害獣駆除の費用は確定申告で控除できるのか|雑損控除の考え方
国税庁のタックスアンサー(番号1110、令和8年4月1日現在法令等)は、雑損控除を、災害または盗難・横領によって、生活に通常必要な資産に損害を受けたときに受けられる所得控除と説明しています。損害の原因は、自然現象の異変による災害、火災などの人為による異常な災害、害虫などの生物による異常な災害、盗難、横領に限られ、詐欺や恐喝は含まれません。害獣駆除の費用を確定申告で扱えるかは、被害がこのうちの「生物による異常な災害」に当たるかどうかが入口になります。
控除の対象になる資産は、納税者、または納税者と生計を一にする一定の親族が持つ資産で、棚卸資産、事業用固定資産等、別荘など生活に通常必要でない資産は含まれません。事業として使っている建物の駆除費用は別の取り扱いになる可能性があるため、この記事は自宅のような生活用の住宅を想定しています。事業用の場合は、税務署か税理士に確認してください。
害獣駆除の費用は確定申告で控除できますか?
雑損控除の対象になる可能性はありますが、確実とは言えません。所得税法施行令は災害の範囲に「害虫、害獣その他の生物による異常な災害」を挙げ、国税庁はシロアリの駆除費用を対象としています。ただ、ネズミやハクビシンなど個別の害獣は国税庁が示しておらず、税務署への確認が必要です。
国税庁が示している根拠|施行令の「害獣」とシロアリの質疑応答事例
根拠は、法令の条文と、国税庁が公表している質疑応答事例の2つです。どちらも、害獣にそのまま当てはまるかどうかは別に考える必要があります。
所得税法施行令の災害の範囲
雑損控除は所得税法第72条に定められ、対象となる災害の範囲は所得税法施行令第9条が、冷害、雪害、落雷、噴火などの自然現象の異変による災害、鉱害や火薬類の爆発などの人為による異常な災害、「害虫、害獣その他の生物による異常な災害」としています。条文に「害獣」の文言があることは確認できます。ただし「異常な」という限定があるため、個々の被害がこれに当たるかは、事実関係に応じた判断になります。
シロアリの駆除費用に関する質疑応答事例
国税庁の質疑応答事例(シロアリの駆除費用)は、シロアリによる被害は施行令第9条の「害虫……その他の生物による異常な災害」に当たり、修繕に要した費用と、そのシロアリを駆除するための費用は雑損控除の対象になると回答しています。一方、被害を事前に防止するための費用や、駆除とともに行う予防のための費用は、緊急に必要な応急的措置の費用ではないため、対象にならないとしています。同じ事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答で、具体的な取引に当てはめると課税関係が異なることがあると注記しています。
ネズミ・ハクビシンなどの害獣に当てはめるとき、税務署へ確認する点
国税庁のシロアリの事例は、害獣の駆除費用を直接取り上げたものではありません。今回確認した国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例の範囲では、ネズミ、ハクビシン、アライグマ、コウモリなどの駆除費用を個別に示した資料は見つかりませんでした。「シロアリと同じだから対象になる」と決めつけず、被害の状況を伝えて税務署に確認します。
確認する点を表にまとめます。聞き方の例は、実際の被害の事実に沿って言い換えてください。
| 確認する点 | 国税庁の資料での位置づけ | 税務署での聞き方の例 |
|---|---|---|
| 被害が「異常な災害」に当たるか | 施行令第9条は害獣を挙げているが、「異常な」と限定している | 自宅の屋根裏で動物の被害が続いている場合、対象になりますか |
| 損害を受けた資産と所有者 | 対象は、納税者や生計を一にする一定の親族が持つ、生活に通常必要な資産 | 自宅の天井や断熱材の傷みは、損害として数えられますか |
| 駆除費用の扱い | シロアリでは駆除費用が対象。害獣は個別に示されていない | 動物の追い出しや捕獲の費用は、災害関連支出になりますか |
| 封鎖・再発防止の工事 | シロアリでは、駆除と併せた予防の費用は対象外 | 侵入口の封鎖は、被害の拡大防止と予防のどちらに当たりますか |
| 清掃・消毒の費用 | 国税庁の資料に個別の記載は確認できなかった | 糞の清掃や消毒の費用は含めてよいですか |
| 支出の時期 | 原状回復などの支出は、災害のやんだ日から1年以内(大規模な災害の場合等は3年以内)が対象 | 被害のやんだ日はいつと考えればよいですか |
対象になり得る支出と、対象外になりやすい予防費用の分け方
シロアリの事例を手がかりに、見積書の項目を「被害の修復・駆除」と「予防」に分けておくと、税務署に相談するときの話が早くなります。見積書が「駆除一式」だけだと、どの金額が駆除で、どの金額が予防なのかを説明できません。内訳を出してもらう頼み方は、駆除一式だけの見積書の内訳の頼み方で扱っています。
