倉庫でネズミが問題になる理由|保管品・配線・衛生・荷主の信頼
倉庫でネズミが問題になる場面は、大きく四つに分けられます。一つ目は保管品の食害や汚染で、包装のかじり、糞や尿の付着、足跡やこすり跡が荷の外装に残ります。二つ目は配線や電気設備で、国土交通省の倉庫管理主任者マニュアルは、漏電による火災の予防の項目で、電灯などの器具の内部がねずみや油虫の巣にならないよう注意することを挙げています。配線のかじり跡は配線にかじり跡があるときの相談先で扱っています。
三つ目は衛生の問題です。食品や飼料を預かる倉庫では、ねずみの痕跡が見つかった荷を出荷してよいかが問われます。四つ目は荷主や取引先との関係で、痕跡の記録、対策の内容、対応の速さを説明できるかどうかが、信頼に直結します。東京都のねずみ防除指針は、ねずみ防除を『餌の管理、巣材料の処理、通路の遮断』に分けて整理しており、倉庫では区画ごとにこの三つを当てはめると、点検の項目を決めやすくなります。
参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 1) 防除の基本(PDF)
倉庫でネズミの痕跡を見つけたら、最初に何をしますか?
荷を動かす前に、痕跡の場所、日付、保管品、写真を記録し、被害のある荷を区画して荷主へ連絡します。そのうえで防除業者に調査を依頼し、侵入口と餌・巣材の見直しを並行して進めます。
倉庫業法の施設設備基準と防そ設備|原文で確認できる範囲
倉庫業法は、他人から預かった物品を倉庫で保管する営業を倉庫業とし、国土交通大臣の登録を受けることを求めています。登録の際は、倉庫の施設と設備が、倉庫の種類に応じて国土交通省令で定める基準に合っているかが審査されます(法第2条、第6条第1項第4号)。自社の商品だけを置く倉庫は、寄託を受けて保管する営業ではないため、この登録の対象には当たりません。
防そに関する基準は、倉庫業法施行規則第3条の4第2項第11号にあります。一類倉庫の施設設備基準として、国土交通大臣が定めるそ害の防止に有効な設備を備えることを定めており、告示は、地窓および下水管や下水溝に通じる部分に設けた金網等のねずみの侵入を防ぐ設備と、出入口に設けた閉鎖時にねずみの侵入を防ぐ設備を挙げています。国土交通省の運用方針は、出入口が扉で密閉できない構造の場合に、ねずみ返しなどの設備を設けるものとしています。
この基準が定めていること、定めていないこと
この基準は、登録の時点で倉庫に備わっているべき設備の定めです。2026年10月3日に確認した倉庫業法、施行規則、告示、運用方針には、ねずみの調査を何か月ごとに行うか、防除の記録を何年保存するかといった定めは見当たりませんでした。倉庫管理主任者マニュアルは、倉庫内外の巡視で鼠害・虫害の有無を確認することを示しており、実際の防除の頻度や記録は、倉庫業者の運用と荷主との契約で決まります。
自分の倉庫が対象かを確かめる順番
基準の対象かどうかは、倉庫の使い方と登録の内容で決まります。次の順に確認すると、迷いにくくなります。
- 寄託を受けて保管する営業倉庫か、自社の物品だけを置く倉庫か
- 営業倉庫の場合、登録上の倉庫の種類(一類、二類、三類、冷蔵など)はどれか
- 食品や添加物を預かる場合、食品衛生法の営業者に当たるか(所在地の保健所に確認)
| 倉庫の種類 | 保管する物品の例(規則の別表) | 防そ設備の基準(規則第3条の4第2項第11号) |
|---|---|---|
| 一類倉庫 | 第一類物品(他の類に当たらない一般の物品)から第六類物品まで | 適用される |
| 二類倉庫 | 第二類物品(麦、飼料、塩、野菜類、皮革、金物製品など)から第六類物品まで | 適用される(耐火・防火性能の基準のみ除かれる) |
| 三類倉庫 | 第三類物品(板ガラス、陶磁器など、湿気や気温で変質しにくいもの)から第五類物品まで | 適用されない |
