ワイヤーメッシュ柵の仕組みと、向く場所・向かない場所
ワイヤーメッシュは、金属線を溶接した網状の資材で、溶接金網とも呼ばれます。もとはコンクリートの骨材として使われていたもので、異径鋼線などを支柱にして、鳥獣害対策の柵として使われていると、農林水産省の総合対策編は説明しています。電気ショックで学習させる電気柵とは違い、構築物の高さと強度で侵入を防ぐ物理柵です。
同マニュアルは、一般に草による漏電の対策が必要な電気柵よりメンテナンスは容易だといわれるとしながら、成否を握るのは適正な維持管理だと強調しています。ワイヤーメッシュは通常、長さ2m程度の金属線を重ね合わせていくため、長い距離では支柱の打ち込みと継ぎ目の結束が必要ですが、曲げたり切ったりしやすい特徴があります。畑や家庭菜園全体の対策は、イノシシ対策を畑と家庭菜園で進める|柵の選び方と餌を残さない管理で整理しています。
| 場面 | 向くか | 公的資料の記載 |
|---|---|---|
| 草の管理が難しい場所 | 向く | 草による漏電が問題になる電気柵より、ワイヤーメッシュ柵を選ぶ例が図で示されている |
| 舗装道路の間近 | 向く | 電気を通しにくい舗装の際では電気柵の効果が出にくく、ワイヤーメッシュ柵を選ぶ例が示されている |
| 段差や曲がりが多い区画 | 向く | 曲げたり切ったりして、段差を埋めたり扉を作ったりしやすい |
| 木に登る動物(熊、サル、アライグマなど)が来る場所 | 単独では向かない | 金網柵やワイヤーメッシュ柵だけでは防げず、電気柵などの併用が必要とされる |
| 斜面や凹凸が多い場所 | 注意が必要 | 鳥取県は、斜面を避けて平坦な所に設置するとし、傾斜地での設置手順も別に示している |
参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)
イノシシ用のワイヤーメッシュは、高さと目合いをどれくらいにすればよいですか?
鳥取県のマニュアルでは、イノシシ対策のメッシュは高さ1.0〜1.2m、鉄線5mm以上、目合い15cm以下の例です。シカもいる場合は高さ2.0m程度とされています。県や市町村の基準が異なる場合があるため、購入前に確認してください。
イノシシ用ワイヤーメッシュの設置基準を出典別に比較|高さ・目合い・線径・支柱
ワイヤーメッシュ柵の数値は、出典によって書かれ方が違います。ここでは、鳥取県が平成29年4月に発行した『ワイヤーメッシュ柵設置・点検マニュアル』と、農林水産省の実践編(平成26年3月)の記載を、出典ごとに並べます。出典の間で差がある部分は、そのまま示します。
数値の差として、目合いは鳥取県が15cm以下とする一方、実践編は金網柵でイノシシを兼ねる場合は10cm以下としています。実践編は、イノシシは上を越えるよりも下をくぐって通り抜けようとする傾向があり、成獣は1m以上の跳躍力を持つとも説明しており、高さだけでなく地際の処理が重要になる理由です。購入前に、県や市町村が別の基準を示していないか確認してください。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| メッシュの大きさ(イノシシ対策) | 高さ1.0〜1.2m、長さ2m | 鳥取県マニュアル |
| 鉄線の太さ | 5mm以上。亜鉛メッキ加工が錆びにくい | 鳥取県マニュアル |
| 目合い(格子の間隔) | 15cm以下 | 鳥取県マニュアル |
| 格子と通り抜け | 幼獣は15cmの格子を通り抜け、成獣は20cm程度の隙間は潜り抜ける | 農林水産省 実践編 |
| 支柱・アンカー | 支柱(異径鋼線)は太さ13mm以上、長さ約1.8m前後で、30〜50cm以上の深さまで打ち込み、耕作地側に立てる。長さ2mのメッシュ1枚の中間に、太さ10mm程度のアンカーか中間支柱を設置する | 鳥取県マニュアル |
| 結束 | 支柱とメッシュの上下2〜3か所を、針金(14〜16号程度)でたすきがけに結ぶ | 鳥取県マニュアル |
