ゴキブリ用殺虫剤は剤型で目的が変わる

ゴキブリ用の殺虫剤は、成分名より先に「どう使うか」が違います。東京都ペストコントロール協会は、化学的な防除として、食毒剤(毒餌)、くん煙剤、エアゾールを挙げ、生息数が多く絶対数を落としたいときはくん煙剤が便利と整理しています。フマキラーの製品ラインナップは、ワンプッシュ、エアゾール、くん蒸剤、毒餌剤、捕獲器の5タイプに分けて案内しています。

次の表は、各社と協会の公式資料の記載を、目的別に並べたものです。製品の優劣ではなく、場面との対応を見るための表です。効果の持続期間や使用場所は製品ごとに違うため、必ずお手元の表示で確認してください。

ゴキブリ用殺虫剤は剤型で目的が変わる:確認項目
剤型主な目的向く場面(公式資料の記載)避ける・注意する場面(表示の例)
直撃用エアゾール見かけた個体の駆除出てきたゴキブリに直接噴射する。逃げ込んだすき間にも使える製品がある(アース製薬)人体に向けない、食品・食器・ペット・観賞魚にかけない、火気の近くで使わない、連続噴射の上限を守る
待ち伏せ型(残効型)スプレー通り道や侵入口での駆除玄関やベランダの窓まわり、壁際に線状に処理し、約1か月ゴキブリを寄せ付けない(KINCHO)雨がかかる場所やほこりがある場所では、持続が短くなる場合がある(フマキラー)
すき間用ワンプッシュ潜んでいる個体の駆除と待ち伏せ冷蔵庫や食器棚の裏などのすき間に噴射する(フマキラー)すき間以外の空間や、ゴキブリへの直接噴霧は避けると表示する製品がある
空間用ワンプッシュ(部屋の中央で噴射)部屋のすき間に潜む個体を追い出して駆除部屋の中央から噴射し、決められた時間閉め切る(KINCHO)部屋の広さごとの回数、閉め切り時間、換気は製品表示に従う
蒸散型(プラグ式・置き型)ゴキブリの忌避(定着阻止)夜間の通電などの使用条件が表示される(アース製薬)効能は「忌避」で、駆除を目的としないと明記する製品がある
くん煙剤・くん蒸剤部屋全体のゴキブリをまとめて駆除家具の裏など隠れた個体を処理する。卵が孵化する2〜3週間後に再度使う(アース製薬、フマキラー)食品、食器、ペット、観賞魚、精密機器、火災報知器への準備が必要
毒餌(ベイト剤)巣にいる個体を含めた駆除通り道や潜み場所に置く。食べた個体のフンや死骸を食べた仲間にも効く「連鎖効果」を表示する製品が多い(アース製薬)置いた製品や周辺にスプレーをかけない、子どもやペットがもて遊ばない場所に置く
粘着トラップ捕獲、生息場所の確認出没場所や生息数の確認に有効(日本ペストコントロール協会)捕獲は駆除として効果的とは言えないとされる

参考:公益社団法人東京都ペストコントロール協会|ゴキブリ 防除方法の選びかた

読者の疑問

ゴキブリ用の殺虫剤は何を基準に選べばよいですか?

比較ガイド

目的で選びます。見かけた個体なら直撃用、通り道や侵入口なら待ち伏せ型、すき間ならすき間用ワンプッシュ、部屋全体ならくん煙・くん蒸剤、巣の個体まで狙うなら毒餌です。商品の順位は付けず、区分、効果・効能、使用場所、注意の表示で確認してください。

医薬品と防除用医薬部外品|表示のどこを読むか

アース製薬は、ハエ、蚊、ゴキブリなど衛生害虫の駆除を目的とした家庭用殺虫剤は、薬機法に基づいて医薬品か防除用医薬部外品の承認を受けなければ製造販売できないと説明しています。東京都ペストコントロール協会も、殺虫剤を使うときは医薬品・医薬部外品を使い、用法用量に従うよう注意しています。製品を選ぶときは、区分表示のほか、効果・効能、対象害虫、使用上の注意を読みます。