| 冷蔵倉庫 | 第八類物品(摂氏10度以下で保管するのが適当な生鮮品・凍結品など) | 適用されない(冷蔵倉庫には別の基準がある) |
倉庫のネズミの侵入口になりやすい場所|シャッター・ドック・配管・外壁の基部
倉庫は出入口が大きく、荷役のたびに扉が開くため、完全に閉じた建物にはなりません。東京都のねずみ防除指針は、いくら殺そ剤や粘着シートで駆除しても、餌、巣の材料、ねずみの出入りと建物内の移動という三つに対応しなければ被害は解決しないとし、クマネズミは1.25センチメートル程度以上のすき間があれば通り抜けるため、屋上から地上まで、建物内部も含めて丹念に探すことを求めています。
下の表は、倉庫でよく話題になる場所を、見る点と根拠の出どころ別に並べたものです。国土交通省の倉庫管理主任者マニュアルの点検項目には、シャッターや戸を閉めたときの異常なすき間、地窓の防そ用金網、庫内に通じる排水口の防そ金網、受変電設備への小動物の侵入防止が含まれています。
荷役口まわりの見方
荷役口は作業の都合で開けたままになりやすい場所です。作業中に開ける範囲と、閉めたあとに残るすき間を分けて見ます。閉めた状態の扉の下端と両側は、暗い時間帯に内側から見て、光が外へ抜けないかを確認すると見つけやすくなります。ゴムやブラシの摩耗はフォークリフトの接触でも起きるため、荷役の担当者から破損の連絡を受ける流れも作ります。
外周と敷地の見方
外周では、排水溝の格子、地窓の金網、配管や配線が壁を貫通する場所を順に見ます。外壁の基部に草や不要な資材が積まれていると、ねずみの隠れ場所になります。倉庫管理主任者マニュアルは、倉庫の周辺に破損したパレットや荷役機器が放置されていないかを調べ、あれば片づけることを示しています。ふさぐ材料や寸法の考え方は、防鼠金網でふさぐ前に確認することも参考になります。
| 場所 | 見る点 | 確認の根拠 |
|---|---|---|
| シャッター・扉の下端と両側、シャッターボックス | 閉めたときに異常なすき間やがたつきがないか。地面まで届いているか。ボックスに大きなすき間がないか | 倉庫管理主任者マニュアル、東京都ねずみ防除指針 |
| 荷捌き場・ドックの出入口 | 荷役中に開く部分と、閉鎖後に残るすき間。ドックシェルターなどの破損 | 日本冷凍食品協会の手引書(出荷口にドックシェルター等を設置する例) |
| 地窓・排水口・排水溝 | 金網や格子の破損、外れ。排水ますに土の部分が残っていないか | 告示第11条、倉庫管理主任者マニュアル、東京都ねずみ防除指針 |
| 配管・配線の貫通部 | 壁や床との間のすき間、詰め物の欠け。1.25センチメートル程度以上のすき間は通り抜けられる | 東京都ねずみ防除指針 |
| 外壁の基部・敷地 | 草、不要な資材、破損したパレットなど、隠れ場所になるものの放置 | 倉庫管理主任者マニュアル |
| 受変電設備・盤 | 小動物が盤内に入り込まない閉鎖措置がとられているか | 倉庫管理主任者マニュアル |
保管品別に気をつけること|食品・飼料・紙・電気製品
保管品によって、ねずみにとっての魅力も、被害のかたちも違います。倉庫管理主任者マニュアルは、貨物の注意点として、病虫害の発生を助けるものの例に米ぬかとでんぷんを挙げています。規則の別表では、麦、でんぷん、ふすま、飼料、塩、野菜類などが第二類物品に分類されており、食品や飼料の一部は一類または二類の倉庫で預かる物品に当たります。
下の表は、保管品の種類ごとに、痕跡の見方、保管時の注意、荷主へ伝える内容を整理したものです。被害の出方は倉庫の構造や季節で変わるため、表は点検項目を決める出発点として使い、実際の判断は現場の記録で行います。荷を床から離して点検できる配置にする考え方は、倉庫のパレットの裏まで見る点検で紹介しています。
| 保管品 | 痕跡の見方 | 保管時の注意 | 荷主へ伝える内容 |
|---|---|---|---|