| 上部の折り返し | 上部30cm程度を20〜30度折り曲げると、上端が10cm程度外へ傾き、飛び越せないと思わせられる | 農林水産省 実践編 |
| シカも来る場合 | 高さ2.0m程度 | 鳥取県マニュアル |
ワイヤーメッシュの地際の固定と、潜り込み・持ち上げを防ぐ方法
ワイヤーメッシュ柵は、高さが足りていても、地際に隙間があると破られます。農林水産省の総合対策編は、ワイヤーメッシュや金網はイノシシによる下部からの侵入を防ぐことが重要だと述べています。鳥取県と実践編の記載から、地際の処理を3つに分けて確認します。
地面との隙間をなくす
鳥取県のマニュアルは、メッシュは地面との隙間ができないように設置するとしています。地面の凹凸が多い所では、設置前にできるだけ整地します。水路や溝などの凹部分は、切断したメッシュを挿入して固定します。実践編も、柵の境目や柵と地面との間にわずかな隙間があれば潜り込まれ、柵が低ければ飛び越えられて侵入を許すと書いています。
下部の鉄線と、鼻で持ち上げられる点
鳥取県は、メッシュ下部の鉄線が突き出している部分は、イノシシに持ち上げられにくくするため、必ず土の中に埋め込むとしています。縦の鉄線は野生動物が来る側に向けて並べ、支柱とメッシュの上下2〜3か所を針金で結束します。実践編は、トタン板の説明の中で、地際が少しでも開いていると鼻を入れて持ち上げてしまうと述べています。家屋の隙間を金網などで塞ぐ材料の見方は、害獣の侵入口を塞ぐ材料はどう選ぶ?金網・板・充填材の確認にあります。
掘られたとき・飛び越されるときの補修
鳥取県は、メッシュの下の地面が掘られていたら、メッシュの端材を柵の外側の掘られた箇所に敷くこと、折り曲げが生じていたら修繕し、乗り越えがある場合は複合柵の設置を検討することを示しています。実践編は、掘り返されないよう、山側に折り返しのスカートを付ける方法を、潜り込み対策として図で示しています。
ワイヤーメッシュ柵の設置手順|ルート決めから門扉まで
鳥取県のマニュアルは、設置の流れを、事前準備、支柱の打ち込み、メッシュと支柱の固定、アンカーまたは中間支柱の設置、メッシュ同士の結束の順に示しています。ルートは、守る対象と範囲、侵入する動物とその経路を現地で確認し、見回りや草刈りがしやすいところを選びます。柵を作物に近づけすぎないことも注意点です。
門扉(出入り口の扉)は、既設のメッシュ柵の支柱に、針金を大きめの輪にしてメッシュを固定し、上下前後に動くようにして作る手順が示されています。兵庫県の集落柵点検表でも『扉の開け放し』が確認項目に入っているため、畑に出入りしたあとに閉めることが大切です。
同じマニュアルは、準備する資材と道具として、メッシュ、支柱(異径鋼線)、アンカーまたは中間支柱、針金(番線)、ハンマー、ペンチやクリッパー、金属パイプ、シノなどを挙げています。
- 柵を設置するルートを決め、草刈りをして、資材を配っておく(例として20mごと)
- 始点を決め、柵の高さに合わせて、支柱を30〜50cm以上の深さまで打ち込む
- 縦の鉄線を野生動物が来る側に向け、地面との隙間ができないよう支柱に固定する
- 支柱とメッシュの上下2〜3か所を針金で結ぶ。傾斜地ではメッシュ同士に隙間ができないよう重ねる
- アンカーまたは中間支柱で、メッシュの中間をしっかり固定する
設置後の点検表|潜り込み・つなぎ目・扉・草を見回りで見つける
鳥取県は、地際を中心に柵を月1回以上、収穫前は月2回以上点検し、草を刈って修繕するよう示しています。兵庫県森林動物研究センターは、集落柵の定期点検を少なくとも月に一度は行い、冬場は柵が破られる機会が増えるため特に注意するよう案内しています。次の表は、両者の記載から作った見回りの確認表です。
