トコジラミは何度で死ぬ?公的資料の温度と時間の目安

トコジラミは高温に弱い虫です。厚生労働省の研修会資料(2015年)は、50℃に30分、60℃に10分程度、100℃近くなら数秒さらされれば死亡すると述べています。一方で、隙間の奥に潜んでいる場合は、その温度をそこまで到達させるのがかなり難しく、さらに奥へ逃げることも考えられるため、熱は掃除機による吸引なども含めた補助的な手段と考えた方がよいとしています。

ほかの機関も数値を示していますが、測る場所と対象が違います。次の表は、今回開いた資料に書かれていた数値を出典別に並べたものです。数値の優劣を比べる表ではなく、どの対象に、どこの温度で、何分と書かれているかを確かめる表として使ってください。

数字が機関ごとに違って見えるのは、測る対象が違うためです。厚生労働省の資料はトコジラミがさらされる温度、お湯は湯の温度、大型の熱風乾燥機は衣類の中心の温度、スチームは蒸気の温度というように、示している対象が違います。目安を使うときは、自分の手順がどの対象に当たるかを先に決めておきます。

トコジラミは何度で死ぬ?公的資料の温度と時間の目安:確認項目
出典書かれている目安対象・条件の書き方
厚生労働省 研修会資料(2015年)50℃で30分、60℃で10分程度、100℃近くなら数秒トコジラミが熱にさらされた場合。隙間の奥へ温度を届けるのは難しく、補助的な手段とされる
京都市81℃以上のお湯に5分以上熱変形・縮み・色落ちしない衣類や寝具。人が火傷する温度なら卵も含めて駆除できるとされる
京都市大型の熱風乾燥機で20分以上(中心が60℃以上)衣類などを多量に入れない。処理後はビニール袋に入れて封印して保管する
千葉市80℃以上のお湯に5分以上、または通常の洗濯後に熱乾燥機シーツや衣類など
米国EPAスチームは130°F(約54℃)以上で、強い風を当てない。衣類乾燥機は高温設定自力の熱処理は効かない場合があり、専門家は家全体を熱処理することもあるとされる

参考:厚生労働省|トコジラミとその効果的な防除法(平成26年度生活衛生関係技術担当者研修会資料・2015年2月)

読者の疑問

トコジラミは乾燥機で死にますか?

比較ガイド

熱に弱い虫なので、洗濯表示が許す範囲で熱乾燥機にかけるのは、千葉市も紹介する方法です。ただし衣類の中心まで目安の温度が届く量と時間かは機種で変わり、入れただけで処理済みとは言えません。表示で乾燥機が使えない物は別の方法を選びます。

洗濯だけでは足りないとされる理由と、天日干しの扱い

厚生労働省の研修会資料は、衣類などに付着したトコジラミを洗濯によって殺すことは難しいように思われると書いています。消費者庁の洗濯表示の早見表に例として載っている家庭洗濯の記号は、水温の上限が40℃と30℃のもので、前の表にある50〜80℃台より低い温度です。こうした表示の衣類では、洗う工程だけで前の表の温度条件に届くとは考えにくくなります。

千葉市は、シーツや衣類について、お湯に浸けるか、通常の洗濯後に熱乾燥機にかけるという書き方をしており、洗濯のあとに熱を加える工程が入っています。洗って汚れを落とす作業と、熱でトコジラミを処理する作業は、別の工程として扱われていると読めます。

天日干しについては、今回開いた日本の公的資料に、温度と時間の目安は見つかりませんでした。米国EPAは、黒いビニール袋に入れて、日なたで熱くなった閉め切りの車内に置く方法を紹介する一方、成否は気候など条件次第で、自力の熱処理は効かない場合があるとしています。日なたに干しただけで処理済みと数えず、ほかの方法と組み合わせます。

参考:厚生労働省|トコジラミとその効果的な防除法(平成26年度生活衛生関係技術担当者研修会資料・2015年2月)

乾燥機にかける前に|袋で密封して運び、洗濯表示を確かめる

乾燥機にかける物を運ぶときは、トコジラミを家の中に広げないことが先です。京都市は、アイロンがけの項目で布団などを抱きかかえて運ばないよう注意し、処理した衣類は袋に入れて封印して保管するよう案内しています。厚生労働省の資料も、交換したリネン類を廊下に置くことが他室へ広げる原因になると指摘しています。手順としては、洗濯・乾燥する物をその場で口の閉まる袋に入れて運び、処理する場所で袋から出す形になります。

次に洗濯表示を見ます。消費者庁と経済産業省のリーフレットは、表示は取扱い方の上限を表しており、表示よりも強い作用や高い温度での洗濯やアイロン掛けは衣類にダメージを与える可能性があると説明しています。タンブル乾燥の記号は、中の点の数で乾燥の温度を表し、点が多い方がヒーターの設定が強いことを示します。早見表では、タンブル乾燥は高温が80℃まで、低温が60℃までと示されています。

表示と対処の関係を、次の表にまとめました。衣類の表示に従った上で、熱の目安に届くかを考えます。表示の範囲で目安に届かない物は、無理に温度を上げず、袋に封印して相談する、という順に考えると、衣類を傷めずに済みます。

