スズメバチの罠が狙うのは春の女王蜂|時期が限られる理由
ペットボトルトラップは、ペットボトルの上部に蜂が入れる口を作り、酒や砂糖、ジュースなどをもとにした誘引液を入れて木の枝などに吊るす簡易の罠です。山口市は、越冬を終えた女王蜂が巣を作るのは3月から5月ごろで、この時期に女王蜂を捕ることは、巣を一つ除去するのと同じ効果があると説明しています。
女王蜂は1匹だけで巣作りを始め、巣の中で働き蜂が生まれます(志木市の案内)。6月以降は女王蜂が巣に入って働き蜂が活動を始めるため、同じ罠が今度は働き蜂を呼び寄せる側に回ります。罠が使えるのは巣がまだ小さい春だけで、その先は別の対応になります。蜂の一年の流れはスズメバチの活動時期で月ごとに確認できます。
もう一つ押さえたいのは、罠の目的です。山口市は、スズメバチは生態系の上位にいる生き物で、数が減ると他の蜂や害虫が増える可能性があるため、トラップを置く目的は根絶ではなく、自宅周辺の営巣を予防して刺される危険を防ぐことだと説明しています。
参考:山口市|ペットボトルトラップで、スズメバチの営巣を予防しましょう
スズメバチの罠はいつからいつまで置くのですか?
今回確認した自治体の多くは3月ごろから5月ごろの設置を案内し、6月以降は撤去を求めています。東大阪市は3月下旬〜5月下旬、名古屋市は4〜5月、札幌市は5〜7月ごろです。お住まいの自治体の案内を優先してください。
スズメバチの罠を置く時期|自治体7か所の案内を並べて比べる
次の表は、2026年10月3日に開いた自治体の公式ページの記載から、設置時期と撤去・交換にかかわる部分だけを抜き出したものです。ページの更新日は各ページの表示のとおりで、2019年更新のものもあります。自治体ごとに気候も書き方も違うため、お住まいの市区町村に案内がある場合は、そちらを優先してください。
設置の始めと終わりの考え方
始まりは、東大阪市の3月下旬から札幌市の5月までと幅があります。葉山町のように、女王蜂が飛来するのは3月上旬から4月中旬ごろと書く例もあり、気候の違いが背景にあると考えられます。一方、終わりは、ほとんどの自治体が「6月以降は設置しない、または撤去する」で一致しています。
寒冷地や標高の高い地域のとき
札幌市は5〜7月ごろをハチとり器の時期とし、それ以降の設置はやめるよう案内しています。暖かい地域の目安をそのまま当てはめず、お住まいの自治体や、都道府県のペストコントロール協会に、その年の時期を確認すると安心です。
| 自治体(ページの更新日表示) | 設置時期の記載 | 撤去・交換の記載 |
|---|---|---|
| 札幌市(2023年4月1日更新) | 春から初夏(5〜7月ごろ)。それ以降は設置しない | 週1回ほどを目安に液を交換。腐ったとき、虫がたまったとき、蒸発して減ったときも交換 |
| 名古屋市(2025年10月16日更新) | 4〜5月に飛来する女王蜂を想定 | 6月以降は設置をやめる。液が減る、死骸がたまると捕獲状況が悪くなるので交換 |
| 東大阪市(2023年3月16日更新) | 3月下旬〜5月下旬ごろ | 6月以降の設置はやめる。週1回ほど新しいものに交換 |
| 宇治市(2019年11月5日更新) | 3〜5月を目安 | 誘引効果は2週間ほど。必要に応じて液やトラップを入れ替える |
| 志木市(2026年2月4日更新) | 3〜5月ごろ | 6月以降は撤去。週1回確認し、それ以外は近づかない |
| 山口市(2023年3月1日更新) | 3〜5月ごろに設置 | 6月以降は撤去。液が減る、死骸がたまれば交換。1〜2週間入らなければ場所を変える |
| 葉山町(2022年5月23日更新) | 女王蜂が飛来する3月上旬〜4月中旬ごろ | 6月になったら取り外す。液面が見えなくなったら蜂の回収と液の補充 |
6月以降は罠を撤去する|時期を外した設置が危険な理由
名古屋市、東大阪市、山口市、葉山町、志木市は、6月以降は罠を置かない、または撤去するよう案内しています。理由は共通で、6月以降は女王蜂に代わって働き蜂が飛ぶようになり、誘引液のにおいで蜂を呼び寄せてしまうためです。東大阪市は、そのために刺される危険があるとはっきり書いています。寒冷地の札幌市は、時期を5〜7月ごろとし、気温が高くなる時期に設置すると女王蜂の捕獲は期待できず、蜂が集まって刺される危険もあるとして、それ以降は設置しないよう案内しています。
置き続けるとどうなるか
