台風・大雨のあとに害獣・害虫の相談が出る理由

台風や大雨のあとに害獣や害虫の相談が出る場面は、大きく二つに分けられます。一つは、屋根、軒、軒天、換気口、雨どいの周りが破損して、建物にすき間ができる場合です。もう一つは、浸水や停電で食品が傷み、濡れた家財やごみが増え、水たまりが残って、ハエ、蚊、ネズミの餌や発生源が増える場合です。

この二つは、確認する場所も、頼る先も異なります。破損は修理業者と、動物の侵入が疑われるときの調査が関係し、浸水後の衛生は、厚生労働省や自治体の案内に沿った清掃が中心になります。東京都のねずみ防除指針が示す、餌、巣の材料、ねずみの通路という三つの見方は、台風のあとも変わりません。まず破損と浸水を分けて、順に確認します。

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 1) 防除の基本(PDF)

読者の疑問

台風のあと、屋根の状態を自分で屋根に上って確認してもよいですか?

比較ガイド

屋根に上る確認は勧められません。濡れた屋根や破損した屋根は足場が不安定で、厚生労働省の労働災害事例にも屋根の踏み抜きによる墜落があります。地上から写真を撮り、屋根の確認は修理業者に頼みます。

屋根や軒の破損を地上から確認する方法|屋根に上らない

屋根の確認は、屋根に上らずに行います。厚生労働省の労働災害事例には、屋根の雨漏りの修繕のためにスレート屋根の上で作業中、屋根を踏み抜いて墜落し死亡した事例が掲載されており、原因として踏み抜き防止の措置がなかったことなどが挙げられています。台風のあとの屋根は、濡れていたり、部材がずれていたりして、足場が不安定になっているおそれがあります。

地上と室内からの見方

地上からは、建物から離れた位置で、屋根の棟、軒先、瓦やスレート、板金のずれやめくれ、雨どいの外れ、軒天の穴やはがれ、換気口の格子や網の破損を、順に見上げて写真に残します。スマートフォンの望遠や双眼鏡で拡大できますが、はしごや脚立で近づくことは避けます。室内では、天井のシミ、物音、においを確認します。軒や屋根のすき間の見方は、軒や屋根のすき間を地上から確認する記事に詳しくまとめています。

写真と記録の残し方

写真は、建物の全体、破損の近景、位置が分かる引きの三枚を、日付が分かる形で残します。雨漏りは、見つけた天井の位置と日時、雨の降り方も添えます。保険会社、修理業者、駆除業者のどれに連絡する場合も同じ写真を渡せるよう、一つのフォルダにまとめておきます。

屋根や軒の破損を地上から確認する方法|屋根に上らない:確認項目
見る場所地上・室内から確認できる変化次の動き
屋根(瓦・スレート・板金)ずれ、めくれ、割れ。飛散した部材が地面にある離れた位置から写真を撮り、屋根には上らず修理業者へ連絡する
軒先・軒天穴、はがれ、すき間、たれ下がり見上げて撮影し、出入りの痕跡がないかを調査で確認する
換気口・通気口格子や網の破損、外れ、変形換気を保つ修理が必要なため、封鎖の前に業者へ相談する
雨どい・外壁・配管の貫通部外れ、ひび、すき間すき間は動物の出入り口になりうるため、位置と大きさを記録する
天井・押入れ(室内)シミ、物音、におい、天井板のたわみ雨漏りか動物かを分けて、場所と時間を記録する

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト 労働災害事例(スレート屋根の踏み抜き・墜落、No.101379)

破損箇所から動物が入ったかを見分ける痕跡

屋根や軒に破損があっても、動物が入ったとは限りません。見分けるには、出入りの痕跡と、室内側の変化を組み合わせて見ます。東京都のねずみ防除指針は、ねずみの活動の証拠をラットサインと呼び、音、かじり跡、糞、足跡、体のこすり跡を挙げ、足跡やこすり跡は通り道に付く特有の黒光りした跡になると説明しています。

ねずみの場合、クマネズミは1.25センチメートル程度以上のすき間があれば通り抜けるとされ(東京都の指針)、小さな破損でも侵入口になりえます。一方で、動物の種類は音や痕跡だけでは決められません。種類の絞り込みは、天井裏で音がするときの記録の取り方や侵入経路の部位別チェックを参考に、場所と時間を記録して調査に渡します。

動物の種類を決めつけない

台風のあとは、天井裏の音や汚れを、すぐに特定の動物に結びつけたくなります。種類によって対処が変わるため、決めつけず、見つけた痕跡を場所と日時で並べます。糞は触らずに写真で記録し、片付けは業者や自治体の案内を確認してから進めます。