補修が必要な箇所にはカラーテープなどで目印をつけ、地図と記録用紙に残しておくと、補修に必要な資材の種類と量がわかると、同センターは説明しています。農林水産省の総合対策編には、兵庫県相生市の小河集落が、平成14年ごろに設置したワイヤーメッシュ柵を全戸で分担して年20回程度点検し、簡単な補修はその場で行い、箱わなによる捕獲も合わせて、被害額が約380万円から約5万円に減ったという事例が載っています。
| 起きやすい失敗 | 見回りで確認すること | 公的資料に書かれた対処 |
|---|---|---|
| 下からの潜り込み | メッシュの下の地面が掘られていないか | 外側の掘られた箇所に、メッシュの端材を敷く(鳥取県) |
| 持ち上げ・折り曲げ | メッシュに折り曲げが生じていないか。下部の鉄線が浮いていないか | 折り曲げを修繕し、乗り越えがある場合は複合柵を検討する(鳥取県) |
| 結束の外れ | 支柱とメッシュを結ぶ針金が外れていないか | 外れている箇所を、その都度修繕する(鳥取県) |
| つなぎ目・水路の隙間 | メッシュ同士の隙間や、水路・溝による分断がないか | 傾斜地ではメッシュを重ねる。溝には切断したメッシュを挿入して固定する(鳥取県) |
| 草・ツル | 柵にツルが巻き付いたり、周りの草が伸びたりしていないか | 草刈りをして、明るく見通しのよい環境にする(鳥取県) |
| 扉・柵の切れ目 | 扉の開け放し、柵の切れ目がないか | 集落柵点検表の確認項目(兵庫県)。見つけたらその場で閉める、補修する |
ワイヤーメッシュ柵と電気柵の比較・併用|登る動物と草の管理で分かれる
農林水産省の総合対策編は、金網柵やワイヤーメッシュ柵を高さと強度で入らせない柵、電気柵を衝撃電圧の痛みで入らせない柵と整理しています。登ることができる熊やサル、アライグマなどには、金網柵やワイヤーメッシュ柵だけでは防げず、電気柵などの併用が必要です。イノシシは木に登れないため、基本的な形状の柵で対応できると、同マニュアルは述べています。
ワイヤーメッシュと電気柵を組み合わせる複合柵では、金属柵の下部に電気線を簡易に敷設できる碍子など、下部の補強の資材が同マニュアルで紹介されています。ただし電気柵を加えると、次の項の安全の基準を満たす責任が増えます。2つの柵の違いは、次の表のとおりです。
| 比べる点 | ワイヤーメッシュ柵 | 電気柵 |
|---|---|---|
| 入らせない仕組み | 高さと強度で防ぐ物理柵 | 電気ショックの痛みを学習させる心理柵 |
| 草の影響 | 草による漏電の対策が必要な電気柵より、維持しやすいといわれる | 草が電線に触れると漏電するため、草刈りや防草シートが必要 |
| 登る動物 | 単独では防げない | 登ることができる動物にも有効 |
| 点検の目安(鳥取県) | 月1回以上。収穫前は月2回以上 | 週1〜2回。電圧が5キロボルト以上あるかを確認 |
| 設置場所(鳥取県) | 斜面を避け、地面との隙間を残さない | 舗装道等から50cm以上離し、動物の足が地面につく位置に設置 |
| 電気の安全対策 | 電気を流さないため該当しない | 危険表示、電気柵用電源装置、漏電遮断器などが必要 |
電気柵を併用するときの安全基準|表示・電源装置・漏電遮断器
農林水産省は、鳥獣被害防止の電気さくに起因する死傷事案を受けて、感電防止の措置を求めています。大阪府の案内によると、平成27年7月19日に静岡県で、電線が川につかって漏電したことによる感電死亡事故が起きています。
表示・電源装置・漏電遮断器の基準
農林水産省のページと、鳥取県の電気柵マニュアルが挙げる、感電を防ぐための主な事項を次にまとめます。
- 電気さくを施設した場所に、人が見やすいように適当な間隔で、危険である旨の表示をする
- 電気用品安全法の適用を受けるなど、基準に適合する電気さく用電源装置から電気の供給を受ける
- 30ボルト以上の電源から供給し、人が容易に立ち入る場所に施設する場合は、電流動作型で定格感度電流15ミリアンペア以下、動作時間0.1秒以下の漏電遮断器を設ける
- 電気を供給する電路に、容易に開閉できる専用の開閉器を設ける
