棟・面戸・しっくいの位置と役割|屋根のどこを指すのか

瓦屋根の一番高いところの稜線が棟(むね)で、棟には瓦を重ねて積みます。JAANUS(日本建築・美術用語のオンライン辞典)は、面戸を、二つのものの間のすき間をふさぐ部分と説明し、瓦屋根のすき間をふさぐ瓦を面戸瓦と呼ぶとしています。しっくいは、棟の周りや面戸の部分に詰められ、すき間をふさぐ塗り材として使われることがあります。しっくいの材料や寿命、補修の工法は、今回確認した公的資料では見つからなかったため、この記事では扱いません。

しっくいが崩れると、棟の内側やすき間が見える状態になります。そのすき間が小さな動物の出入りできる大きさかどうかは、現場ごとに違います。目安として、東京都ペストコントロール協会は、コウモリが6mmほどのわずかなすき間から出入りできると案内し、浜松市は1cm程のすき間があれば出入りできるとしています。農林水産省のマニュアルは、ハクビシンについて、6cm×12cmのすき間があれば侵入できると書いています。

棟・面戸・しっくいの位置と役割|屋根のどこを指すのか:確認項目
部位場所崩れや傷みが出たとき確認の仕方
棟(大棟・降棟・隅棟)屋根の一番高い部分と、そこから斜めに降りる部分棟の端や継ぎ目にすき間ができる離れた位置から、端の形が崩れていないかを見る
面戸(棟の周り・軒先)瓦と瓦、瓦と下地の間のすき間をふさぐ部分ふさいでいる部分が欠けると、そこがすき間になる欠片が落ちていないか、地面で確かめる
瓦(平らな面)屋根の面ずれ、浮き、割れが出る同じ位置から写真を撮り、日をおいて比べる
けらば・軒先屋根の端端の瓦や板が傷み、すき間ができる地上から全景を撮る

参考:JAANUS(Japanese Architecture and Art Net Users System)|面戸

読者の疑問

屋根のしっくいが崩れたまま放置すると、動物が入りますか?

比較ガイド

入ると決まっているわけではありません。ただ、しっくいが崩れてすき間ができると、コウモリや鳥などの入口になる可能性があります。入口の大きさは現場ごとに違うため、瓦工事業者と害獣の調査ができる業者の両方に、状態を確認してもらってください。

しっくいの崩れ・瓦のずれから入る動物と鳥

農林水産省の中型獣類のマニュアルは、住宅への侵入は、地面に近い床下と、軒など上部が狙われると説明しています。上部の例として、軒の破損部分、瓦屋根の隙間、増築した継ぎ目を挙げ、アライグマ、ハクビシン、テンなどは、屋根裏や壁のすき間を休息や繁殖に使うとしています。同省の鳥類編は、スズメは人家の屋根や壁などのすき間に巣を作り、ムクドリは戸袋など建物のすき間に巣を作ると書いています。

巣に卵やヒナがいるときは、すぐに撤去や封鎖をしません。鳥獣保護管理法は、鳥獣と鳥類の卵の捕獲や採取を原則として禁止しています。確認の順番は、スズメが屋根のすき間に巣を作ったときの巣立ちの確認と補修の順序で整理しています。

しっくいの崩れ・瓦のずれから入る動物と鳥:確認項目
動物・鳥公的資料などで確認できたこと入口として考えられる場所注意すること
スズメ人家の屋根、壁などの隙間に巣を作る。繁殖期は3〜9月屋根や壁のすき間卵やヒナのいる巣は、すぐに撤去しない
ムクドリ戸袋など建物のすき間に巣を作る。繁殖期は4〜7月。鳴き声、悪臭、ダニの発生が問題になる戸袋、屋根まわりのすき間卵やヒナのいる巣は、すぐに撤去しない
コウモリ6mmから1cm程のすき間で出入りできる。捕獲には許可が必要(浜松市)屋根や壁のわずかなすき間閉じ込めると死体が臭気の発生源になる。幼獣のいる時期や冬眠前後の封鎖は避ける
アライグマ・ハクビシンなどの中型獣屋根裏や壁のすき間を休息や繁殖に使う。ハクビシンは6cm×12cmのすき間で侵入できる軒の破損部分、瓦屋根の隙間、増築の継ぎ目封鎖の前に、中にいないことを確認する。丈夫な金属や板を使う