ふさぐ前の確認と、野生鳥獣の扱い

破損が見つかった場所を、中の様子を確認する前にふさぐことは勧められません。出入りの有無を調べてから、封鎖と修理の順序を決めます。鳥の巣に卵やヒナがいる場合や、アライグマなどの特定外来生物が疑われる場合は、自分で撤去や捕獲をせず、市町村や都道府県の窓口、または専門業者に相談してください。野生の鳥獣と卵は、原則として許可なく捕獲や殺傷ができません(環境省)。

破損箇所から動物が入ったかを見分ける痕跡:確認項目
痕跡見つかりやすい場所記録のしかた
夜間の足音、引っかく音、鳴き声天井裏、壁の内側、軒の近く音がした日時、場所、続いた時間
黒っぽいこすり跡、足跡梁、配管の周り、壁際、軒下のすき間の縁位置が分かるよう、近景と引きの写真を撮る
糞、尿のシミ天井板、断熱材の上、軒下、換気口の周り触らずに、場所と広がりの目安を写真で残す
かじり跡配線、木部、断熱材、換気口の網被害を受けた設備や部材の名前と位置を書く
細かく裂かれた紙や断熱材など、巣の材料屋根裏の隅、収納の奥位置と範囲、巣の有無を記録する

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 1) 防除の基本(PDF)

浸水後の片付けと衛生|厚生労働省の案内の読み方

厚生労働省は、『被災した家屋での感染症対策』として、浸水した家屋の清掃と消毒の案内を出しています。要点は、感染症予防には清掃と乾燥が最も重要で、清掃が不十分だと消毒の効果が出ない、というものです。また、屋外(床下や庭)の消毒は原則不要とされています。床下浸水のあとに消毒を急ぐ前に、まず泥の除去、換気、乾燥を優先する順番になります。

清掃の手順と身を守る装備

厚生労働省のリーフレットが示す手順は、次のとおりです。ほこりや泥を吸い込んだり、傷口から感染したりしないよう、装備を整えてから始めます。

  • ゴーグルとマスクで目と口をほこりから守り、手袋と底の厚い靴を身につける
  • ドアと窓を開けて、しっかり換気する
  • 汚泥を十分に取り除き、しっかり乾燥させる
  • 消毒液を使うのは、汚れを取り除いたあとにする
  • 清掃が終わったら手洗いをする

消毒液と消石灰の扱い、けがをしたとき

厚生労働省の資料は、汚染がひどい場合や長時間浸水していた場合に次亜塩素酸ナトリウムを、色あせや腐食で使えない場合にアルコールや塩化ベンザルコニウムを使う、と整理しています。希釈の濃度や使い方は、この記事では示しません。厚生労働省の資料と製品の使用上の注意に従ってください。消石灰はアルカリ性で、肌や目に触れると炎症を起こし、目に入ると失明のおそれがあるため、素手で触らず、目に入ったときはすぐに大量の水で洗い流して医療機関を受診します。

けがをしたときは、傷口を流水で洗い、深い傷や汚れた傷、目を洗っても充血が続く場合は医師に相談します(厚生労働省)。体調に不安があるときは、診断や治療を自分で判断せず、受診や自治体の相談窓口につなぎます。

参考:厚生労働省|被災した家屋での感染症対策(浸水した家屋の感染症対策リーフレット等、2026年10月3日確認)

水たまり・ごみからのハエ・蚊・ネズミの対策

浸水の片付けでは、濡れた畳や家財、傷んだ食品が一度にごみになります。ごみが家の周りに積まれたままになると、ハエやネズミの餌と隠れ場所になります。ごみの出し方や仮置き場は、市区町村の案内に従って、早めに出します。

東京都保健医療局は、蚊の幼虫は水中で育つため水のないところから蚊は発生しないとして、成虫を駆除するより、水中のボウフラを減らす方が効果的だと案内しています。不要なものを片付けてたまり水をなくし、ためておく必要のある水は週1回程度、清掃や水の交換をします。水たまりが残る庭や、空き缶、バケツ、植木鉢の受け皿を見直します。

ハエとネズミの見方

ハエは生ごみや汚物から発生します。日本ペストコントロール協会は、予防対策として、屋内外の清掃を徹底し、エサや産卵場所となる生ごみや汚物を取り除くことを挙げています。家の中で突然ハエが増えたときの発生源の探し方は、ハエが大量発生したときの発生源の探し方にまとめています。ネズミは、餌、巣の材料、通路の三つのうち一つも残さないよう整えることが基本で、片付けの途中で出た食品、紙、布を放置しないことが第一歩です。

