ネズミの罠の種類と比較|粘着・カゴ・バネ式
東京都のねずみ防除指針(平成17年2月発行)は、物理的防除の捕獲器として、生捕りかご、圧殺式トラップ(バネ式)、粘着トラップを挙げています。殺そ剤と同じく、ねずみがすでにいるときに使う対策で、日常の基本は餌や巣材の管理と侵入口の封鎖だと位置づけています。罠は、環境の見直しとセットで考えます。
電気で捕獲するタイプについては、今回確認した公的資料とメーカー公式ページの範囲では、製品の仕様や安全表示の記載を確認できませんでした。そのため下の比較表では扱いません。使う場合は、取扱説明書の注意(設置場所の条件、子どもやペットへの安全)を読んでください。
置き場所の考え方はネズミの捕獲器はどこに置く?で、殺鼠剤との比較は殺鼠剤と捕獲器、どう選ぶ?で整理しています。
| 型 | 向いているネズミ(東京都の資料) | 使い方の要点 | 捕獲後と子ども・ペットの注意 |
|---|---|---|---|
| 粘着シート | ビルのクマネズミには粘着トラップが多用されている。小型のネズミは1枚でも捕獲できる場合がある | 壁ぎわや天井裏など通り道に複数枚。人が常時歩く場所は避ける。使用温度の目安は10〜35℃(イカリ消毒) | 台紙ごとくるんで早めに処理し、自治体の区分に従って廃棄。子どもやペットが触れない配置にする |
| カゴ(生け捕り) | 主にドブネズミ。クマネズミは、きわめて掛かりにくい | ほかの餌を片付け、事前に餌慣らしをしてから本式に使う | 生きた個体を扱うため、咬まれないよう注意。乳幼児や飼育動物がけがをしないよう取り扱いに注意(船橋市) |
| バネ式(圧殺式) | 種類ごとの向き不向きの記載は、確認した資料になかった | 餌慣らしの期間を設け、そのあとにバネを本式にセットする | 捕れた個体は素手で触らず処理する。バネが作動するため、手の届かない配置と製品の注意に従う |
参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 1) 防除の基本(PDF)
ネズミの罠は、粘着・カゴ・バネ式のどれを選べばいいですか?
ネズミの種類と置く場所で変わります。ドブネズミにはカゴも有効ですが、クマネズミはカゴにきわめて掛かりにくく、ビルでは粘着トラップが多く使われると、東京都の資料は説明しています。種類が分からないときは、フンの大きさや痕跡を確認し、製品の説明書に従って型を選びます。
ネズミの種類ごとの向き不向き|警戒心の強いクマネズミ
罠が掛かるかどうかは、ネズミの種類で大きく変わります。東京都の指針の比較表では、ドブネズミとハツカネズミは警戒心があまり強くなく、クマネズミは非常に強いとされています。船橋市の資料も、クマネズミは警戒心が非常に強く、殺そ剤の効果が低いと整理しています。
クマネズミが疑われる家では、罠を増やすより先に、通り道と侵入口の調査が重要です。東京都の指針は、クマネズミには殺そ剤や捕獲器が決め手になりにくく、環境的防除に重点を置いた総合的な対策が求められるとしています。見分け方は、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの違いで確認できます。
| 種類 | 警戒心と習性(東京都の指針) | 罠との相性 | 見直しの方向 |
|---|---|---|---|
| ドブネズミ | 警戒心はあまり強くない。地面に穴を掘り、泳ぎが得意。植込み、下水、ビルの低層階にいる | カゴが有効なのは主にドブネズミとされる | 水回りや低い通り道を調べる |
| クマネズミ | 警戒心は非常に強い。身軽で、電線や粗い壁を伝う。ビルの高い所、壁の中、天井裏にいる | カゴにはきわめて掛かりにくい。粘着トラップが多用される | 侵入口の封鎖と食べ物の管理に重点を置く |
| ハツカネズミ | 警戒心はあまり強くない。小型で、運動能力はクマネズミほど高くない | 小型のネズミは粘着トラップ1枚でも捕獲できる場合がある | 畑の近くや、駅ビル・マンション・食品工場などにも生息するため、建物の用途と痕跡から可能性を考える |
罠に使う餌の選び方と慣らし方
罠の餌は、型で考え方が分かれます。公的資料とメーカー表示を並べると、次の表のようになります。以下のメーカー表示は、2026年10月3日に確認した公式ページの記載です。
カゴ・バネ式の餌と、餌慣らし
東京都の指針は、カゴには、餌をフックにかけやすく、ドブネズミが好むソーセージや薩摩揚げなどを使い、効果を高めるため、事前に小さい餌をまいて慣らしてから捕獲してもよいとしています。生捕りやバネ式では、ネズミの反応を見るため餌慣らしの期間を設け、その後にバネを本式にセットします。船橋市も、わなを作動させずに餌を食べさせる「エサならし」が効果的なことがあるとしています。
