所を図面に示して交換頻度を決めること、捕虫設備で捕獲物のモニタリングを行い、結果を分析して改善することを求めています。

基準値(水準)の決め方

日本ペストコントロール協会の特記仕様書の見本は、対象生物ごとに、許容水準、警戒水準、措置水準の三段階を決め、調査の結果がどれに当たるかを判定する方法を示しています。許容水準なら定期調査を続け、警戒水準なら環境や施設の改善を提案し、措置水準なら提案に加えて薬剤や器具による防除を行います。具体的な水準は、区域ごとに発注者と受注者が協議して決めるとされています。見本の数値は人が通常とどまる区域の標準例のため、食品の製造区域の基準値は防除業者と協議して決めます。

是正措置を先に決めておく

基準を超えたときに、誰が何を、いつまでに行うかを、記録票に書き込んでおきます。見本は、防除のあとの効果判定を事前調査と同じ方法で行い、水準を満たさなければ再調査して、防除作業が原因なら再作業、環境や施設の不備が原因なら提案を行うと整理しています。記録票には次の項目を入れます。

  • 水準を超えた日付と区域、見つけた虫や痕跡の種類
  • 原因の推定(侵入・発生・持ち込み)
  • 是正措置の内容、担当者、期限
  • 措置後の効果判定の方法と結果

記録の保存と、モニタリングで決めること

条文は、駆除作業の実施記録を1年間保存することを求めています(別表第17 五ロ)。衛生管理の実施状況の記録の保存期間は、扱う食品が使用・消費されるまでの期間を踏まえて合理的に設定します(施行規則第66条の2)。モニタリングの設計では、対象生物、トラップの位置と数、設置と交換の間隔、水準と是正措置、結果の分析、記録の保存を決めます。配置図、設置日数、捕獲数をそろえる記録方法は、害虫の捕獲数の読み方にまとめています。

参考:公益社団法人日本ペストコントロール協会|ねずみ等の調査及び防除特記仕様書(2026年10月3日確認)

原材料・包材の受け入れ時の確認

条文は、ねずみや昆虫による汚染を防ぐため、原材料、製品、包装資材を容器に入れ、床と壁から離して保存すること、開封したものは蓋付きの容器に入れるなどして保存することを求めています(別表第17 五ニ)。持ち込みを減らすには、保管の前の受け入れで外装の状態を確認します。

日本惣菜協会の手引書が示す受け入れ記録の例には、受入日、納入業者、原材料名と数量、到着時の表面温度などがあり、記録は1年間保管するとしています。同じ記録票に、虫や痕跡を確認する欄を足すと、持ち込みの経路を後から追いやすくなります。

受け入れ時に見る項目の例

虫の確認欄は、荷を受ける場所で短時間に見られる項目に絞ります。次の項目を例に、自社の荷姿に合わせて調整します。

  • 外箱や袋の破れ、かじり跡、中身のこぼれがないか
  • 生きた虫、死骸、糞、糸状のものが、外装や荷台に付いていないか
  • パレットや台車が濡れていたり、汚れていたりしないか
  • 異常があった荷は、通常の在庫と別の場所に隔離し、ロットと納入業者を記録する

異常品の扱いと納入業者への連絡

異常があった荷は、通常の在庫に混ぜず、受けた日時、ロット、納入業者、状態を記録して隔離します。納入業者には、同じ異常が続くかを確認するため、写真つきで連絡します。保管棚で古い在庫から使う運用と、棚の点検を両立させる方法は、食品保管庫の先入れ先出しと棚の点検が参考になります。

参考:厚生労働省掲載|小規模な惣菜製造工場におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(日本惣菜協会・PDF)

外部の防除業者に任せる範囲と報告書の確認項目

東京都のねずみ防除指針は、事業所の点検と防除は一般にペストコントロール業者と年間委託契約を結んで行うケースが多いと説明し、ねずみの被害があれば、まず業者に生息調査を依頼し、結果に基づく環境改善の助言を受けるよう整理しています。日本冷凍食品協会の手引書は、外部に委託する場合は、契約に基づき実施させ、その効果を確認するとしています。業者に任せても、効果の確認は工場側の仕事です。薬剤を散布したあとは、製造を始める前に十分な洗浄を行うことが冷凍食品協会の手引書に示されており、作業日の調整と洗浄の確認も工場側の役割になります。

