軒下のコウモリは夜の休憩か住み着きか|ナイトルーストとねぐらの違い

国土交通省の国土技術政策総合研究所の「コウモリ類の調査の手引き(案)」は、コウモリが休む場所を「ねぐら」と呼び、昼の休眠場所のほか、夜間の休息場所、繁殖や冬眠に使う場所まで含めて説明しています。そのうち、夜間の一時的な休息のために同じ場所を高い頻度で使う所は「ナイトルースト」と呼ばれます。コウモリは巣材を運んで巣を作らないため、巣ではなくねぐらと表現するとも書かれています。軒下に止まる姿を見たら、夜の休憩場所なのか、昼も使う場所なのかを分けて考えると、対策の方向を決めやすくなります。

同じ資料は、ナイトルーストでは休息のほか、排泄や毛づくろい、近づく虫を待ち伏せして捕らえる行動が確認されていると述べ、軒下をナイトルーストとして使う例(長野県の高原)の写真も載せています。夜明け前には昼の休眠場所へ飛び去るため朝には空になりますが、フンが残って場所を推定できることもあるそうです。また、毎夜同じ場所を同じ個体が占める場合もあるとされており、毎晩来ることだけでは住み着きとは決められません。

ただし、この資料は道路事業の環境調査向けで、住宅の軒下で夜の休憩と住み着きを見分ける方法までは書いていません。同じ資料の種の解説は、アブラコウモリ(イエコウモリ)を、国内で年間を通じて家屋を休息場所にする唯一の種とし、屋根瓦の下、雨戸の戸袋の奥、通気口をよくねぐらにすると説明しています。前橋市も、生息場所として屋根裏、戸袋、換気口、軒下、瓦の下などを挙げています。次の表は、こうした公的資料の記載を手がかりに、観察で確かめる点を並べた目安で、現地調査の代わりにはなりません。

参考:国土交通省 国土技術政策総合研究所|コウモリ類の調査の手引き(案)Ⅵ 専門用語の解説(国総研資料第354号、2006年、PDF)

読者の疑問

軒下にぶら下がるコウモリは、巣を作っているのですか?

比較ガイド

コウモリは枝や巣材で巣を作らず、すき間などを休む場所(ねぐら)として使うと、国土交通省の国土技術政策総合研究所の資料は説明しています。軒下に止まるだけなら夜の休憩場所の可能性があり、同じすき間へ出入りしているなら住み着きを考えます。

夜だけの休憩場所と住み着きを見分ける判断表

表の見立ては、上の資料の記載と、出入りの穴にフンがたまるという東京都ペストコントロール協会の説明を組み合わせて整理したものです。当てはまる行が多い列を仮の見立てにし、決めつけずに記録を続けます。夜の休憩場所だと思っていても、同じすき間から出入りする様子が見つかれば、住み着きの対策に切り替えます。

夜だけの休憩場所と住み着きを見分ける判断表:確認項目
観察する点夜だけの休憩場所の可能性すき間に住み着いている可能性確認するときの注意
昼間の様子明るい時間帯は姿も出入りもない昼間も同じ場所に姿がある、または近くから音や気配がある軒下に近づかず、地上と室内から見える範囲で確認する
夕方から夜の動き日没後に飛来し、止まったり離れたりを繰り返す日没後に同じすき間から次々と外へ出ていく追い立てたり、ライトを当て続けたりしない
フンの落ち方止まる場所の下に、日ごとに少しずつ落ちる出入りしているすき間の真下に、毎日同じ位置へ増えて山になる粒の形だけで決めず、落ちる位置と真上の構造を見る
近くのすき間止まる場所の近くに、出入りに使える穴が見つからない6mmから1cmほどの穴があり、周りがフンで汚れている穴を見つけても、その場で塞がない
毎晩来るか毎夜同じ場所を使うことがある毎晩出入りする毎晩来ることだけでは、どちらとも決められない
季節活動期の春から秋の夕暮れ年間を通じて同じ建物を使い、11月頃からは冬眠する冬に動きがなくても、いなくなったとは限らない

フンが落ちる位置と時間帯の記録のしかた

東京都ペストコントロール協会は、コウモリのフンを大きさ5〜10mmで、夏に軒先や屋根の下に落ちていることが多く、昆虫しか食べないためネズミのフンよりもろいと説明しています。浜松市は、フンが落ちている場所が侵入口の手がかりになると案内しています。軒下では、フンの位置を「壁からの距離」と「真上の構造」と一緒に残すと、止まっているだけなのか、すき間から落ちているのかを後から読み返せます。