| 食品(包装品・原料) | 外装のかじり穴、中身のこぼれ、糞、足跡やこすり跡 | 床や壁から離して保管し、開封品は蓋付きの容器に入れる(食品衛生法施行規則の衛生管理基準の考え方)。破損した荷は区画して動かし方を記録する | 区画、ロット、破損の写真 |
| 飼料・穀類・粉体 | 袋の裂け、こぼれた粉、かじり跡、糞 | 袋の破れを放置しない。掃き集めた荷粉は、種類別、汚損の程度別に分けて保管する(倉庫管理主任者マニュアル) | 袋の破れの状況、出庫前の確認結果 |
| 紙・段ボール・布・梱包材 | 細かく裂かれた紙や布、巣の形跡 | 巣の材料になるため、積み上げて放置せず、通路や壁際から離して保管する(東京都ねずみ防除指針の巣材の処理) | 巣材を見つけた場所、荷の動かし方 |
| 電気製品・ケーブル・機器 | ケーブル被覆のかじり、機器の内部への入り込み | 通電する機器や倉庫の電気設備は、被害を配線のかじりとして扱い、電気設備の点検担当に連絡する | 外装の傷、通電前に確認が必要かどうか |
捕獲器・殺そ剤を使うときの保管品への配慮と記録
東京都のねずみ防除指針は、ねずみ防除を、餌・巣材・通路を整える環境的防除、捕獲器などの物理的防除、殺そ剤などの化学的防除に分け、IPMの考え方では環境的防除を基本として殺そ剤の使用を必要最小限にとどめるとしています。倉庫でも順番は同じで、まず侵入口と餌・巣材の管理を見直し、そのうえで捕獲器や薬剤を使うかを決めます。選び方の比較は殺鼠剤と捕獲器の選び方にまとめています。
置く前に決めること
薬剤や捕獲器は、製品の表示に従うのが基本です。希釈や用量の目安は、この記事では示しません。保管品のある倉庫では、置く前に次の点を決めます。
- 製品の表示で、使用できる場所、対象、注意事項を確認する。保管品に触れる場所で使えるかは、表示と業者の説明で確かめる
- 食品や飼料を預かる区画では、薬剤や捕獲器が保管品を汚さない位置と方法を、業者と荷主の了解のもとで決める(食品衛生法施行規則は、殺そ剤や殺虫剤が食品を汚染しないよう十分注意することを求めている)
- 設置場所に番号をつけ、倉庫の平面図に書き込む
- 毒餌は誤食を防ぐ工夫をし、東京都の指針が重要とするとおり、ねずみがいなくなれば速やかに回収する。餌となる物を片づけておかないと毒餌を食べにくい点も押さえる
記録に残す項目と、ねずみ以外の動物への注意
記録には、設置日、回収日、場所の番号、使った製品名、点検結果、担当者、写真を残します。荷主から問い合わせがあれば、そのまま示せる形にしておきます。
倉庫に入り込むのはねずみだけとは限りません。ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種には鳥獣保護管理法が適用されませんが、野鳥や他の野生鳥獣と卵は、原則として許可なく捕獲や殺傷ができません。ねずみ以外の動物を見つけたときは、捕獲器や薬剤を使う前に、種類の確認を業者や自治体に相談します。
防除業者との契約で決めること|点検頻度・報告書・緊急対応
東京都のねずみ防除指針によると、事業所のねずみ・昆虫の点検と防除は、一般にペストコントロール業者と年間委託契約を結んで行うケースが多く、報告は『目撃や被害の有無』として届きます。最も望ましいのは、生息調査に基づき、餌場や通路を示して、構造面と維持管理面の改善を具体的に助言してもらうことだと整理されています。
日本ペストコントロール協会が公開する『ねずみ等の調査及び防除業務特記仕様書』は、建築物衛生法に準じた建物向けの見本ですが、契約書に入れる項目の見取り図として使えます。倉庫に同じ頻度が法律上義務づけられているわけではないため、回数は保管品と区画に合わせて決めます。下の表は、見本に示された項目を倉庫の契約に置き換えたものです。
報告書で最初に見る三つ
