イノシシ対策のライト・音・テープ・においは効く?方法別の評価一覧

最初に結論を表にします。農林水産省の総合対策編(令和5年3月版)のコラムは、置いておくだけでイノシシやシカが来なくなる『夢のような忌避資材』は、現在のところ見つかっていないと書いています。表は、公的資料に書かれた評価と、確認できなかった方法を分けています。『公的資料では確認できない』は、効かないという意味ではなく、今回開いた資料の範囲に試験結果や評価の記載がなかったという意味です。

『確認できない』とした方法でも、ホームセンターやインターネットで商品が売られていることはあります。同コラムは、鳥獣が嫌う(と考えられる)においや成分を使った忌避資材が販売されているものの、これらは公的機関で効果を検証したものではないと書いています。購入を考えるときは、商品の説明書にある対象の動物、使い方、注意事項を確認してください。

イノシシ対策のライト・音・テープ・においは効く?方法別の評価一覧:確認項目
方法公的資料の評価確認した出典
ライト・センサーライト単独の試験結果は確認できない。光や音の刺激は慣れが生じ、効果がないか、あっても一時的とされる農林水産省 総合対策編のコラム
ラジオ・爆音機など音音単独の評価は確認できない。威嚇音による追い払いは、イノシシが慣れて効果が出にくい、続かない場合があるとされる環境省 イノシシ編ガイドライン、農林水産省 総合対策編
ピンク・青などのテープ、反射材公的資料では確認できない今回の確認範囲に記載なし
唐辛子・マリーゴールドなど公的資料では確認できない。においを使う方法は、慣れが生じる刺激の中でも特に効果が得られにくいとされる農林水産省 総合対策編のコラム
木酢液・クレオソート・ハーブ配合の忌避テープ飼育下のイノシシは忌避行動を示さず、体にこすりつけたり、食べたりした農研機構の成果情報(2003年度)
オオカミ尿忌避効果は皆無で、被害対策に使うべきではないとされる農研機構の成果情報(平成24年度)
猛獣の糞(ライオン・トラ・ヒョウ)無視する、鼻で接触する、体にこすりつけるなどの行動で、効果がないことが分かっている農研機構の成果情報(2003年度)

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)

読者の疑問

イノシシ対策にセンサーライトは効果がありますか?

比較ガイド

センサーライト単独の効果を検証した公的資料は、今回確認できませんでした。農林水産省は、光や音を使う方法は慣れが生じて、効果がないか一時的だとしています。柵と餌の管理を優先してください。

ライト・センサーライトの効果|光は慣れが起きやすい刺激

光や音を使った方法について、農林水産省の総合対策編のコラムは、光や音やにおいを用いたものは慣れが生じる対策で、効果がないか、あっても一時的だといわれると書いています。イノシシやシカにとって不利益だった経験を学習させなければ、光や音は忌避資材としての効果が得られず、一時的に避けるように見えるのは新しいものへの警戒心によるものだと説明されています。

コラムは、防護柵や緩衝帯の整備などの対策を合わせて行わなければ、いずれは光や音のする場所で餌を食べられることを学習してしまうとも書いています。センサーライトや点滅灯は、設置した直後に被害が止まったように見えても、そのまま効果が続くと考えるのは危険だといえます。

センサーライトや点滅灯など、特定の製品や設置方法でイノシシの被害が減ったかを試験した結果は、今回開いた農林水産省、環境省、農研機構の資料には見つかりませんでした。『ライトが効く』という説明を見かけたときは、公的機関が検証した結果なのか、設置後にどれだけの期間を観察した話なのかを確かめてください。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)

ラジオ・爆音機など音による方法と、追い払いが向かない理由

環境省のイノシシ編ガイドラインは、忌避剤や威嚇音等による追い払い等は、イノシシの慣れ等により効果が出にくい場合や効果が持続しない場合があり、注意が必要だとしています。同じガイドラインは、農業被害の防除対策としては、最も確実な効果が得られる防護柵の設置を万全に行うことを挙げています。

農林水産省の総合対策編は、鳥類の追い払いの項で、爆発音や警戒声などの聴覚刺激、かかし、防鳥テープ、模型などの視覚刺激による道具は、野生鳥獣に実害をもたらさないため、日数の経過とともに慣れて効果がなくなると説明しています。同じ項で、追い払いが有効なのは、警戒心が強い、学習能力が高い、熊やイノシシに比べて反撃の危険が低いという条件がそろうサルとカラスだと整理されています。

反撃される可能性が高い野生鳥獣は、安易に追い払いをすることは控えたほうがよいとされ、イノシシ等による人身被害の発生時は、相手に逃げ場がなく興奮状態にあるなどの条件が重なり、不用意な追い払いは有効といえないと書かれています。ラジオを一晩つけておく、爆音機を鳴らすといった方法の効果を、イノシシで検証した公的資料は、今回確認できませんでした。

