コウモリと超音波|自分で超音波を出して飛ぶ動物
コウモリは、口や鼻から人に聞こえない高い音を出し、物にぶつかって戻ってくる反響を耳で捉えて、餌の虫や障害物の位置を知ります。これがエコーロケーション(反響定位)です。国土交通省の天竜川上流河川事務所の資料は、調査に使う細い糸の霞網でも、コウモリは網の数センチ手前で身をひるがえして避けることがよくあると書いています。超音波を使いこなす動物に、人が出す超音波がどう届くかは、単純には決まりません。
国土技術政策総合研究所の調査の手引き(案)は、国産種のエコーロケーションの音域を、主に10〜120kHzの超音波域と説明し、20kHz未満を可聴音、それ以上を超音波としています。なごや生物多様性センターの職員による名古屋市内の音声調査でも、種類ごとに音の高さが違い、アブラコウモリは探索音の終わりの周波数が40kHz台、ヒナコウモリかヤマコウモリの可能性がある音は20kHz台、オヒキコウモリは10kHz台と判定されています。
| 音の型(名古屋市内の音声調査) | 周波数の目安 | 判定された種類(資料の記載) |
|---|---|---|
| FM/QCF型(周波数変調と準一定周波数を組み合わせた音) | 終部周波数が40kHz台 | アブラコウモリ。住宅のすみかで見かける種類 |
| FM/QCF型 | 終部周波数が20kHz台 | ヒナコウモリまたはヤマコウモリの可能性。確実な区別は難しいとされる |
| FM/QCF型 | 終部周波数が10kHz台 | オヒキコウモリ。人の可聴域の音で、人の耳で捉えることもできる |
| FM/CF/FM型(一定周波数の部分がある音) | 一定周波数部が60kHz台 | キクガシラコウモリ |
- 同じ「コウモリ」でも、音域は種類で10kHz台から60kHz台まで違います。
- 住まいに入り込む種類は、前橋市や国総研の資料ではアブラコウモリ(イエコウモリ)です。
参考:環境省 生物多様性センター掲載|なごや生物多様性センター(野呂達哉)都市域名古屋には何種類のコウモリが生息しているのか?音声による種同定の試み(PDF)
コウモリ駆除に超音波は効きますか?
今回開いた自治体・研究機関・メーカーの資料では、市販の超音波機器でコウモリが離れたことを示す検証は確認できませんでした。各務原市のように貸出で試せる自治体もありますが、効果の数値は示されていません。買う前に、対象動物とメーカーの表示を確認してください。
超音波機器はコウモリ駆除に効く?公的資料で確認できる範囲
超音波で追い払うという考え方は、自治体のページにも出てきますが、効果が検証されているかは別の問題です。ここでは、自治体の案内にある音や光の方法と、今回の調査で確認できなかったことを分けます。
自治体の案内にある超音波・音・反射の方法
各務原市は、市民向けにコウモリ忌避装置(防鳥防獣装置)を貸し出しています。動物が近づくと嫌がる音を出して追い払う装置で、原則1台を14日間、1世帯1回限りで、貸出は無料です。同市は、コウモリを寄せ付けない方法の例として、市販の忌避剤、ナフタレンやハッカなどの香り、センサーで感知する超音波、ブザー、ラジオ、侵入場所を塞ぐグッズを挙げています。
浜松市は、家の構造上、出入口をふさぐのが難しい場合の対処として、CDやアルミ箔をコウモリのいる周辺にぶら下げることを挙げています。コウモリが出す超音波をCDやアルミ箔で乱反射させると、コウモリが嫌がって近づかなくなる可能性がある、という説明です。
確認できなかったこと|効果の検証と有効な条件
今回開いた自治体、研究機関、博物館の資料には、市販の超音波機器でコウモリが離れた割合や、どの条件で効いたかを示す検証結果は見つかりませんでした。各務原市の貸出ページには効果を数値で示す記載がなく、浜松市の方法も「可能性がある」という表現です。確認できた範囲では、超音波は自治体が紹介する方法の一つにとどまり、効果を裏づける検証は見つかっていない、というのが現時点の整理です。
| 手段 | 自治体・資料での扱い | 確認できなかったこと |
|---|---|---|
| 超音波機器 | 各務原市が忌避装置を貸出。例示の一つとして「センサー感知超音波」を挙げる | 住宅でコウモリが離れた割合、有効な範囲や条件を示す検証結果 |