乾燥機にかける前に|袋で密封して運び、洗濯表示を確かめる:確認項目
表示(記号の意味)消費者庁の資料での読み方トコジラミ対策で考えること
タンブル乾燥・高温(点2つ)80℃までのタンブル乾燥ができる高温で乾燥できる表示。ただし中の衣類が目安の温度と時間に達するかは量や機種で変わる。表示は上限なので、それ以上に上げない
タンブル乾燥・低温(点1つ)60℃までのタンブル乾燥ができる目安に届くかは量や時間で変わる。無理に追加で加熱しない
タンブル乾燥NG(×付き)家庭用の乾燥機は使えない別の方法(袋で封印する・業者へ相談する)を選ぶ
家庭洗濯 40℃限度・30℃限度洗濯水温の上限が40℃・30℃80℃以上・81℃以上のお湯に浸ける方法は表示の上限を超えるため、この表示の衣類には向かない
アイロン(高温210℃・中温160℃・低温120℃まで)底面温度の上限。2024年の改正で、低温120℃まででスチームなしの記号も加わったアイロンは当てた面だけに熱が届く。スチームなしの記号がある物にはスチームを使わない
アイロンNGアイロンが使えない別の方法を選ぶ

参考:消費者庁・経済産業省|衣類の「取扱表示」早見表(2024年8月改正)

アイロン・スチーム・ドライヤー・布団乾燥機を使うときの注意

熱を使う道具は、当て方で結果が変わります。京都市の資料は、道具ごとの注意点を挙げており、共通するのは、虫を吹き飛ばさないことと、温度が届いた物だけを処理済みとして数えることです。

アイロン

京都市は、衣類や布団の折り目・縫い目・ファスナーの折り目部分などの凹みにアイロンをかける方法を紹介しています。トコジラミが潰れて血が付くことがあるため、作業中に広げないよう作業場所を確保し、布団を抱えて運ばないよう注意しています。表示でアイロンが使えない物や、スチームなしの表示の物には使えません。

スチーム

スチームは駆除のプロがよく使う方法ですが、技術が必要だと京都市は説明しています。ドライヤーと同じく虫が吹き飛ぶことがあり、蒸気の吹き出し口から離れた蒸気は見かけより温度が低いため、吹き出し口に布を当てて高温部分を生息場所に当てるよう案内しています。米国EPAも、スチームは130°F(約54℃)以上が必要で、強い風を当てると虫が散るため、拡散用のアタッチメントを使うよう述べています。

ドライヤー

京都市は、ドライヤーでは風で虫が吹き飛んだり、温度が上がる前に奥へ逃げ込んだりするため、密封して逃げられない状態で中心部まで高温にしないと駆除できないと述べています。掃除機の吸い込み口のブラシを熱処理する場合も、吹き出す風で虫が飛ぶことがあるため、処置する場所を考えるよう注意しています。

布団乾燥機・熱乾燥車・部屋全体の加熱

厚生労働省の資料は、マットレスや畳、小型の家具など単体の対策では、畳・布団乾燥車の利用も考えられるとしています。京都市は、寝具類や畳の熱乾燥車による駆除と高周波処理は、防除のプロに依頼する方法としています。家庭用の布団乾燥機については、温度と時間の目安を今回の資料で確認できていないため、数値は示しません。米国EPAは、サーモスタットや暖房器具で室温を上げても効かず、危険だと明記しています。

参考:京都市|トコジラミ(ナンキンムシ)の知識(パンフレット・2023年10月更新)

トコジラミの冷凍処理について公的資料で言えること

冷凍は、条件が厳しい方法です。米国EPAの自分でできる駆除のページは、冷却が家庭で成功するには、冷凍庫が0°F(約−18℃)に設定されている必要があること、多くの家庭用冷蔵庫の冷凍室はそこまで冷えないこと、物を密封袋に入れて0°Fで3日間置く必要があることを述べ、庫内の温度は温度計で確かめるよう求めています。

日本の資料では、京都市が、冷却スプレーによる処理として−20℃以下で40分以上保つ方法を挙げ、体表に冷却剤が直接かからないと逃げられることがあると述べています。液化炭酸(約−80℃)を使う処理は、薬剤が使えない物品に向くものの、作業効率が悪くスチームよりさらに高度な技術が必要で、室内全体には時間と経費の点で向かないとされています。いずれも専門の作業の説明で、家庭の冷凍庫の代わりとして数値を使う根拠にはなりません。

家庭の冷凍庫を使う場合

上の条件を踏まえると、家庭の冷凍庫に数時間入れただけで処理済みとすることはできません。入れるなら、温度計で庫内の温度を確かめ、密封袋に入れ、期間を置いてから取り出すという条件が必要になります。冷凍庫に入らない大きさの物や、凍らせると傷む物には向きません。