参考:環境省|第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(イノシシ編)改定版(PDF)

ピンク・青のテープ、唐辛子、マリーゴールド|公的資料で確認できる範囲

ピンクや青のテープ、反射材、唐辛子、マリーゴールドなどの植物について、イノシシへの効果を評価した記載は、農林水産省の総合対策編と実践編、環境省のイノシシ編ガイドライン、今回開いた農研機構の成果情報のいずれにも見つかりませんでした。検索で見かける体験談や販売店の説明は公的な試験結果ではないため、この記事では、効果があるともないとも判断しません。

確認できた近い情報として、農林水産省のコラムは、イノシシの嗅覚はイヌに匹敵するといわれるものの、人が臭い、嫌だと思うにおいをイノシシはもっと嫌がるだろうという考え方は、間違った対策につながると指摘しています。においの物質の中には、イノシシやシカの注意を惹いて立ち止まらせたり、においをかがせたりする誘引効果を示すものも確認されているとされています。人が強く感じるにおいや辛味が、イノシシにも同じ効果を持つとは限りません。

テープについては、農研機構の2003年度の成果情報が、イノシシ用の忌避材として市販されているハーブ配合の忌避テープに、飼育下のイノシシが忌避行動を示さず、体への擦りつけや摂食を行ったと報告しています。色やテープそのものの効果を試した資料ではないため、ピンクや青の色に関する評価とは別の話として読んでください。

参考:農研機構|成果情報 匂い及び猛獣糞などに対するイノシシの行動(2003年度)

木酢液・オオカミ尿・忌避剤のにおいは効く?農研機構の試験結果

においを使う方法については、農研機構が飼育下のイノシシで行った試験の成果情報があります。いずれも飼育下での反応試験で、畑での長期の被害軽減を直接調べたものではありませんが、公的機関が行った検証です。2003年度の成果情報には、発表から年数が経っており情報が古くなっているため、同じ分野の研究は新しい情報を探すようにという注記があります。

木酢液・クレオソート・ハーブ配合の忌避テープ

農研機構の成果情報(2003年度)は、忌避効果があると考えられてきたクレオソートや木酢液に、イノシシは興味を示して体に擦りつけたり摂食したりし、忌避行動を示さなかったと報告しています。市販のハーブ配合の忌避テープにも、同様の反応でした。忌避物質とされるものの中には、嫌うよりも好む反応を示すものがあり、長期間の使用は誘因物質になる可能性があるとも注意されています。

オオカミ尿・猛獣の糞

近畿中国四国農業研究センターの平成24年度の成果情報は、現場で使われているオオカミ尿の忌避効果を、尿を吸収させた稲ワラで試験した結果を報告しています。供試した成獣9頭のうち8頭は尿ワラに警戒を全く示さず、残る1頭も数秒警戒したあとに、尿ワラを体に擦りつけました。尿ワラの先にサツマイモを置いても、イノシシはサツマイモより先に尿ワラを食べ、においを直接嗅いだ直後の行動は、摂食が44%、体への擦りつけが33%で、警戒行動はありませんでした。成果情報は、オオカミ尿を被害対策に用いるべきではないと結論づけています。

猛獣の糞(ライオン、トラ、ヒョウ)についても、効果がないことが2003年度の成果情報で分かっていると、同じ成果情報が紹介しています。

農薬登録のある忌避剤との違い

農林水産省のコラムは、安全性評価などの試験を経て農薬取締法に基づいて登録された忌避剤は、造林木の苗木や農作物の種子などに使うものが中心で、農地で鳥対策に使える農薬は数種類あるとしています。作物の収穫期に使える忌避剤はないとも書かれています。薬剤は、登録された対象や使い方、使用濃度などを守って使う必要があり、製品の表示に従うことが基本です。

参考:農研機構 近畿中国四国農業研究センター|成果情報 イノシシ対策に使われているオオカミ尿には忌避効果がない(PDF)

『慣れ』が起きる理由と、効果が続かないと判断する目安

農林水産省のコラムは、慣れの仕組みを、いわゆるパブロフの犬の実験にたとえています。犬にとって本来は利益も不利益もないベルの音を、餌と結びつけると、音だけで唾液が出るようになります。光や音も、イノシシにとって不利益だった経験と結びつかなければ中立の刺激のままで、新しいものへの警戒心が薄れれば、光や音のする場所でも餌を食べられると学習してしまう、という説明です。