| CD・アルミ箔の反射 | 浜松市が、出入口を塞げない場合の方法として紹介(嫌がって近づかなくなる可能性) | どの程度の頻度・条件で離れたかの記録 |
| ライト・光 | 前橋市は嫌いなものに光を挙げ、北九州市はライトアップで棲み心地を悪くする方法を紹介 | 光を当てて追い出せた事例の検証。虫が集まる影響の評価 |
| ブザー・ラジオ | 各務原市が、寄せ付けない方法の例として挙げる | 効果の根拠、使用の条件 |
超音波機器のメーカー表示で確認する項目と読み方
市販の超音波機器を選ぶときは、広告の言葉より、メーカーの公式ページにある対象動物・周波数・有効範囲の表示を確認します。ここでは、メーカーが保健所や市役所で猫対策として貸し出されていると説明している、ユタカメイクの「ガーデンバリア」の公式ページ(2026年10月3日に確認)を例に、表示の読み方を示します。特定の製品を評価するものではなく、確認項目の例です。
同社のQ&Aは、この機器を長らく猫の被害軽減器として販売してきたこと、新たにハクビシンへの忌避効果の試験も済ませたことを書いています。今回開いたガーデンバリアの製品ページとQ&Aには、コウモリを対象にした表示は見つかりませんでした。また、製品ページ(GDX-3)は約18〜23kHzのランダムな超音波(105dB)を出し、動物の赤外線の動きを感知して作動する構成と説明しています。対象動物に、自分の住まいのコウモリが含まれるかどうかが、最初の確認点です。
| 確認項目 | 見る理由 | 公式ページの表示の例(ガーデンバリア、2026年10月3日確認) |
|---|---|---|
| 対象動物 | コウモリが書かれていなければ、その動物での効果は表示から読み取れない | 猫(長く販売)とハクビシン(忌避効果試験済み)。コウモリの記載は確認できず |
| 周波数と音圧 | コウモリの音域は種類で違う(10kHz台〜60kHz台の例)。機器の音域も確かめる | 約18〜23kHzのランダムな超音波(GDX-3、105dB) |
| 感知の仕組み | 何に反応して鳴るかで、設置場所と誤作動の起きやすさが変わる | 赤外線センサー。周囲との温度差のある動きを感知し、エアコン室外機の温風や、風で揺れる草花に反応することもある |
| 設置の向きと範囲 | 音は離れるほど弱くなるため、向ける先で結果が変わる | 猫では、侵入口ではなく被害のある場所へ向け、なるべく近づけて設置。侵入や通過を防ぐ機器ではないと説明 |
| 試用と返品 | 効果が出ないときの扱いを、買う前に知っておく | まず約2週間の使用を目安にし、購入後半年間は返品を受け付けると記載(猫の場合) |
| 人・ペットへの影響 | 屋内外、近隣、ペットへの配慮 | 耳に近づけない。猫や犬にも聞こえ、ストレスになる可能性があるため向きに注意 |
- この例では、公式ページの対象動物にコウモリがないため、コウモリへの効果は表示から読み取れません。
- 別の製品を選ぶ場合も、同じ6項目を、メーカーの公式ページや取扱説明書で確かめます。
- 「コウモリに効く」と書かれていても、検証の方法や対象の種類が書かれているかを確認します。
ライト・光でコウモリは追い払える?虫が集まる逆効果にも注意
光については、自治体がコウモリの嫌がるものとして紹介する一方で、虫を集めてコウモリの餌場をつくる可能性もあります。ここでは、資料に書かれている内容と、判断の注意点を分けて説明します。
自治体が挙げる光の方法
前橋市は、アブラコウモリの嫌いなものとして光、ハッカ、トウガラシを挙げています。北九州市は、煙の出るタイプの害虫駆除剤やナフタリン等の忌避材を置くことと並べて、ライトアップなどで棲み心地を悪くして追い出す方法を紹介しています。どちらも方法の紹介で、どの明るさ、点灯時間、場所で効いたかは書かれていません。
光は虫を集める|餌場になるおそれ
東京都ペストコントロール協会は、アブラコウモリが日没後に街灯に集まる昆虫を食べると説明しています。国総研の手引き(案)も、ライトで誘引すると走光性の昆虫が多く集まるため、餌となる昆虫の量を調べる方法には向かないと書いています。軒下に明るいライトを付けると虫が集まり、かえってコウモリの餌場になることも考えられます。