水たまり・ごみからのハエ・蚊・ネズミの対策:確認項目
対象増える場所と理由片付けのときの行動参考にした資料
蚊水たまり、空き缶、バケツや植木鉢の受け皿などのたまり水の中で、幼虫(ボウフラ)が育つ不要なものを片付け、たまり水をなくす。ためておく水は週1回程度、清掃や交換をする東京都保健医療局「蚊の発生防止強化月間」
ハエ生ごみ、汚物、人家周辺のごみから発生する屋内外を清掃し、エサや産卵場所になる生ごみや汚物を取り除く日本ペストコントロール協会(蚊・ハエ駆除)
ネズミ食品、ごみ、紙や布などの巣の材料、建物のすき間食品とごみを管理し、巣の材料になる物を収納する。すき間は調査を頼んで確認する東京都ねずみ防除指針

参考:東京都保健医療局|蚊の発生防止強化月間

災害後の点検商法・高額請求への注意

国民生活センターは、自然災害が発生すると、それに便乗した悪質商法など災害に関連した消費者トラブルが多く発生する傾向があり、特に被災地域で多くの相談が寄せられるとして、注意を呼びかけています。住宅の修理では、『すぐに直さなければ雨漏りする』と執拗に勧める例、『今直さないと大変なことになる』と不安をあおる例、公的機関から委託を受けたと称して点検に来る例、保険金が使えると勧誘する例が挙げられています。

同センターの2026年3月の発表は、屋根や分電盤の点検を持ちかける点検商法を、自然災害をきっかけや口実にした勧誘トラブルの一つとして挙げています。アドバイスとして、複数の事業者から見積もりを取って慎重に検討すること、周囲に相談すること、加入している保険の対象範囲と申請方法を把握しておくことが示されています。害虫・害獣の駆除でも、ネットの価格と実際の料金がかけ離れる相談が増えているため、見積もりの内訳は書面で確かめます。見分け方は害獣駆除の悪徳業者を見分ける確認表にあります。

その場で決めないための確認

訪問してきた業者に点検や修理を勧められたときは、次の点を確認します。契約を急かされたときの対処は契約を急かされたときに作業前に確認することも参考になります。

  • 訪問の理由、事業者名、連絡先を確かめ、見積書の内訳を書面で受け取る
  • 「保険で自己負担なく直せる」「申請をサポートする」と言われたら、契約の前に保険会社や代理店へ相談する
  • 請求期限が迫っているなどの説明をうのみにしない
  • 訪問販売では、法律で決められた書面を受け取った日から8日以内なら、クーリング・オフができる場合がある
  • 不安や困りごとは、消費者ホットライン188(最寄りの消費生活センターにつながる)に相談する

参考:国民生活センター|被災地域は特に注意!災害後の住宅修理トラブル(2022年6月16日公表)

火災保険・修理業者・駆除業者に連絡する順番

日本損害保険協会は、台風、暴風、ひょう、地震などによる住宅の被害は、多くの場合、加入しているすまいの保険で補償される一方、自然の消耗や劣化、さびによる損害は支払いの対象にならないと案内しています。「保険が使える」と勧誘する業者とのトラブルが増えているため、業者と契約する前に、契約している損害保険会社か代理店へ相談するよう呼びかけています。

すまいの保険(火災保険)は、風災や水災などを補償する商品がありますが、風災は一定額以上に達する損害を対象にし、水災は洪水や床上浸水などを対象にする商品がある、と協会は説明しています。補償の範囲は契約ごとに違うため、証券と約款で確認します。害獣による被害が補償されるかは、害獣駆除と火災保険の関係で確認する箇所を整理しています。

修理と駆除の順番

動物が屋根裏に入っている疑いがあるときは、穴をふさぐ修理の前に、出入りの有無を調べる調査が必要になります。雨漏りと動物の調査を別々の業者に頼むときの情報の渡し方は、雨漏りと害獣調査を別々に頼む記事に整理しています。

火災保険・修理業者・駆除業者に連絡する順番:確認項目
順連絡先伝えること・渡す物注意
1家族・近隣、必要に応じて自治体安全の確保、立入を避ける場所の共有屋根や高所には上らない
2損害保険会社・代理店被害の写真、日時、場所、被害の様子修理の契約より先に連絡する。補償の範囲は契約で異なる
3修理業者(複数)破損の写真、見積もりの範囲その場で契約せず、複数の見積もりを比べる
4駆除業者(調査)動物の侵入が疑われる痕跡、音の記録修理とは別に、調査の範囲と報告書を確認する。ふさぐ前に出入りを調べる
5市区町村・保健所・消費生活センター浸水後の衛生、ごみの出し方、勧誘の相談188は最寄りの消費生活センターにつながる共通の番号

参考:日本損害保険協会|住宅の修理などに関するトラブルにご注意