  • 庫内を温度計で確認し、必要な温度に届かない冷凍庫では処理済みと数えない
  • 密封袋に入れ、期間を決めて入れたままにする

ごみ袋に入れて長期間封印する方法

京都市は、使わない物を大きなごみ袋に二重に入れて封印し、袋が破れたらテープで補修して1ミリのすき間も作らないようにする方法を紹介しています。暑い夏の期間を含めて1年以上の封印が必要で、低温状態では長生きするため、数か月では駆除できないとされています。米国EPAも、処理できない物は密封した袋や容器に入れ、最長1年置くよう案内しています。

参考:米国EPA|Do-it-yourself Bed Bug Control(自分でできるトコジラミ駆除)

物の種類別の対処一覧|衣類・寝具・ぬいぐるみ・靴・本

物によって、熱処理ができるかが変わります。次の表は、公的資料で確認できた範囲だけを書き、資料に温度や時間の記載がない物は「数値は確認できていません」と明記しました。表を使うときは、洗濯表示、素材、取扱説明書の順に確認してください。

ぬいぐるみ・靴・本などは、熱や水で傷みやすく、処理方法を自分で決めにくい物です。無理に加熱せず、袋に封印して保管し、処理できる方法を相談する方が、物を傷めずに済みます。季節用品の出し入れ前の点検は 季節用品をしまう前と出すときの害虫点検 が参考になります。

物の種類別の対処一覧|衣類・寝具・ぬいぐるみ・靴・本:確認項目
物熱処理で言えること(公的資料)先に確認することできない・迷うとき
衣類・シーツ・布団カバー81℃以上のお湯に5分以上(京都市)。80℃以上のお湯に5分以上、または洗濯後に熱乾燥機(千葉市)洗濯表示(タンブル乾燥・洗濯温度)、縮み・色落ちの有無袋に封印して保管し、洗濯店や業者に取り扱えるか相談する
布団・枕・マットレス畳・布団乾燥車の利用が考えられる(厚生労働省)。熱乾燥車や高周波はプロに依頼(京都市)。千葉市は、まくらの中や布団も潜む場所に挙げている家庭用の乾燥機に入る大きさか、素材の表示全面を覆うカバーで這い出しを防ぐ商品もあるが、駆除ではない(厚生労働省)。業者へ相談
ぬいぐるみ数値は確認できていません洗濯表示・素材。中綿や接着の傷みやすさ袋に入れて封印する(1年以上の例は京都市)。処理方法を業者に相談
靴・かばん数値は確認できていません。かばんのすき間や折り目に卵や虫が見つかることがある(京都市)素材(革・合成皮革・接着剤)と、洗濯や乾燥の表示熱で変形する物は無理に加熱せず、封印するか相談する
本・書類数値は確認できていません。本の裏表紙の中やカバーの中、天地に黒い血糞が付くことがある(京都市)借りた本・古本か。水や熱に弱いか袋に封印して相談する。借りた本は貸出元に連絡する

参考:京都市|トコジラミ(ナンキンムシ)の知識(パンフレット・2023年10月更新)

コインランドリーを使うときの配慮

コインランドリーについて、今回開いた公的資料に固有の記載は確認できませんでした。そのうえで、厚生労働省や京都市の資料にある「運ぶ間に他の物へ広げない」「処理前後の物を混ぜない」という考え方を当てはめると、次の点に配慮できます。店にルールがある場合は、店の掲示や管理者の指示を優先してください。

コインランドリーの乾燥機が目安の温度に届くかは、機器や設定で違うと考えられますが、資料に数値がないため確認できていません。乾燥機に入れたから処理済みと決めず、あとで同じ物に新しい血糞や吸血被害が出ないかを記録して確かめます。

  • 家を出る前に、口の閉まる袋に入れて密封し、袋を開けるのは洗濯機・乾燥機の投入口の前だけにする
  • 他の利用者の洗濯物や、共用の台・かごの上に広げない
  • 処理後は、店内で未処理の物と混ぜず、袋に入れて持ち帰る
  • タンブル乾燥NGの物や、表示を超える加熱が必要な方法は持ち込まない
  • 運んだ袋や鞄は、家で処理済みの物と一緒に置かない

熱処理のあとの確認と、業者へ切り替える目安

熱による処理は、薬剤処理と異なり効果が一時的だと、厚生労働省の資料は述べています。処理した物を戻したあとに、同じ寝具やベッドに新しい血糞や吸血被害が出ないかを見ていく必要があります。洗濯・乾燥の対象が寝具や衣類だけで、ベッドの枠、壁際、家具のすき間に虫が残っていれば、処理済みの物はまた付かれます。

手順全体は トコジラミ駆除を自分でする手順 に、旅行・出張後の荷物の扱いは スーツケースを広げる前の確認と対処 にまとめています。薬剤を使う前の確認は トコジラミにくん煙剤を使う前の確認 が参考になります。

京都市は、夏は2週間以内に被害が激減しなければ迷わず専門業者へ相談するよう示しています。熱処理を重ねても新しい被害が続くときは、薬剤や熱の追加を決める前に、保健所や事業者団体へ範囲の調査を相談します。

参考:厚生労働省|トコジラミとその効果的な防除法(平成26年度生活衛生関係技術担当者研修会資料・2015年2月)