区分表示(医薬品・防除用医薬部外品)

アース製薬の2つの製品ページを見ると、ゴキジェットプロの名前を持つ製品でも、1つは防除用医薬部外品で効果・効能が「ゴキブリの駆除」、もう1つは第2類医薬品で効果・効能が「ゴキブリ、ノミ、トコジラミ、イエダニ、マダニの駆除」と表示されています(2026年10月3日に確認)。名前が似ていても区分と対象害虫が違う製品があるため、パッケージの表示で確認します。

効果・効能と対象害虫

アース製薬は、駆除したい害虫が適用害虫として表示されている製品を選ぶこと、使用場所、使用時期、使用量は説明書に書かれているため必ず読むことを案内しています。すき間用のワンプッシュは、フマキラーの製品ページで適用害虫がゴキブリとトコジラミとされています。蒸散型では、アース製薬のマモルーム ゴキブリ用の効果・効能が「ゴキブリの忌避」で、キッチン収納・食器棚用の置き型(アースゴキブリよけ)には、駆除を目的とした製品ではないという注意書きがあります。

使用上の注意

表示には、人体に向けて噴射しない、食品、食器、おもちゃ、観賞魚、小鳥などにかからないようにする、火気の近くで使わない、換気する、といった項目が並びます。連続して噴射できる時間の上限や、冷蔵庫の裏など狭いすき間での使用量に関する注意が書かれた製品もあります。数字を含む使い方は製品ごとに違うため、この記事では示しません。

医薬品と防除用医薬部外品|表示のどこを読むか:確認項目
表示項目読む目的製品表示の例
区分(医薬品/防除用医薬部外品)承認の種類を知る。医薬品の表示には、医師、薬剤師、登録販売者への相談を求める項目がある同じ名前を含む2製品で、防除用医薬部外品と第2類医薬品に分かれる(アース製薬)
効果・効能何に効く製品か、駆除か忌避かを知る「ゴキブリの駆除」「ゴキブリの忌避」など(アース製薬)
対象(適用)害虫ゴキブリ以外にも使えるかを知るゴキブリとトコジラミ(フマキラーのワンプッシュ)、ゴキブリ・ノミ・トコジラミ・イエダニ・マダニ(アース製薬)
使用場所・使用方法すき間か、通り道か、空間か、屋外かを知るすき間に噴射、通り道に帯状に処理、部屋の中央から噴射など
使用上の注意人、ペット、食品、火気への配慮を知る人体に噴射しない、食品・食器・観賞魚・小鳥にかけない、換気する
効果の持続期間・交換時期再処理や交換のタイミングを知る約1か月、約2か月、約1年など(使用環境により異なる)

参考:アース製薬|家庭用殺虫剤(虫ケア用品)の安全性

直撃用と待ち伏せ用(残効型)の違い

直撃用と待ち伏せ用は、薬剤が作用する場面が違います。1つの製品が両方を兼ねる場合もあるため、表示のどの項目が直撃の使い方で、どの項目が待ち伏せの使い方かを読み分けます。

直撃用(ノックダウン)

直撃用は、出てきた個体に直接噴射して動きを止めるタイプです。アース製薬は、ゴキブリが出てきたときの速効性を持つ製品として案内しています。東京都ペストコントロール協会は、有効成分がピレスロイド系のエアゾールはノックダウンに優れ、プロポクスルの製品は殺虫力と残効性に優れると整理しています。

待ち伏せ用(残効型)

待ち伏せ用は、薬剤が残った面にゴキブリが触れて作用するタイプです。KINCHOは、玄関ドアの下や周囲、ベランダの掃き出し窓、郵便受けのまわり、換気扇の吹き出し口など屋外から入りそうな場所と、屋内の壁際などに線状に処理し、効果が約1か月続くと案内しています。千葉市の資料でも、残留処理は通り道や潜み場所に薬剤を塗り、1か月くらい効果があるとされています。

アース製薬の第2類医薬品の製品ページは、ゴキブリに直接スプレーする使い方と、通り道に帯状にスプレーする使い方を併記しています。直接噴射と帯状処理は別の項目として使い方が示されているため、表示を読み分けます。名前に「いなくなる」「まちぶせ」とあっても、効果・効能と使用場所で判断します。