保険金などで補てんされた額は、雑損控除の計算で差し引かれます。害獣被害で火災保険が使えるかどうかは、約款の確認が必要です。害獣駆除に火災保険は使えるかで、確認する箇所を整理しています。
| 見積書の項目 | シロアリの事例での考え方 | 害獣で確認すること |
|---|---|---|
| 被害を受けた箇所の修繕(天井板・断熱材など) | 修繕に要した費用は対象 | 損害の原因が害獣の被害だと説明できるか |
| 動物の追い出し・捕獲など、駆除そのもの | 駆除費用は対象 | 害獣の駆除にも同じ考え方が使えるか(税務署に確認) |
| 侵入口の封鎖・再発防止の工事 | 駆除と併せた予防の費用は対象外 | 封鎖を被害の拡大防止の措置と言えるか |
| 被害が出る前の点検・予防 | 事前に被害を防止する費用は対象外 | シロアリの事例と同様に対象外となる可能性を前提にする |
| 保険金・補償で受け取った額 | 計算の際に差し引く | 受け取った額と日付を控える |
控除額の計算式と、保険金などで補てんされた額の扱い
控除額は、損害の大きさと、災害に関連した支出から計算します。国税庁の説明に沿って、計算式と保険金などの扱いを分けて確認します。
雑損控除の計算式
雑損控除の金額は、次の(1)と(2)のうち多い方です。(1)は、損害金額に災害等関連支出の金額を加え、保険金等の額を引いた額から、総所得金額等の10%を引いた金額。(2)は、災害関連支出の金額から保険金等の額を引いた額から、5万円を引いた金額です。損害金額は、損害を受けた時の直前の資産の時価を基に計算した損害の額をいいます。
保険金等の扱いと、国税庁の設例
保険金等は、災害に関して受け取った保険金や損害賠償金などです。まず損害金額から差し引き、損害金額を超えるときは災害関連支出から差し引きます。国税庁の手引きには設例があり、損害金額(災害関連支出を含む)580万円、保険金等480万円、所得金額の合計が約817万円、そのうち災害関連支出が28万円のとき、(1)は約18万円、(2)は23万円なので、雑損控除額は23万円です。住宅の被害を想定した設例で、害獣被害の金額の目安ではありません。
損失が大きく、その年の所得から引ききれないときは、翌年以後3年間、繰り越して控除できます。ただし、損失が生じた年に確定申告書を提出し、その後も連続して提出している場合に限られます(所得税法第71条)。所得金額の合計が1,000万円以下で、災害により住宅や家財の価額の2分の1以上に損害を受けたときは、雑損控除と災害減免法による軽減免除のうち、有利な方を選べます。
必要書類|領収書・被害の記録・見積書の内訳
国税庁が明記しているのは、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示することです。それ以外の書類は、国税庁が一律に指定したものではなく、税務署に被害と支出を説明するための備えとして残しておくものです。
| 書類 | 使う場面 | 残し方 |
|---|---|---|
| 領収書 | 支出した金額を示す書類。申告書に添付するか提示する | 日付・宛名・金額・内容が分かる原本を保管し、見積書や契約書と同じ場所にまとめる |
| 見積書・契約書の内訳 | 支出を、駆除・修繕・予防に分けて説明する | 「一式」を避け、項目ごとの数量と金額の内訳を依頼する |
| 調査写真・完了報告書 | 被害の内容と時期、実際に行った作業を説明する | 場所の名前と日付つきで保存する |
| 保険の請求・支払いの書類 | 保険金等として差し引く額を確認する | 受け取った額と日付を控える |
| 被害の記録 | 被害に気づいた日、変化、連絡の経過を示す | 日付つきのメモや写真を時系列で残す |
申告の手順と、国税庁・税務署の相談窓口
国税庁の相談窓口には、チャットボット、タックスアンサー、電話相談センターがあります。書類や事実関係を確認する必要がある相談は、所轄の税務署で面接相談を受け付けていて、面接相談は事前の予約制です。業者に依頼する前に、領収書、内訳つきの見積書、作業の報告書(写真つき)を出してもらえるかを聞いておくと、あとから困りません。書類の保管は害獣駆除の書類と写真の残し方、完了後の照合は完了報告を見積書と照合する方法、支払いの時期と領収書は駆除代金はいつ払うかが参考になります。
- 被害の記録、見積書の内訳、領収書、保険の書類を集める
- 国税庁のタックスアンサー(番号1110)と、シロアリの質疑応答事例を読む
- 国税相談専用ダイヤル(0570-00-5901)で、音声ガイダンスに従い「1」(所得税)を選んで相談する。受付は8時30分から17時で、土日祝日と12月29日から1月3日を除く
- 個別の事実の確認が必要なときは、所轄の税務署に電話で面接相談を予約する
- 確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、領収書を添付するか提示する。確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って金額を入力して作成・提出できる