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

地上や窓から確かめられるサイン|落ちたしっくい片・出入りする鳥・瓦のずれ

屋根に上がらなくても、地上や2階の窓から確認できるサインがあります。国土交通省と日本建築防災協会などのリーフレットは、地上からの簡易診断のチェックポイントとして、瓦にずれや浮き上がりがあること、瓦が著しく破損していることを挙げています。害獣の確認では、これに、落ちているしっくい片、屋根から出入りする鳥やコウモリ、棟の端の汚れを加えます。

確認は、日中の明るい時間に、敷地内の平らな地面から見える範囲で行います。塀や室外機を足場にしたり、窓から身を乗り出したりしないでください。見えなかった場所は「未確認」のまま伝えます。写真の撮り方は、軒や屋根のすき間を地上から確認する記事に詳しくまとめています。

地上や窓から確かめられるサイン|落ちたしっくい片・出入りする鳥・瓦のずれ:確認項目
見えるものどこで見るか記録の仕方伝え方の例
地面や雨どいに落ちた白っぽい欠片屋根の下の地面、庭、雨どい位置と日付を残し、全体の写真も撮る北側の棟の下の庭に、白い欠片が落ちている
屋根から出入りする鳥やコウモリ地上から、夕方や早朝に離れて観察する時刻、出入りした位置、回数を書く夕方、棟の東の端から出入りする影を見た
瓦のずれ・浮き・割れ地面から、2階の窓から、カメラの望遠で同じ位置から撮影し、日をおいて比べる南面の屋根の中ほどで、瓦が1枚ずれて見える
棟の端や軒先の汚れ・黒い筋地上から全景を撮る日付の違う写真を並べて比べる軒先の角に、黒い筋がある
天井裏の音やにおいの変化室内日時と部屋を書く夜に2階の寝室の天井の上から音がする

参考:日本建築防災協会(国土交通省ほか協力)|あなたの家の瓦、緊結されていますか?(リーフレット、PDF)

屋根に上がらない理由と、点検を頼む先

リーフレットは、屋根の状況を把握するために、屋根には絶対に登らないよう注意しています。詳しく知りたいときは、お近くの瓦工事業者へ相談するよう案内しています。厚生労働省の労働災害事例には、雨漏りの修繕のためにスレート屋根へ上がった作業者が、屋根を踏み抜いて墜落し、亡くなった事例があります。屋根の上は、見た目より足場が悪い場所です。

点検を頼む先は、目的で分けます。瓦やしっくいの状態、補修の要否は、瓦工事業者に頼みます。全日本瓦工事業連盟は、公式サイトで加盟工事店を検索でき、都道府県ごとに組合事務所があると案内しています。動物がいるか、侵入口はどこか、追い出しと封鎖をどうするかは、害獣の調査ができる業者に頼みます。どちらにも「屋根を見てほしい」とだけ頼むと、見る目的がずれることがあります。

屋根に上がらない理由と、点検を頼む先:確認項目
頼む先頼むこと聞いておくこと
瓦工事業者瓦のずれ、しっくいの崩れの確認と、補修の見積もり動物がいる可能性があるとき、補修の前に何を確認しますか
害獣の調査ができる業者動物の有無、侵入口の特定、追い出しと封鎖屋根の補修が必要なとき、どこまで対応し、どこから屋根工事業者に分けますか
自治体の窓口鳥獣の捕獲許可、相談先の案内鳥や、卵・ヒナがいる場合の扱いはどうなりますか
管理会社・貸主(賃貸)屋根の修繕の手配と費用負担屋根の不具合を見つけたとき、誰が業者を選びますか

参考:全日本瓦工事業連盟|全国かわら相談室(相談先の案内)

屋根工事と害獣対策の順番|追い出し・封鎖・補修

屋根の補修と害獣対策は、順番を決めずに進めると、動物を閉じ込めたり、追い出したあとに入口が残ったりします。誰が何を、どの順で行うかを、工事の前に決めておきます。全体の流れは、追い出し・封鎖・清掃の工程表の記事で、封鎖の時期の考え方は害獣の侵入口をいつ塞ぐかを確認する記事で整理しています。