参考:アース製薬|医薬品 ゴキジェットプロ 秒殺+まちぶせ 450mL 製品情報(第2類医薬品、2026年10月3日確認)

ワンプッシュ式・蒸散型の使用条件と注意

「ワンプッシュ」と呼ばれる製品には、すき間に向ける型と、部屋の中央で使う型があります。蒸散型の置き型やプラグ式には、駆除ではなく忌避を効能とする製品があります。

すき間用のワンプッシュ

フマキラーのゴキブリワンプッシュプロの製品ページは、適用害虫をゴキブリとトコジラミとする防除用医薬部外品で、すき間に噴射する製品と説明しています。Q&Aでは、部屋の空間に向けて噴霧してよいかという質問に、すき間以外の場所や空間には噴霧しない、霧を吸い込むおそれがあると答えています。ゴキブリへ直接噴霧しないことも案内しています。

乳幼児や犬・猫・小鳥がいる部屋でも使えるかという質問には、表示に記載された通常の使い方なら大丈夫としつつ、幼児の皮膚は大人より敏感で接触性皮膚炎の原因になる可能性があるため、処理後に薬剤が付着した部分を拭き取るよう書いています。

部屋の中央で使う空間用のワンプッシュ

KINCHOのゴキブリムエンダーは、部屋の中央で押して決められた時間部屋を閉め切り、すき間に隠れた個体を追い出して駆除する製品として案内されています。同じ「ワンプッシュ」でも、すき間に向けるタイプと部屋全体に使うタイプで使い方が異なります。パッケージの使用場所と、部屋の広さごとの回数、閉め切り時間の表示を確認してください。

蒸散型(プラグ式・置き型)

アース製薬のマモルーム ゴキブリ用はプラグ式で、効果・効能は「ゴキブリの忌避」(定着阻止による忌避効果)です。ゴキブリが活動する夜間に通電する使い方が表示され、窓やドアが開いているなど使用環境により効果が十分に得られないことがあると注意しています。ゴキブリが多く確認される場合は、駆除剤を使ったあとに使うとより効果的とも書かれています。

キッチン収納や食器棚に置くタイプのアースゴキブリよけも、効果・効能は「ゴキブリの忌避」で、駆除したい場合には駆除エサ剤を勧めています。閉鎖空間以外では効果が発揮されないという注意もあります。

参考:フマキラー|ゴキブリワンプッシュプロ 80回分 製品情報とよくある質問(2026年10月3日確認)

くん煙剤・くん蒸剤|まとめて処理するときの準備

東京都ペストコントロール協会は、くん煙剤を、生息数が多く絶対数を落としたいときに便利としつつ、室内に物が多いと隅々に行き渡らず、効果が出にくいことがあると注意しています。アース製薬は、準備として、食品や食器に薬剤がかからないようにする、ペットや観賞植物を部屋の外に出す、観賞魚はポンプを止めて水槽を密閉するか部屋の外に出す、煙感知タイプの火災報知器にカバーをかけて使用後に外す、といった手順を示しています。

全部屋で同じタイミングに使うことと、2〜3週間後にもう一度使うことが、アース製薬とフマキラーに共通する案内です。理由は、害虫が他の部屋へ逃げるのを防ぐことと、卵鞘に守られた卵が孵化するのを待って再処理することです。使用後は換気し、死骸を掃除機で取り除くよう案内されています。

煙が出ないくん蒸タイプは、マンションなどの集合住宅で使いやすいとアース製薬は紹介しています。共用の防災設備や規約の扱いは建物ごとに異なるため、使う前に管理会社へ確認してください。集合住宅での注意はゴキブリはマンションの何階まで出るのかでも触れています。

参考:アース製薬|ゴキブリの駆除・対策(アース害虫駆除なんでも事典)