- 家庭用電源から直接電気を流さず、必ず電気柵用電源装置を使う(鳥取県)
電気工事士の規定と、出典間の差
農林水産省の課長通知(平成28年3月15日)は、電気さく用電源装置を用いない電気さくは、電気工事士が技術基準に適合するよう設置する必要があり、違反すると罰則が適用されると説明しています。市販の電気さく用電源装置を用いた電気さくは、従来どおり無資格でも設置できるとされています。
出典の間で書き方が違うのは昼間の通電です。大阪府は、子どもや観光客などの通行が予想される公道等に面した箇所では昼間の通電を控えるよう案内し、鳥取県の電気柵マニュアルは、イノシシやシカが明るい時間帯も行動するとして、昼夜を問わず通電させるとしています。設置場所の状況に応じて、市町村や県の指導を確認してください。
資材費の調べ方|販売店の公式表示と、自治体の資材補助
資材費は、柵で囲う長さ、メッシュの規格、支柱や針金などの付属品、自分で施工するか業者に頼むかで変わります。当サイトでは独自の相場は示さず、販売店の公式サイトの表示と、自治体の補助の条件を確認する方法を整理します。
カインズの公式オンラインストアで『ワイヤーメッシュ イノシシ』を検索した結果(2026年10月3日確認)には、次の表の商品が並んでいました。価格は店舗や掲載場所で異なる場合があると注記されており、店舗を選ばない表示では取り扱いなしと出る商品もあります。これは掲載された表示であって、相場ではありません。
鳥取県のマニュアルが鉄線5mm以上を示しているのに対し、掲載された商品には、線径が2.6mmや3.2mmと読める名称のものもあります。価格だけで選ばず、線径、目合い、高さ、長さを公的資料の基準と見比べてください。メッシュ1枚の価格は本体だけで、支柱、針金、アンカー、扉、設置の手間は別にかかります。囲う長さを2mで割ると枚数の目安になり、重ねる分や角の分は余裕を見ます。自治体の補助の例は、表のあとに挙げます。
| 商品名(公式サイトの表記) | 掲載された価格 | 確認できる規格の記載 |
|---|---|---|
| ワイヤーメッシュ φ6×P150×1×2【SU】 | 1,180円 | 商品詳細に、縦1m×横2m、線径6.0mmとある |
| ワイヤーメッシュ φ3.2×100×1×2【SU】 | 728円 | 商品名に、φ3.2×100×1×2とある |
| ワイヤーメッシュ φ2.6×100×1×2【SU】 | 528円 | 商品名に、φ2.6×100×1×2とある |
- 太宰府市(2026年4月1日更新):メッシュ柵などの資材購入費の2分の1を、家庭菜園を含む農地について補助。交付決定通知書の受領前に購入した資材は対象外
- 鳥取市(2026年7月1日更新):電気柵、ワイヤーメッシュ柵、防鳥網の購入補助。申請者は2戸以上の農業者による団体などで、購入後の事後申請はできない
- 丸亀市の例は、丸亀市のイノシシ対策|侵入防止柵の補助は設置前の申請、出会ったときの行動で整理している
シカも来る地域でのイノシシ柵の高さの考え方
鳥取県のマニュアルは、イノシシ対策のメッシュを高さ1.0〜1.2m、シカ対策の場合は高さ2.0m程度としています。農林水産省の総合対策編は、2m近い高さでも飛び越される場合は、のり網や簡単なワイヤーなどで高さを加えることで防ぎやすくなるとしています。
電気柵では、シカもイノシシも電線の間隔を20cm以下とし、段数はシカのほうが多い3〜5段程度とされています。鳥取県の電気柵マニュアルには、イノシシ・シカ用の6段の例(上段の5、6段目は通電させなくてもよい)が示されています。総合対策編は、イノシシとシカが同時に出る地域では、シカ用の電気柵を設置するだけでイノシシも防げ、別々に設けず、複数種に有効な構造にして省力化することが重要だとしています。
どの動物が来ているかが分からないと、柵の高さも決められません。足跡や食べ跡で動物を見分ける方法は、畑の害獣対策|食べ跡や足跡で動物を見分けて柵と環境管理を選ぶ手順で確認できます。