罠の中に蜂が入っていなくても、6月になったら外す、と日付で決めておくのが安全です。蜂が入らないから置いておくのではなく、入らないなら場所を変える扱いで、山口市は1〜2週間、志木市は2週間ほど様子を見たら移すよう案内しています。
回収と廃棄のときの注意
撤去や交換のときは、中の蜂が生きていることがあります。山口市は、蜂が生きているときは近づかないこと、やむをえず撤去するなら蜂が死ぬのを待って後日回収すること、死んでいても毒針に触れると危険なので手袋を着けることを案内しています。名古屋市と東大阪市も、死んだ蜂でも針に刺されることがあると注意しており、東大阪市は素手で触らないよう求めています。廃棄は、容器と中身を分けて出す扱いです。
罠の設置場所の選び方|高さ・日陰・通行人と近所への配慮
罠は蜂を引き寄せる道具なので、どこに吊るすかが安全を左右します。自治体の案内に出てくる条件を整理すると、高さ、日当たり、人の動線、建物との距離、敷地の所有、時間帯の6つに分かれます。
近所への配慮も欠かせません。葉山町は、罠にはスズメバチだけでなく他の昆虫も寄ってくるため、家族や近所の人が困らない場所に置くよう書いています。誘引液のにおいや、罠の周りに集まる虫が、隣の家の洗濯物や通路にかからないかを、設置前に見ておきます。
設置場所を選ぶときは、自分が罠を確認しに行く動線も考えます。志木市は、確認は週1回にとどめ、それ以外は罠に近づかないよう案内しています。毎日のぞきに行く必要はなく、近づく回数を減らすほうが安全です。山口市の相談先と春のトラップの案内は山口市のハチの巣と春のトラップの整理にもまとめています。
| 確認すること | 自治体の記載 | 読み方のポイント |
|---|---|---|
| 高さ | 葉山町は入口の穴が地上1.5〜2m程度。名古屋市・宇治市・山口市は2m程度 | 子どもの手が届きにくい高さにする。高い所の作業は転落に注意し、無理をしない |
| 日当たり | 名古屋市・志木市・宇治市・札幌市は日陰や直射日光の当たらない所。葉山町は、強い日光で発酵中の微生物が弱ると誘引効果が落ちると説明 | 木陰になる枝を選ぶ。宇治市は風通しのよい枝も条件に挙げている |
| 人の動線 | 葉山町は人が通行・作業する場所から3m以上離す。札幌市・宇治市・東大阪市も人が通る場所を避ける | 玄関先、通学路沿い、物干し場の近くは避ける |
| 建物との距離 | 名古屋市と東大阪市は、軒下やベランダなど建物に近い場所ではあまり捕獲できないと記載 | 庭木など、家の周囲の樹木に吊るすのが基本 |
| 敷地の所有 | 宇治市は、自分の所有でない、または管理していない場所には設置しないと記載 | 隣地や共用部分に吊るさない。集合住宅では管理者に確認する |
| 設置する時間帯 | 東大阪市は蜂が活動していない夜または早朝、山口市は日没以降が望ましいと記載 | 作業中に蜂が飛んでこない時間を選ぶ |
誘引液は自治体資料の記載どおりに|独自の配合を作らない
誘引液の作り方は、自治体によって違います。山口市、名古屋市、宇治市は酒・酢・砂糖が基本、東大阪市は焼酎とぶどうジュース、乳酸菌飲料を使う例、札幌市はハチミツを水で薄めた液、葉山町は水・焼酎・黒砂糖・酢を混ぜる例を載せています。分量もそれぞれ別で、どれが唯一の正解という話ではなく、各自治体が自分のページで案内している配合です。
この記事では分量を載せません。山口市は、いろいろなレシピがあるのでオリジナルの誘引剤を作るなど工夫してみましょう、と案内していますが、独自の配合を足すと、うまく捕れなかったときに原因を切り分けにくくなります。お住まいの自治体のページに配合があればそれに従い、なければ他の自治体のページか、市販トラップの説明書に沿うほうが、後から確認しやすくなります。市販のトラップは東大阪市も紹介しています。
液の量と交換の目安
交換の頻度も表現が揃っていません。札幌市と東大阪市は週に1回ほど、宇治市は誘引効果が2週間ほど、山口市は液が減った・死骸がたまったとき、葉山町は液面が見えなくなったときとしています。志木市は週1回の確認を案内しています。迷ったら「週に1回見て、減っていたら替える」を基本にしつつ、お住まいの自治体の記載を優先します。
捕れないときの見直し
山口市は1〜2週間、志木市は2週間様子を見て、蜂が入らなければ設置場所を変えるよう案内しています。山口市は、花の近くなど蜂が近づきやすい場所があると説明しています。名古屋市と東大阪市は、建物に近い場所ではあまり捕れないとしているので、軒下に吊るしていた場合は庭木へ移す、といった見直しになります。