報告書で確認する項目

日本ペストコントロール協会の特記仕様書の見本は、業務の都度、報告書を提出すること、薬剤は医薬品医療機器等法の承認を受けた医薬品または医薬部外品を用いること、再委託する場合はあらかじめ通知することを例示しています。契約書や報告書の様式を作るときの見取り図になります。契約全体の比べ方は定期防除契約の訪問回数・調査報告・緊急対応の比べ方にまとめています。報告書では、次の項目を確認します。

  • 調査日、区域、方法(聞き取り、目視、トラップ)
  • トラップの位置図と、捕獲数の推移(前回と同じ条件で比べられるか)
  • 水準の判定と、環境改善・施設改善の提案
  • 使用した薬剤の名称、場所、日時(承認を受けた医薬品・医薬部外品か)
  • 是正措置の担当と期限、前回の提案への対応状況
  • 再委託の有無と、作業責任者の氏名

業者選びの参考

日本ペストコントロール協会には優良事業所の認証制度があり、事業所専任の1級技術者、機器材や設備、各種保険の加入などの条件を満たした事業所が対象と案内されています(2026年10月3日確認)。認証は一つの目安で、食品工場での実績や報告書の様式は別に確認します。厨房での記録と契約の考え方は飲食店のゴキブリ対策も参考になります。

外部の防除業者に任せる範囲と報告書の確認項目:確認項目
作業防除業者に任せやすいこと工場側で行うこと
調査(聞き取り・目視・トラップ)現地調査、トラップの設置・回収・集計調査への立ち会い、目撃や痕跡の連絡ルートの用意
防除(薬剤・器具)製品の選定、設置、回収、使用記録作業日の調整、製造設備の養生、作業後の洗浄の確認
提案(環境改善・施設改善)調査結果に基づく改善案の提示提案の採否と期限の決定、設備の補修、清掃の実施
記録と判定報告書の作成、水準の判定報告書の保管、是正措置の最終判断と効果の確認
受け入れ・保管の管理助言受け入れの確認、保管方法、従業員の教育

参考:公益社団法人日本ペストコントロール協会|ねずみ等の調査及び防除特記仕様書(2026年10月3日確認)

異物混入が起きたときの原因調査と記録

食品衛生法第6条は、不潔、異物の混入などで人の健康を損なうおそれがある食品を、販売したり、販売のために製造・貯蔵したりしてはならないと定めています。虫の混入が見つかったときは、まず現物と状況を保全し、関わる製品と区域を特定して、出荷を止めるかを判断します。

日本惣菜協会の手引書は、記録は食品事故やクレームの際に、問題点の確認や原因の究明に活用できると述べています。網戸を通り抜けた昆虫の侵入で製造が中止された事例や、排水溝の清掃不足でチョウバエが発生した事例も紹介しています。

原因を調べる順番

原因の調査は、現物の保全、経路の推定、記録との照合、是正の順に進めます。虫の種類は専門家に確認してもらうと、経路を絞りやすくなります。

  • 現物、包装、ロット、製造日、発見の経緯を保管し、記録する
  • 虫の種類を専門家に確認し、侵入、発生、持ち込みのどの経路かを考える
  • 該当する区域の捕獲数、清掃、扉の開放、網戸、排水溝の記録と照らし合わせる
  • 同じ原材料や資材の使用状況、納入業者の受入記録を確認する
  • 是正措置と再発防止策を決め、実施後に効果を確認する

回収と届出の考え方

別表第17は、製品に起因する危害のおそれが発生した場合に備え、回収の責任体制、消費者への注意喚起の方法、回収の方法、都道府県知事等への報告の手順をあらかじめ定めておくことを求めています。法第58条は、第6条などに違反するおそれがある場合に回収するときは、遅滞なく、回収の着手と状況を都道府県知事に届け出ることを定めています。虫の混入が届出の対象になるかは状況で判断が分かれるため、保健所に確認してください。

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|食品衛生法(第6条・第51条・第58条、2026年10月3日確認)