同じ総合対策編の別の項は、電気柵が慣れを防げる理由を、毎年冬にドアノブなどで感じる静電気の痛みに、分かっていても慣れないことにたとえています。痛みや実害を伴う対策と、実害のない刺激との違いは、効果が続くかどうかを考える手がかりになります。

効果が続いていないかをどう判断するか、公的資料に数値の基準は見つかりませんでした。次の表のように、設置前の状態を写真と日付で記録し、設置後に同じ場所を見比べる方法が、現実的な確かめ方です。この表は当サイトの整理で、公的資料の基準ではありません。

『慣れ』が起きる理由と、効果が続かないと判断する目安:確認項目
記録する項目見る場所効果が続いていないと考える変化
食べ跡・掘り返し作物のそば、畝、畦設置前と比べて、新しい跡が減らない、または別の場所に広がった
足跡・けもの道畑の縁、柵や装置の近く装置のすぐ近くまで足跡が続き、通る場所が変わらない
被害の時期収穫前、水稲の乳熟期など被害の出やすい時期に、再び被害が出た
柵や地際の状態柵の下、扉装置を置いたことで点検が減り、地際に新しい穴が見つかった

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)

効果が続く対策との違い|柵と餌の管理に戻る判断

兵庫県森林動物研究センターは、イノシシは生息密度が比較的低くても深刻な農業被害を発生させるため、個体数管理より、防護柵の設置など農地へ侵入させない対策が重要だと説明しています。環境省のガイドラインは、農業被害の防除対策として、最も確実な効果が得られる防護柵の設置を万全に行うとしています。農林水産省のコラムは、鳥獣被害対策としては、個体群管理、侵入防止対策、生息環境管理による総合的な対策が最も確実だと述べています。

光や音の装置に費用をかける前に、柵の地際と餌の管理が整っているかを確認することが、これらの資料から読み取れる優先順位です。柵の選び方はイノシシ対策を畑と家庭菜園で進める|柵の選び方と餌を残さない管理に、ワイヤーメッシュ柵の基準はイノシシ柵をワイヤーメッシュで作る|高さ・固定・点検の公的な基準にまとめています。

害獣の忌避剤全般の限界は害獣の忌避剤だけで解決する?効果を確かめる見方と次の対策に、ネズミ向けの超音波などの機器の確かめ方はネズミ用の超音波などの機器。買う前に効果をどう確かめるかにも整理しています。

効果が続く対策との違い|柵と餌の管理に戻る判断:確認項目
対策何を変えるか効果が続く理由(公的資料)
柵で囲う農地に入れないようにする物理的に、または電気ショックの痛みで入れなくする。環境省は『最も確実な効果が得られる』と説明
餌をなくす収穫残さ、放任果樹、生ごみなどの餌餌が少なく、苦労が多く、危険も大きい場所にすることが対策の基本(兵庫県)
居心地を悪くする藪の刈り払い、隠れ場所の除去遊び場や潜み場をなくし、侵入をためらわせる(兵庫県)
光・音・においの装置実害のない刺激を与える慣れが生じ、効果がないか一時的(農林水産省)

参考:兵庫県森林動物研究センター|イノシシ

補助的に使うなら守る条件|近隣への配慮と人の安全

光や音の装置を、柵と餌の管理を整えたうえで補助的に使う場合の条件を整理します。近隣への音や光の影響について、公的資料に具体的な基準は見つかりませんでした。農林水産省の総合対策編は、被害対策を進めるには近隣住民との連携や合意形成が必要で、普段から連絡調整の体制を整備しておくことが重要だと述べています。装置を設置するときも、近隣と情報を共有しておくことが、苦情やトラブルを避ける手がかりになります。

追い払いの装置と、人が存在を知らせる行動は別

大阪府は、イノシシに出会わないための工夫として、音(鈴をつけるなど)や、夜に外出するときは光(懐中電灯など)で人間の存在を知らせることを案内しています。これは、人が出会い頭を避けるための行動で、畑に置いて追い払う装置とは目的が違います。また、イノシシに近づいたり、棒などで追い回したり、石を投げたりすると、興奮して人に危害を加える可能性があるため、おやめくださいとしています。

装置を使う場合に守る条件

次の条件は、公的資料の記載をもとに、当サイトで実務の順に並べたものです。装置の使い方そのものについて、公的な基準があるわけではありません。

  • 柵の地際と餌の管理を先に整え、装置は補助として位置づける
  • 設置前の状態を写真と日付で記録し、設置後と見比べる
  • 忌避資材や薬剤は、製品表示にある対象の動物と使い方、注意事項に従い、希釈や混合を自己流で変えない
  • 光や音を使う前に、近隣の住民へ知らせ、困り事が出たときの連絡先を決めておく
  • 装置を置いても被害が続くときは、市町村の窓口に相談する

参考:大阪府|イノシシに出会ったら