東京都のよくある質問集は、カゴなどの餌には、魚肉ソーセージや油揚げのように安価で取りつけやすいものがよく、食べない場合はチーズや上等なソーセージで成功することがあるとしています。ただし、ほかに食べ物があるとカゴに入らないため、周りの残飯や食品を片付けてから使います。クマネズミはカゴにきわめて掛かりにくいと明記されているので、餌を変えても掛からないときは、罠の型を見直します。
粘着シートの餌は、資料と製品表示で分かれる
東京都の指針とよくある質問集、船橋市は、粘着シートに餌を置かないことを勧めています。餌があると活動が弱まって粘着面に触れる面積が減り逃げられやすくなる、餌が劣化すると忌避されることがある、警戒して近づかなくなる、といった理由が挙げられています。フマキラーのQ&Aも、餌を置く必要はなく、置くと逆に警戒して捕獲されにくくなることがある、と答えています。
一方、アース製薬のネズミホイホイのページは、ソーセージ、カマボコ、天ぷら、カツオブシなどの好む餌を粘着トレーの中央に置くとさらに効果的と表示しています。同じ粘着式でも、ハウス型のトレーのように製品の構造が違うため、使う製品の説明書に従うのが基本です。捕れないときは、餌の有無を変えて比べる見直し方もあります。
| 型・製品 | 餌の扱い | 出典の種類 |
|---|---|---|
| カゴ | 魚肉ソーセージ、薩摩揚げ、油揚げなど。事前に慣らす。ほかの食べ物を片付ける | 東京都の指針・質問集 |
| バネ式・生捕り | 餌慣らしの期間をおいてから、バネを本式にセットする | 東京都の指針 |
| 粘着シート | 餌を置かない。置くと警戒されたり、逃げられやすくなったりする | 東京都、船橋市、フマキラーの表示 |
| 粘着トレーのハウス型(ネズミホイホイ) | ソーセージ、カマボコ、天ぷら、カツオブシなどを粘着トレーの中央に置くと効果的と表示 | アース製薬の表示 |
設置する数と場所の考え方
粘着シートは、1枚を置いて待つより、ネズミが通る通路全体に複数枚を並べるのが、東京都の指針の考え方です。並べ方は、規則正しく並べる方法とランダムに並べる方法があり、捕獲できなければ逆の方法を試すとされています。大型のネズミは枚数が少ないと逃げられることがあるため、捕れないときは枚数を増やすこと、小型のネズミなら1枚でも捕獲できることがあると説明されています。
場所の目安は、資料で共通しています。船橋市は、壁ぎわや天井裏のネズミの通路に、できるだけ多くの枚数を敷き詰め、最低3日以上は場所を変えないよう勧めています。アース製薬のネズミホイホイのページは、壁際、台所の流しの下、排水口のそば、冷蔵庫の裏などを例に挙げ、6〜7日たっても捕れなければ置き場所を変えるよう表示しています。イカリ消毒は、人が常時歩く場所への配置は避けるよう注意しています。
ここで押さえるのは、通路全体に数を増やす、むやみに動かさない、人やペットが触れない場所に置く、の3点です。通り道、ペット、点検のしやすさからの細かい置き場所の考え方は、前の節で紹介した記事にまとめています。
| 資料・表示 | 数と並べ方 | 場所を変える・点検の目安 |
|---|---|---|
| 東京都のねずみ防除指針 | 通路全体に複数枚。規則的またはランダム。大型のネズミには枚数を増やす | 捕獲できなければ、並べ方を逆にする |
| 船橋市 | 通路にできるだけ多くの枚数を敷き詰める | 最低3日以上は場所を変えない(警戒されるため) |
| アース製薬(ネズミホイホイ) | 壁際、流しの下、排水口のそば、冷蔵庫の裏、フンやかじり跡の近く | 6〜7日たっても捕れなければ置き場所を変える。水や油で濡れた場所を避ける |
| フマキラー(ドラ デスパワー 強力粘着シート) | 壁際はフラットタイプ、家具のすき間はハウスタイプ | 1匹捕れたら、すぐ交換したほうが効果的(鳴き声で他の個体が警戒するため) |
| イカリ消毒(使用上の注意) | 人が常時歩く場所は避ける。温度は10〜35℃の範囲で使う | 子どもやペットのいる場所では十分に注意し、触れないようにする |
参考:船橋市|ねずみ対策
捕まえたあとの処理と衛生上の注意
捕れたネズミは、素手で触らず、粘着式ならハウスや台紙ごと袋に入れて処理します。アース製薬の表示は、早めにハウスごとゴミ袋に入れ、自治体の定める方法に従って廃棄するよう、イカリ消毒の注意書きも、台紙とともにくるんで早めに処理し、自治体の区分に従うよう案内しています。東京都のよくある質問集は、庭に深めに埋める方法にも触れていますが、他人の敷地や公共の場所では不可とし、可燃物として出せる自治体が多いため、管轄の窓口に確認するよう勧めています。
捕獲した個体の扱いでは、咬まれないことが最優先です。東京都の質問集は、追い詰めたネズミに対応する場面で、素手で行うことは避けるよう注意しています。咬まれたときの対応や、病気の経路は、ネズミの感染症で整理しています。