他の昆虫の混獲と、スズメバチを捕り尽くさない考え方
ペットボトルトラップには、狙ったスズメバチ以外の昆虫が入ることがあります。葉山町は、ハチやその他の昆虫が寄ってくると書き、ハチや他の昆虫の死骸がたまると捕獲状況が悪くなるとも説明しています。札幌市のハチとり器の案内は、スズメバチ用でありミツバチやマルハナバチはとれないと記す一方、ハチはハエやアブなどを捕まえる益虫でもあるとしています。
ミツバチが入りにくくする工夫として、山口市の案内は、酢を入れるとミツバチが入らないと言われている、と書いています。ただし「言われています」という書き方で、保証ではありません。ミツバチの塊や巣を見つけたときは、触らずに見分ける手順をミツバチの塊は分蜂か巣かにまとめています。
アシナガバチ向けの罠については、今回確認した自治体のページはいずれもスズメバチを対象にしたもので、アシナガバチの設置時期や手順を示した公的な案内は確認できませんでした。そのため、この記事ではアシナガバチ向けの手順は載せません。アシナガバチの巣はアシナガバチの巣を見つけたらで、見守れる場所かどうかの見方を整理しています。
罠では巣はなくならない|軒下の点検と巣を見つけたときの動き
罠は、これから巣を作ろうとする女王蜂を減らす予防策です。すでに巣ができている場合は、罠を増やしても巣は消えません。さいたま市は、初期の段階(春から初夏)であれば巣の駆除は比較的容易なので家の周辺を点検するよう呼びかけ、毎年巣ができる場所には市販の巣作り防止スプレーで予防する方法もあると案内しています。スプレーは製品の使用上の注意に従って使います。
宇治市も、罠のほかに、過去に巣を作られた場所、カーポートやベランダの屋根の下、植木の中などへ、市販のハチ用スプレーを前もって吹きかける予防法を挙げています。薬剤の量や使い方はこの記事では示さないので、必ず製品の表示を読んでください。
巣を見つけたときの動きは、志木市が分かりやすく書いています。スズメバチの巣を見つけたら近づかず、市の窓口へ連絡する、というものです。山口市は、人の往来があって刺される危険がある場所の巣は撤去をすすめ、危険を伴うため専門業者に依頼すること、依頼前に費用を確認することを案内しています。初期の巣の形は蜂の巣の作り始めの見分け方、費用の見積もりの読み方はハチの巣駆除の費用を比べる記事が参考になります。
| 点検する場所 | 見るポイント | 見つけたときの動き |
|---|---|---|
| 軒下・ひさしの裏 | とっくりやつぼを逆さにしたような形の小さな塊がないか(志木市の記載) | 近づかず、離れた場所から写真を撮り、自治体や専門業者に相談する |
| 戸袋・室外機・通風口 | 蜂が出入りしていないか。さいたま市は巣が作られやすい場所として挙げている | 開けたり叩いたりしない。出入りの様子を数日メモして相談する |
| 庭木・垣根・茂みの中、木の枝や幹の空洞 | 葉に隠れた球状やとっくり形の塊、巣穴が1か所だけ開いた塊 | 剪定や枝払いの前に確認する。見つけたら作業を止めて離れる |
| 物置・車庫・カーポートの屋根の下 | 過去に巣があった場所を春先にもう一度見る(宇治市の記載) | 予防のスプレーを使う場合は、製品の表示に従う |
- 近づかない。つつく、水をかける、大きな音を立てることはしない
- 離れた場所から写真を撮り、場所と日付、蜂の出入りの様子をメモする
- 自治体の窓口(環境・衛生・保健所)か、都道府県のペストコントロール協会に相談する
罠の設置から撤去までの流れ|日付と場所の記録のしかた
罠は置いて終わりではなく、日付と場所を記録しながら使うと、撤去のし忘れを防げます。次のような流れを、カレンダーやスマートフォンのメモに書いておきます。
撤去したあとも、軒下や戸袋の点検は続けてください。罠は春の予防策で、夏以降の蜂への対応は、巣の場所を確認して専門業者へ相談する形に切り替わります。
- 3月ごろ:お住まいの自治体の公式ページで設置時期と作り方の案内を確認する。市販トラップなら説明書の使用期間を見る
- 設置の日:日付、吊るした場所(庭木の種類や位置)、高さをメモする。作業は蜂が活動しない夜や早朝に行う
- 設置後:週1回だけ離れた所から確認し、液の量と蜂の有無を見る。入らなければ1〜2週間をめどに場所を変える
- 5月末ごろ:撤去する日を決めておく。6月に入ったら外し、生きた蜂がいれば近づかず、死んでから手袋で回収する
- 撤去後:容器と中身を分けて廃棄し、軒下や戸袋、庭木の点検を続ける