記録は、毎朝同じ時刻に、同じ位置から同じ向きで写真を撮り、前日に掃除したあとに増えた分だけを数える形が続けやすい方法です。夕方は日没の少し前から地上に立ち、軒下に飛来する時刻と、同じすき間から出る様子があるかをメモします。観察の段取りはコウモリの出入りを記録する観察の段取りで詳しく扱っています。

フンが落ちる位置と時間帯の記録のしかた:確認項目
記録する項目書き方の例分かること
日付と確認した時刻10月3日、朝6時半(前日の掃除後の翌朝)夜の間に落ちた分か、昼に落ちた分かを分けられる
フンの位置玄関ドア上の軒先、壁から約30cm、真上に戸袋止まる場所の下か、すき間の下かを推定できる
数と広がり約10粒が直径20cmほどに散る、または山になっている日ごとの増え方を比べられる
夕方の観察18時10分、軒先に1匹が飛来し数分で離れた、18時15分、戸袋の端から3匹が出た止まるだけか、同じ穴から出るかを区別できる
天気と気温雨、風が強い、など記録が途切れた日の理由を後で説明できる

参考:東京都ペストコントロール協会|コウモリとネズミの糞の違い

夜の休憩場所になっているときの対策|清掃と止まりにくくする工夫

休憩に使われているだけなら、すき間へ入り込まれる前の段階なので、清掃と止まりにくくする工夫が中心です。捕まえたり追い回したりする方法は選ばず、フンの被害を減らしながら、すき間への出入りに変わらないかを見守ります。

止まりにくくする工夫

前橋市は、コウモリが嫌うものとして光、ハッカ、トウガラシを挙げています。浜松市は、出入口を塞ぎにくい場合の方法として、CDやアルミ箔を吊るし、超音波を乱反射させて近づきにくくする案を紹介しています。北九州市も、ライトアップなどで居心地を悪くする方法に触れています。いずれも効果を約束する書き方ではなく、試す場合は様子を見ながら記録を取ります。

市販の忌避剤を使うとき

イカリ消毒は「コウモリいやがるスプレー」を、屋根裏などのコウモリを強いハッカ臭で追い出す製品とし、効果は約3〜6時間、室内では使用を控えるよう表示しています。吊るして使う「コウモリいやがる袋ミニ」は、近づきにくくする補助製品とされ、効果は約2週間から1か月と表示されています。どちらも臭いの持続に限りがあるため、軒下の休憩を一時的に避けさせる位置づけで、使い方は製品の表示に従ってください。殺す目的の薬剤や罠が使えない理由はコウモリ駆除の法律にまとめています。

フンの掃除と、真下の使い方

フンは、乾いた粉を舞い上げないように掃除します。厚生労働省の動物由来感染症ハンドブックは、動物のフン尿が乾燥すると病原体が空気中を漂うことがあるため、直接触れたり吸い込んだりしないよう、早めにこまめに処理することを勧めています。手順はコウモリのフンの特徴と掃除方法にあります。

  • フンが落ちる位置の真下に、洗濯物、自転車、車、玄関マットを置かない配置にする
  • 止まっている個体を追い払う、棒で触る、網でつかまえることはしない
  • 毎朝のフンの数と位置を、同じ書式で記録する
  • 夕方に飛来した時刻と、軒下のどの辺りに止まったかを書き留める

参考:前橋市|コウモリについて 市街地にも姿を現します

すき間に出入りしているときの対策|追い出してから封鎖する順番

同じすき間へ出入りしている場合は、出入口を見つけ、追い出して全部が出たことを確かめてから塞ぎます。順番を逆にすると、中に残った個体を閉じ込めます。イカリ消毒も、防鼠金網ソフトの製品ページで、追い出す前に使うとコウモリやネズミを閉じ込めてしまうと注意しています。

出入口の見つけ方

東京都ペストコントロール協会は、コウモリが6mmほどのすき間から出入りでき、出入りしている穴にはフンが堆積して夜間の出入りが確認できると説明しています。浜松市は1cmほどのすき間でも出入りできるとし、フンが落ちている場所を侵入口の候補にするよう案内しています。軒下の場合は、フンの真上にある戸袋、瓦の下、軒天と壁の境目などが候補になります。

塞ぐ時期と時間帯

浜松市は、コウモリが家にいない時間帯に塞ぐこと、取り残さないこと、まだ飛べない幼獣のいる6〜8月と冬眠の前後は避けることを案内しています。北九州市も、冬眠時期と夏の出産時期は追い出しが難しく、それ以外の時期の対策が効果的としています。東京都ペストコントロール協会は、日没後に餌を取りに出て、屋内から出たところで塞ぐ方法を紹介しています。時期の考え方はコウモリ対策の時期の考え方も参照してください。