生きたまま捕まえた個体(カゴなど)の処分や、別の場所へ放してよいかについて、今回確認した公的資料に標準的な手順は見つかりませんでした。扱いは自治体で異なる可能性があるため、保健所や衛生担当の窓口に確認してください。
捕れたあとは、フンや尿で汚れた場所の清掃と、駆除後のイエダニ対策も一続きの作業です。ネズミ駆除のあとに刺されるようになる原因は、死んだネズミや巣から離れたダニです。乾いたフンについて、米国CDCは、掃いたり掃除機で吸ったりせず、手袋と換気を整えて湿らせてから拭き取るよう示しています。
ほかの動物やペットが掛かったときの対応|法律の線引き
罠は、狙ったネズミ以外にも掛かる可能性があります。ここでは、法律上の線引きと、粘着剤が付いたときの考え方を分けて確認します。
家ネズミ3種は、鳥獣保護管理法の適用除外
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律は、鳥獣を、鳥類または哺乳類に属する野生動物と定義し(第2条)、鳥獣と鳥類の卵の捕獲や採取を、許可を受けた場合などを除いて禁じています(第8条)。環境省も、鳥獣や卵は狩猟による場合を除いて原則として捕獲、殺傷、採取が禁止され、環境大臣または都道府県知事の許可を受けた場合に認められると説明しています。
ただし、第80条は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣として環境省令で定めるものには、この法律を適用しないとしています。施行規則の第78条は、その鳥獣として、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミを挙げています。つまり、家の中で問題になる家ネズミ3種を罠で捕獲することは、この法律の許可の対象外です。罠の置き方、死骸や生きた個体の扱いは、製品の表示と自治体の案内に従います。
それ以外の動物が掛かったとき
環境衛生上の理由で適用除外とされているのは、この3種だけです。野生のげっ歯類、イタチ、コウモリ、スズメなどの鳥は載っておらず、鳥獣として扱われます。第83条は、第8条に違反して狩猟鳥獣以外の鳥獣を捕獲した場合などについて、一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金を定めています。意図せず掛かった場合の対応は、都道府県や市町村の鳥獣担当窓口に確認してください。迷うときは、触れる前に窓口へ連絡します。
粘着シートに野鳥が掛かる事故は、実際に報告されています。京都市動物園の野生鳥獣救護センター通信(2009年3月発行)は、粘着物の被害で保護された鳥が前年度より大きく増え、野生に戻れたのは3割だったと報告し、野鳥が来る場所には置かないこと、置いたシートはこまめに確認することを呼びかけています。東京都環境局に寄せられた都民の声(令和6年2月分)にも、ネズミ捕りのシートにスズメが掛かった相談があり、保護対象外のため案内できる病院がないと回答し、粘着剤をできるだけ取り除き、近くの緑地に放すよう案内した記録があります。
ペットや子どもが触れたとき
粘着剤がペットや人に付いたときの取り方は、製品ごとに案内が違います。アース製薬は食用油で丁寧に拭き取り、石けんや洗剤で洗うよう表示しています。フマキラーは、オイルをなじませてこすり取ってから、シャンプーやせっけんと水で洗い(ペットにはペット用)、小麦粉やガムテープは使わないよう注意しています。イカリ消毒は、水や石けん、シャンプーでは取れないため、商品裏面の方法を試すよう案内しています。使った製品の表示に従い、異常があるときは医師や獣医師に相談してください。
捕れないときの見直しと相談の目安
罠が掛からないとき、東京都のよくある質問集は、原因として、トラップの配置数と配置方法に問題があると考えられると説明しています。数を増やす、並べ方を変える、動かす頻度を見直す、餌の有無を見直す、が最初の見直しです。それでも変化がなければ、罠が通り道から外れていないか、ほかに食べ物や巣がないか、侵入口が開いたままではないかを調べます。
クマネズミが疑われる場合、天井裏や壁の中が疑われる場合、高所や広範囲の封鎖が必要な場合は、自力で解決しにくい状況です。船橋市も、個人による駆除には限界があるため、効果が見られないときは早めに専門業者への依頼を検討するよう案内しています。業者を比べる視点はネズミ駆除業者おすすめの選び方に、再発の見直しは対策後もネズミの痕跡が続くときにまとめています。
日本ペストコントロール協会の都道府県協会には、電話などで相談できる「害虫相談所」があり、電話相談は無料、現場調査や防除施工は原則有料とされています。自治体の保健所や衛生担当の窓口の対応は地域で異なるため、お住まいの窓口も確認してください。