報告書は、調査の条件が前回と同じか、水準の判定と提案があるか、提案への対応の期限と担当が書かれているかの三つから見ます。見本は、防除のあとの効果判定を事前調査と同じ方法で行い、水準を満たさないときは、防除作業が原因なら再作業、環境や施設の不備が原因なら提案を行うと整理しています。訪問回数や報告書の比べ方は定期防除契約の項目の比べ方に、捕獲数の読み方は害虫の捕獲数の読み方にあります。
緊急対応と連絡先の決め方
見本は、作業の前に、作業日時、作業人員、薬剤の種類、処理法、処理区域、緊急時の連絡先を担当者に連絡することを求めています。見本には訪問までの目安時間や休日夜間の受付までは書かれていないため、目撃や被害の連絡から訪問までの流れ、荷主への連絡窓口は、契約で個別に決めます。
| 契約で決める項目 | 確認すること | 見本仕様書に見られる例 |
|---|---|---|
| 点検(調査)の頻度と範囲 | 建物全体と発生しやすい区画を分けて、何か月ごとに調べるか。調査と別日の防除があるか | 建物全体を6か月以内ごと、発生しやすい箇所を2か月以内ごとに調査する例 |
| 調査の方法 | 聞き取り、目視、トラップのうち何を行うか。トラップの位置を図面にするか | 聞き取り、目視、トラップ等による調査を状況に応じて行う |
| 判定の水準 | 区域ごとに許容・警戒・措置の水準を決め、結果がどれに当たるかを示すか | 三段階の水準を定め、発注者と受注者が協議して区域ごとに設定する |
| 報告書 | 調査日、区域、結果、判定、提案、使用した薬剤が入るか | 業務の都度、所定の期日までに報告書を提出する |
| 薬剤の使い方 | 使う薬剤の種類と場所を事前に示すか。承認を受けた医薬品・医薬部外品か | 薬剤の種類と実施場所を示し、発注者が影響の及ぶ範囲に通知する |
| 養生と事後清掃 | 保管品の養生と作業後の清掃を誰が行うか | 必要な場合は事前に示し、どちらが行うかを協議して定める |
| 再委託・費用の負担 | 他社へ再委託する場合の通知。機材、薬剤、消耗品の負担 | 原則として自ら実施し、再委託はあらかじめ通知する。機材や薬剤は受注者負担の例 |
荷主・テナントとの情報共有|約款の免責と連絡の流れ
国土交通省が公表している標準倉庫寄託約款(甲)は、倉庫業者が賠償責任を負う損害を、故意または重大な過失で生じた場合に限っています。さらに免責される損害の一つとして、そ害や虫害を挙げています。倉庫業者は自社の倉庫寄託約款を定めて国土交通大臣に届け出る仕組みで、実際の約款が標準と同じとは限りません。荷主は、預けている倉庫の約款と寄託契約で、ねずみの被害がどう扱われるかを確認しておく必要があります。
倉庫側から荷主へは、痕跡を見つけた区画と日付、被害の疑いがある荷、薬剤やトラップを使う日、対策の内容を伝えます。荷主側は、荷姿、外装、パレットの状態を入庫前に整え、被害品の扱いを事前に取り決めておくと、慌てずに済みます。複数の荷主やテナントが入る建物では、東京都の指針が事業所向けに示すように、所有者や管理者が中心になり、侵入口の補修や環境整備の役割を表にして分担します。
| 共有する場面 | 倉庫側が伝えること | 荷主・テナント側が行うこと |
|---|---|---|
| 痕跡を見つけたとき | 区画、日付、写真、被害の疑いがある荷 | 該当する荷の出庫や保留の判断、被害品の連絡先の取り決め |
| 薬剤・トラップを使う日 | 場所、日時、使う製品、立入の制限 | 保管品の養生や移動の希望の連絡。食品や飼料は特に確認する |
| 入庫前 | 保管区画のルール、パレットや外装の受け入れ条件 | 外装の破れや汚れの確認、梱包材やパレットの状態の確認 |
| 契約・約款の確認 | 適用される約款、免責の範囲の説明 | 保管品にかける保険や補償の範囲の確認、必要な契約の見直し |
| 定期報告 | 点検の結果と、是正の進み具合 | 報告の保管、取引先の確認や監査への備え |