封鎖の前に、中に動物がいないことを確かめる

しっくいや瓦の補修で、先に入口を塞ぐと、中に動物が残っていた場合に閉じ込めることになります。浜松市は、コウモリの出入り口を塞ぐときは、家の中に取り残されないよう注意し、残っていると閉じ込めて殺してしまい、死体が臭気や害虫の発生源になると案内しています。農林水産省のマニュアルも、侵入場所が確認できたら塞ぐが、中に居ないことを確認することを忘れてはいけないと書いています。

時期と法令の注意

浜松市は、まだ飛べない幼獣のいる6〜8月や、冬眠の前後を避けて、侵入口の封鎖をするよう案内しています。鳥獣保護管理法は、鳥獣と鳥類の卵の捕獲や採取を原則として禁止しており、農林水産省のマニュアルは、被害があるからといって、野生の鳥獣を自由に捕獲することはできないと書いています。追い出しの方法や時期は、自治体や業者に確認してください。

屋根工事と害獣対策の順番|追い出し・封鎖・補修:確認項目
順番作業誰に頼むか確認すること
1状況の記録(地上から)自分写真、日時、出入りの位置
2動物がいるかの調査と、侵入口の特定害獣の調査ができる業者、自治体の窓口調べた範囲と、見えなかった範囲
3追い出し(必要な場合)と、出たあとの確認害獣の業者時期、法令の確認、取り残しの確認の方法
4侵入口の封鎖害獣の業者。補修と一体の工事なら瓦工事業者も封鎖の位置、材料、通気や防水を保てるか
5屋根の補修(しっくい・瓦)瓦工事業者補修範囲、保証、補修の前後の写真
6清掃・消毒害獣の業者清掃の範囲、においが残ったときの連絡先

参考:浜松市|家にコウモリが住み着いて困っている

「無料で屋根を点検します」という訪問への注意

屋根のしっくいや瓦のずれを話題にして、突然訪問してくる業者がいます。国民生活センターは、屋根工事の点検商法の相談が増えていると注意しています。訪問を受けたときの対応を、先に決めておきます。

点検商法の流れと相談件数

点検商法は、「近所で工事をしている」などと突然訪問し、「屋根瓦がずれているため点検してあげる」と点検したあと、「このままだと瓦が飛んでご近所に迷惑がかかる」などと不安をあおって契約させる手口です。2022年度の相談件数は2,885件で、2018年度の923件の約3倍でした。契約当事者の8割超が60歳以上だったとのことです。

断り方と、困ったときの相談先

同センターのアドバイスは、突然訪問してきた業者には、安易に点検させないこと、屋根工事はすぐに契約せず十分に検討すること、保険金を利用できるというトークに気をつけることです。

訪問販売で契約した場合は、法律で決められた書面を受け取った日から8日以内なら、書面などでクーリング・オフができます。困ったら、消費者ホットライン188へ相談してください。契約を急かされたときの確認は、害獣駆除で契約を急かされたときの確認の記事でも整理しています。

「無料で屋根を点検します」という訪問への注意:確認項目
訪問時に言われること注意する点断る・確かめる言い方の例
「近所で工事をしている」「瓦がずれているのが見えた」点検のきっかけとして使われる典型的な言葉。近所の工事が事実でなかった相談もある家族と相談します。社名と連絡先を書面でください
「このままだと瓦が飛んで迷惑がかかる」不安をあおる言葉。その場で決めない自分で頼む瓦工事業者に確認します
「保険で無料で直せる」保険金を利用できるというトークには気をつけるよう、同センターは注意している保険会社へ自分で確認します
「今日なら契約できる」すぐに契約させる言い方。複数社の見積もりで比べる複数の会社に見積もりを頼んで、比べてから決めます

参考:国民生活センター|屋根工事の点検商法のトラブルが増えています

相談するときに伝えること|屋根の状態と記録の渡し方

瓦工事業者にも、害獣の調査ができる業者にも、同じ記録を渡すと、話が早く進みます。屋根の形、築年のめやす、瓦の種類が分かれば添えます。分からないことは「不明」で構いません。この記事で整理した部位の名前は、天井裏・屋根裏・床下の呼び方をまとめた記事に一覧があります。

  • 気づいた日と、どのサイン(欠片、出入り、音、瓦のずれ)か
  • 地上から撮った全景と拡大の写真、撮影した方角
  • 出入りを見た時刻と回数(鳥・コウモリ)
  • 天井裏の音やにおいが出た部屋と日時
  • すでに行った対策や、訪問を受けた業者の名前(あれば)