毒餌・粘着トラップとスプレーの併用

毒餌は、食べた個体だけでなく、そのフンや死骸を食べた仲間にも効くことを表示する製品が多く、アース製薬のブラックキャップは台所の隅や流しの下など生息場所に置くよう案内しています。製品ページには、設置した本品やその周辺にスプレー等の薬剤をかけないようにという注意があります。併用するときは、毒餌の周辺を避けて処理します。置き場所の考え方はゴキブリの毒餌の置き場所にまとめています。

粘着トラップについて、日本ペストコントロール協会は、捕獲は駆除として効果的とは言えないが、出没場所や生息数の確認には有効としています。名古屋市も、粘着シートで生息状況を確認できると案内しています。東京都ペストコントロール協会は、薬剤を使う前にトラップを各所に置き、捕獲数の多い箇所を重点的に処理するよう勧めています。

参考:アース製薬|ブラックキャップ12個入・使用方法と使用上の注意

乳幼児・ペット・観賞魚がいる家で表示のどこを見るか

消費者庁は、虫除けスプレーや殺虫剤について、子どもの誤飲や皮膚・目への付着による事故情報が医療機関から寄せられているとして、保管場所を分けること、使用方法と用量を守ること、噴射タイプは方向を確認して使うことを呼びかけています。部屋の隅に置いてあったゴキブリ用などの殺虫剤をなめていた0歳の事例や、虫除けスプレーと間違えて殺虫剤を噴霧した事例が紹介されています。

家庭の状況ごとに、表示のどこを見るかを表にしました。成分名だけで安全と判断せず、製品の表示とメーカーのQ&Aで確認します。具体的な退避や再使用の考え方は、乳幼児がいる家の害虫駆除とペットがいる家の害虫駆除でも整理しています。体調が悪くなった場合は、製品の注意表示に従い、医療機関を受診してください。

乳幼児・ペット・観賞魚がいる家で表示のどこを見るか:確認項目
家庭の状況表示で見る場所製品表示・Q&Aの例
乳幼児がいる保管場所、使用後の拭き取り、毒餌を置く場所毒餌は子どもがもて遊ばない場所に置く(アース製薬)。ワンプッシュの処理後は付着部分を拭き取る(フマキラー)
犬・猫・小鳥・ハムスターなどがいるかからないようにする、部屋の外に出す、戻す時期くん煙剤の使用ではしっかり換気するまで部屋の外へ出す(アース製薬)。エアゾールはペット類や飼料にかからないようにする
観賞魚・観賞エビがいる水槽の扱いポンプを止めて水槽を完全に密閉するか、換気するまで部屋の外へ出す。毒性が強いと注意(アース製薬)
食品や食器を扱う台所食品や食器にかけない、置き型の設置場所殺虫成分を使わない忌避の置き型は食器棚に置ける製品がある(アース製薬)。くん煙剤では食品・食器を覆う

参考:消費者庁|みんなの消費安全ナビ Vol.558 虫除けスプレーや殺虫剤の事故に注意しましょう!(2021年7月)

薬剤だけで減らないときに見直すこと

東京都ペストコントロール協会は、同じ薬剤を使い続けるとその薬剤への抵抗性がつくため、定期的に使用薬剤を変えるよう注意しています。アース製薬は、特にチャバネゴキブリで、同じ駆除剤を繰り返し使うことで薬剤に強い個体が生き残り、都市部でその傾向が確認されていると説明しています。埼玉県衛生研究所も、殺虫剤に対する抵抗性やベイト剤に対する忌避行動が防除の妨げになると記載しています。

薬剤の前に、餌、水、隠れ場所、侵入口を減らすことが基本です。千葉市は、長い目で見るとゴキブリ防除には環境の整備が最も効果的としています。名古屋市は、むやみに薬剤を使うのは控えるよう案内しています。順番はゴキブリ対策の基本で整理しています。

表示の期間を過ぎても同じ場所で小さい個体や卵鞘が見つかる場合や、飲食店、集合住宅で広範囲に見られる場合は、薬剤を足すより調査が必要な状態かもしれません。依頼先を考えるときは、ゴキブリ駆除を業者に頼む目安で作業内容、見積もり、保証の確認点を整理しています。

参考:埼玉県衛生研究所|ゴキブリのなかま(2025年1月9日掲載)