自分で塞ぐ範囲と、塞がない範囲

道具と手順はコウモリ駆除を自分でする方法にまとめています。軒や屋根のすき間は、地上から見える範囲だけを写真に残し、屋根へは上りません。捕獲や殺傷は、鳥獣保護管理法で許可なくできません。環境省は、鳥獣は原則として捕獲や殺傷が禁止され、被害の防止などの場合に環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲できると説明しています。

参考:公益社団法人東京都ペストコントロール協会|コウモリ・防除方法の選びかた

軒下で使う資材と高所作業の注意

軒下の封鎖で名前が挙がる資材と、公的資料やメーカーの表示にある注意を並べます。価格や製品の優劣は比べていません。使う場所や素材との相性は、製品の表示と現地で確かめてください。

軒下で使う資材と高所作業の注意:確認項目
資材・用品軒下での使いどころ資料・表示にある注意
金網(4メッシュ、5.25mm目など)すき間や換気口の外側をふさぐ東京都ペストコントロール協会は、4メッシュ金網やパテでの封鎖を紹介。イカリ消毒の防鼠金網ソフトは線径0.5mmの亀甲金網で、設置時は革手袋、先に追い出してから使うと表示
パテ・シーリング材金網のまわりや小さな穴を埋める前橋市は、パテやシーリング材でのすき間封鎖、金網や目の細かい防鳥ネットで覆う方法を挙げている
ネット(網)軒下に入り込ませない北九州市は、コウモリがいない時(または追い払ってから)にネットなどで侵入を防ぐよう案内
ガムテープ出入口を一時的にふさぐ浜松市が紹介する方法。取り残しがないことを確かめてから使う
忌避スプレー・忌避袋追い出しや、近づきにくくする補助イカリ消毒は、スプレーは室内で使用を控える、保護マスク・手袋・保護眼鏡をすすめると表示。使用場所の周りに臭いが長く残る場合がある

参考:イカリ消毒|防鼠金網ソフト 製品情報(コウモリ・ネズミの侵入防止)

軒下の高所作業で転落しないために

軒下は、地上から手が届かない高さにあることが多く、脚立やはしごを使う作業になりがちです。国民生活センターは、脚立・はしごからの転落事故として、2010年12月以降2019年2月末までに433件の情報が医療機関ネットワークに寄せられ、約半数で入院が必要だったと公表しています。屋外の事故が約8割を占め、庭木の手入れ中が目立つともされています。

同センターは、脚立やはしごを使わない方法を検討すること、一人きりで作業しないこと、より安定した用具を選ぶこと、無理のない計画を立てることなどを勧めています。東京都ペストコントロール協会も、出入りするすき間が高所の場合は危険が伴うため、専門業者に依頼するよう案内しています。出張費や高所作業費が見積もりのどこに入るかは、出張費・高所作業費はいつ発生するかで確認できます。

  • 地上から手が届かない高さのすき間は、自分で作業しないと決める
  • 脚立の上で体を伸ばさないと届かない位置は、その場で見積もりに回す
  • 一人で作業せず、足元が不安定なら中止する
  • 地上から撮った写真に、位置が分かる目印を入れて相談する

参考:国民生活センター|思わぬ大けがに!高齢者の脚立・はしごからの転落(2019年3月公表、2024年9月更新)

毎晩続くときの相談目安と、相談先の選び方

毎晩同じ場所にフンが増える、夕方に同じすき間から出入りする様子が見える、天井裏から音がする場合は、住み着きの可能性が高く、自分の対策だけで続けるより相談を考える段階です。相談先は、自治体の窓口と、専門業者に分かれます。

自治体の窓口に確認すること

横浜市は、市ではコウモリの捕獲や駆除を行わず、難しい場合は専門業者(有料・個人負担)へ相談するよう案内し、捕獲許可は県の担当課に問い合わせるとしています。浜松市も、原則として市では捕獲や駆除を行っていないと案内しています。窓口の役割は自治体で異なるため、まず住んでいる市区町村に、コウモリの相談をどこで受けているかを確認します。

業者に頼む前に確認すること

国民生活センターは、サイトの格安料金の表示と実際の請求がかけ離れる相談があること、交付される書面にサービス内容が明記されない場合があることを注意しています。相談事例には、コウモリ駆除で、サイトの約8,000円からの表示に対して約130万円の契約をした例もあります。足場や高所作業の費用が見積もりに入っているか、封鎖の箇所が図で示されているかを、契約の前に確認します。

参考:横浜市|家にコウモリが住み着いている。