照明の光源や点灯場所を見直して虫を寄せにくくする考え方は、夜の照明に虫が集まるときの記事にまとめています。軒下の照明を変える前に参照してください。
研究者は光をどう扱うか
国総研の手引き(案)は、ねぐらの中を調べるとき、コウモリを混乱させないよう、ライトを低照度の赤色にして光をコウモリへ向けないよう求めています。明るい光が、コウモリを乱す要素として扱われていることが分かります。一方で、強いライトで出入口を照らし続ければ解決するという根拠は、今回の資料にはありません。出入口の観察でも、光を向け続けないようにします。
参考:国土交通省 国土技術政策総合研究所|コウモリ類の調査の手引き(案)Ⅱ 生態調査段階(餌資源調査・ライトによる誘引ほか、PDF)
音や光に慣れる・場所を移すだけになる場合の見方
音や光の対策で起こりやすいのは、一時的に離れても戻ってくる、あるいは別のすき間を使うことです。京都市のQ&A集は、イタチ・タヌキ・コウモリの項で、忌避剤で一時的に立ち去っても戻ってくる場合があるため、侵入口と思われるすき間を金網や板で防ぐことが効果的だと説明しています。大津市も、コウモリは追い払っても戻ってくることが多いと書いています。
ユタカメイクは、猫向けの説明として、一定の周期で音が変わる方式は慣れやすく、動物の動きに合わせて周波数と音圧を変える方式は慣れを減らす設計だと述べています。これは猫についての説明で、コウモリの慣れを検証したものではありません。コウモリが同じ音や光に慣れるのかは、今回の資料では確認できませんでした。
出入口が複数ある建物では、1か所に音や光を向けても、別のすき間から出入りする可能性があります。まず、日没前後の観察で出入りするすき間の数と位置をつかみます(コウモリの出入りを記録する方法)。それが分からない状態で機器を買い足しても、効果を確かめる基準がありません。
機器を使うなら組み合わせる対策|追い出し後は出入口を封鎖する
音・光・においは、コウモリが出ていく手助けにとどまり、再び入らないようにするのは出入口の封鎖です。イカリ消毒の防鼠金網の製品ページは、においの効果には持続期間の限界があるため、侵入経路を物理的にふさぐ資材の設置が重要だと説明し、追い出す前に金網を張るとコウモリやネズミを閉じ込めてしまうと注意しています。
東京都ペストコントロール協会は、コウモリが6mmほどのすき間からも出入りできるとし、日没後、餌を取りに出て屋内から出たところを、4メッシュ金網(5.25mm目)やパテでふさぐと説明しています。浜松市は、家の中に取り残さないことと、幼獣のいる6〜8月や冬眠前後を避けることを求めています。手順の全体はコウモリ駆除を自分でする方法にあります。
京都市は、野生鳥獣を近寄らせない、追い払うための対策を求める一方、捕獲や殺傷は原則として禁じられていると説明しています。罠や粘着シートで捕まえる、殺虫剤をかけて死なせるといった捕獲・殺傷は、許可なく行えません。法律の範囲はコウモリ駆除の法律で整理しています。
- 出入りの観察で、出入口の位置と数をつかむ
- 音・光・においは、追い出しの補助として製品の表示どおりに使う
- 全部出たことを確かめてから、日没後に出入口を封鎖する
- 封鎖後も、新しいフンや音がないかを記録する
買う前の確認表と相談する目安
超音波機器やライトを買う前に、次の項目を確かめます。1つでも「確認できない」があれば、購入より先に、観察と相談を進めたほうが失敗しにくくなります。
試用の期間を過ぎても出入りが続くとき、フンが増えるとき、天井裏から音が続くときは、機器を買い足す前に、出入口の数と位置、内部の状態を調べる段階です。東京都ペストコントロール協会も、環境整備を行っても効果が見られない場合は専門業者に依頼するよう案内しています。業者を比べる基準はコウモリ駆除業者の選定基準にあります。
- 製品の対象動物に「コウモリ」と書かれているか
- 周波数、感知の仕組み、設置の向きがメーカー表示にあるか
- 屋内で使うとき、ペットや人への影響の注意があるか
- 試用期間や返品の条件が書かれているか
- 自治体の貸出(例:各務原市の14日間)が使えるかを、先に問い合わせたか
- 出入口の位置と数を、観察で把握しているか






